学校法人会計

会計監査人の選任と報酬 — 議案の中身を決めるのは理事会ではありません

会計監査人を置くことになった学校法人から、「監査法人をいくつか当たって、理事会で決めて、評議員会に諮る」という段取りで進めてよいか、と聞かれることがあります。

順番が違います、というのが答えです。

私立学校法は、評議員会に出す選任議案の中身を決めるのは監事だと定めています。報酬も、定めるのは理事ですが、監事の過半数の同意がなければ決められません。理事会が単独で決められることは、思っているより少ないです。

会計監査人を置くこと自体については会計監査人の設置が義務になる学校法人はどこまでかで整理しました。ここでは、置くと決めた後の手続を条文で確かめます。

選任は評議員会の決議。ただし議案の中身は監事が決める

選任の根拠は私立学校法80条1項です。

会計監査人は、評議員会の決議によつて、選任する。(80条1項)

決議要件は普通決議で、議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数で行います(76条1項)。

問題はその前です。

評議員会に理事が提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監事が決定する。(84条1項)

議案を評議員会に提出するのは理事ですが、その中身を決めるのは監事です。 提出という行為と、中身を決めるという行為が、条文の上で別々の人に割り振られています。

役割を並べると次のようになります。

場面誰が根拠
評議員会に出す議案の内容(誰を選任するか)を決める監事(過半数の合意)84条1項・2項
その議案を評議員会に提出する理事84条1項
選任を決議する評議員会(普通決議)80条1項・76条1項
報酬等を定める理事(監事の過半数の同意が必要)87条・一般社団・財団法人法110条

選任された後の学校法人と会計監査人の関係は、委任に関する規定に従います(80条2項)。契約の締結そのものは法人が行いますが、相手を選ぶ判断は監事のところにあります。

事務局が見積りを集めたり、面談の日程を組んだりすることは差し支えありません。決めるのが監事だ、というだけです。ここを取り違えると、理事会で決めた後に監事が別の判断をして、議案を作り直すことになります。

文部科学省の説明資料の条番号について

文部科学省の「私立学校法の改正に関する説明資料」(令和7年3月25日更新)は、助成法監査と私学法監査を比べた表の中で、私学法監査の監査人について次のように書いています。

・評議員会において選解任(75Ⅰ)(その他選解任の手続きを法定)(原文ママ)

現行の私立学校法75条1項は「評議員による議案の提出」の規定です。 会計監査人の選任は80条1項、解任は83条1項ですので、この表を手がかりに条文を引くときは注意してください。同じ資料の別の頁(監事と会計監査人の連携を示した図)では、「会計監査人の選解任、不再任議案の内容の決定(84)」「会計監査人の報酬同意(87)」と、正しい条番号が挙がっています。

監事の「過半数」は、何人を指すか

議案の内容の決定は、監事の過半数の合意によって行います。

前項の規定による議案の内容の決定は、監事の過半数の合意によつて行わなければならない。(84条2項)

監事の定数は2人以上です(18条3項)。人数ごとに過半数を出すと次のようになります。

監事の人数過半数(必要な合意の数)反対できる人数
2人2人0人
3人2人1人
4人3人1人
5人3人2人

監事が2人の法人では、過半数は2人です。 つまり1人でも反対すれば議案は決まりません。結果として全員一致が要ることになります。監事が3人以上であれば、1人の反対では止まりません。監事の定数は寄附行為で定めますので(18条3項)、何人置くかは、この合意の取りやすさにも効いてきます。

監事の合意で動く場面は5つあります(報酬だけは条文の言葉が「同意」です)。必要な数は2通りです。

場面必要な数根拠
選任・解任・不再任の議案の内容の決定監事の過半数の合意84条2項
報酬等への同意監事の過半数の同意87条・一般社団・財団法人法110条
一時会計監査人の職務を行うべき者の選任監事の過半数の合意85条2項
緊急を要する場合の解任監事の全員の合意83条2項
一時会計監査人の職務を行うべき者の解任監事の全員の合意85条3項(83条1項の読替え)

全員の合意が要るのは、下の2つ、どちらも解任の場面です。 緊急解任は評議員会の招集を待つ余裕がないときの話ですし、一時会計監査人の解任は、85条3項が83条1項の「評議員会の決議」を「監事の全員の合意」に読み替えた結果です。いずれも評議員会の決議によらずに解任する場面なので、要件が重くなっています。

誰を選べるか

資格は81条1項です。

会計監査人は、公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。第三項第二号及び第八十六条第六項第三号において同じ。)又は監査法人でなければならない。(81条1項)

監査法人に頼む場合は、その監査法人が社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、学校法人に通知します(81条2項)。誰が担当するかは監査法人が決める建て付けです。ただし条文は「その社員(次項第二号に掲げる者を除く。)の中から」と書いていて、括弧の中で範囲が狭められています。学校法人の子法人や子法人役員から、公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている社員は、担当者に選べません(81条3項2号)。ここは「監査以外の業務」ではありません。公認会計士の業務には、監査証明(公認会計士法2条1項)のほかに、財務書類の調製、財務に関する調査・立案、財務に関する相談(同条2項)が含まれます。線が引かれているのはその外側にある業務——顧問税理士としての業務などです。社員本人ではなく配偶者が報酬を受けている場合も、同じく除かれます(同号は「継続的な報酬を受けている者又はその配偶者」と書いています)。

なれない者は3つ挙がっています。

次に掲げる者は、会計監査人となることができない。 一 公認会計士法の規定により、第百三条第二項に規定する計算書類について監査をすることができない者 二 学校法人の子法人若しくは子法人役員から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者 三 監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの(81条3項)

最初に確かめたいのは1号です。 2号・3号が子法人との関係を書いているので、学校法人そのものとの関係は問われないように読めますが、そうではありません。学校法人本体との関係は、1号が引いている公認会計士法の側に入っています。

公認会計士法24条1項3号は、公認会計士が「著しい利害関係」を有する者の財務書類について監査証明業務を行ってはならないとし、その中身を政令に委ねています(同条2項)。政令にはこう書かれています。

公認会計士又はその配偶者が、被監査会社等から税理士業務(税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第二条に規定する税理士業務をいう。以下同じ。)その他法第二条第一項及び第二項の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている場合(公認会計士法施行令7条1項6号)

つまり、いま顧問税理士をお願いしている公認会計士に、その法人の会計監査人を兼ねてもらうことはできません。

監査法人に頼む場合も結論は同じですが、入口の条文が変わります。監査法人の「著しい利害関係」を定めているのは24条ではなく34条の11第1項4号・2項で、その政令が社員のうちに顧問税理士がいる場合を挙げています(公認会計士法施行令15条5号)。文部科学省の説明資料も、81条3項1号が引く公認会計士法の規定として「公認会計士法第24条、第34条の11」の2つを挙げています。

学校法人の側からは「制度の中身を分かっている先生に頼めるなら、そのほうが早い」と見えるところですが、条文はその道を閉じています。顧問と会計監査人は別の相手に頼むことになります。

なお、公認会計士法には同じ監査人が続けて関与できる会計期間の上限もありますが、あれは「大会社等」を対象にした規定です(同法24条の3、34条の11の3)。大会社等として挙がっているのは、会計監査人設置会社(一定規模未満の株式会社を除く)、金融商品取引法により監査証明を受けなければならない者(政令で定める者を除く)、銀行、長期信用銀行、保険会社、そして政令で定める者です(同法24条の2)。その政令には、全国を地区とする信用金庫連合会などのほか、国立大学法人及び大学共同利用機関法人、一定の独立行政法人・地方独立行政法人が挙がっていますが、学校法人はどれにも当たりません(公認会計士法施行令10条)。上限の規定は掛からない、ということになります。

ただし、これは法律が交代を求めていないというだけの話です。何年で見直すかは、法人の側で決めておくことになります。

任期は1年。ただし毎年、選任の議案を出す必要はない

会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する会計年度に関する定時評議員会の終結の時までとする。(82条1項)

1年と読めるので、毎年選任の議案を出すものだと受け取られがちですが、次の項があります。

会計監査人は、前項の定時評議員会において別段の決議がされなかつたときは、当該定時評議員会において再任されたものとみなす。(82条2項)

何もしなければ再任されます。 議案を出す必要があるのは、交代させるとき、または再任しないときです。そしてその議案の中身も、監事が決めます(84条1項)。

任意で会計監査人を置いていた法人が、置く旨の寄附行為の定めを廃止したときは、任期はその変更の効力が生じた時に満了します(82条3項)。

再任しない、あるいは交代させる場合、会計監査人の側にも言い分を述べる機会が用意されています。

会計監査人は、会計監査人の選任、解任若しくは不再任又は辞任について、評議員会に出席して意見を述べることができる。(84条3項)

辞任した者についても、辞任後最初に招集される評議員会に出席して辞任した旨とその理由を述べることができ、理事はその者に評議員会の日時と場所を通知しなければなりません(84条4項・5項)。交代の場面では、通知を出す相手が1人増えます。

報酬は理事が定める。ただし監事の同意が要る

会計監査人の報酬について、私立学校法の中に直接の規定は置かれていません。87条が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の110条を準用しています。読み替えた後の形はこうなります。

理事は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監事の過半数の同意を得なければならない。(87条・一般社団・財団法人法110条)

一般社団・財団法人法の側は「監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」と書いていますが、87条はこれを「監事の過半数」と読み替えています。学校法人は監事が2人以上ですので(18条3項)、結果は変わりません。

押さえておきたいのは3点です。

  1. 同意を得るのは「定める場合」です。 報酬額を決める前ですので、監査契約を結んだ後で報告するという順番にはなりません
  2. 一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等も対象です。 欠員が出て監事が選任した場合も、報酬には同意が要ります
  3. 同意は理事会の決議とは別です。 理事会で報酬を決議しても、監事の過半数の同意が無ければ条文の要件を満たしません

条文は、監事が同意するかどうかを何を見て判断するのか、までは定めていません。ですので、そこは各法人の運用になります。監査の計画と、そこから積み上がった時間が分かる資料を監事に示す形にしておくと、同意の記録が残しやすくなります。これは条文上の要求ではなく、実務上の工夫です。

いつまでに選任するか

任期の定め方から、選任した時点では、監査の対象になる会計年度がすでに始まっています。

82条1項は、任期を「選任後一年以内に終了する会計年度に関する定時評議員会の終結の時まで」としています。3月決算の法人が2027年6月の定時評議員会で選任すると、その後1年以内に終了する会計年度は2027年度(2028年3月期)ですので、監査の対象はその年度です。選任の時点で、対象年度は3か月近く進んでいます。

文部科学省が示した施行時のスケジュール例も同じ形になっています。

※大臣所轄学校法人等については、改正法附則第9条第1項に基づき、施行日(令和7年4月1日)以後最初に招集される定時評議員会において会計監査人を選任することとなり、当該会計監査人は、令和7年度決算について監査する。

同省の「改正私立学校法施行に向けた準備・手続(todoリスト)」も、「新たな理事・監事・評議員や会計監査人の選任には時間がかかることも想定されるため、正式な選任手続きのみならず、その事前に行うべき候補者の人選などの事前の準備を含めて、時間的余裕をもったスケジュールをたてておくようにしてください」としています。

決算の期限から逆算する

選任の時期を考えるときは、決算の側の期限から逆算するのが早いです。関係する期限は次のとおりです。

手続条文が定めている時期根拠
計算書類等(計算書類・事業報告書・これらの附属明細書)の作成会計年度終了後3か月以内103条2項
財産目録等の作成会計年度終了後3か月以内107条1項
会計監査報告の内容の通知計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日など、いずれか遅い日施行規則36条1項
監事の監査報告(計算関係書類)の内容の通知会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日など、いずれか遅い日施行規則38条1項
監事の監査報告(事業報告書等)の内容の通知事業報告書を受領した日から4週間を経過した日など、いずれか遅い日施行規則41条1項
理事会の承認監査を受けた後。かつ会計年度終了後3か月以内104条3項・103条2項(財産目録は施行規則43条1項)
招集通知の発送評議員会の日の1週間前まで70条4項
計算書類等・監査報告の備置き評議員会の日の1週間前の日から106条1項

理事会の承認は、招集通知より前に済んでいる必要があります。承認を受けた計算書類と事業報告書、監査報告を、招集通知に際して評議員に提供しなければならないためです(105条1項)。

表の「計算書類等の作成」と「理事会の承認」はつながっています。 103条2項の「3か月以内」を、案ができた時点の期限だと読まないでください。文部科学省は決算スケジュール例の注記で、こう書いています。

※計算書類の「作成」は、理事会承認をもって完了する(私学法104Ⅲ)。

※法律上、期限が規定されているのは、計算書類・財産目録等の作成(理事会承認)期限(私学法)、及び所轄庁への計算書類の提出期限(私学助成法)のみであり、以下に示すのはあくまで例である。

つまり3か月以内に済ませなければならないのは、理事会の承認までです。3月決算であれば6月30日が承認の期限で、その前に会計監査人と監事の監査が終わっていなければなりません。なお、この注記の「のみ」は、その図が扱っている範囲での話です。会計監査報告や監事の監査報告の通知期限は、法律ではなく施行規則の側に置かれていますし(上の表の施行規則の行がそれです)、招集通知の「1週間前まで」(70条4項)は法律の側にあります。

つないでいくと、3月決算で定時評議員会を6月25日に開く場合、次のようになります。

日付何の日か
5月13日計算書類の全部を会計監査人(と監事)に渡す日。ここが遅れると後ろが全部ずれる
6月10日会計監査報告の内容の通知の期限(受領から4週間)
6月17日監事の監査報告の内容の通知の期限(受領から1週間)。理事会の承認もこの日まで
6月18日計算書類等・監査報告の備置きの開始(評議員会の1週間前の日)。招集通知の発送も遅くともここまで
6月25日定時評議員会

評議員会の日から遡って43日、およそ6週間です。 6月下旬に評議員会を開くのであれば、5月の中旬には計算書類の全部が揃っていなければなりません。

この表は、会計監査人と監事が期限をぎりぎりまで使った場合の日付です。ただし、日付そのものを締切にしないでください。 数え方に幅があります。「四週間を経過した日」「一週間を経過した日」には、期間の初日を算入しないという民法140条が効くうえ、「経過した日」が期間の末日なのか、その翌日なのかで1日動きます。招集通知の「1週間前までに」(70条4項)も、備置きの「1週間前の日から」(106条1項)とは条文の書き方が違い、発送を備置きの開始日と同じ日にしてよいとは限りません。動く方向は、どちらも法人にとって前倒しになる側です。 上の日付から数日を引いたところを目安にしてください。

ここで注意したいのは、施行規則36条1項が並べている3つの日のうちいずれか遅い日が期限だ、という点です。

一 当該計算関係書類のうち計算書類の全部を受領した日から四週間を経過した日 二 当該計算関係書類のうち計算書類の附属明細書を受領した日から一週間を経過した日 三 特定理事、特定監事及び会計監査人の間で合意により定めた日があるときは、その日(施行規則36条1項)

3号は「合意により定めた日」ですが、期限は3つのうち遅い日ですので、合意で期限を早めることはできません。 会計監査人が実際に早く終えて早く通知することは妨げられませんが、法人の都合で4週間を縮めるよう求めることはできない、という建て付けです。渡すのが遅れた分は、そのまま後ろにずれます。

なお、計算関係書類を作成した理事が会計監査人に書類を提供するときは、監事にも同じものを提供しなければなりません(施行規則33条)。会計監査人に先に渡して、監事には後から、という順番にはなりません。

逆算する列は1本ではない

ここまで見てきたのは計算書類の列だけです。しかし理事会が承認するのは計算書類等、つまり計算書類・事業報告書・これらの附属明細書であり(103条2項・104条3項)、これとは別に財産目録の承認も要ります(107条1項、施行規則43条1項)。列は3本あり、それぞれに監査の期間が保障されています。

書類誰が監査するか監事の監査報告の通知期限
計算書類及びその附属明細書会計監査人と監事(104条2項)会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日など(施行規則38条1項)
事業報告書及びその附属明細書監事だけ(104条1項)事業報告書を受領した日から4週間を経過した日など(施行規則41条1項)
財産目録会計監査人と監事(86条1項・施行規則43条2項)計算書類と同じ仕組みが準用される(施行規則43条2項)

事業報告書には会計監査人が入りませんが、そのぶん監事に4週間が保障されています。 104条2項が会計監査人を加えているのは計算書類及びその附属明細書についてであって、事業報告書は104条1項のまま監事の監査です。86条1項が挙げる会計監査人の監査対象にも、事業報告書は入っていません。

先ほどの設例(6月17日までに監事の監査報告)に当てはめると、事業報告書は5月20日までに監事へ渡っている必要があります。 計算書類より1週間だけ後ろにできる、というだけの差です。財産目録は計算書類と同じ日程になります。決算が固まってから事業報告書に着手する運用だと、ここで間に合わなくなります。

備置きの起算日も、書類によって違います。計算書類等と監査報告は定時評議員会の日の1週間前の日からですが(106条1項)、財産目録等は定時評議員会の日からです(107条3項)。

欠員が出たとき

会計監査人が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監事は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない。(85条1項)

「選任することができる」ではなく「選任しなければならない」です。この選任も監事の過半数の合意によります(85条2項)。一時会計監査人の職務を行うべき者にも、81条の資格と83条1項の解任事由が準用されます。解任の主体は評議員会の決議ではなく監事の全員の合意に読み替えられます(85条3項)。

解任は3つの事由に限られる

会計監査人が次の各号のいずれかに該当するときは、評議員会の決議によつて、当該会計監査人を解任することができる。 一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。 二 会計監査人としてふさわしくない非行があつたとき。 三 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。(83条1項)

解任は、この3つの事由のどれかに当たるときに限られます。 単に交代させたいだけであれば、解任ではなく「再任しない」という形になります。どちらも議案の中身を決めるのは監事です(84条1項)。

緊急を要するときは、監事の全員の合意で解任できます。この場合、監事の互選で定めた監事が、解任した旨と理由を解任後最初に招集される評議員会に報告します(83条2項・3項)。

就任・退任は所轄庁に届け出る

会計監査人が就任または退任したときは、所轄庁への届出が要ります。

知事所轄の学校法人は、私立学校法施行令6条2項により、遅滞なく届け出ることとされています。届け出る内容は、就任のときは氏名・住所・年月日、退任のときは氏名・年月日です(施行規則61条1項)。文部科学大臣を所轄庁とする学校法人についても、同じ内容を遅滞なく大臣に届け出ることとされています(施行規則61条3項)。

選任の議案が通ったところで終わりにせず、届出まで一連の作業として組んでおいてください。

まとめ

  • 選任は評議員会の決議ですが、議案の中身を決めるのは監事です(80条1項・84条1項)。理事会が先に決める進め方は条文の建て付けと合いません
  • 議案の内容の決定・報酬への同意・一時会計監査人の選任は監事の過半数、緊急時の解任と一時会計監査人の解任は監事の全員です。監事が2人の法人では過半数が2人なので、1人でも反対すれば決まりません
  • 顧問税理士をお願いしている公認会計士は、その法人の会計監査人になれません(公認会計士法24条1項3号・同施行令7条1項6号)。監査法人の場合も、社員に顧問税理士がいれば同じです(同法34条の11第1項4号・同施行令15条5号)。監査法人が担当者に選べる社員の範囲も、子法人等から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務で継続的な報酬を受けている者とその配偶者が除かれます(81条2項・3項2号)
  • 任期は1年ですが、別段の決議がなければ再任されたものとみなされます(82条2項)。議案が要るのは交代させるときと再任しないときです
  • 報酬は理事が定めますが、監事の過半数の同意がなければ定められません(87条・一般社団・財団法人法110条)。同意は契約の前に取ります
  • 計算書類等の「作成」の3か月以内という期限は、理事会の承認までにかかります(103条2項・104条3項)。3月決算なら6月30日までに承認まで終わっている必要があります
  • 決算から逆算すると、定時評議員会の6週間あまり前(設例では43日前)には計算書類の全部が会計監査人に渡っている必要があります。施行規則36条1項の期限は「いずれか遅い日」ですので、合意で早めることはできません
  • 逆算する列は計算書類だけではありません。 事業報告書は監事だけが監査しますが、監事に4週間が保障されています(施行規則41条1項)。設例では5月20日までに監事へ渡っている必要があります。財産目録は計算書類と同じ日程です(86条1項・施行規則43条2項)
  • 解任できるのは3つの事由に当たるときだけです(83条1項)。交代させたいだけなら「再任しない」の形になります
  • 就任・退任は所轄庁への届出が要ります(施行令6条2項、施行規則61条1項・3項)

会計監査人を初めて置く年は、監事にとっても初めての年になります。議案の内容を決める、報酬に同意する、会計監査報告を受けて、その方法又は結果を相当でないと認めたときはその旨と理由を監査報告に書く(施行規則35条2号)——どれも従来の監事監査には無かった仕事です。学校法人の会計監査と監事監査の双方に関わってきた立場から、御法人の監事の体制と決算スケジュールに即して、いつ何を決めておく必要があるかを一緒に整理します。

よくある質問

理事会で監査法人を決めてから、評議員会に諮る形で問題ありませんか。

順番が逆になっています。私立学校法84条1項は「評議員会に理事が提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監事が決定する」と定めています。議案を評議員会に提出するのは理事ですが、その中身を決める権限は監事にあります。理事会が候補を選んで監事に「これでお願いします」と伝える進め方は、条文の建て付けと合いません。候補の情報を集めるところまでは事務局が手伝って構いませんが、どこに頼むかを決めるのは監事です。

監事が2人の法人では、何人の合意が必要ですか。

2人です。議案の内容の決定は「監事の過半数の合意」によって行うこととされており(私立学校法84条2項)、2人の過半数は2人だからです。つまり監事が2人の法人では、1人が反対すれば議案は決まりません。監事が3人であれば過半数は2人ですので、1人の反対では止まりません。監事の定数は2人以上と定められていますので(同法18条3項)、2人としている法人ではこの形になります。

いま顧問をお願いしている税理士が公認会計士なのですが、会計監査人もお願いできますか。

できません。公認会計士法施行令7条1項6号は、公認会計士又はその配偶者が被監査会社等から「税理士業務……その他法第二条第一項及び第二項の業務以外の業務」により継続的な報酬を受けている場合を「著しい利害関係」としており、同法24条1項3号により、その者はその法人の財務書類について監査証明業務を行えません。私立学校法81条3項1号は、公認会計士法の規定により計算書類の監査をすることができない者は会計監査人になれないとしていますので、そのまま会計監査人の欠格事由になります。監査法人に頼む場合も、その社員に顧問税理士がいれば同じ結論になりますが、根拠になる条文は24条ではなく34条の11第1項4号・2項です(公認会計士法施行令15条5号)。

会計監査人は毎年、評議員会で選び直すのですか。

選び直す必要はありません。任期は選任後1年以内に終了する会計年度に関する定時評議員会の終結の時までですが、その定時評議員会で別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなされます(私立学校法82条1項・2項)。議案を出す必要があるのは、交代させるとき、または再任しないときです。その場合も、議案の内容を決めるのは監事です。

監査報酬は誰が決めますか。理事会の決議だけで決められますか。

決められません。私立学校法87条が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律110条により、理事が会計監査人の報酬等を定める場合には、監事の過半数の同意を得なければならないこととされています。条文は「定める場合」と書いていますので、同意は契約を結ぶ前に取ります。一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等についても同じです。

会計監査人が任期の途中で辞任したときは、すぐに評議員会を開く必要がありますか。

開かなくても、監査が止まらないようにする手当てがあります。会計監査人が欠けた場合に遅滞なく選任されないときは、監事が一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならないこととされています(私立学校法85条1項)。この選任も監事の過半数の合意によります(同条2項)。逆に、選任した一時会計監査人を解任するときは、監事の全員の合意が必要です(同条3項が83条1項の「評議員会の決議」を読み替えています)。ただし一時的な措置ですので、次の評議員会で正式に選任する段取りは別に要ります。なお、辞任した会計監査人は、辞任後最初に招集される評議員会に出席して、辞任した旨とその理由を述べることができます(同法84条4項)。

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