学校法人会計

監事と会計監査人の役割分担 — 監事は会計監査人の検算役ではありません

会計監査人を置いた学校法人の事務局から、「監査法人が計算書類を見ているのに、監事も同じものを見るのですか」と聞かれることがあります。

条文は、同じことをしろとは書いていません。監事と会計監査人では、作る報告書に書くべき事項そのものが違います。とくに、会計監査人を置くと、監事の監査報告からは「計算関係書類(計算書類及びその附属明細書)が適正に表示しているかどうか」という意見の欄が無くなります。

会計監査人を置くかどうかの判定は会計監査人の設置が義務になる学校法人はどこまでかで、選任と報酬の手続は会計監査人の選任と報酬で整理しました。ここでは、置いた後に監事と会計監査人が何をどこまで分担するのかを、条文で確かめます。

結論

  • 計算関係書類(計算書類及びその附属明細書)が適正に表示しているかどうかの意見を書くのは、会計監査人です(施行規則34条1項2号)
  • 会計監査人を置く学校法人の監事の監査報告には、その意見の欄がありません(施行規則35条)。その欄の代わりに入るのは、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときの、その旨と理由です(同条2号)
  • ただし、事業報告書とその附属明細書は、会計監査人の監査の対象ではありません(私立学校法104条1項・2項)。ここは会計監査人を置いても監事だけが意見を書きます(施行規則40条2号)
  • 「相当でないと認めたとき」に書く形ですので、その記載が無い監査報告は「相当でないとは認めなかった」という意味になります。会計監査報告を受け取って判を押せばよい、という意味ではありません

監査の対象が、書類ごとに分かれている

出発点は私立学校法104条1項と2項です。

計算書類等は、文部科学省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。(104条1項)

前項の規定にかかわらず、会計監査人設置学校法人においては、計算書類及びその附属明細書については、文部科学省令で定めるところにより、監事及び会計監査人の監査を受けなければならない。(104条2項)

「計算書類等」が何を指すかは、103条2項の括弧書きで決まっています。

学校法人は、毎会計年度終了後三月以内に、文部科学省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類等(計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下同じ。)及び事業報告書並びにこれらの附属明細書をいう。以下同じ。)を作成しなければならない。(103条2項)

つまり計算書類等は、計算書類(貸借対照表と収支計算書)と事業報告書、そして計算書類の附属明細書と事業報告書の附属明細書です。

ここで効くのが、104条2項が「計算書類及びその附属明細書については」と対象を限っていることです。事業報告書とその附属明細書は2項に入っていません。1項のまま、監事だけが監査します。

書類監事会計監査人
計算書類(貸借対照表・収支計算書)監査する監査する
計算書類の附属明細書監査する監査する
事業報告書監査する監査しない
事業報告書の附属明細書監査する監査しない

この表は計算書類等(103条2項)だけの整理です。財産目録は計算書類等に含まれないため、次の項で別に扱います。

「会計監査人を置いたので決算書類は全部見てもらえる」と考えていると、事業報告書のところで話が合わなくなります。事業報告書には、内部統制の体制の整備についての決議があるときは、その決議の内容の概要と運用状況の概要も入ります(施行規則29条2項2号)。ここを読むのは監事です。

財産目録は、会計監査人の対象が「貸借対照表に対応する項目」に限られます

財産目録は計算書類等には含まれませんが、会計監査人の監査の対象には入っています。

会計監査人は、第五節の定めるところにより、第百三条第二項に規定する計算書類及びその附属明細書並びに財産目録その他の文部科学省令で定めるものを監査する。(86条1項)

この「文部科学省令で定めるもの」が施行規則24条です。

法第八十六条第一項(法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の文部科学省令で定めるものは、財産目録(貸借対照表に対応する項目に限る。)とする。(施行規則24条)

括弧の中の「限る」が、監査の範囲を画しています。文部科学省の説明資料も同じ読み方を示しています。

監査の対象については、財産目録に記載する項目のうち、財務情報に対応する部分として貸借対照表に対応する項目に限ります(改正後の私立学校法施行規則第24条)。(説明資料202頁・令和6年6月14日更新のQ&A)

残りの部分がどう扱われるかは、会計監査報告の記載事項に書かれています。

第二号の意見があるときは、事業報告書及びその附属明細書並びに財産目録(第二十四条に規定する貸借対照表に対応する項目を除く。)の内容と計算関係書類の内容又は会計監査人が監査の過程で得た知識との間の重要な相違等について、報告すべき事項の有無及び報告すべき事項があるときはその内容(施行規則34条1項4号)

貸借対照表に対応しない部分と事業報告書は、監査意見の対象ではなく、計算関係書類との間に重要な相違等がないかを見て報告すべき事項の有無を書く、という扱いです。監査を受けたものとして外に説明できる範囲が違いますので、ここは分けて理解しておいてください。

なお財産目録は、理事会の決議による承認を受けなければならないとされ(施行規則43条1項)、その承認を受けるための手続には私立学校法104条・105条と施行規則30条から42条までが準用されます(施行規則43条2項)。承認までの段取りは計算書類と同じ形になります。

監査報告に書く事項が違う

会計監査報告の記載事項は施行規則34条1項、会計監査人を置く学校法人の監事の監査報告の記載事項は施行規則35条です。並べると、重なっているのは最初と最後だけだと分かります。

書く事項会計監査報告(施行規則34条1項)監事の監査報告(施行規則35条)
監査の方法及びその内容書く(1号)書く(1号)
計算関係書類が適正に表示しているかどうかの意見書く(2号)定めなし
その意見がないときその旨と理由(3号)定めなし
事業報告書及びその附属明細書・財産目録(貸借対照表に対応する項目を除く)の内容と、計算関係書類の内容等との重要な相違等意見があるときに、報告すべき事項の有無と内容を書く(4号)定めなし
会計監査人の監査の方法又は結果の相当性定めなし相当でないと認めたときに書く(2号)
会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項定めなし書く(4号)
重要な後発事象追記情報として書くことがある(5号)会計監査報告の内容となっているものを除いて書く(3号)
監査のため必要な調査ができなかったとき定めなしその旨と理由(5号)
報告を作成した日書く(6号)書く(6号)

「計算関係書類が適正に表示しているかどうかの意見」の行を、監事の列でたどってください。 定めがありません。監事の監査報告を読んで「適正意見が書いていない」と驚く方がいますが、書く欄が無いのです。

なお「計算関係書類」は、計算書類及びその附属明細書を指します(施行規則29条2項1号)。財産目録は入りません。

施行規則31条は、会計監査人を置く法人の監事には適用されません

適正表示の意見を書く形の監査報告は、施行規則31条に定められています。柱書を最後まで読んでください。

監事(会計監査人を置く学校法人(法第百五十二条第六項の規定において準用する場合にあつては、準学校法人。以下この節において同じ。)の監事を除く。以下この条及び次条において同じ。)は、計算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする監査報告を作成しなければならない。(施行規則31条1項)

括弧の中で、会計監査人を置く学校法人の監事が外されています。31条の監査報告を作るのは、会計監査人を置かない学校法人の監事です。この形の監査報告に慣れている監事ほど、会計監査人を置いた最初の年に書式をそのまま使ってしまいます。

事業報告書のほうの監査報告には、いまも監事の意見が入ります

一方、事業報告書及びその附属明細書についての監査報告は、施行規則40条です。

監事は、事業報告書及びその附属明細書を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする監査報告を作成しなければならない。 一 監事の監査の方法及びその内容 二 事業報告書及びその附属明細書が法令又は寄附行為に従い当該学校法人(略)の状況を正しく示しているかどうかについての意見 三 当該学校法人の理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があつたときは、その事実 四 監査のため必要な調査ができなかつたときは、その旨及びその理由 五 第二十九条第二項第二号に掲げる事項(監査の範囲に属さないものを除く。)がある場合において、当該事項の内容が相当でないと認めるときは、その旨及びその理由 六 監査報告を作成した日(施行規則40条)

柱書は「監事は、」で始まっていて、31条のような除外の括弧書きがありません。会計監査人を置いても、事業報告書及びその附属明細書について意見を書くのは監事です。

計算関係書類のほうで意見の欄が無くなるぶん、事業報告書の監査報告が監事の意見を示す場所になります。事業報告書を理事の作文として扱い、監事が中身を確かめないまま出すことはできません。

「相当でないと認めたとき」という書き方

監事の監査報告の中心は、施行規則35条2号です。

会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由(次条第三項に規定する場合にあつては、会計監査報告を受領していない旨)(施行規則35条2号)

「相当である」と積極的に書く欄ではなく、相当でないと認めたときに書く形です。したがって、この記載が無い監査報告は「相当でないとは認めなかった」という意味になります。

ここを「会計監査人が適正意見を出したのだから、監事は書くことが無い」と読むと、判断そのものを飛ばすことになります。文部科学省は説明資料の中で、この点を正面から書いています。

監事は会計監査人による会計監査の結果を鵜呑みにしてよいということではない(説明資料54頁)

業務監査と一体として会計監査を行い、日々の業務の中で受けた理事や職員からの報告や説明を踏まえ、法人の財産等の状況について自らの判断を行ったうえで、会計監査人による会計監査結果との間で重要な齟齬が無いかどうかを確認する(説明資料54頁)

会計監査人に期待される会計的専門知識による監査手続を単に繰り返すのではなく、監事の独自の視点により監査を行うことが期待される(説明資料54頁)

同じ資料は、会計監査人を設置する場合の責任関係を次のように整理しています。

学校法人の財務報告プロセスの整備及び運用における理事の業務執行の状況を監視すること。また、会計監査人の監査の方法と結果の相当性を判断すること(監事の責任・説明資料55頁)

独立した立場で会計監査を実施し、計算書類に全体として不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて監査意見を表明すること(会計監査人の責任・説明資料55頁)

監事は会計監査人の手続をなぞる立場ではなく、理事の業務執行を見ている立場から、会計監査人の監査の方法と結果が相当かどうかを判断する立場です。 日々の業務の中で受けている理事や職員からの報告や説明を踏まえて、法人の財産等の状況についてまず自分で判断し、その上で会計監査人の結論との間に重要な齟齬がないかを確かめる、という順序になります。自分の判断を持たないまま、齟齬の有無だけを見ることはできません。

「相当性」は2か所に出てきますが、対象が違います

施行規則には「相当でないと認める」という言い回しが2回出てきます。対象が別ですので、混ぜないでください。

条項相当性を判断する対象
施行規則35条2号会計監査人の監査の方法又は結果
施行規則40条5号施行規則29条2項2号に掲げる事項の内容

施行規則29条2項2号は、事業報告書の内容とすべき事項の一つです。

法第三十六条第三項第五号(法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の体制の整備についての決議があるときは、その決議の内容の概要及び当該体制の運用状況の概要(施行規則29条2項2号)

内部統制の体制についての決議とその運用状況の概要が事業報告書に書かれているとき、その内容が相当かどうかを判断するのは監事です。会計監査人の仕事ではありません。

相当性を判断する材料は、条文で用意されている

「相当かどうか判断せよと言われても、監査の中身が分からない」という声があります。材料を監事に渡す規定が、施行規則と準用規定に置かれています。

第一に、計算関係書類は会計監査人と同時に監事にも渡ります。

計算関係書類を作成した理事は、会計監査人に対して計算関係書類を提供しようとするときは、監事に対しても計算関係書類を提供しなければならない。(施行規則33条)

会計監査人が先に受け取って、監事は後から回ってくる、という形にはなっていません。

第二に、会計監査人は自らの体制を監事に通知します。

会計監査人は、前条第一項の規定による特定監事に対する会計監査報告の内容の通知に際して、当該会計監査人についての次に掲げる事項(当該事項に係る定めがない場合にあつては、当該事項を定めていない旨)を通知しなければならない。ただし、全ての監事が既に当該事項を知つている場合は、この限りでない。 一 独立性に関する事項その他監査に関する法令及び規程の遵守に関する事項 二 監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業務の契約の受任及び継続の方針に関する事項 三 会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項(施行規則37条)

この通知が、監事の監査報告に書く「会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項」(施行規則35条4号)の材料になります。ただし書があり、全ての監事が既に知っている場合は通知が要りません。通知が来ないことをもって会計監査人の不履行と決めつける前に、自法人でどう整理しているかを確かめてください。

第三に、監事は会計監査人に報告を求められます。 私立学校法87条は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律108条から110条までを会計監査人について準用しています。

会計監査人は、その職務を行うに際して理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監事に報告しなければならない。(一般社団・財団法人法108条1項)

監事は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる。(同108条2項)

引用した108条1項の「定款」は、私立学校法87条の読替えにより寄附行為と読みます。

会計監査報告そのものも、監事と理事会の両方に提出されます(私立学校法86条2項)。理事会を経由して監事に届くのではありません。

意見が食い違ったまま、定時評議員会に行くことがある

監事と会計監査人の意見が分かれたときの扱いも、条文にあります。私立学校法87条が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律109条です。

第百七条第一項に規定する書類が法令又は定款に適合するかどうかについて会計監査人が監事と意見を異にするときは、会計監査人(会計監査人が監査法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。次項において同じ。)は、定時社員総会に出席して意見を述べることができる。(同109条1項)

定時社員総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時社員総会に出席して意見を述べなければならない。(同109条2項)

私立学校法87条の読替えにより、「第百七条第一項」は私立学校法86条1項に、「定時社員総会」は定時評議員会に、「定款」は寄附行為に読み替わります。意見の相違は、法人の内部で消してから評議員会に臨む、という建て付けにはなっていません。

会計監査人に職務上の義務違反などがあると監事が認める場合で、評議員会の招集を待ついとまがないときその他緊急を要するときは、監事の全員の合意で解任することもできます(私立学校法83条2項)。このときは、監事の互選で定めた監事が、解任した旨と理由を解任後最初に招集される評議員会に報告します(同条3項)。

評議員に渡るのは、監査報告と会計監査報告の両方です

ここは条文の読み方でつまずきやすいところです。

理事は、定時評議員会の招集の通知に際して、文部科学省令で定めるところにより、評議員に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告書並びに監査報告を提供しなければならない。(105条1項)

105条1項は「監査報告」としか書いていません。しかし、この語は104条3項の括弧書きで定義されています。

前二項の監査を受けた計算書類等は、理事会の決議による承認を受けなければならない。この場合において、当該承認は、監査報告(会計監査人設置学校法人にあつては、会計監査報告を含む。次条第一項及び第百六条において同じ。)の内容を踏まえて行うものとする。(104条3項)

「次条第一項及び第百六条において同じ」と書かれていますので、105条1項と106条の「監査報告」にも会計監査報告が含まれます。 施行規則42条1項も同じ扱いです。

法第百五条第一項(略)の規定による計算書類及び事業報告書並びに監査報告(会計監査人を置く学校法人にあつては、会計監査報告を含む。以下この条において「提供書類等」という。)の提供に関しては、この条の定めるところによる。(施行規則42条1項)

理事会の承認も同じで、承認は監査報告と会計監査報告の内容を踏まえて行います(104条3項)。会計監査報告を理事会に配らずに承認決議を取る運用は、条文と合いません。

会計監査人を置いても、監事の仕事は減りません

監事の職務は私立学校法52条に並んでいます。

監事は、次に掲げる職務を行う。 一 学校法人の業務及び財産の状況並びに理事の職務の執行の状況を監査すること。 二 理事会及び評議員会に出席し、意見を述べること。 三 学校法人の業務若しくは財産の状況又は理事の職務の執行の状況について、理事会及び評議員会並びに理事選任機関に対し報告すること。 四 この法律の他の規定により監事の同意を要する事項について、その可否を決すること。 五 前各号に掲げるもののほか、この法律の他の規定により監事が行うこととされた職務 六 前各号に掲げるもののほか、寄附行為をもつて定めるところにより監事が行うこととされた職務(52条)

このほか、理事が評議員会に提出しようとする議案等の調査義務(54条)、理事会及び評議員会への出席義務(55条)、不正の行為等を発見したときの理事会・評議員会・所轄庁への報告義務(56条2項)、そのために必要な理事会・評議員会の招集請求と自らの招集(57条)、理事の行為の差止めの訴えの提起(58条)、学校法人と理事との間の訴えにおける法人の代表(59条)があります。会計監査人にこれらの権限はありません。 会計監査人の側にあるのは、会計監査と会計監査報告の作成(86条1項・2項)、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧や謄本・抄本の交付の請求と理事及び職員に対する会計に関する報告の求め(86条3項)、子法人に対する会計に関する報告の求めと学校法人及び子法人の業務及び財産の状況の調査(86条4項)、監事への報告(87条・一般社団・財団法人法108条1項)、自らの選任・解任・不再任・辞任についての評議員会での意見陳述(84条3項)、監事と意見を異にするときの定時評議員会での意見陳述(87条・同109条1項)です。調査と報告はできますが、理事の行為をやめさせる、理事会や評議員会を招集する、法人を代表するといった権限はありません。

文部科学省の説明資料は、制度の狙いをこう書いています。

会計監査人制度導入により、監事監査において、会計に関する専門的能力と独立性を備えた会計監査人の監査結果を利用することが法的に可能となる。これにより、監事が行う財産監査の専門性と計算書類の信頼性を向上させるとともに、業務監査・教学監査に監事が一層注力しやすくなり、結果として学校法人のガバナンス機能を向上させる。(説明資料53頁)

会計監査人を置いて浮くのは、監事が自分で数字を検算する手間であって、監事の責任ではありません。 浮いた分は業務監査に向ける、というのが制度の想定です。

まとめ

  • 会計監査人を置くと、監事の監査報告から「計算関係書類が適正に表示しているかどうかについての意見」の欄が無くなります(施行規則31条1項柱書の括弧書き、35条)。代わりに入るのは、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときのその旨と理由です(35条2号)
  • 記載が無いことは「相当でないとは認めなかった」という意味です。判断そのものを省いてよいという意味ではありません(説明資料54頁)
  • 事業報告書及びその附属明細書は、会計監査人の監査の対象ではありません(104条1項・2項)。ここでは監事が「法令又は寄附行為に従い学校法人の状況を正しく示しているかどうか」の意見を書きます(施行規則40条2号)
  • 財産目録について会計監査人が監査するのは、貸借対照表に対応する項目に限られます(86条1項、施行規則24条)。括弧書きの「限る」を落とすと、範囲を広く読み違えます
  • 「相当でないと認める」は2か所にあり、対象が違います。施行規則35条2号は会計監査人の監査の方法又は結果、施行規則40条5号は事業報告書に書かれた内部統制の体制と運用状況の概要(施行規則29条2項2号)です
  • 判断材料は条文で用意されています。計算関係書類は会計監査人と同時に監事へ(施行規則33条)、会計監査人の独立性等は監事へ通知(施行規則37条。ただし全ての監事が既に知っている場合を除く)、監事から会計監査人への報告請求(87条・一般社団・財団法人法108条2項)
  • 意見が分かれたときは、会計監査人が定時評議員会で意見を述べることができます(87条・一般社団・財団法人法109条1項)。出席を求める決議があれば、述べなければなりません(同条2項)
  • 評議員に提供する「監査報告」には会計監査報告が含まれます(104条3項の括弧書き、105条1項、施行規則42条1項)
  • 監事にしかできない職務は、会計監査人を置いても残ります(52条、54条から59条まで)

会計監査人を置いた最初の年は、監事の監査報告の書式が前年と変わります。どこに何を書くかだけでなく、何を根拠に「相当でないとは認めなかった」と言えるのかを、監査調書の形で残しておけるかが問われます。学校法人の会計監査と監事監査の双方に関わってきた立場から、御法人の監事の人数と体制、会計監査人との連携の段取りに即して、監査報告に至るまでの作業を一緒に組み立てます。

よくある質問

会計監査人を置くと、監事は計算書類を見なくてよくなるのですか。

いいえ。私立学校法104条2項は、会計監査人設置学校法人においては、計算書類及びその附属明細書について「監事及び会計監査人の監査を受けなければならない」と定めています。監事の監査が無くなるわけではありません。変わるのは監査報告に書く事項です。会計監査人を置かない学校法人の監事は、計算関係書類が財産及び収支の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見を書きます(施行規則31条1項2号)。会計監査人を置く学校法人の監事にはこの欄が無く、代わりに、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときにその旨と理由を書きます(施行規則35条2号)。

監事の監査報告に「会計監査人の監査は相当である」と書く必要はありますか。

条文はそういう書き方になっていません。施行規則35条2号は「会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由」と定めています。相当でないと認めたときに書く、という形ですので、何も書かれていない監査報告は「相当でないとは認めなかった」という意味になります。積極的に「相当である」と書く欄ではありませんが、判断をしないでよいという意味でもありません。

事業報告書も会計監査人に見てもらえますか。

会計監査人の監査の対象ではありません。私立学校法104条2項が会計監査人の監査の対象としているのは「計算書類及びその附属明細書」で、事業報告書とその附属明細書は同条1項のまま、監事だけの監査です。監事は、事業報告書及びその附属明細書が法令又は寄附行為に従い学校法人の状況を正しく示しているかどうかについての意見を、監査報告に書きます(施行規則40条2号)。なお会計監査報告では、計算関係書類について意見があるときに限り、事業報告書及びその附属明細書の内容と計算関係書類の内容などとの間に重要な相違等について報告すべき事項があるかどうかを書くこととされています(施行規則34条1項4号)。意見を述べるのとは別の扱いです。

財産目録は会計監査人の監査の対象になりますか。

一部だけが対象です。私立学校法86条1項は会計監査人が監査するものとして「財産目録その他の文部科学省令で定めるもの」を挙げ、施行規則24条がこれを「財産目録(貸借対照表に対応する項目に限る。)」と定めています。括弧の中の「限る」が効いていますので、財産目録の全体に監査意見が付くわけではありません。文部科学省も「監査の対象については、財産目録に記載する項目のうち、財務情報に対応する部分として貸借対照表に対応する項目に限ります」と説明しています。

監事と会計監査人の意見が分かれたときは、どうなりますか。

会計監査人が定時評議員会で意見を述べる道が用意されています。私立学校法87条が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律109条1項により、私立学校法86条1項に規定する書類が法令又は寄附行為に適合するかどうかについて会計監査人が監事と意見を異にするときは、会計監査人は定時評議員会に出席して意見を述べることができます。また、定時評議員会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、出席して意見を述べなければなりません(同条2項)。食い違いを法人の内部で消してから評議員会に臨む、という建て付けにはなっていません。

評議員に渡すのは監事の監査報告だけでよいですか。

会計監査報告も渡します。私立学校法105条1項は「計算書類及び事業報告書並びに監査報告を提供しなければならない」と書いていますが、この「監査報告」は104条3項の括弧書きにより、会計監査人設置学校法人では会計監査報告を含みます。施行規則42条1項も、提供書類等に会計監査報告を含めています。105条1項だけを読むと会計監査報告が入っていないように見えますので、注意してください。

出典

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