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決算統計と経営比較分析表 — 自動化できるのは計算ではありません

「決算統計と経営比較分析表の作成を、なんとか自動化できないか」というご相談をいただくことがあります。 毎年同じ時期に、同じ形の作業が来るからです。

ただ、総務省が公表しているファイルを実際に開いて中を確かめると、 自動化の効き目がある場所は、多くの方が想像している場所とは違います。

結論

経営比較分析表の指標は、あなたの団体が計算するものではありません。 総務省が決算統計の数値から算出し、計算済みの分析表を配ります。団体が書き入れるのは分析欄の文章だけです。 ですから「指標の計算を自動化する」という発想は、最初から空振りになります。

指標が算式どおりに計算されているかどうかは、総務省が公表している分子・分母から計算し直し、 公表されている経営比較分析表そのものと突き合わせて確かめました。令和6年度決算の下水道事業97本 (総務省のサイトに載っている都道府県・政令市の分)について、11指標の値1,038件を照合したところ、 1,037件が小数2桁まで一致しました。算式どおりに足し引きして割るだけで、公表値が再現できます。

作業を4つに分けると、自動化が効く場所と効かない場所がはっきりします。

作業誰がやるか自動化
1決算統計の調査表に入れる数値を作る団体効く。ここが本丸
2指標を計算する総務省する必要がない
3分析欄を書く団体できない
4公表された数値を自団体の資料に持ち込む団体効く

経営比較分析表は、誰が作っているのか

経営比較分析表は、平成27年に始まった仕組みです。同年7月30日付の事務連絡で考え方と作業工程が示され、 同年11月30日付の「公営企業に係る「経営比較分析表」の策定及び公表について」(通知)で始まりました。 この2つについて、この記事が引用しているのは、総務省が研究会の資料として公表している概要資料であって、 通知・事務連絡の本文そのものではありません。

経営及び施設の状況を表す経営指標を活用し、当該団体の経年比較や他公営企業との比較、複数の指標を組み合わせた分析を行うことで、経営の現状及び課題を的確かつ簡明に把握することが可能。

対象は当初、水道事業(上水道事業及び簡易水道事業)と下水道事業の2つでした。 令和6年度決算分では水道・工業用水道・交通(自動車運送)・電気・下水道・観光施設(休養宿泊施設)・駐車場整備・病院の8事業まで広がっています。

誰が何をするかは、導入時から決まっている

7月30日付の事務連絡には、作業工程がこう書かれていました。

(1)【各公営企業】「経営比較分析表」の経営指標は、決算状況調査から算定

(2)【総務省】決算状況調査等を基に経営指標を算出し、「経営比較分析表」(団体分析欄除)に落とし込んだものを公営企業に配布

(3)【各公営企業】「経営比較分析表」を確認のうえ、明らかになった経営状況や課題の分析(コメントの記載)を実施

(4)【総務省、都道府県及び市町村】「経営比較分析表」(経営指標とコメント)を公表

(原文では(2)〜(4)の【 】の直後に「(平成27年12月上旬照会予定)」などの予定時期が入りますが、 分担を示す目的なので、ここでは省いて引用しています。)

計算するのは総務省、コメントを書くのが団体という分担です。

令和6年度決算分でも同じ形です。団体・事業ごとの分析表はExcelで公表されており、 開くと「データ」というシートがあって、指標について当該団体値が5年分、類似団体平均値が5年分、 そして全国平均まで計算済みで入っています。団体が入力したのは、分析欄の文章だけです。

ただし、総務省のサイトに載っているのは都道府県と政令市の分だけです。 市町村の分については、総務省のページにこう書かれています。

市町村の「経営比較分析表」は、当該市町村及び当該市町村が所在する都道府県において公表しています。 総務省においては、経営比較分析表が公表されている都道府県のページのURLを掲載しています。

自分の団体の分析表を探すときは、総務省のサイトではなく、所在する都道府県のページを見てください。

指標の算式は、全部公開されている

算式は、事業ごとに総務省「経営指標の概要」に載っています。 **指標の数は事業によって違います。**水道事業・工業用水道事業・下水道事業は11個ですが、 たとえば病院事業は12個、交通事業(自動車運送事業)は13個、電気事業は10個で、中身も別物です。 ここでは水道事業と下水道事業を並べます。

区分水道事業下水道事業
経営の健全性・効率性①経常収支比率(法非適用は収益的収支比率)経常収支比率(法非適用は収益的収支比率)
同②累積欠損金比率累積欠損金比率
同③流動比率流動比率
同④企業債残高対給水収益比率企業債残高対事業規模比率
同⑤料金回収率経費回収率
同⑥給水原価汚水処理原価
同⑦施設利用率施設利用率
同⑧有収率水洗化率
老朽化の状況①有形固定資産減価償却率有形固定資産減価償却率
同②管路経年化率管渠老朽化率
同③管路更新率管渠改善率

算式は分数の形で示されています。下水道事業の11指標を、法適用企業のものについて1行に書き直すと、 次のとおりです。

区分指標分子分母
健全性・効率性①経常収支比率(%)経常収益経常費用
同②累積欠損金比率(%)当年度未処理欠損金営業収益−受託工事収益
同③流動比率(%)流動資産流動負債
同④企業債残高対事業規模比率(%)企業債現在高合計−一般会計負担額営業収益−受託工事収益−雨水処理負担金
同⑤経費回収率(%)下水道使用料汚水処理費(公費負担分を除く)
同⑥汚水処理原価(円)汚水処理費(公費負担分を除く)年間有収水量
同⑦施設利用率(%)晴天時一日平均処理水量晴天時現在処理能力
同⑧水洗化率(%)現在水洗便所設置済人口現在処理区域内人口
老朽化①有形固定資産減価償却率(%)有形固定資産減価償却累計額有形固定資産のうち償却対象資産の帳簿原価
同②管渠老朽化率(%)法定耐用年数を経過した管渠延長下水道布設延長
同③管渠改善率(%)改善(更新・改良・修繕)管渠延長下水道布設延長

単位が(%)の指標は、この割り算に100を掛けます。 法非適用企業では①が収益的収支比率(総収益÷(総費用+地方債償還金))に置き換わり、 ④は分子の企業債現在高合計が地方債現在高合計に替わります。 ②③と老朽化①②には、法非適用企業の算式が示されていません。

引き算と割り算しかありません。 指標は、決算統計に報告した数値から一意に決まります。

分析表の表頭には、この11指標のほかに基本情報として資金不足比率・自己資本構成比率・普及率などが載ります。 下水道事業ではここに有収率(年間有収水量÷汚水処理水量)が入ります。 **有収率は11指標の1つではありません。**水道事業では逆に⑧が有収率で、こちらは指標です。 同じ名前でも置かれている場所が違うので、両方の事業を扱う団体は気をつけてください。

分子と分母も、全団体分が公表されている

総務省は、指標そのものだけでなく指標の分子・分母にあたる項目も公表しています。 令和6年度決算の経営比較分析表のページにある「令和6年度〜令和2年度」のExcelがそれです。

令和6年度分だけで6,991行あり、1行が1つの事業です。

シート令和6年度分
水道事業(法適用/法非適用)1,698件/26件
工業用水道事業(法適用)145件
下水道事業(法適用/法非適用)3,441件/89件
病院事業844件
駐車場整備事業(法適用/法非適用)16件/535件
観光施設事業(法適用/法非適用)14件/67件
電気事業(法適用/法非適用)32件/62件
交通事業(自動車運送・法適用)22件

列を見ると、水道事業(法適用)には給水収益・営業収益・流動資産・流動負債・企業債現在高といった会計の数字に加えて、 導水管延長・送水管延長・配水管延長、法定耐用年数を経過したそれぞれの延長、当年度に更新したそれぞれの延長が並んでいます。 下水道事業(法適用)なら、下水管布設延長・一定(法定耐用)年数を経過した管渠総延長・改善(更新・改良・修繕)管渠延長です。

ここが実務の要点です。 老朽化の3指標のうち、管渠老朽化率と管渠改善率(水道なら管路経年化率と 管路更新率)の材料は、財務会計システムの中にありません。管路台帳と当年度の工事の実績から拾う数字です。 残る有形固定資産減価償却率は、固定資産台帳から取れます。導入時の事務連絡にも 「平成22年度から平成26年度決算状況調査にないデータについて総務省に提出(別途照会)」とあり、 制度を始めるときに過去分をわざわざ集め直したことが記録されています。

本当に機械的か、全件突き合わせてみた

「算式が公開されている」ことと「実際にその算式どおりの数値が公表されている」ことは別です。確かめました。

計算のもとにしたのは、経営比較分析表「令和6年度〜令和2年度」のExcel(指標の分子・分母が入っている)です。 ここから算式どおりに計算した値を、公表されている経営比較分析表そのものの「データ」シートに 入っている値と、団体コード・業務コード・業種コード・事業コード・施設コードで突き合わせます。

対象は、総務省のサイトに載っている都道府県と政令市の下水道事業97本(令和6年度決算分)です。 市町村分は総務省のサイトには無いので、ここには入っていません。

指標照合できた件数一致不一致
経常収支比率(法非適用は収益的収支比率)97件97件0件
累積欠損金比率94件94件0件
流動比率94件94件0件
企業債残高対事業規模比率96件96件0件
経費回収率97件97件0件
汚水処理原価96件96件0件
施設利用率90件90件0件
水洗化率97件97件0件
有形固定資産減価償却率95件95件0件
管渠老朽化率90件90件0件
管渠改善率92件91件1件
合計1,038件1,037件1件

件数が97に満たない指標があるのは、その団体でその指標が空欄になっているからです (流域下水道で営業収益が生じない、法非適用で算出できない、など)。

1,038件のうち1,037件が、四則演算と四捨五入だけで小数2桁まで一致しました。

ただし、この1,038件のうち237件は、公表値そのものが0です(累積欠損金が無い、当年度に改善した管渠が無い、 流域下水道で使用料収入が無い、など)。分子が0であることを確かめただけの件が含まれているので、 0でない801件だけを取り出すと、800件が一致という数え方になります。どちらで数えても、 合わないのは後で述べる1件だけです。

札幌市の公共下水道であれば次のとおりです。

項目
汚水処理費20,522,127千円
年間有収水量203,971,811㎥
下水道使用料18,831,401千円
汚水処理原価(計算値)20,522,127千円 × 1,000 ÷ 203,971,811㎥ = 約100.61円
汚水処理原価(分析表の公表値)100.61円
経費回収率(計算値)18,831,401千円 ÷ 20,522,127千円 × 100 = 約91.76%
経費回収率(分析表の公表値)91.76%

実際にやってみて詰まったところ

単位が混ざっています。 金額の列は千円単位で、水量の列は㎥です。そのまま割ると汚水処理原価が 1,000分の1になります。列名に単位が書かれていないので、一度公表値と突き合わせて確かめない限り気づけません。

算式の用語と、列名が一致しないものがあります。 経常収支比率の算式は「経常収益/経常費用」ですが、 分子・分母のExcelにその2列はなく、総収益・特別利益・総費用・特別損失が入っています。 経常収益=総収益−特別利益、経常費用=総費用−特別損失として計算すると公表値と一致しました。 管渠老朽化率も、算式が「下水道布設延長」なのに列名は「下水管布設延長」です。

1件だけ一致しませんでした。 東京都の流域下水道の管渠改善率です。分子・分母のExcelでは 改善(更新・改良・修繕)管渠延長が1.13、下水管布設延長が232となっており、割ると0.49%ですが、 分析表の公表値は0.34%です。公表されている資料からは理由を特定できませんでした。

1,038件のうち1件です。しかし自動化するのであれば、合わないものを見つけて人に回す仕組みまで含めて作る必要がある、 ということでもあります。全件を計算して終わりにすると、合わない数件が黙って資料に載ります。

★同じ名前の指標でも、公表物が違えば値が違う

ここが実務でいちばん危ないところです。

下水道事業には、経営比較分析表とは別に下水道事業経営指標という公表物があり、 そこにも「汚水処理原価」「経費回収率」「水洗化率」「有収率」が載っています。 分子・分母から計算した値を、その個表(公共下水道・令和6年度決算・1,174件)とも突き合わせました。

指標一致相違
汚水処理原価1,171件3件
経費回収率1,171件3件
水洗化率1,174件0件
有収率1,173件(1件は分母が0で計算できず)0件

相違した3件は三浦市・浜松市・須崎市です。これは経営比較分析表が再現できないという意味ではありません。 浜松市は政令市なので経営比較分析表そのものが総務省のサイトにあり、そちらの公表値は **汚水処理原価148.26円・経費回収率110.21%**で、分子・分母から計算した値と一致します。 一方、下水道事業経営指標の個表では同じ団体が119.49円・108.7%です。

算式の書きぶりも、そろっていません。経営比較分析表は分母を「汚水処理費(公費負担分を除く)」と書きますが、 下水道事業経営指標の「2 経営指標一覧」は「汚水処理費」とだけ書き、注として 「汚水処理費=汚水に係る維持管理費+資本費」を置いています。 ただし1,174件のうち1,171件は一致しているので、この書きぶりの違いが3件の差をそのまま説明するわけではありません。

つまり、同じ「汚水処理原価」でも、2つの公表物で値が違う場合があるということです。 議会説明や経営戦略の資料で数字を引くときは、どちらの公表物から取ったのかを必ず控えてください。 別々の年に別々の資料から引くと、推移が動いていないのに動いたように見えます。

自動化できないもの — 分析欄

分析欄は、令和6年度決算分でも3つに分かれています。 「1. 経営の健全性・効率性について」「2. 老朽化の状況について」「全体総括」です。

ここに書くべきことは、指標の数値の中にありません。 総務省「経営指標の概要」自身が、そう書いています。 水道事業の流動比率についての記述です。

また、当該指標が100%未満であっても、流動負債には建設改良費等に充てられた企業債・他会計借入金等が含まれており、これらの財源により整備された施設について、将来、償還・返済の原資を給水収益等により得ることが予定されている場合には、一概に支払能力がないとはいえない点も踏まえた分析が必要であると考えられる。

流動比率が100%を下回っているという事実から言えることは、そこで止まります。 その先は、自分の団体で償還の原資がどうなっているかという、指標の外にある情報です。

実際に公表されている分析表を見ると、この構造がよく分かります。 北海道の流域下水道(法適用・令和6年度決算)の分析欄にはこう書かれています。

③流動比率  100%未満で推移しているが、市町村が使用料を徴収し、流動負債である企業債の償還は関連市町からの負担金や一般会計からの補助金により全て賄っていることから、支払能力に問題はない。

同じ分析欄には、累積欠損金比率・企業債残高対事業規模比率・経費回収率・汚水処理原価・施設利用率の5つについて 「本流域下水道は、流域関連市町が維持管理を行っており、道に営業収益が生じないため、算出から除いている。」 とも書かれています。 なぜその指標が空欄なのかは、指標を見ても分からず、事業の仕組みを知っている人にしか書けません。

老朽化の指標も同じです。「経営指標の概要」は、水道事業の管路更新率について 「数値が2.5%の場合、全ての管路を更新するには40 年かかるペースであることが把握できる」としたうえで、 「なお、供用開始から日が浅い、既に多くの管路の更新が終了しているなどの団体においては、分析の際に、 それらの効果についても留意が必要である。」と付け加えています。 下水道事業の管渠改善率も同じ構造で、こちらは 「数値が2%の場合、全ての管路を更新するのに50 年かかる更新ペースであることが把握できる」と書かれています。

低い数値が遅れを意味するのか、それとも当然なのかは、指標の外で決まります。

経営戦略策定・改定マニュアルは、この点をはっきり書いています。 経営戦略のひな形は、水道事業でも下水道事業でも、指標を自分で計算させるのではなく

※ 直近の経営比較分析表(「公営企業に係る「経営比較分析表」の策定及び公表について)(公営企業三課室長通知)」による経営比較分析表)を添付すること。

としたうえで、下水道事業のひな形にはこう書かれています。

現状の経営比較分析表を貼り付けただけのものは分析とは言えないので不可とする。

求められているのは計算ではなく、分析のほうです。

(上の引用の「(「…について)(公営企業三課室長通知)」は原文ママです。 括弧の対応が崩れており、正しくは「公営企業に係る「経営比較分析表」の策定及び公表について」(公営企業三課室長通知)です。)

自動化が効くのは、決算統計に入れる数値をつくるところ

団体の側に残る作業のうち、機械に渡せるのは決算統計(地方公営企業決算状況調査)の調査表に入れる数値を作るところです。

ここが毎年重いのは、作業が複雑だからではなく、数字の出どころがばらばらだからです。

調査表に入れる項目の例どこから来るか
営業収益、汚水処理費、流動資産・流動負債、企業債現在高財務会計システム
有形固定資産の減価償却累計額、償却対象資産の帳簿原価固定資産台帳
管路延長、法定耐用年数を経過した延長管路台帳
当年度に更新した延長、改善(更新・改良・修繕)管渠延長当年度の工事の実績
現在水洗便所設置済人口、現在処理区域内人口使用料の賦課データ、住民基本台帳
晴天時現在処理能力、汚水処理水量処理場の運転記録

財務会計の外にある項目ほど、毎年手で集め直されています。 そして毎年、同じ担当課に同じ照会をかけています。

自動化の対象はここです。指標を計算し直すことではなく、 台帳から調査表の項目へ写し替える経路を、毎年使い回せる形にしておくことです。 翌年に効くだけでなく、経営戦略の改定やストックマネジメント計画の見直しでも同じ数字を使います。

どこから手をつけるか

効き目の大きい順に並べると、次のようになります。

やることなぜこの順か
1調査表の項目ごとに出どころ(システム・台帳・担当課)を1枚に書き出すここが埋まらないうちは何も自動化できない。埋めるだけで、毎年の照会先が固定される
2財務会計システムから取れる項目を、決算後に一括で出力する形にする件数が多く、毎年同じ。最初に効く
3台帳から拾う項目について、台帳側に「その年度に更新した延長」を持たせる形に直す集計のたびに工事を1件ずつ数え直す作業が消える
4公表された経営比較分析表の「データ」シートから、自団体の資料に自動で流し込む議会説明や経営戦略の進捗管理で毎年同じ表を作っているなら、そのまま置き換わる
5前年比や全国平均との乖離で、外れ値を出す入力の誤りは比率が飛ぶ形で出る。人が見るべき場所を絞れる

5を4より後に置いているのは、外れ値の検出だけを先に作っても使われないからです。 毎年必ず通る経路の途中に置いて、初めてチェックが自動的に走ります。

つまずきやすいところ

類似団体の分類が2種類ある

同じ下水道事業でも、経営比較分析表と下水道事業経営指標とでは、比較相手のグループの作り方が違います。 下に並べるのは、いずれも公共下水道の場合の分け方です。流域下水道や農業集落排水施設などは、 経営比較分析表では供用開始後年数だけで分けられますし、下水道事業経営指標でも処理区域内人口による区分は 公共下水道と特定環境保全公共下水道にしか使われません。

分類の軸経営比較分析表の「類似団体区分」下水道事業経営指標の「類型区分」
規模政令市等/処理区域内人口10万以上・3万以上・3万未満の4段階政令市等/処理区域内人口10万人以上・5万人以上・1万人以上・5千人以上・5千人未満の6段階
密度処理区域内人口密度(人/ha)有収水量密度(千㎥/ha)
年数10万以上・3万以上は30年以上/30年未満の2段階。3万未満だけ30年以上/15年以上/15年未満の3段階。年数で分けない類型もある一律に25年以上/15年以上25年未満/5年以上15年未満/5年未満の4段階

やっかいなのは、記号の見た目が似ていることです。 たとえば三浦市の公共下水道は、 経営比較分析表では「Cb2」、下水道事業経営指標では「Cb1」です。 どちらも「Cb」で始まりますが、区分の中身も、末尾の数字の意味も別のものです。 片方の平均値をもう片方の分類で引いても、エラーにはならず、静かに違う相手と比べることになります。

密度の刻み方も、経営比較分析表の側では規模によって変わります。 10万以上・3万以上では100人/ha以上・75人/ha以上・50人/ha以上・50人/ha未満ですが、 3万未満では75人/ha以上・50人/ha以上・25人/ha以上・25人/ha未満です。 「Cb」と「Bb」の b は、同じ文字でも違う密度帯を指しています。

法適用と法非適用で算式も平均値も違う

経常収支比率は、法非適用企業では収益的収支比率になり、分母に地方債償還金が入ります。

さらに、令和6年度決算分の下水道事業の分析表には、次の注記が入っています。

「経常収支比率」、「累積欠損金比率」、「流動比率」、「有形固定資産減価償却率」及び「管渠老朽化率」については、法非適用企業では算出できないため、法適用企業のみの類似団体平均値及び全国平均を算出しています。

つまりこの5つは、類似団体平均値も全国平均も、法適用企業だけで計算された値です。 法適用と法非適用が混在する事業で比較するときは、その前提を踏まえてください。

並ぶのは5年分

経営比較分析表は5年分の推移で表示されます。それより長い期間を見たい場合は、 過去年度分のファイルを自分でつなぐことになります。載る項目は年度によって変わります。 分子・分母のExcelの「算出式(水道・下水道)」シートを開くと、自己資本構成比率・普及率・有収率の行に 「表頭記載部分 ※令和6年度決算分のみ掲載」と注記されています。対象事業も、平成27年の2事業から 令和6年度決算分の8事業に増えています。つなぐ前に、定義と区分が同じかどうかを確かめてください。

まとめ

  • 経営比較分析表の指標は総務省が算出します。団体が入力するのは分析欄の文章だけです
  • ただし、総務省のサイトに載っている分析表は都道府県と政令市の分だけです。市町村分は当該市町村と所在する都道府県が公表します
  • 算式は「経営指標の概要」に全部載っており、引き算と割り算だけです。令和6年度決算の下水道事業97本・11指標1,038件で突き合わせたところ、1,037件が小数2桁まで一致しました(うち237件は公表値が0の項目です)
  • 分子・分母も全事業分が公表されています。令和6年度分は6,991行です
  • 老朽化の指標のうち、管渠(管路)の2つの材料は、財務会計システムの中にありません。 管路台帳と当年度の工事の実績から拾います
  • 自動化が効くのは、決算統計の調査表に入れる数値を作るところと、公表された数値を自団体の資料に持ち込むところです
  • 分析欄は自動化できません。 総務省の資料自身が、指標の数値だけでは結論が出ないことを繰り返し書いています。マニュアルは「現状の経営比較分析表を貼り付けただけのものは分析とは言えないので不可とする。」としています
  • 突き合わせでは、理由の分からない不一致が1件出ました(東京都の流域下水道の管渠改善率)。全件を機械で計算するなら、合わない数件を人に回す仕組みまで含めて作ってください
  • **下水道事業には経営比較分析表と下水道事業経営指標の2つの公表物があり、同じ名前の指標でも値が違うことがあります。**どちらから引いた数字かを必ず控えてください

よくある質問

経営比較分析表は、自分の団体で計算して作るものではないのですか。

指標の計算は総務省が行います。導入時の事務連絡(平成27年7月30日付)の作業工程には「【総務省】決算状況調査等を基に経営指標を算出し、「経営比較分析表」(団体分析欄除)に落とし込んだものを公営企業に配布」「【各公営企業】「経営比較分析表」を確認のうえ、明らかになった経営状況や課題の分析(コメントの記載)を実施」とあります(いずれも【 】の直後にある予定時期の記載は省いて引用しています)。実際、令和6年度決算分の団体別ファイルを開くと、指標値も、類似団体平均値も、全国平均も計算済みで入っており、団体が入力したのは分析欄の文章だけです。したがって「指標の計算を自動化する」という発想は、そもそも空振りになります。なお、総務省のサイトに載っているのは都道府県と政令市の分析表だけで、市町村の分析表は「当該市町村及び当該市町村が所在する都道府県において公表しています」と案内されています。

では、決算統計まわりで自動化する価値があるのはどこですか。

2つあります。1つは決算統計(地方公営企業決算状況調査)の調査表に入れる数値を作るところ、もう1つは公表された数値を自分の団体の資料に持ち込むところです。前者には、財務会計システムに存在しない項目が混ざります。水道事業でいえば導水管・送水管・配水管の延長、法定耐用年数を経過した延長、当年度に更新した延長です。これらは管路台帳や当年度の工事の実績から拾う数字で、毎年同じ照会を同じ担当課にかけている団体が少なくありません。後者は、総務省が5年分の数値を機械可読なExcelで公表しているので、経営戦略の進捗管理や議会説明の資料づくりにそのまま流し込めます。

分析欄も、指標の数値から自動で書けるのではないですか。

書けません。総務省「経営指標の概要」は、指標ごとの【分析の考え方】で、数値だけでは結論が出ないことを繰り返し述べています。水道事業の流動比率については「また、当該指標が100%未満であっても、流動負債には建設改良費等に充てられた企業債・他会計借入金等が含まれており、これらの財源により整備された施設について、将来、償還・返済の原資を給水収益等により得ることが予定されている場合には、一概に支払能力がないとはいえない点も踏まえた分析が必要であると考えられる」としています。100%を下回っているという事実から言えることは、そこで止まります。分析欄に書くべきなのは自分の団体で償還の原資がどうなっているかであって、これは指標の外にある情報です。

経営戦略に経営比較分析表を貼れば、現状分析としては足りますか。

足りないとされています。総務省の経営戦略策定・改定マニュアルは、下水道事業の現状分析について「現状の経営比較分析表を貼り付けただけのものは分析とは言えないので不可とする。」と明記しています。同じ箇所で経費回収率について「使用料収入、繰入金などの収入面、汚水処理費などの支出面の両方の影響を受ける指標であることから、収入と支出の各団体における分析を行うこと」として、最低限の記載を求めています。分析表そのものは出発点であって、成果物ではありません。

類似団体との比較を自分でやりたいのですが、平均値はどこにありますか。

団体別ファイルにすでに入っています。令和6年度決算分の経営比較分析表には「データ」というシートがあり、指標それぞれについて当該団体値が5年分、類似団体平均値が5年分、そして全国平均が並んでいます(水道事業・下水道事業なら11指標)。総務省は全事業分をまとめた「令和6年度〜令和2年度」のExcelも公表しており、こちらには指標の分子・分母にあたる項目が事業ごとに入っています。ただし、下水道事業には別に「下水道事業経営指標」があり、そちらは経営比較分析表とは別の分類(類型区分)で平均値を出しています。記号の見た目が似ているうえ、同じ名前の指標でも値が違うことがあるので、取り違えないでください。

出典

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