学科を廃止した。キャンパスを統合した。積み立ててきた校舎の建設計画をやめた。
このとき基本金をどうするか、という相談をよく受けます。条文が「取り崩すことができる」と書いているので、「できる」なら取り崩さないという選択もあるはずだ、と読まれることが多いのですが、そうではありません。
令和7年度決算から新しい学校法人会計基準が使われ、基本金明細書の書き方も変わりました。取崩しの要件そのものは変わっていませんが、表の上での見え方が変わったので、この機会に整理します。
結論
- 基本金を取り崩せるのは、学校法人会計基準14条の4つの場合だけです
- 条文は「取り崩すことができる」ですが、要件に当たり、その資産等を継続的に保持しないのであれば、取崩しの対象にしなければなりません。任意ではありません
- 取崩しの対象になった額が、そのまま取崩額になるわけではありません。各号ごとに、その年度の組入対象額と差し引きします
- 1号の「廃止」は学部・学科の廃止に限りません。定員の減少等の学校規模の縮小や、奨学事業等の基金事業の縮小・廃止も含まれます
- 令和7年度から、基本金明細書に「当期組入対象額」「当期取崩対象額」の行が入りました。差引きの過程が表に出るようになっています
- **第4号基本金は、取崩しの対象額そのものが計算式で決まります。**計算額が前年度の80%を下回ったら、その差額が取崩しの対象です
- 基本金を取り崩しても、当年度収支差額は良くなりません
取り崩せるのは、この4つの場合だけです
学校法人会計基準14条が、取崩しの要件と限度額を定めています。
学校法人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該各号に定める額の範囲内で基本金を取り崩すことができる。
| 号 | 該当する場合 | 取り崩せる額 |
|---|---|---|
| 1号 | その諸活動の一部又は全部を廃止した場合 | その廃止した諸活動に係る基本金への組入額 |
| 2号 | その経営の合理化により前条第1項第1号の固定資産を有する必要がなくなつた場合 | その固定資産の価額 |
| 3号 | 前条第1項第2号の金銭その他の資産を将来取得する固定資産の取得に充てる必要がなくなつた場合 | その金銭その他の資産の額 |
| 4号 | その他やむを得ない事由がある場合 | その事由に係る基本金への組入額 |
「前条第1項第1号の固定資産」は第1号基本金の対象となった固定資産、「前条第1項第2号の金銭その他の資産」は第2号基本金の対象となった金銭等です(13条1項)。
読むときに落としやすいのは、右の列が「〜の範囲内で」という限度額だという点です。学科を廃止したからといって第1号基本金を好きなだけ減らせるのではなく、その学科に係る組入額までです。文部科学省も、平成17年の改正について「基本金の取崩し限度額を定めたものであること」と書いています。
今回の改正は、学校法人が、経営の合理化、将来計画の見直し等により資産を継続的に保持しないこととした場合には、当該基本金の取崩しができることとしたほか、基本金の取崩し限度額を定めたものであること。
(平成17年5月13日 17文科高第122号 第三1(4)。この通知は令和6年改正前の基準について出されたものです。以下、通知からの引用に出てくる「第31条」は、現在の14条にあたります)
1号の「廃止」は、学科の廃止だけではありません
1号は「その諸活動の一部又は全部を廃止した場合」です。この「廃止」の範囲を、同じ通知が示しています。
第31条第1号の「諸活動の一部又は全部の廃止」とは、その設置する学部、学科等の廃止、定員の減少等の学校規模の縮小や、奨学事業等の基金事業の縮小又は廃止が該当するものであること。
(17文科高第122号 第三1(5))
学科をなくさなくても、定員を減らして学校規模を縮小すれば1号に当たります。「廃止」という言葉から学科・学部の廃止だけを思い浮かべると、ここを落とします。奨学事業などの基金事業(第3号基本金の対象)の縮小・廃止も1号です。2号は第1号基本金の対象固定資産、3号は第2号基本金の対象資産についての規定なので、第3号基本金を取り崩す場面は、1号か4号のどちらかで拾うことになります。
「やむを得ない事由」は自己都合ではありません
4号の「やむを得ない事由」は幅の広い言葉に見えますが、文部科学省は範囲を示しています。
第31条第4号の「やむを得ない事由」とは、地方公共団体等による土地収用の場合など、学校法人の自己都合による資産の処分ではなく外的要因によるものが該当するものであること。
(17文科高第122号 第三1(6))
つまり、**自分の判断で資産を処分したケースは4号ではありません。**手元にある資産を処分したのなら、1号(諸活動の廃止)か2号(経営の合理化)のどちらに当たるかを考えることになります。処分ではなく、これから取得する予定をやめた(第2号基本金の組入計画を縮小・廃止した)のであれば3号です。
なお、この通知が出た平成17年の改正で、取崩しの要件は見直されています。改正前は、キャンパスを統合しても、備品を買うのをやめて借りることにしても、「諸活動の一部又は全部の廃止」を伴わないため取り崩せませんでした。経営の合理化や将来計画の見直しでも取り崩せるようになったのは、このときです。
「できる」は「取り崩さなくてよい」ではありません
ここが最も誤解されている点です。さきほど引いた第三1(4)には、続けて次のなお書きが置かれています。
なお、第31条各号に該当する場合は、資産を他に転用するなどして継続的に保持する場合のほかは基本金取崩しの対象としなければならないこと。
「該当する場合は……取崩しの対象としなければならない」と書かれています。条文の「できる」は、取り崩すかどうかを法人が自由に選べるという意味ではありません。各号に定める額が取り崩せる上限であることを示したものであって、実際に取り崩すかどうかは、その資産等を継続的に保持するかどうかで決まります。
では、取り崩さないでよいのはどういう場合か。通知が挙げているのが「資産を他に転用するなどして継続的に保持する場合」です。日本公認会計士協会の研究報告は、この点をこう言い換えています。
例えば学部又は学科を廃止した場合であっても、当該学部又は学科で使用していた資産を他の学部又は学科等の教育研究活動に転用するなど、今後も当該資産を継続的に保持する場合若しくは除却又は売却した資産と同一種類の資産を再取得する場合には、これに該当する基本金は取崩対象額とすることなくそのまま維持する。
判断はこうなります。
| 起きたこと | その資産を今後も持ち続けるか | 扱い |
|---|---|---|
| 学科を廃止し、校舎は別の学科で使う | 持ち続ける | 取崩対象にしない |
| 学科を廃止し、校舎も取り壊して建て直さない | 持たない | 取崩対象にする |
| 校舎を建て替え、新しい校舎の価額が前より低い | 同じ水準では持たない | 差額を取崩対象にする |
| 校舎を建て替え、いったん除却したが同種の資産を取得し直す | 持ち続ける | 取崩対象にしない(再取得まで繰り延べる) |
**「廃止したかどうか」ではなく「その資産を継続的に保持するかどうか」で決まります。**廃止しても持ち続けるなら維持し、廃止していなくても持たなくなるなら取崩対象になります。
もうひとつ、通知は取崩しにあたっての留意点を2つ置いています。
基本金を取り崩す場合には、教育の質的水準の低下を招かないよう十分に留意する必要があること。(第三1(3))
基本金は、学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持しなければならない金額であるので、学校法人の定める適正な手続きを踏まえ、その取崩しが安易に行われないようにする考え方については従来と変わるものではないこと。(第三1(2))
学校法人会計基準は取崩しの手続きを定めていません。**「学校法人の定める適正な手続き」**という書き方なので、寄附行為や内部規程で決めた手続きに従うことになります。第2号基本金・第3号基本金は組入計画に従って組み入れるものですから(13条2項)、計画の縮小・廃止の決定が取崩しの起点になります。
取崩額は、号ごとの差引きで決まります
取崩しの対象になった額が、そのまま計算書類に「基本金取崩額」として出るわけではありません。その年度の組入対象額と差し引きます。
基本金の組入額及び取崩額の計算は、第30条第1項各号の基本金毎に、組入れの対象となる金額が取崩しの対象となる金額を超える場合には、その超える金額を基本金の組入額として取り扱うものとし、また、取崩しの対象となる金額が組入れの対象となる金額を超える場合には、その超える金額を基本金の取崩額として取り扱うものとすること。ただし、固定資産を取得するために、第2号基本金を第1号基本金に振り替える場合には、この計算に含めないこと。
(平成17年5月13日 17高私参第1号 Ⅰ(1)。引用中の「第30条第1項各号」は現在の13条1項各号にあたります)
大事なのは次の3点です。
- 差引きは号ごとです。第1号基本金の取崩対象額を第2号基本金の組入対象額と相殺することはできません
- 差引きの結果、組入額か取崩額のどちらか一方になります。同じ号に組入額と取崩額の両方が立つことはありません
- 第2号基本金から第1号基本金への振替は、この計算に含めません
3つ目はよく混乱します。積み立ててきた第2号基本金で校舎が完成すると、第2号基本金が減って第1号基本金が増えます。**これは取崩しではありません。**同じ資産に対する基本金が、計画段階の号から取得後の号へ移っただけです。
令和7年度から、基本金明細書の書き方が変わりました
計算のしかたは変わっていませんが、表の形が変わりました。旧基準の「基本金明細表」は、新基準では計算書類の附属明細書のひとつ「基本金明細書」になっています(41条1項3号、42条3号)。様式は第7号様式です。
文部科学省は変更点をこう説明しています。
基本金の組入れ及び取崩しの計算過程を明示するため、各号基本金に「当期組入対象額」及び「当期取崩対象額」の行を追加し、当期組入対象額から当期取崩対象額を差し引きして「当期組入額(又は当期取崩額)」を記載すること。
第1号基本金の当期組入対象額及び当期取崩対象額は、「土地」「建物」「構築物」など、貸借対照表(第1号様式)の小科目単位で記載すること。
(令和7年3月27日 6高私参第27号 第五3(1)(2))
旧様式では、その年の組入れと取崩しの内訳が1つのブロックに並び、そのブロックを「当期組入高」と呼ぶか「当期取崩高」と呼ぶかは、号ごとの差引きの結果で決まっていました。実際、平成17年の記載例では、第1号基本金の「□□学科廃止に伴う取崩し △250,000,000」が「当期組入高」の内訳に入り、逆に第2号基本金の組入れ(○○講堂改築資金 120,000,000、○○学部校舎改築資金 80,000,000)が「当期取崩高」の内訳に入っています。新様式では取崩対象額が独立したブロックになり、差引きの過程がそのまま表に出ます。「うちは今年いくら取り崩したのか」が、表を見れば分かるようになったということです。
様式の注記も押さえておいてください。
当期組入対象額及び当期取崩対象額については、組入れ及び取崩しの原因となる事実ごとに記載する。ただし、第1号基本金については、資産の種類により一括して記載する。
第2号基本金・第3号基本金は原因ごと(計画ごと、基金ごと)に書きますが、第1号基本金は資産の種類ごとにまとめます。第1号基本金で「○○学科廃止に伴う取崩し」と原因を書き並べるのではなく、「建物」「教育研究用機器備品」という科目で1行にする、ということです。
なお、第2号基本金・第3号基本金の「組入れに係る計画表」は、明細書としては作成しなくてよくなりました。代わりに、計画の名称(第3号基本金は基金の名称)と当期末残高を並べた「基本金の組入れに係る計画集計表」を明細書の付表として付けます。第3号基本金の集計表には、第3号基本金引当特定資産の運用収入の欄もあります。文部科学省は、計画表がそのまま開示されると法人運営上不利益が生じるおそれがある一方、組入対象資産・取崩対象資産の科目の開示は必要だ、という整理を示しています(「学校法人会計基準の改正等について」令和7年6月 p.10)。
記載例で追ってみます
文部科学省が令和7年3月27日の通知の別添3で示している記載例から、第1号基本金を抜き出します(単位:円)。
| 事項 | 要組入高 | 組入高 | 未組入高 |
|---|---|---|---|
| 前期繰越高 | 14,000,000,000 | 11,500,000,000 | 2,500,000,000 |
| 第2号基本金から振替 | 800,000,000 | 800,000,000 | — |
| 当期組入対象額 | |||
| 土地 | 600,000,000 | 350,000,000 | 250,000,000 |
| 建物 | 400,000,000 | 250,000,000 | 150,000,000 |
| 過年度未組入れに係る当期組入れ | — | 30,000,000 | △30,000,000 |
| 教育研究用機器備品 | 20,000,000 | 20,000,000 | — |
| 計 | 1,020,000,000 | 650,000,000 | 370,000,000 |
| 当期取崩対象額 | |||
| 建物 | △250,000,000 | △250,000,000 | — |
| 教育研究用機器備品 | △10,000,000 | △10,000,000 | — |
| 計 | △260,000,000 | △260,000,000 | 0 |
| 当期組入額 | 760,000,000 | 390,000,000 | 370,000,000 |
| 当期末残高 | 15,560,000,000 | 12,690,000,000 | 2,870,000,000 |
読み方の順序はこうです。
- 当期取崩対象額が260,000,000円ある(建物250,000,000円、機器備品10,000,000円)
- しかし当期組入対象額が1,020,000,000円あるので、差し引くと760,000,000円の組入れになる
- **第1号基本金は取崩しにならない。**取崩対象額はあったが、表に「当期取崩額」は出ない
同じ記載例の第2号基本金は逆になります。組入対象額200,000,000円(○○講堂改築資金120,000,000円、○○学部校舎改築資金80,000,000円)に対し、△△整備計画の廃止による取崩対象額が300,000,000円。差引き100,000,000円が当期取崩額です。第3号基本金は、新しい奨学基金10,000,000円と廃止した奨学基金5,000,000円の差引きで、5,000,000円の組入れになります。
そして合計欄では、組入れになった号と取崩しになった号がそれぞれ集計されます。
| 合計 | 組入高 |
|---|---|
| 前期繰越高 | 13,100,000,000 |
| 当期組入額 | 404,000,000 |
| 当期取崩額 | △100,000,000 |
| 当期末残高 | 13,404,000,000 |
当期組入額404,000,000円は、第1号基本金390,000,000円・第3号基本金5,000,000円・第4号基本金9,000,000円の合計です。当期取崩額100,000,000円は第2号基本金だけです。組入れと取崩しが相殺されずに両方並ぶのは、号ごとに差し引いた後だからです。
この記載例は、平成17年の通知の別添1で旧様式の記載例として示されていたものと同じ金額です。旧様式の第1号基本金「当期組入高 計」は要組入高1,560,000,000円・組入高1,190,000,000円・未組入高370,000,000円で、新様式の当期組入額760,000,000円に振替800,000,000円を足した額と一致します。金額は同じで、表の切り方だけが変わったということです。
取り崩しても、当年度収支差額は良くなりません
「収支が苦しいので基本金を取り崩したい」という相談がありますが、取り崩しても当年度収支差額は動きません。
学校法人会計基準29条は、翌年度繰越収支差額をこう定めています。
当該会計年度において次に掲げる額がある場合には、当該額を加算した額を、翌年度繰越収支差額として、翌会計年度に繰り越すものとする。 一 当年度収支差額 二 前年度繰越収支差額(当該会計年度の前会計年度の翌年度繰越収支差額をいう。) 三 第十四条の規定により当該会計年度において取り崩した基本金の額
事業活動収支計算書の並びは次のとおりです。
| 事業活動収支計算書の行 | 基本金取崩額は、この行までに入っているか |
|---|---|
| 基本金組入前当年度収支差額 | 入っていない |
| 基本金組入額合計 | 入っていない(組入額だけの行) |
| 当年度収支差額 | 入っていない(組入額だけが反映されている) |
| 前年度繰越収支差額 | 入っていない |
| 基本金取崩額 | この行が取崩額そのもの |
| 翌年度繰越収支差額 | 入っている |
つまり、取崩しが効くのは翌年度繰越収支差額だけです。基本金組入前当年度収支差額にも当年度収支差額にも影響しません。経常的な収支の状況を示す指標は動かない、ということです。
第4号基本金は、取崩しの対象額が計算式で決まります
ここまでは、14条の各号に当たるか、そしてその資産等を継続的に保持するか、という判断の話でした。第4号基本金は少し違います。取崩しの対象額そのものが、計算式で決まります。
第4号基本金は「恒常的に保持すべき資金として別に文部科学大臣の定める額」です(13条1項4号)。その額を定めているのが昭和62年8月31日の文部大臣裁定で、令和7年2月12日に最終改正されました。改正の内容は、条番号を30条1項4号から13条1項4号に直したことと、平成25年改正時に置かれた経過措置(既に対象期間が終了)を削除したことの2つで、算式と特例そのものは変わっていません。
裁定は、保持すべき資金の額をこう定めています。
学校法人が学校法人会計基準第13条第1項第4号の規定に基づき、恒常的に保持すべき資金の額は、前年度の事業活動収支計算書における教育活動収支の人件費(退職給与引当金繰入額及び退職金を除く。)、教育研究経費(減価償却額を除く。)、管理経費(減価償却額を除く。)及び教育活動外収支の借入金等利息の決算額の合計を12で除した額(100万円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てることができる。)とする。 なお、本項により計算した額(以下「計算額」という。)が前年度の保持すべき資金の額を下回るときは、その差額を取崩しの対象としなければならない。
**「取崩しの対象としなければならない」**と書かれています。ただし、続く特例が効きます。
ア.計算額が、前年度の保持すべき資金の額の100分の80以上100分の100未満の場合は、前項の規定にかかわらず、前年度の保持すべき資金の額をもって、当年度の保持すべき資金の額とする。
イ.計算額が、前年度の保持すべき資金の額の100分の100を超えて100分の120以内の場合は、前項の規定にかかわらず、前年度の保持すべき資金の額をもって、当年度の保持すべき資金の額とすることができる。
整理するとこうなります。前年度の額に対する当年度の計算額の割合で分かれます。
| 計算額の水準 | 当年度の保持すべき資金の額 | 動き |
|---|---|---|
| 80%未満 | 計算額 | 差額を取り崩す(義務) |
| 80%以上100%未満 | 前年度と同じ額 | 動かさない |
| 100%超120%以内 | 前年度と同じ額とすることができる | 据え置くか、増やして組み入れるか |
| 120%超 | 計算額 | 差額を組み入れる |
アは「する」、イは「することができる」です。減った側は特例が強制で(80%以上なら据え置き)、増えた側は選択という非対称になっています。読み飛ばすと逆になるので注意してください。
数値例
架空の数値で計算します。計算に使うのは、当年度ではなく前年度の事業活動収支計算書の決算額です。前年度の保持すべき資金の額が300,000,000円だった法人で、前年度の決算額が次のとおりだったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 人件費(退職給与引当金繰入額・退職金を除く) | 1,900,000,000 |
| 教育研究経費(減価償却額を除く) | 450,000,000 |
| 管理経費(減価償却額を除く) | 150,000,000 |
| 借入金等利息 | 20,000,000 |
| 合計 | 2,520,000,000 |
計算額は2,520,000,000円 ÷ 12 = 210,000,000円です。前年度の300,000,000円に対して70%なので、80%未満。特例アは使えません。
したがって当年度の保持すべき資金の額は210,000,000円となり、差額90,000,000円が取崩しの対象になります。
同じ法人で計算額が250,000,000円だった場合は、前年度に対して約83%です。80%以上100%未満なので特例アが働き、当年度の保持すべき資金の額は前年度と同じ300,000,000円のまま。取崩しは生じません。
日本公認会計士協会の研究報告は、この強制の取崩しについて「当年度の計算額が20%を超えて減少した場合には、学校法人会計基準第31条第1項第1号に該当し、前年度の恒常的資金の額と当年度の計算額との差額を取崩しの対象としなければならない」と説明しています(「第31条第1項第1号」は原文ママ。第31条に項の区分はなく、第31条第1号を指すものと読まれます。新基準では14条1号にあたります)。第4号基本金の取崩しも14条の外にあるわけではなく、1号に当たるものとして処理するという整理です。計算式が決めているのは、取崩しの対象額のほうです。
第4号基本金に相当する資金がないときは、注記が要ります
第4号基本金を組み入れていても、それに見合う資金を実際に持っているとは限りません。基準は、持っていない場合の注記を求めています。
当該会計年度の末日において第十三条第一項第四号に掲げる金額に相当する資金を有していない場合には、その旨及び当該資金を確保するための対策(40条7号)
「その旨」だけでなく対策まで書かせる注記です。期末の資金の状況は、決算作業の早い段階で確認しておいてください。
なお、都道府県知事を所轄庁とし会計監査人を置いていない学校法人(高等学校を設置するものを除く)は、第4号基本金の全部又は一部を組み入れないことができます(49条、48条の括弧書き)。組み入れていない部分については、取崩しの問題も生じません。
明細書を作らない法人でも、計算は要ります
都道府県知事を所轄庁とし会計監査人を置いていない学校法人は、活動区分資金収支計算書または基本金明細書を作らないことができます(50条)。
ただし括弧書きに注意してください。
会計監査人非設置知事所轄学校法人は、第十六条及び第四十一条第一項の規定にかかわらず、活動区分資金収支計算書又は基本金明細書(高等学校を設置するものにあつては、活動区分資金収支計算書に限る。)を作成しないことができる。
**高等学校を設置している場合、省略できるのは活動区分資金収支計算書だけです。**基本金明細書は作ります。48条・49条の特例が高等学校設置法人を最初から除いているのに対し、50条は括弧書きで別扱いにしている、という構造の違いがあります。
そして、明細書を作らない場合でも**基本金の組入れと取崩しの計算そのものが不要になるわけではありません。**貸借対照表には基本金が載り、事業活動収支計算書には基本金組入額と基本金取崩額が載ります。明細書は、その計算過程を示す書類です。
まとめ
- 取り崩せるのは14条の4つの場合だけで、それぞれに限度額があります
- 条文は「できる」ですが、要件に当たり、その資産等を継続的に保持しないなら取崩しの対象にしなければなりません
- 判断の分かれ目は「廃止したか」ではなく「その資産を今後も持ち続けるか」です。転用する、同種の資産を取得し直す、という場合は取崩対象にしません
- 1号の「廃止」には、定員の減少等の学校規模の縮小や、奨学事業等の基金事業の縮小・廃止も入ります。学科をなくしていなくても該当します
- 取崩対象額は、号ごとにその年度の組入対象額と差し引きます。上回った分だけが取崩額です
- 第2号基本金から第1号基本金への振替は差引計算に含めません
- 令和7年度から、基本金明細書に「当期組入対象額」「当期取崩対象額」の行が入り、差引きの過程が表に出ます。第1号基本金は資産の種類ごと、第2号・第3号は原因ごとに書きます
- 取り崩しても、良くなるのは翌年度繰越収支差額だけです
- **第4号基本金は、取崩しの対象額が計算式で決まります。**計算額が前年度の80%を下回ったら、その差額を取崩しの対象にしなければなりません
学科の再編、キャンパスの統合、施設整備計画の見直し。いずれも決めてから決算までの間に、基本金をどう扱うかの判断が挟まります。**判断の材料は決算作業の時点ではなく、意思決定の時点にあります。**理事会の議事録や計画の変更決議に、「この資産を今後どうするのか」が書かれているかどうかで、取崩しの当否が決まるためです。
決算期に入ってから遡って整理するのは大変です。再編や計画変更を検討している段階でご相談いただければ、会計上の扱いを織り込んだ形で進められます。