新しい学校法人会計基準で初めて作った計算書類には、注記としてセグメント情報が入りました。その多くは、資金収支内訳表の按分をそのまま組み替えたものだったはずです。
それでよいことになっています。ただし選べるのは、いま進行している令和8年度までです。
令和9年度の計算書類からは、配分基準が一本化されます。ここで扱うのは、その移行までに何を決めておく必要があるか、という話です。
結論
- セグメント情報の注記は、すべての学校法人が対象です。 会計監査人非設置知事所轄学校法人の特例でも外れません
- ただし、設定すべきセグメントが「その他」以外に一つしかない法人は、その旨を注記したうえで表示を省略できます
- 令和7年度と令和8年度は、昭和55年通知の方法(内訳表の配分)を使えます。 そのかわりどちらの基準を使ったかを注記します
- 令和9年度の計算書類からは配分基準を適用します。 ただし「内訳表と同じ配分では計上できなくなる」という意味ではありません
- 実務上いちばん影響が出るのは、複数のセグメントを兼務する教職員の人件費です
- いま準備するのは配分の計算そのものではなく、各セグメントの業務の範囲の定義と、勤務実態を示すデータです
セグメント情報は、どの法人が作るのか
根拠は学校法人会計基準40条です。
計算書類には、次に掲げる事項を注記しなければならない。 (中略) 八 セグメント(学校法人を構成する一定の単位をいう。)情報
「セグメント」の定義は、この括弧書きの中にあります。 会計基準はこれ以上細かく定めておらず、具体的な区分は令和7年3月27日付の通知(6高私参第27号)が示しています。
そして、この40条はすべての学校法人に適用されます。会計基準1条2項が、学校法人(私立学校法152条5項の専修学校又は各種学校の設置のみを目的とする法人を含む)は同省令の定めるところにより計算書類を作成しなければならないとしているためです。専修学校・各種学校だけを設置している法人も外れません。
会計監査人非設置知事所轄学校法人の特例でも、注記は外れません。 特例は会計基準の第五章(48条から50条)に置かれていますが、その内容は次の3つだけです。
| 条 | 特例の内容 | 高等学校を設置している法人 |
|---|---|---|
| 48条 | 徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れないことができる | 使えない |
| 49条 | 第4号基本金に相当する金額の全部又は一部を基本金に組み入れないことができる | 使えない |
| 50条 | 活動区分資金収支計算書又は基本金明細書を作成しないことができる | 活動区分資金収支計算書に限って使える |
48条と49条が高等学校を設置している法人で使えないのは、48条の括弧書きによります。 落としやすいので原文を引きます。
都道府県知事を所轄庁とする学校法人(会計監査人を置くものを除く。以下「会計監査人非設置知事所轄学校法人」という。)(高等学校を設置するものを除く。次条において同じ。)は、第十条の規定にかかわらず、(以下略)
「次条において同じ」が付いています。 49条は「会計監査人非設置知事所轄学校法人は」とだけ書いていますが、この語には48条の括弧書きが引き継がれるので、高等学校を設置している知事所轄の法人は、49条の特例も使えません。 50条だけはこの引継ぎの外にあり、条文の中で高等学校を別に扱っています(「高等学校を設置するものにあつては、活動区分資金収支計算書に限る」)。
そして注記15項目は、48条から50条のいずれの対象にもなっていません。 幼稚園だけを設置している小規模な法人でも、セグメント情報は注記事項です。
ただし「表示の省略」があります
通知は次のように定めています。
設定すべきセグメントが、セグメント「その他」以外に一のみの学校法人については、その旨を注記した上で、セグメント情報の表示を省略できること
幼稚園1園と学校法人部門だけ、という法人はこれに当たります。ただし「何も書かなくてよい」ではありません。 表を省略するかわりに、省略する旨を注記します。通知の記載例(別添2の<例2>)は、注記事項の「8.セグメント情報」の欄をこう書いています。
設定すべきセグメントが、セグメント「その他」以外に一のみであるため、省略している。
なお、「内数」のセグメントを設けている場合は、この省略に該当しません。 文部科学省は、大学の内数として「うち、医学部等及び附属病院」を設けている場合について、内数としてのセグメントも1つとしてカウントされるため注記省略に該当しないと考えられる、としています。
作ったものは公表されます
セグメント情報は計算書類の注記なので、計算書類等の一部として公表の対象になります。
- 大臣所轄学校法人等は、計算書類等を作成した場合、遅滞なく、インターネットの利用により公表しなければなりません(私立学校法151条、私立学校法施行規則55条・49条)
- それ以外の学校法人は、インターネットの利用その他の方法により公表するよう努めなければなりません(同法137条)
義務か努力義務かは所轄庁で分かれますが、外部の目に触れる前提で作る書類であることは同じです。
なぜ内訳表と別に作るのか
「同じような表を2つ作らされている」と感じている方が多いところです。目的が違います。
| 資金収支内訳表 | セグメント情報 | |
|---|---|---|
| 作成の根拠法 | 私立学校振興助成法 | 私立学校法 |
| 主な目的 | 所轄庁による補助金の適正配分 | ステークホルダーへの情報開示 |
| 教育研究の実態との整合 | 補助金の配分に即した部門ごとの実態を表す | 経済の実態をより適切に表すことが求められる |
学校法人会計基準の在り方に関する検討会は、内訳表について次のように述べています。
資金収支内訳表の部門別の計上方法については、文部科学省通知で定められているが、詳細なルールは定められておらず、人件費については、経常費補助金算定上の必要から、按分等は行わず、発令の内容や主たる勤務部門により計上することを求めている。事業活動収支内訳表及び人件費支出内訳表も資金収支内訳表の処理に準じて行うこととされることから、いずれの書類も必ずしも部門別の教育研究コストの実態を表すものとはなっていないと考えられる
内訳表が「間違っている」わけではありません。 補助金を配分するための書類として正しく、そのために発令で切っている、というだけです。開示のための書類には別の切り方が要る、というのが今回の整理です。
したがって、数値を一致させる必要はありません。 文部科学省も、昭和55年通知の配分基準とセグメント情報における配分基準は異なる基準であり、内訳表とセグメントの数値は必ずしも一致するものではない、としています。
セグメントの立て方
通知は、すべての学校法人に共通して設定するセグメントを6つ挙げています。
| # | セグメント | 複数ある場合 |
|---|---|---|
| ① | 大学 | 学校ごとに設定する |
| ② | 短期大学 | 学校ごとに設定する |
| ③ | 高等専門学校 | 学校ごとに設定する |
| ④ | ①から③以外の学校、専修学校及び各種学校 | 一つのセグメントとすることができる |
| ⑤ | 病院 | 一つのセグメントとすることができる |
| ⑥ | その他 | — |
読み方の注意を3つ挙げます。
⑤の「病院」には診療所を含みます。 ただし括弧書きで除外があります。
(1)の⑤は、診療所(主に学生の健康管理や教職員の福利厚生等のために設置しているものを除く。)を含むこと
保健室の延長として置いている診療所は「病院」に入れません。括弧の中が適用範囲を画しています。
⑥の「その他」は残りものの箱ではありません。 通知は「学校法人部門」、病院以外の附属施設、保育所など①から⑤のいずれにも該当しない部門の収入額及び支出額を計上する、としています。そして**「その他」が「学校法人部門」のみの場合は、セグメントの名称を「その他」に代えて「学校法人部門」とすることができます。**
各セグメントに含まれる部門の名称は注記します。 区分の名前だけでは、外部からは中身が分かりません。
追加のセグメントは「望まれて」います
通知は、共通に設定する6つに加えて各学校法人が適切と考えるセグメントを設定し、セグメント情報を積極的に表示することが望まれる、としています。
④は複数あっても一つにまとめられますが、まとめなければならないわけではありません。 文部科学省は「従前の内訳表を踏まえ、各学校種ごとに表示することは問題ありません」と回答しています。内訳表で学校種ごとに作っているなら、その粒度をそのままセグメントに持ってくるほうが、説明も作成もむしろ楽になります。
附属病院は「大学」の内数になります
医学部・歯学部を持つ法人では扱いが変わります。
医学部・歯学部の教職員が、教育研究活動と一体的に診療業務を行う附属病院の業務を兼務する場合は、医学部・歯学部と当該附属病院を一括したセグメント「うち、医学部等及び附属病院」を設け、セグメント「大学」の内数として表示すること
看護学部・薬学部のように、その附属病院と一体的に活動している学部があれば、それも「うち、医学部等及び附属病院」に含めます。含まれる学部と附属病院の名称は注記します。
附属病院以外の病院は、これとは切り分けて「病院」のセグメントを別に設けます。
医学部・歯学部を設置していない大学・短期大学が、学部・学科の教育研究活動と一体的に診療活動を行う病院を持っている場合は、これに準じて「うち、(何)学部等及び病院」を「大学」又は「短期大学」の内数として表示します。
この整理の背景には、日本私立医科大学協会からの意見書があります。教育研究活動と診療活動が一体的に行われている以上、どのような方法によっても区分は無理やりなものにならざるを得ず、医学部と附属病院の関係や配分基準の内容をよく知らないステークホルダーが一方の数値だけを見て予期せぬ誤解をするおそれがある、という趣旨です。「分けられないものを分けない」という判断が、制度側でされています。
令和7年度・令和8年度に認められている簡便な扱い
ここが期限のある話です。通知の「第二 5.その他」の(3)と(4)に置かれています。
(3)配分基準は令和9年度の計算書類の作成から適用すること。 (4)令和7年度及び令和8年度の計算書類の作成においては、配分基準又は昭和55年通知に記載の方法を適用し、いずれを適用したかを注記することとし、また、セグメントの設定については、(1)の①から③及び⑤を集約して一つのセグメントとすることができること。
読み落としやすい点を分けます。
| 令和7年度・令和8年度 | 令和9年度以降 | |
|---|---|---|
| 配分の方法 | 配分基準又は昭和55年通知の方法 | 配分基準 |
| どちらを使ったかの注記 | 必要 | — |
| セグメントの集約 | ①から③及び⑤を集約して一つにできる | この集約はできない(①②③は学校ごと) |
集約を使う場合の様式は、通知の記載例では「大学・短期大学・高等専門学校」「幼稚園・小学校・中学校・高等学校・専修学校等」「その他」の3セグメントに「合計」を加えた形になっています。集約できるのは①から③と⑤で、④と⑥は集約の対象ではありません。
なお、令和9年度以降にできなくなるのはこの集約であって、④(①から③以外の学校、専修学校及び各種学校)と⑤(病院)を複数設置していても一つのセグメントにできる、という扱いはそのまま残ります。
そして注記の書き方まで示されています。令和7年度・令和8年度に昭和55年通知の方法を使う場合の記載例は次のとおりです。
(注3)収入額及び支出額の各セグメントへの配分方法は、昭和55年11月4日付け文管企第250号文部省管理局長通知「資金収支内訳表等の部門別計上及び配分について(通知)」に記載の方法を適用している。
令和8年度の決算は、この注記を書ける最後の年になります。
表示する科目は9つです
セグメントごとに表示する事業活動収支計算書の科目は決まっています。
| # | 科目 |
|---|---|
| 1 | 教育活動収入計 |
| 2 | 教育活動支出計 |
| 3 | 教育活動収支差額 |
| 4 | 教育活動外収支差額 |
| 5 | 経常収支差額 |
| 6 | 特別収支差額 |
| 7 | 基本金組入前当年度収支差額 |
| 8 | 基本金組入額合計 |
| 9 | 当年度収支差額 |
収入計と支出計を表示するのは教育活動収支だけです。 教育活動外収支と特別収支は差額のみで、収入計・支出計は表示しません。
そして表の右端には合計欄を設けます。 ワーキンググループは、セグメント情報はあくまでも事業活動収支計算書の補足的情報としての位置付けであるため、合計欄を設けて事業活動収支計算書との関連を明確にする、としています。合計欄は事業活動収支計算書と突き合わせるために置かれているので、そこが合わない表は、作った側で先に気づけるはずのものです。
ただし「うち、医学部等及び附属病院」は内数です。 通知の記載例でも「大学」の中の欄として置かれています。合計を出すときにこれを他のセグメントと並べて足すと、医学部と附属病院の分を二重に数えることになります。
表の下に付す(注1)の文言も示されています。
セグメント情報は拠点区分別(設置学校・附属施設別)の収支情報の内訳を示すものであり、必ずしも理事会が経営資源の配分の決定及び業績を評価すること等を目的とした財務情報にはなっていない
配分基準 — 何がどう変わるのか
ここが本題です。順に3つに分かれます。
1. 直接計上が原則です
特定のセグメント(学校法人を構成する一定の単位をいう。以下同じ。)のものとして把握できる収入額及び支出額については、当該セグメントへ直接計上すること
按分の話に入る前に、直接ひもづくものは直接入れます。按分の対象を減らすことが、そのまま作業量を減らします。
2. 共通する収入・支出は「経済の実態を適切に表す配分基準」で配分します
複数のセグメントに共通する収入額及び支出額については、経済の実態を適切に表す配分基準(以下「配分基準」という。)により配分することとし、具体的には、以下の①から④の方法によること。
その①から④が次のとおりです。
- 配分基準の選択に当たっては、いたずらに計算が複雑とならないよう留意すること
- 在籍者数、職員数、使用時間、面積等を用いて配分基準を合理的に設定し、配分すること
- 兼務する教職員の人件費の発令基準に基づく計上は、当該計上が経済の実態を表していると合理的に説明できる場合に限られること
- 勤務実態を反映した配分基準の設定に当たっては、過去の一定期間の実績値など合理的なデータを用いて案分比を設定すること
通知の別添1には「共通収支の配分基準の例」が付いています。主なものを挙げます。
| 科目 | 配分基準の例 |
|---|---|
| 寄付金(教育費充当と指定) | 在籍者数/部門数 |
| 寄付金(研究費充当と指定) | 大学等の教員数/高等教育機関部門数 |
| 経常費等補助金(共通利用施設補助) | 収容定員数 |
| 付随事業収入(バス、食堂、購買部等) | 利用者数/在籍者数/部門数 |
| 教育研究経費 光熱水費 | 面積/収容定員数/在籍者数/計量基準 |
| 教育研究経費 減価償却額 | 面積/使用時間/収容定員数 |
| 管理経費 消耗品費 | 職員数 |
| 管理経費 監査報酬 | 事業収入(予算)/事業支出(予算) |
| 管理経費 募集費 | 募集人数 |
| 借入金等利息(施設設備関係) | 面積/対象資産借入実績 |
配分計算の単位も、各法人が選びます。 ワーキンググループは、配分計算の単位は画一的に定められるものではなく、合理的な範囲で各学校法人が選択するものとすることが適当であるとし、共通経費は施設別・費目別・グルーピング等、人件費は個人別・グルーピング(部署別、役職別等)等を例に挙げています。
3. 変わるのは、実質的には人件費だけです
昭和55年通知の人件費の扱いは次のとおりでした。
教(職)員人件費支出については、各部門、学部・学科等のいずれの教(職)員として発令されているかにより計上する。 発令の内容によりいずれの部門、学部・学科等の教(職)員であるか明らかでない場合は、主たる勤務がいずれであるかにより計上する。
これが「発令基準」です。新しい通知は、この基準そのものを禁じてはいません。
③ 複数のセグメントの業務を兼務する教職員の人件費の発令基準(中略)に基づく計上は、当該計上が経済の実態を表していると合理的に説明できる場合に限られること。合理的に説明できない場合は、業務に従事する時間や兼務割合等、勤務実態を反映した配分基準に基づき各セグメントに配分すること。
「限られる」という語が入っています。 発令どおりでよいかどうかを、法人の側が判断して説明する立場に変わりました。
例外も明示されています。ただし、それが付いているのはこの③ではなく、次の④です。 どちらに付いているかで意味が変わるので、④を丸ごと引きます。
④ 勤務実態を反映した配分基準の設定に当たっては、各学校法人において、過去の一定期間の実績値など合理的なデータを用いて案分比を設定すること。ただし、発令の内容により人件費が明確に区分されている場合は、その限りではないこと。
つまり免除されるのは、③の「合理的に説明する」ことではなく、④の「案分比を設定する」作業のほうです。文部科学省の説明会資料も、この点を**「発令の内容により人件費が明確に区分されている場合は、勤務実態の把握は不要」**と言い換えています。
例は通知が④の下に2つ挙げています。「大学」の教職員として発令されている者が「学校法人部門」の役員としても発令され、それぞれの人件費が発令の内容により区分されている場合は、その区分どおりに各セグメントへ計上します。大学と短期大学の兼務も同じです。発令が2本あって金額が分かれているなら、勤務実態の把握までは要りません。
ワーキンググループは、勤務実態の把握について次のようにも述べています。
新配分基準は、ステークホルダーへの情報開示という目的や学校法人の事務負担、多種多様な学校法人の状況等に鑑み、過度に精緻な方法を追求するのではなく、一定の勤務実態を反映するとともに客観性や検証可能性等の会計情報としての合理性を備えているものであれば適切であると考える。
タイムカードを1分単位で集計する話ではありません。 求められているのは、外から見て説明のつく比率です。
「内訳表と同じ配分は使えなくなる」ではありません
ここは誤解が多いところなので、正確に書きます。
令和9年度から適用されるのは「経済の実態を適切に表す配分基準」であって、これまでと同じ配分結果になること自体は否定されていません。 文部科学省は次のように回答しています。
これまでの資金収支内訳表による按分が、引き続き経済の実態を適切に表していると合理的に説明できる場合は、令和9年度以降も資金収支内訳表と同じ配分で計上することができます。 合理的に説明できない場合は、在籍者数、職員数、使用時間、面積等を用いて配分基準を合理的に設定してください。
つまり令和9年度に消えるのは、「昭和55年通知の方法をそのまま適用する」という選択肢です。同じ数字を使うことは、説明できるかぎり妨げられていません。
変わるのは配分の数字ではなく、配分に説明責任が生じることです。 ワーキンググループの結びも、そう読めます。
各学校法人においては、単に現行の会計処理を継続するのではなく、現行の配分基準が適切であるかどうかを改めて確認の上、セグメント情報を作成いただきたい。
そして、確認の結果いちばん引っかかるのが人件費です。文部科学省も、按分時に留意が必要なのは複数のセグメントの業務を兼務する教職員の人件費である、としています。
数字で見ると、どれくらい動くのか
架空の設例で見ます。実在の法人の数値ではありません。
大学1校と短期大学1校を設置する法人で、病院はありません。「大学」の教員として発令されている教員24人が短期大学の授業も担当しており、この24人の人件費の合計は2億4,000万円です。授業時間の実績は大学6,300時間・短期大学2,700時間で、**70%対30%**でした。
発令基準では、この2億4,000万円は全額が「大学」に計上されます。
発令基準で計上した場合(単位:万円)
| セグメント | 教育活動収入計 | 教育活動支出計 | 教育活動収支差額 |
|---|---|---|---|
| 大学 | 180,000 | 163,200 | 16,800 |
| 短期大学 | 32,000 | 26,000 | 6,000 |
| その他 | 2,000 | 6,000 | △4,000 |
| 合計 | 214,000 | 195,200 | 18,800 |
勤務実態を反映した配分基準で配分した場合(単位:万円)
| セグメント | 教育活動収入計 | 教育活動支出計 | 教育活動収支差額 |
|---|---|---|---|
| 大学 | 180,000 | 156,000 | 24,000 |
| 短期大学 | 32,000 | 33,200 | △1,200 |
| その他 | 2,000 | 6,000 | △4,000 |
| 合計 | 214,000 | 195,200 | 18,800 |
短期大学に配分されたのは2億4,000万円の30%、7,200万円です。その結果、短期大学の教育活動収支差額は6,000万円の黒字から1,200万円の赤字に反転します。大学は1億6,800万円から2億4,000万円に増えます。
法人合計の1億8,800万円は変わりません。 配分基準を変えても法人全体の収支は1円も動かないのに、部門ごとの姿は反転します。セグメント情報が「開示のための書類」だというのは、こういう意味です。
だからこそ、どちらの基準が経済の実態を表しているのかを説明できる状態にしておく必要があります。説明できない配分で赤字に見えている部門があると、その説明を求められるのは決算後です。
端数の処理も先に決めてください
共通経費を面積比で按分するときに、実際に起きることです。共通の光熱水費10,000,000円を、大学11,000㎡・短期大学3,000㎡・その他1,300㎡(合計15,300㎡)の面積比で按分します。
| セグメント | 面積 | 四捨五入した按分額 |
|---|---|---|
| 大学 | 11,000㎡ | 7,189,542円 |
| 短期大学 | 3,000㎡ | 1,960,784円 |
| その他 | 1,300㎡ | 849,673円 |
| 和 | 15,300㎡ | 9,999,999円 |
1円足りません。 四捨五入するとこうなります。どのセグメントに寄せるかを決めておかないと、担当者や年度によって処理が変わります。継続性が求められているのは配分基準だけではありません。
「学校法人部門」の業務の範囲が書き換わりました
見落とされやすい変更です。「その他」に入る「学校法人部門」の業務の範囲は、昭和55年通知にありましたが、今回の通知で文言が改められました。
| 昭和55年通知(内訳表) | 令和7年3月27日付通知(セグメント情報) |
|---|---|
| 理事会及び評議員会等の庶務に関すること | 理事会及び評議員会等の運営に関すること |
| 役員等の庶務に関すること | 役員等の活動全般に関すること |
| 登記、認可、届出その他の法令上の諸手続きに関すること | 登記、認可、届出その他の法令上の諸手続に関すること |
| 法人主催の行事及び会議に関すること | 法人主催の事業及び会議に関すること |
| 土地の取得又は処分に関すること(他の部門の所掌に属するものを除く。) | 土地の取得又は処分に関すること(他の部門の所掌に属するものを除く。) |
| 法人運営の基本方針(将来計画、資金計画等)の策定事務に関すること | 法人運営の基本方針(将来計画、資金計画等)の策定及び管理に関すること |
| 学校、学部・学科(学部の学科を含む。)等の新設事務に関すること | 学校、学部・学科(学部の学科を含む。)等の新設事務に関すること |
| その他「学校法人」部門に直接かかわる庶務・会計・施設管理等に関すること | その他「学校法人部門」に直接関わる庶務・会計・施設管理等に関すること |
| 他の部門の業務に属さない事項の処理に関すること | 他の部門の業務に属さない事項の処理に関すること |
項目数は9つで変わりません。 ワーキンググループはこの見直しを「社会状況の変化を踏まえた適切な文言に見直し」と説明しており、範囲を広げる趣旨だとは述べていません。
ただし「庶務」が「運営」に、「策定事務」が「策定及び管理」に変わっています。どこまでを法人部門に入れるかの判断が、旧の文言を前提にした従来の運用のままでよいとは限りません。
この一覧は、業務の説明であると同時に、職員の人件費をどこに載せるかの判定基準でもあります。 昭和55年通知は、「学校法人」部門の職員人件費支出を、発令だけでは決めていません。
「学校法人」部門の職員人件費支出については、2の(1)の取扱いにかかわらず、「学校法人」部門の職員として発令されている者のうち主として3の(1)に掲げる業務に従事する職員についてのみ「学校法人」部門に計上する。その他の職員に係る人件費支出は主として行う業務の所属するそれぞれの部門、学部・学科等に計上する。
「のみ」です。 法人事務局に発令されていても、主として従事しているのが3の(1)の業務でなければ、その人件費は各部門へ回ります。そして、ここで参照されている「3の(1)」が、上の表の左列そのものです。
つまり文言の見直しは、業務の名前を変えただけでなく、「主として従事しているか」を当てる先の一覧を差し替えています。 該当する職員の切り方を、一度は当て直してみてください。
そして、その差し替えがいつ内訳表に及ぶのかも、通知に書かれています。
昭和55年通知における「「学校法人」部門」の業務の範囲は、令和9年度の事業活動収支内訳表、資金収支内訳表及び人件費支出内訳表の作成から(7)によること
内訳表の側が新しい文言に揃うのは令和9年度からです。 ということは、令和7年度と令和8年度は、同じ「学校法人(部門)」という言葉について、内訳表は昭和55年通知の文言、セグメント情報は新しい通知の文言という状態になります。同じ名前の部門で範囲の定義が2つ走っている、と理解してください。
変えたときは、注記します
セグメントの設定も配分基準も、毎年変えてよいものではありません。
セグメント情報の表示に当たっては、セグメントの設定、配分基準等の継続性に配慮すること。なお、これらを変更した場合は、その旨、変更の理由及び当該変更がセグメント情報に与えている影響を記載すること。ただし、当該影響が軽微な場合は、これを省略することができること。
令和9年度に配分基準へ移る局面は、まさにこの「変更」に当たります。移行の年に何をどう変えたのかを注記できるよう、令和8年度の配分の根拠を残しておいてください。 変更後の数字だけがあっても、影響額は書けません。
いま決めておくこと
令和9年度の計算書類は令和10年6月末までに作成します。作業が始まってからでは間に合わないものを挙げます。
- セグメントの区分を確定する。 ①から③は学校ごと。④を学校種ごとに分けるかどうか。「その他」に何を入れるか。追加のセグメントを立てるか
- 各セグメントの業務の範囲を文章で定義する。 特に「学校法人部門」。新しい文言に当てはめ直す
- 兼務している教職員を洗い出す。 発令が2本あって人件費が明確に区分されている人と、そうでない人を分ける
- 区分されていない人について、勤務実態を示すデータを決める。 授業時間、従事時間、兼務割合。過去の一定期間の実績値でよいので、いつからいつまでの何を使うかを先に決め、令和8年度のうちに取り始める
- 共通経費ごとに配分基準を決め、端数の寄せ先まで決める
- 令和8年度の配分の根拠を残す。 令和9年度に「変更による影響」を注記するために要ります
1から3までは会計の作業ではありません。 誰が何をしているかを法人として言語化する作業です。ここが決まっていないと、配分の計算は始まりません。
まとめ
- セグメント情報の注記はすべての学校法人が対象です。会計監査人非設置知事所轄学校法人の特例(学校法人会計基準48条から50条)で作成しないことができるのは、活動区分資金収支計算書と基本金明細書だけです。しかも48条と49条の特例は、高等学校を設置している法人では使えません(48条の括弧書きに「次条において同じ」とあるため)
- 設定すべきセグメントが「その他」以外に一つだけなら表示を省略できます。ただしその旨の注記は要ります。内数のセグメントがある場合は省略に当たりません
- 共通に設定するセグメントは6つ。①大学②短期大学③高等専門学校は学校ごと、④その他の学校等と⑤病院は一つにまとめられます。⑤には診療所を含みますが、主に学生の健康管理や教職員の福利厚生等のために設置しているものは除きます
- 医学部・歯学部と一体的な附属病院は「うち、医学部等及び附属病院」として**「大学」の内数**で表示します
- 表示する科目は9つ。収入計・支出計を出すのは教育活動収支だけです。右端に合計欄を設け、事業活動収支計算書と一致させます
- 令和7年度・令和8年度は昭和55年通知の方法を使えます。 そのかわりどちらを適用したかを注記します。セグメントは①から③及び⑤を集約できます
- 令和9年度の計算書類から配分基準を適用します。 ただし、これまでの内訳表による按分が引き続き経済の実態を適切に表していると合理的に説明できるなら、同じ配分で計上できます。変わるのは数字ではなく説明責任です
- 実質的に効くのは兼務教職員の人件費です。発令基準に基づく計上は「経済の実態を表していると合理的に説明できる場合に限られ」ます。ただし発令の内容により人件費が明確に区分されている場合は、その区分どおりに計上します
- 「学校法人部門」の業務の範囲は文言が改められました。内訳表の側が揃うのは令和9年度からなので、令和7年度・令和8年度は定義が2つ走ります
初年度を通した法人には、どの共通経費をどう按分したか、どの教職員が実際には複数の学校にまたがっているかが、すでに分かっているはずです。その記憶が残っている令和8年度のうちに区分と定義を確定させておくと、令和9年度は数字を入れ替えるだけで済みます。
学校法人の監査と税務の両方を扱っている立場から、御法人の設置形態と実際の兼務の状況に即して、区分の立て方と配分基準の設計をご一緒します。