学校法人会計

学校法人の消費税 — 補助金があると仕入税額控除が減ります

学校法人の消費税で、いちばん誤りが起きるのがここです。

補助金や寄附金を受けていると、払った消費税の一部が控除できなくなります。

一般の会社にはない仕組みなので、会計事務所が扱い慣れていないことがあります。決算の直前に気づいても間に合わない手続きが含まれているため、先に全体像を整理します。

なぜ学校法人だけ調整が要るのか

学校法人は、消費税法別表第三に掲げる法人です。同表には「学校法人(私立学校法第152条第5項の規定により設立された法人を含む。)」が明記されています。

この別表第三法人には、消費税法60条4項の特例が適用されます。理由は国税庁のパンフレットに書かれています。

国、地方公共団体、公共・公益法人等は、本来、市場経済の法則が成り立たない事業を行っていることが多く、通常は租税、補助金、会費、寄附金等の対価性のない収入を恒常的な財源としている実態にあります。 このような対価性のない収入によって賄われる課税仕入れ等は、課税売上げのコストを構成しない、いわば最終消費的な性格を持つものと考えられます。

つまり、補助金で買ったものの消費税まで控除させるのは筋が通らないという発想です。

そこで、通常どおり計算した仕入控除税額から、補助金等で賄われた部分に対応する税額を差し引きます。

調整が要るかどうかは、2つで決まる

該当するかどうかは順に見ます。国税庁は調整が不要な場合を3つ挙げています。

確認すること該当する場合
1簡易課税制度で計算しているか調整は不要
22割特例で計算しているか調整は不要
3特定収入割合が5%以下か調整は不要

3つのどれにも当たらない、つまり一般課税で特定収入割合が5%を超えるなら、調整は避けられません。

特定収入割合は次のように計算します。

特定収入割合 = 特定収入の合計額 ÷(資産の譲渡等の対価の額の合計額 + 特定収入の合計額)

分母の「資産の譲渡等の対価の額の合計額」は、課税売上高(税抜き)+免税売上高+非課税売上高+国外売上高です。

授業料や入学金は、この分母に入ります。 学校教育法1条に規定する学校を設置する者が行う教育の役務の提供は、授業料・入学金・施設設備費等を対価とする部分について非課税とされているためです(消費税法別表第二第11号)。

非課税であっても分母に入るという点は誤解されやすいところです。事業規模のわりに特定収入割合が低く出ることがありますので、感覚で判断せず必ず計算してください。

特定収入とは何か

特定収入は「資産の譲渡等の対価以外の収入」、つまり対価性のない収入です。国税庁は例として次を挙げています。

特定収入の例示
租税/補助金/交付金/寄附金/出資に対する配当金/保険金/損害賠償金/負担金/他会計からの繰入金(国、地方公共団体に限る)/会費等/喜捨金/特殊な借入金等

一方、対価性がなくても特定収入に該当しないものが定められています。

特定収入に該当しない収入
1 通常の借入金等
2 出資金
3 預金・貯金及び預り金
4 貸付回収金
5 返還金及び還付金
6 使途が「特定支出」のためにのみ使用することとされている収入

この6番が実務の要です。

使途によって、4つに分かれます

同じ補助金でも、使途の書かれ方で扱いが変わります。ここを取り違えると結論が大きく動きます。

補助金の使途消費税上の扱い控除への影響
給与等の特定支出にのみ使用特定収入に該当しない影響なし。最も有利
課税仕入れ等にのみ使用課税仕入れ等に係る特定収入その分が直接差し引かれる
特定支出と課税仕入れ等の両方に使用交付要綱、積算内訳書、実績報告書等に基づいて区分・按分区分できた割合による
使途を特定できない使途不特定の特定収入調整割合を通じて全体が目減りする

「特定支出」の定義は裏返しになっていて分かりにくいので、条文の構造を書き下します。

特定支出 = 次の支出「以外」の支出

  1. 課税仕入れに係る支払対価の額に係る支出
  2. 特定課税仕入れに係る支払対価の額に係る支出
  3. 課税貨物の引取価額に係る支出
  4. 通常の借入金等の返済金又は償還金に係る支出

国税庁は特定支出の例として「給与、利子、土地購入費、特殊な借入金等の返済」を挙げ、6番の収入の例として「人件費補助金、利子補給金、土地購入のための補助金、特殊な借入金等の返済のための負担金」を挙げています。

「人件費補助金だから特定収入にならない」とは言えません

ここが最も誤りやすいところです。補助対象経費に人件費が含まれているというだけで、補助金の全額が特定収入から外れるわけではありません。

特定収入から外れるのは、給与その他の特定支出のためにのみ使用することとされている部分です。「のみ」が付いています。

国税庁の質疑応答事例が、まさにこの点を扱っています。交付要綱で人件費に充てるべきとされた補助金を、給料と通勤手当として支払ったケースです。

当該補助金は特定支出のためにのみ使用するものでないことから、全額が特定収入に該当することとなると考えられますが、当該補助金における実績報告書において通勤手当として支出した金額が明らかにされている場合には、当該金額のみを特定収入とし、それ以外の金額については、特定収入に該当しないものとして取り扱ってよいでしょうか。

これに対する回答は次のとおりです。

実績報告書において、通勤手当として支出した金額が明らかにされている部分に係る補助金を特定収入とし、給料として支出した金額に係る補助金を特定支出のためにのみ使用することとされている収入として特定収入に該当しないものとして取り扱って差し支えありません。

通勤手当は課税仕入れに該当します。 国税庁は「事業者が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む。)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れに該当する」としています(基通11-6-5)。したがって、給料と通勤手当が混ざっていると「特定支出のためにのみ」ではなくなります。

押さえるべき順序はこうです。

  1. 原則として、特定支出以外の支出にも使えるなら全額が特定収入になる
  2. ただし、費目ごとの金額が明らかにされていれば、その金額に応じて区分できる

なお、住居手当は課税仕入れに該当しません(事業遂行上直接必要とはいえず、所得の種類も給与等に該当するため)。同じ手当でも通勤手当とは扱いが分かれます。

「交付要綱等」には積算内訳書と実績報告書が含まれます

区分できるかどうかは、どの文書まで使えるかで決まります。国税庁は次のように整理しています。

この場合の交付要綱等には、補助金等を交付する者が作成した補助金等交付要綱、補助金等交付決定書のほか、これらの付属書類である補助金等の積算内訳書、実績報告書を含むこととされています(基通16-2-2)

交付要綱の本文に費目の内訳が書かれていなくても、積算内訳書や実績報告書で費目別の金額が分かれば区分できます。 これは学校法人にとって実務上とても大きい点です。

実際、公益法人等について、実績報告書の費目別補助金執行実績の金額により区分してよいとする質疑応答事例があります。

照会の補助金について、実績報告書の費目別補助金執行実績の金額によりその使途が明らかにされている場合には、当該金額により特定収入以外の収入と特定収入とに区分して差し支えありません。

一部だけが課税仕入れに充てられる場合も同じです。 通達は「特定収入の金額が課税仕入れ等に係る支出のみに充てることとされているもののほか、特定収入のうちの一定金額が課税仕入れ等に係る支出に充てることとされている場合における当該一定金額もこれに該当する」としています(基通16-2-3)。補助金を丸ごとどれか一つの区分に入れる必要はありません。

基金として受け入れた寄附金は、受け入れた期に効きます

学校法人では、奨学基金や記念事業基金のように、受け入れてから使うまでに時間が空くお金があります。ここは扱いが分かれます。

基金として受け入れる金銭扱い
解散の際に支出者に残余財産が帰属するなど出資としての性格を有し、貸借対照表上の資本勘定・正味財産の部に計上されるもの特定収入に該当しない
一定期間又は事業の終了により支出者に返済することとなり、借入金としての性格を有し、負債勘定に計上されるもの特定収入に該当しない
法令において、事業は運用益で行い元本は取り崩せないこととされているもの取り崩す課税期間に収入があったものとして扱い、その使途で判定する
上記のいずれにも当たらないもの受け入れた課税期間において特定収入となる

最後の行が実務では効きます。 使うのが数年先でも、受け入れた年の特定収入割合に入ります。 大口の寄附を受けた年だけ特定収入割合が跳ね上がることがありますので、5%の判定は毎期やり直してください。

使途の大要しか定められていない場合

「校舎の建設に要する費用に充てる」のように、使途の大要だけが定められ、細部が区分されていないことがあります。建設工事費(課税仕入れ)と土地取得費(非課税)が混ざっている場合などです。

この場合は、その使途の範囲内における課税仕入れ等の支出額と、それ以外の支出額に基づいて合理的に按分します。国税庁は「『…の建設に要する費用』のうちに占める課税仕入れ等の支出の額と課税仕入れ等以外の支出の額であん分すること」と説明しています。

ただし、この按分は次節の「国又は地方公共団体が合理的な方法により使途を明らかにした文書」による方法に含まれます。 学校法人が使う場合の条件は、次節をご覧ください。

学校法人が自法人だけでは完結できない特定方法があります

学校法人が利用できる使途の特定方法には、法令・交付要綱等による方法のほか、補助金の交付元である国又は地方公共団体が作成した使途特定文書による方法があります。ただし、後者は学校法人が自ら作成することはできません。

条文の主語を確認してください。

使途特定の方法学校法人での利用
法令又は交付要綱等による特定利用できる。 積算内訳書・実績報告書も含まれるので、費目別の金額が分かれば区分できる
国・地方公共団体が合理的な方法で作成した使途特定文書による特定利用できる。 ただし交付元が作成する必要があり、学校法人が自ら作成することはできない
公益社団法人・公益財団法人の寄附募集文書による特定学校法人には適用できない

3つ目は、行政庁の確認を受けたうえで「特定の活動に係る特定支出のためにのみ使用されること」「期間を限定して募集されること」「他の資金と明確に区分して管理されること」の3要件を満たす寄附金に限られます。公益社団法人・公益財団法人のための規定であり、学校法人が募集する寄附金には使えません。

交付元に文書を作ってもらう場合の条件

交付要綱等に使途が書かれていない補助金について、国税庁は次のように述べています。

公共・公益法人等が国又は地方公共団体から交付を受ける補助金等の使途は、交付要綱等でその使途が明らかにされていないまでも、その多くが予算又は決算において明らかにされていますので、公共・公益法人等においてもP8②の方法により補助金等の使途を特定することができます。

ただし、条件が付いています。

ただし、公共・公益法人等がP8②の方法により使途を特定する場合には、補助金等の交付元である国、地方公共団体がその補助金等の使途を明らかにした文書を確定申告書とともに納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

質疑応答事例も同じ整理をしたうえで、文書が交付されていない場合の結論まで書いています。

法令又は交付要綱等により使途が明らかにされていない場合において、補助金等を支出した地方公共団体がその使途を明らかにした文書を交付していない場合には、その補助金等は使途不特定の特定収入に該当することになります。

交付元に文書を作ってもらう必要があります。 学校法人であれば、多くの場合は都道府県の私学担当課です。

これは自法人だけで完結しません。決算期を迎えてから動いたのでは間に合わないことがあります。 前年度の申告でこの方法を使ったかどうかを確認し、使うなら早い時期に所轄庁と話をしておいてください。

先に確認すべきは、交付要綱等の側です。 積算内訳書や実績報告書で費目別の金額が分かるなら、そちらで区分できます。交付元に文書を依頼するのは、それでも特定できない場合の手段です。

数字で見る

言葉だけでは効き方が分かりにくいので、簡単な設例で計算します。以下の数値はすべて説明のために作った架空のものです。

前提金額
課税売上高(税抜き)1億円
非課税売上高(授業料等)9億円
資産の譲渡等の対価の額の合計額10億円
補助金(使途が課税仕入れ等に特定されたもの)8,000万円
補助金・寄附金(使途不特定)1億2,000万円
課税仕入れ(税込み)3億3,000万円

判定

  • 特定収入の合計額 = 8,000万円 + 1億2,000万円 = 2億円
  • 特定収入割合 = 2億円 ÷(10億円 + 2億円)= 16.67% → 5%超なので調整が必要
  • 課税売上割合 = 1億円 ÷ 10億円 = 10% → 95%未満なので全額控除はできない(ここでは一括比例配分方式)

調整前の仕入控除税額

  • 課税仕入れ等の税額 = 3億3,000万円 × 7.8/110 = 2,340万円
  • 調整前の仕入控除税額 = 2,340万円 × 10% = 234万円

特定収入に係る課税仕入れ等の税額

  • 調整割合 = 1億2,000万円 ÷(10億円 + 1億2,000万円)= 10.7143%
  • ⑥ = 8,000万円 × 7.8/110 × 10% = 約567,273円
  • ⑦ =(234万円 − 約567,273円)× 10.7143% = 約189,935円
  • 合計 = 約757,208円

結果

仕入控除税額 = 234万円 − 約757,208円 = 約1,582,792円

調整前と比べて32.4%減りました。 補助金を受けているという事実だけで、これだけ控除が失われます。

使途を特定すれば必ず有利、ではありません

ここは注意が要ります。同じ設例で、8,000万円の使途も特定できなかった場合を計算すると、次のようになります。

使途を特定した場合使途を特定できなかった場合
調整割合10.7143%16.6667%
特定収入に係る課税仕入れ等の税額約757,208円390,000円
仕入控除税額約1,582,792円1,950,000円

特定した方が、控除が367,208円小さくなっています。

なぜ逆転するのか

決め手は、2つの割合の大小です。

制限される額
使途を特定した場合その補助金が賄った課税仕入れの税額が丸ごと(⑥)。8,000万円 × 7.8/110 = 5,672,727円が基礎
使途を特定しなかった場合課税仕入れ等の税額の全体に調整割合を掛けた分だけ。2,340万円 × 16.6667% = 390万円が基礎

この設例では、補助金が賄った課税仕入れの税額は課税仕入れ等の税額全体の 24.2%(5,672,727円 ÷ 2,340万円)です。一方、使途を特定しなかった場合の調整割合は 16.67% にとどまります。

24.2% > 16.67% だから、特定した方が重くなります。

調整割合が小さくなるのは、分母に資産の譲渡等の対価の額が入るからです。

調整割合 = 1億2,000万円 + 8,000万円 ÷(10億円 + 1億2,000万円 + 8,000万円)= 16.6667%

この10億円には、授業料等の非課税売上高が含まれています。 事業規模が大きいほど分母が膨らみ、調整割合は薄まります。同じ補助金でも、事業規模の小さい法人なら結論は変わります。設例の資産の譲渡等の対価の額を1億円に置き換えると調整割合は66.67%まで上がり、特定した方が軽くなります。

課税売上割合は理由ではありません。 ⑥にも調整前の仕入控除税額にも同じように掛かるため、両者の差には効きません。実際、この設例で課税売上割合を5%から100%まで動かしても逆転は解消せず、差額が課税売上割合に比例して動くだけです(10%で367,208円、30%で1,101,623円)。

したがって、次のように整理してください。

  • 特定支出(人件費など)に特定される場合は、明確に有利。 特定収入から外れるため
  • 課税仕入れ等に特定される場合は、有利とは限らない。 数字で確かめる必要がある
  • 法令又は交付要綱等で使途が明らかにされているものは、そのとおりに特定するほかない。 有利不利で選べるものではありません

選択の余地があるのは、交付要綱等で使途が明らかにされておらず、予算・決算による特定を使うかどうかを判断する場面だけです。そしてその判断には、実際に両方を計算してみることが要ります。

インボイス開始後に増えた論点

補助金で支出した課税仕入れの相手方が、インボイス発行事業者でないことがあります。この場合、その仕入れは原則として仕入税額控除の対象になりませんが、特定収入の調整計算では制限の対象に含まれます。 控除できないうえに、調整でも差し引かれる形になります。

そこで、後から取り戻せる規定が設けられています。

取戻し対象特定収入とは、次の割合が5%を超える場合のその特定収入をいいます。

課税仕入れ等に係る特定収入により支出された「控除対象外仕入れ」に係る支払対価の額の合計額 ÷ 課税仕入れ等に係る特定収入により支出された課税仕入れに係る支払対価の額の合計額

判定は、原則として課税仕入れ等に係る特定収入ごとに行います。その課税期間に受け取ったすべてを、常に一括して判定するわけではありません。

ただし例外があります。 交付要綱等では使途を特定できない複数の補助金等について、課税期間中の支出額を基礎とする按分計算で使途を特定している場合、個々の補助金ごとに控除対象外仕入れの額を算出することは困難です。国税庁はこの場合について「当該課税仕入れ等に係る特定収入をまとめて、取戻し対象特定収入の判定を行って差し支えありません」としています。

加算するのは「金額を明らかにした課税期間」です

該当する場合でも、自動的に加算されるわけではありません。次の文書で控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額を明らかにする必要があります。

  • 法令又は交付要綱等により国等に使途を報告すべきこととされている文書(実績報告書など)
  • 国又は地方公共団体が合理的な方法により使途を明らかにした文書

そして、加算するのはその金額を明らかにした課税期間です。補助金を受け取った課税期間と一致するとは限りません。実績報告書の提出が翌年度になる補助金では、加算する年度もずれます。

さらに制限があります。 金額を明らかにした課税期間が、免税事業者である課税期間・簡易課税制度の適用を受ける課税期間・2割特例の適用を受ける課税期間である場合は、その課税期間では加算できません。

なお、インボイス発行事業者以外からの課税仕入れには経過措置があり、加算できる額はその分だけ小さくなります。国税庁は次のように整理しています。

経過措置加算する調整対象額
8割控除の適用を受けるもの本来の調整対象額の20%相当額
7割控除の適用を受けるもの30%相当額
5割控除の適用を受けるもの50%相当額
3割控除の適用を受けるもの70%相当額

控除できている分は取り戻す必要がない、という考え方です。2026年10月1日から控除割合が8割から7割に下がりますので、この加算額も動きます。

決算前に確認しておくこと

順に潰してください。

  1. 一般課税か、簡易課税か。 簡易課税または2割特例なら、この調整は要りません
  2. 特定収入割合を計算する。 5%以下なら調整は不要です。授業料等の非課税売上高が分母に入ることを忘れずに。基金として受け入れた寄附金がある年は跳ね上がることがあります
  3. 補助金・寄附金・会費の一覧を作り、交付要綱等の使途の記載を確認する。 「給与その他の特定支出のためにのみ使用する」と定められている部分は特定収入に該当しません。人件費以外の対象経費が含まれる場合は、費目別に区分できるかを確認します
  4. 積算内訳書と実績報告書を確認する。 交付要綱の本文に内訳がなくても、これらで費目別の金額が分かれば区分できます
  5. それでも特定できないものについて、交付元に使途特定文書を依頼するかを決める。 依頼するなら時間が要ります。文書がなければ使途不特定の特定収入になります
  6. 課税仕入れの相手方がインボイス発行事業者かを確認する。 取戻し対象特定収入の判定に使います
  7. 調整割合が前期から大きく動いていないかを見る。 通算調整割合との差が20%以上あるときは、別途の調整が必要になります

まとめ

  • 学校法人は消費税法別表第三に掲げる法人であり、補助金等があると仕入税額控除の調整が必要です
  • 調整が不要なのは、簡易課税・2割特例・特定収入割合5%以下の3つの場合だけです
  • 授業料等の非課税売上高は特定収入割合の分母に入ります。 感覚で判断せず計算してください
  • 使途が給与その他の特定支出のためにのみ使用とされている部分は、特定収入になりません。最も有利です
  • 「人件費補助金だから特定収入にならない」とは言えません。 通勤手当など課税仕入れになる費目が混ざっていれば、原則として全額が特定収入です。費目別の金額が明らかにされていれば区分できます
  • 「交付要綱等」には積算内訳書・実績報告書が含まれます(基通16-2-2)。交付要綱の本文に内訳がなくても区分できることがあります
  • 使途を特定すれば必ず有利、ではありません。 補助金が賄った課税仕入れが課税仕入れ全体に占める割合と、調整割合の大小で決まります。前者が大きければ、特定した方が控除は小さくなります
  • 交付要綱等で特定できない場合、交付元の国・地方公共団体が作成した使途特定文書なら使えます。ただし学校法人が自ら作成することはできず、確定申告書とともに提出が必要です。文書がなければ使途不特定の特定収入になります
  • 基金として受け入れた寄附金は、性格によっては受け入れた課税期間の特定収入になります。使うのが数年先でも、その年の判定に効きます
  • 取戻し対象特定収入の加算は、金額を明らかにした課税期間に行います。補助金を受け取った課税期間とは限りません
  • 控除しきれない金額は、課税標準額に対する消費税額に加算されます

補助金の交付要綱は都道府県ごとに文言が違い、同じ法人でも補助金ごとに扱いが分かれます。交付要綱の読み方と、所轄庁への依頼の進め方は、実際の書類を見ないと判断できません。学校法人会計の監査と税務申告の両方を扱っている立場から、御法人の実際の補助金に即してご相談に応じます。

よくある質問

補助金をもらっているだけで、消費税の申告が変わるのですか。

変わる場合があります。学校法人は消費税法別表第三に掲げる法人にあたり、消費税法60条4項の特例の対象です。一般課税で申告していて、特定収入割合が5%を超えるときは、通常の方法で計算した仕入控除税額から「特定収入に係る課税仕入れ等の税額」を差し引く調整が必要になります。補助金・寄附金・会費などの対価性のない収入が特定収入にあたりますので、経常費補助金を受けている法人は5%を超えることが珍しくありません。

調整が要らないのはどんな場合ですか。

国税庁のパンフレットは3つ挙げています。①その課税期間における特定収入割合が5%以下である場合、②その課税期間の仕入控除税額を簡易課税制度を適用して計算する場合、③その課税期間の仕入控除税額を2割特例を適用して計算する場合です。裏を返すと、一般課税で申告していて特定収入割合が5%を超えるなら、調整は避けられません。

特定収入割合はどう計算しますか。

特定収入の合計額を、資産の譲渡等の対価の額の合計額と特定収入の合計額を足したもので割ります。資産の譲渡等の対価の額の合計額は、課税売上高(税抜き)・免税売上高・非課税売上高・国外売上高の合計です。学校法人の場合、授業料や入学金は非課税売上高としてこの分母に入りますので、事業規模のわりに特定収入割合が低く出ることがあります。5%の判定は必ず実際に計算してください。

人件費に充てる補助金も特定収入になりますか。

法令又は交付要綱等において「給与その他の特定支出のためにのみ使用する」こととされている部分は、特定収入に該当しません。ただし、補助対象経費に人件費が含まれているというだけで全額が外れるわけではありません。国税庁の質疑応答事例は、交付要綱で人件費に充てるべきとされた補助金を給料と通勤手当として支払ったケースについて、通勤手当は課税仕入れに該当するため「特定支出のためにのみ使用するものでない」として、原則は全額が特定収入になるとしたうえで、実績報告書で通勤手当の金額が明らかにされていればその部分のみを特定収入とし、給料部分は特定収入に該当しないものとして差し支えないとしています。備品費や委託料が対象経費に含まれる場合も同じ考え方です。

交付要綱に費目の内訳が書かれていません。区分できませんか。

交付要綱の本文だけで判断しないでください。国税庁は「交付要綱等」の範囲について、補助金等交付要綱・補助金等交付決定書のほか、これらの附属書類である補助金等の積算内訳書と実績報告書も含まれるとしています(消費税法基本通達16-2-2)。実績報告書の費目別補助金執行実績の金額により使途が明らかにされていれば、その金額で特定収入以外の収入と特定収入とに区分して差し支えないとする質疑応答事例があります。

使途を特定できれば、必ず有利になりますか。

なりません。使途が人件費などの特定支出に特定されれば、その収入は特定収入から外れますので明確に有利です。しかし課税仕入れに使途が特定された場合は、その補助金が賄った課税仕入れの税額が丸ごと制限の対象になります。一方、使途を特定しなかった場合は、課税仕入れ等の税額の全体に調整割合を掛けた分だけが制限されます。したがって、補助金が賄った課税仕入れが課税仕入れ全体に占める割合が調整割合より大きいときは、特定した方が控除が小さくなります。調整割合の分母には授業料等の非課税売上高を含む資産の譲渡等の対価の額が入るため、事業規模が大きい法人ほど調整割合が薄まり、逆転が起きやすくなります。なお、法令又は交付要綱等で使途が明らかにされているものは、そのとおりに特定するほかなく、選択の余地はありません。

交付要綱にも積算内訳書にも使途が書かれていない補助金は、どうすればよいですか。

補助金の交付元である国または地方公共団体が、その使途を明らかにした文書を作成していれば、その文書によって区分できます。ただし学校法人が自らこの文書を作成することはできません。また、この方法をとる場合は、交付元が作成した文書を確定申告書とともに所轄税務署長に提出する必要があります。自法人だけでは完結しませんので、決算期を迎えてから動いたのでは間に合わないことがあります。国税庁の質疑応答事例は、交付元が文書を交付していない場合、その補助金は使途不特定の特定収入に該当するとしています。

インボイス制度で何か変わりましたか。

補助金で支出した課税仕入れの相手方がインボイス発行事業者でない場合、その仕入れは原則として仕入税額控除の対象外ですが、特定収入の調整計算では制限の対象に含まれます。そこで、一定の割合を超えるときは「取戻し対象特定収入」として、後から仕入控除税額に加算できる規定が設けられています。加算するには、交付要綱等に基づいて国等へ報告する実績報告書その他の所定の文書、または国・地方公共団体が合理的な方法により使途を明らかにした文書により、その金額を明らかにする必要があります。加算するのは金額を明らかにした課税期間であり、補助金を受け取った課税期間とは限りません。

奨学基金や記念事業基金として受け入れた寄附金は、いつ効きますか。

性格によって分かれます。解散の際に支出者へ残余財産が帰属するなど出資としての性格を有し、貸借対照表上の資本勘定または正味財産の部に計上される金銭は特定収入に該当しません。一定期間または事業の終了により支出者に返済することとなり、借入金としての性格を有し負債勘定に計上される金銭も同様です。法令において事業は運用益で行い元本は取り崩せないこととされている金銭は、取り崩す課税期間に収入があったものとして扱い、その使途で判定します。これらのいずれにも当たらない金銭は、受け入れた課税期間において特定収入となります。使うのが数年先でも受け入れた年の特定収入割合に入りますので、大口の寄附があった年は5%の判定をやり直してください(消費税法基本通達16-2-5)。

調整の結果、控除しきれない場合はどうなりますか。

消費税法60条5項により、控除しきれない金額は課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして、その課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算します。つまり納付税額が増える方向に働きます。補助金の割合が大きい法人では実際に起こりえます。

出典

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