「うちは従業員が50人いるから、来年の源泉徴収票は電子で出すことになりますね」
そうとは限りません。人数では決まらないからです。
令和9年1月に提出する法定調書から、電子的提出が義務になる基準が「30枚以上」に下がります。 ところが、数えるのはこれから出す枚数ではありません。国税庁はこう書いています。
前々年(基準年)に提出すべきであった法定調書の枚数が30枚以上である法定調書については、e-Tax 等による提出が必要です。
なお、提出義務の判定は法定調書の種類ごとに行いますのでご注意ください。
(国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」2ページ)
数えるのは前々年、しかも種類ごとです。そして給与所得の源泉徴収票については、 令和8年分から提出範囲が全員分に広がったにもかかわらず、枚数は広がる前の範囲で数えます。
この記事は、学校法人の事務局・自治体の担当課・中小企業の経理担当の方が、 自分の法人が令和9年1月に紙で出せるのかどうかを自分で判定できるところまで書きます。
結論
- 基準が「100枚以上」から「30枚以上」に下がるのは、令和9年1月1日以後に提出すべき法定調書からです。 令和8年12月31日までに提出すべき分は、実際に提出するのが令和9年以後になっても100枚以上のままです
- 数えるのは「基準年」=提出期限の属する年の前々年に提出すべきであった枚数です。 令和9年1月に出す分の基準年は令和7年です。令和8年に何枚出したかは関係ありません
- 判定は法定調書の種類ごとに行います。 根拠は所得税法施行規則97条の4第1項で、枚数は「別表ごとに計算した数」とされています。合計では判定しません
- 判定は提出義務を有する者ごとに行います。 支店ごとに提出先の税務署が違うなら、支店ごとに数えます
- 給与所得の源泉徴収票は、令和8年分から提出範囲が全員分に広がりましたが、枚数判定は改正前の提出範囲で行います。 役員・職員あわせて54名の設例で、改正後の範囲なら53枚ですが、判定に使う枚数は8枚です
- 給与所得の源泉徴収票より先に、報酬等の支払調書が30枚に当たることがあります。 弁護士・税理士への報酬や講演料は同一人に年5万円超で提出範囲に入り、こちらには枚数を抑える経過措置がありません
- 源泉徴収票の側で義務がかかると、市区町村に出す給与支払報告書もeLTAXまたは光ディスク等になります(地方税法317条の6第5項)
- 光ディスク等(CD・DVD)での提出には、事前の承認・届出が要りません。 義務がかかる場合は、もともと承認・届出の規定がありません。e-Taxと認定クラウド等には事前手続が要ります
- 令和9年の提出期限は2月1日(月)です。 1月31日が日曜日に当たるためです
義務の中身は「紙で出せなくなる」ことです
まず条文を見ます。所得税法228条の4第1項です。
第二百二十五条第一項(支払調書及び支払通知書)、第二百二十六条第一項から第三項まで(源泉徴収票)又は第二百二十七条から前条までの規定により提出するこれらの規定に規定する調書、源泉徴収票及び計算書(以下この条において「調書等」という。)のうち、当該調書等の提出期限の属する年の前々年の一月一日から十二月三十一日までの間に提出すべきであつた当該調書等の枚数として財務省令で定めるところにより算出した数が百以上であるものについては、当該調書等を提出すべき者は、これらの規定にかかわらず、当該調書等に記載すべきものとされるこれらの規定に規定する事項(以下この条において「記載事項」という。)を次に掲げる方法のいずれかによりこれらの規定に規定する税務署長に提供しなければならない(所得税法228条の4第1項、原文ママ)
「百以上」のままになっているのは、引下げの改正規定が、まだ施行されていないからです。 30枚への引下げは令和6年度税制改正で決まっていますが、その施行日は令和9年1月1日と定められています。
次に掲げる規定 令和九年一月一日
イ 第一条中所得税法第二百二十八条の四第一項の改正規定及び附則第五条の規定
(令和6年3月30日法律第8号 附則1条8号)
e-Gov法令検索が引下げを取り込んでいないわけではありません。 同じ条文を令和9年1月1日時点で
参照すると「三十以上」になります(法令APIなら
https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/340AC0000000033?asof=2027-01-01)。
いま「百以上」と出るのは、その日まで現行の条文が「百以上」だからです。
引用は現行条文のまま維持して、ここに注記します。
この条文の作りで押さえておきたいのは2つです。
1つは「これらの規定にかかわらず」。 225条や226条は「税務署長に提出しなければならない」と 書いていますが、228条の4第1項に当たる場合は、その提出のしかたが置き換わります。 国税庁の案内も、紙の選択肢が消えることを明言しています。
該当する法定調書は、書面での提出はできませんので、e-Tax 等による提出のご準備をお願いします。
(同手引2ページ)
もう1つは「提供しなければならない」。 「できる」ではありません。義務です。
法定調書を提出期限までに提出しなかったときの罰則は、所得税法242条1項5号にあります。
第二百二十五条第一項(支払調書)に規定する調書、第二百二十六条第一項から第三項まで(源泉徴収票)に規定する源泉徴収票又は第二百二十七条から第二百二十八条の三の二まで(信託の計算書等)に規定する計算書若しくは調書をこれらの書類の提出期限までに税務署長に提出せず、又はこれらの書類に偽りの記載若しくは記録をして税務署長に提出した者(所得税法242条1項5号。同項本文は「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」)
ただし、義務があるのに紙で提出した場合にそれがどう扱われるのかを正面から述べた国税庁の資料は、 確認できませんでした。 ここは断定しません。実務上の答えは変わらないからです。 期限までに電子で出せる状態を作っておくほかありません。
義務がかかる場合、提出の方法は3つです
手引は、作成・提出の方法を4つ並べ、そのうち①から③を「e-Tax 等」と呼んでいます。
| 方法 | 事前の手続 | |
|---|---|---|
| ① | e-Tax | 所轄税務署へ開始届出書を提出し、利用者識別番号を取得する等の手続 |
| ② | 認定クラウド等 | 認定クラウド等の利用契約と、所轄税務署への利用開始の届出等 |
| ③ | 光ディスク等(CD・DVD など) | 不要 |
| ④ | 書面 | ——(義務がかかる法定調書には使えない) |
③に事前手続が要らないのは、光ディスク等が228条の4第1項2号そのものに掲げられた方法で、 届出を求める文言が付いていないからです。 同項1号は「財務省令で定めるところにより あらかじめ税務署長に届け出て行う電子情報処理組織(中略)を使用する方法」と書いていますが、 2号は「当該記載事項を記録した光ディスクその他の財務省令で定める記録用の媒体(中略)を 提出する方法」だけです。届出が要るのは1号の側です。
この点は「令和5年度税制改正で承認が要らなくなった」と説明されることがありますが、 正確ではありません。 廃止されたのは、義務がかからない人が任意に光ディスク等で出すとき (所得税法228条の4第2項)に必要だった要件です。財務省の解説は、こう書いています。
光ディスク等による調書等の提出手続の簡素化のため、調書等を提出すべき者(上記 1 ⑴により義務が課される者を除きます。以下同じです。)が上記 1 ⑵による光ディスク等の提出を行うために必要とされていた上記 1 ⑵①及び②の要件が廃止されました
(財務省「令和5年度 税制改正の解説」94〜95ページ)
括弧書きの「上記 1 ⑴により義務が課される者を除きます」が効いています。国税庁の案内も、 同じ範囲で書いています。
これまで、e-Taxまたは光ディスク等による法定調書の提出が義務付けられていない方が、法定調書を光ディスク等で提出する場合は「支払調書等の光ディスク等による提出承認申請書」の提出が必要でしたが、令和5年4月1日以降は提出が不要になりました。
(国税庁「法定調書の光ディスク等による提出のご案内」)
結論はどちらの場合も「事前手続は要らない」で同じですが、理由が違います。 義務がかかる場合は、もともと承認・届出の規定がありません。
②の認定クラウド等は、クラウドの保存領域にデータを置いて、税務署長にアクセス権を与える形です。
認定クラウド等とは、国税庁告示で定める要件に適合することにつき、クラウドサービス事業者等が国税庁長官の認定を受けているクラウドサービス等で、法定調書の提出に利用されているものをいいます。
(国税庁「クラウドサービス等を利用した法定調書の提出について」)
使うには届出が要ります。
クラウドサービス等を利用して法定調書を提出するためには、法定調書の提出者が「認定特定電子計算機による申請等の開始(変更)届出書」をe-Taxで所轄の税務署長に提出する必要があります。
(同)
光ディスク等では出せない法定調書があります。 タックスアンサー No.7453は、光ディスク等で 提出できるものを「「国外財産調書」、「財産債務調書」、「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高調書」、 「教育資金管理契約の終了に関する調書」および「結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書」を除く 法定調書」としています。認定クラウド等にも除かれるものがあり、同No.7453は 「「国外財産調書」および「財産債務調書」を除く法定調書」としています。 e-Taxだけが「すべての法定調書」です。
判定の3つのルール
ここが本題です。30枚以上かどうかを、何をどう数えて判定するのか。
① 数えるのは「基準年」=前々年に提出すべきであった枚数
条文は「当該調書等の提出期限の属する年の前々年の一月一日から十二月三十一日までの間に 提出すべきであつた当該調書等の枚数」と書いています。国税庁はこれを「基準年」と呼びます。
| 提出すべき年 | 基準年 | その年に適用される基準 |
|---|---|---|
| 令和8年 | 令和6年 | 100枚以上 |
| 令和9年 | 令和7年 | 30枚以上 |
| 令和10年 | 令和8年 | 30枚以上 |
| 令和11年 | 令和9年 | 30枚以上 |
国税庁の例は、こうなっています。
例えば、令和7年1月に提出すべき「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の枚数が「30枚以上」であった場合には、令和9年1月に提出する「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」はe-Tax等により提出する必要があります。
(国税庁 タックスアンサー No.7455)
2年前に遡るので、いま慌てて枚数を減らしても判定は変わりません。 逆に言えば、 判定に必要な情報は、すでに手元にあります。令和7年中に税務署へ提出すべきであった枚数を、 種類ごとに数えるだけです。
注意したいのは「提出すべきであった」という書き方です。実際に出した枚数ではなく、 提出義務があった枚数で数えます。出し忘れていた分も入りますし、後述の みなし提出で税務署に出していない分も入ります。
② 法定調書の種類ごとに数える
「種類ごと」の根拠は、所得税法施行規則97条の4第1項です。
法第二百二十八条の四第一項(支払調書等の提出の特例)に規定する財務省令で定めるところにより算出した数は、同項に規定する調書等(以下この項及び次項において「調書等」という。)の提出期限の属する年の前々年の一月一日から十二月三十一日までの間にその者が提出すべきであつた当該調書等の枚数を別表第五(一)から別表第五(十五)まで及び別表第五(十七)から別表第九(三)までの表ごとに計算した数とする(所得税法施行規則97条の4第1項)
「表ごとに」とは、様式ごとにということです。 給与所得の源泉徴収票は別表第六(一)、 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票は別表第六(二)、公的年金等の源泉徴収票は別表第六(三)という 具合に、様式の別がそのまま種類の別になります。
質疑応答事例が、この点を具体例で示しています。
提出枚数の判定は、法定調書の種類ごとに行うことになりますので、A支店が110枚の給与所得の源泉徴収票のほかに、80枚の報酬等の支払調書を提出していたとしても、報酬等の支払調書はe-Tax又は光ディスク等による提出義務はありません。
(国税庁 質疑応答事例「e-Tax又は光ディスク等による法定調書の提出義務」)
この事例は枚数が100枚で書かれています。 注記に「令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて 作成しています」とあるとおり、30枚への引下げが適用される前の時点のものです。 種類ごとに判定するという考え方の部分は、引下げ後も変わりません。
③ 判定は「提出義務を有する者ごと」に行う
同じ質疑応答事例の照会は、支店の話です。
当社は、全国で事業展開しており、支店ごとに法定調書の提出先税務署が異なっています。
令和6年1月において、A支店は110枚、B支店は60枚の給与所得の源泉徴収票を提出しており、当社全体の提出枚数が100枚以上となるため、令和8年1月は、A支店とB支店のどちらもe-Tax又は光ディスク等により給与所得の源泉徴収票を提出する必要がありますか。
回答は、次のとおりです。
A支店は、e-Tax又は光ディスク等により給与所得の源泉徴収票を提出する必要がありますが、B支店は、その必要はありません。
(中略)この法定調書の提出枚数が100枚以上かどうかの判定は、法定調書の提出義務を有する者ごとに行うことになりますので、照会の場合、A支店のみがe-Tax又は光ディスク等による提出を義務付けられます。
法人単位の合計では判定しません。 給与所得の源泉徴収票の提出先は、所得税法施行規則93条1項が 「その給与等に係る所得税の法第十七条(源泉徴収に係る所得税の納税地)の規定による納税地の 所轄税務署長」としています。その17条は、納税地を次のように定めています。
第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者その他第四編第一章から第六章まで(源泉徴収)に規定する支払をする者(以下この条において「給与等支払者」という。)のその支払につき源泉徴収をすべき所得税の納税地は、当該給与等支払者の事務所、事業所その他これらに準ずるものでその支払事務を取り扱うもの(以下この条において「事務所等」という。)のその支払の日における所在地(後略)(所得税法17条1項)
支払事務を支店で扱っているなら、提出先の税務署も支店ごとに分かれます。 質疑応答事例の 照会が「支店ごとに法定調書の提出先税務署が異なっています」と書いているのは、この形です。
本店等一括提出は、別に承認が要ります
支店の分を本店でまとめて電子で出す制度はあります。
本店等が、e-Tax 等により、支店等が提出すべき法定調書を取りまとめて提出(本店等一括提出)することができる制度です。
なお、本店等一括提出を選択する場合には、支店等がその支店等を所轄する税務署長に対して「支払調書等の本店等一括提出に係る承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。
(同手引1ページ)
申請するのは支店等のほうです。 本店が申請するのではありません。
令和8年12月31日までに提出すべき分は100枚のままです
引下げの根拠は、令和6年度税制改正です。財務省の解説が、改正の内容と適用時期を分けて書いています。
上記 1 の制度の対象となるかどうかの判定基準となる調書等の提出期限の属する年の前々年の 1 月 1 日から12月31日までの間に提出すべきであった調書等の枚数が30枚以上に引き下げられました(所法228の 4 ①、措法42の 2 の 2 ①、国外送金等調書法 4 ②)。
(財務省「令和6年度 税制改正の解説」116ページ)
上記 2 の改正は、令和 9 年 1 月 1 日以後に提出すべき調書等について適用し、同日前に提出すべき調書等については従前どおりとされています(改正法附則 5 、37、57)。
(同)
タックスアンサーも、同じ区切りを括弧で示しています。
法定調書の種類ごとに、前々年の提出すべきであったその法定調書の提出枚数が「30枚以上」(令和8年12月31日以前に提出する法定調書については「100枚以上」)であるものについては(後略)
(国税庁 タックスアンサー No.7455)
切り替わるのは「提出すべき年」です。実際に提出した年ではありません。 タックスアンサーは「令和8年12月31日以前に提出する法定調書」と書いていますが、 改正法附則が定めているのは「提出すべき調書等」です。改正法の附則そのものを引きます。
(支払調書等の提出の特例に関する経過措置)
第五条 新所得税法第二百二十八条の四第一項の規定は、令和九年一月一日以後に提出すべき同項に規定する調書等について適用し、同日前に提出すべき旧所得税法第二百二十八条の四第一項に規定する調書等については、なお従前の例による。
(令和6年3月30日法律第8号 附則5条)
財務省の解説も「令和 9 年 1 月 1 日以後に提出すべき調書等について適用し、同日前に提出すべき 調書等については従前どおり」と書いています。同じ「令和9年1月1日以後に提出すべき」という 言い方について、国税庁はこう説明しています。
令和9年1月1日以後に提出すべき源泉徴収票とは、令和8年分以後の源泉徴収票をいい(後略)
(国税庁「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」問1)
源泉徴収票のみなし提出の特例は、令和9年1月1日以後に提出すべき源泉徴収票(令和8年分以後の源泉徴収票)が対象となりますので、令和7年分の源泉徴収票は、源泉徴収票のみなし提出の特例の対象外です。
(同 問10)
この2つはみなし提出の特例についての説明ですが、文言は上の附則5条と同じです。 「提出すべき」は提出期限で決まるので、令和7年分の法定調書を令和9年に遅れて提出しても、 100枚基準のままになります。令和7年分の提出期限は令和8年1月31日で、 令和9年1月1日より前に提出すべきであった分だからです。
国税庁のリーフレットは、報酬等の支払調書を毎年30枚出している例で、 令和8年の提出は義務なし、令和9年と令和10年の提出は義務ありという図を示しています。 令和8年の提出は基準年が令和6年で、100枚基準が適用されるためです。
所得税法以外の調書も同じ日から下がります
タックスアンサー No.7455が挙げている根拠法令は「所法228の4、相法59、措法42の2の2、 国外送金等調書法4」の4本です。財務省の解説が引下げの根拠として挙げているのは 所得税法・租税特別措置法・国外送金等調書法の3本ですが、相続税法59条5項にも同じ 「百以上」の規定があり、令和6年の改正法の施行期日の規定で、令和9年1月1日から 改正されることが示されています。
次に掲げる規定 令和九年一月一日
(中略)ロ 第三条中相続税法第五十九条第五項の改正規定及び附則第十二条第二項の規定
(令和6年3月30日法律第8号 附則1条8号)
相続税法59条の調書は5種類あります。国税庁の整理では、「生命保険金・共済金受取人別支払調書」 「損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書」「退職手当金等受給者別支払調書」 「保険契約者等の異動に関する調書」「信託に関する受益者別(委託者別)調書」です (タックスアンサー No.7401)。「保険契約者等の異動に関する調書」は59条2項の調書で、 生命保険契約・損害保険契約の契約者が死亡したことに伴って契約者の変更手続を行った場合に 提出するものです。 死亡退職で退職手当等を支払った場合は、退職所得の源泉徴収票ではなく「退職手当金等受給者別支払調書」を提出します。
ただし、死亡退職により退職手当等を支払った場合は、相続税法の規定による「退職手当金等受給者別支払調書」を提出することになりますので、この場合には「退職所得の源泉徴収票等」を提出する必要はありません。
(国税庁 タックスアンサー No.7421)
給与所得の源泉徴収票は、広がった提出範囲では数えません
ここが、いちばん誤解されるところです。
令和8年分から、給与所得の源泉徴収票の提出範囲が給与支払報告書と同じ範囲に広がりました。 改正前は支払金額の多い人だけが提出範囲でしたが、改正後は中途退職者で30万円以下の人を除く 全員が範囲に入ります。あわせて、市区町村に給与支払報告書を提出すれば税務署に源泉徴収票を 提出したものとみなされる仕組みが始まります(源泉徴収票のみなし提出の特例)。 この2つについては、別の記事で扱いました(中小企業が最初に自動化する業務は、提出物ではなく台帳で決まります)。
この「全員分」の枚数で30枚を判定すると、ほとんどの法人が義務に入ります。 実際はそうなりません。
源泉徴収票の提出範囲が改正されましたが、基準年に提出すべきであった源泉徴収票の枚数は、令和9年1月1日以後も改正前の提出範囲で税務署に提出すべきであった源泉徴収票の枚数で判定することになっています。改正前の提出範囲は問7をご覧ください。
(国税庁「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」(令和8年4月)問9)
財務省の解説も、令和5年度税制改正の適用関係に注記を置いています。
電子情報処理組織又は光ディスク等を使用した調書等の記載事項の提供義務(中略)の判定の対象となる源泉徴収票の枚数から、上記 2 ⑵による改正前の提出省略範囲の対象であった源泉徴収票の枚数を除外し、改正前の判定基準を維持するための経過措置があわせて講じられています(改正所規附則10②、11②)。
(財務省「令和5年度 税制改正の解説」94ページ)
提出範囲は広げるが、電子的提出義務の判定基準は動かさない。 そういう作りです。
この経過措置は、公的年金等の源泉徴収票にも置かれています。 根拠として挙がっている 「改正所規附則10②、11②」の原文を引きます。10条2項が給与所得の源泉徴収票、 11条2項が公的年金等の源泉徴収票です。
(給与等の源泉徴収票に関する経過措置)
第十条 2 令和九年一月一日以後に提出すべき新規則第九十三条第一項に規定する源泉徴収票に係る新規則第九十七条の四第一項の規定の適用については、同項中「枚数」とあるのは、「枚数(所得税法施行規則の一部を改正する省令(令和五年財務省令第十二号)による改正前の所得税法施行規則第九十三条第二項各号(給与等の源泉徴収票)の規定に該当する同条第一項に規定する給与等に係る別表第六(一)の表の枚数を除く。)」とする。
(公的年金等の源泉徴収票に関する経過措置)
第十一条 2 令和九年一月一日以後に提出すべき新規則第九十四条の二第一項に規定する源泉徴収票に係る新規則第九十七条の四第一項の規定の適用については、同項中「枚数」とあるのは、「枚数((中略)改正前の所得税法施行規則第九十四条の二第二項各号(公的年金等の源泉徴収票)の規定に該当する同条第一項に規定する公的年金等に係る別表第六(三)の表の枚数を除く。)」とする。
(所得税法施行規則の一部を改正する省令(令和5年財務省令第12号)附則10条2項・11条2項)
仕組みは「除く」です。 97条の4第1項が数える枚数から、改正前の提出省略範囲に当たって いた分を差し引く。残るのは、改正前であれば提出すべきであった枚数そのものです。
公的年金等の源泉徴収票は、改正前は扶養親族等申告書の提出対象となるものは60万円超、 確定給付企業年金等で申告書を提出できないものは30万円超が提出範囲でしたが、改正後は 提出省略範囲が廃止されて「すべての公的年金等」になりました(同94ページ、前掲Q&A 問7)。 それでも枚数判定には、60万円・30万円の改正前の範囲を当てはめます。
改正前の提出範囲は、いまも条文に残っています
数えるときに当てはめるのは、改正前の提出範囲です。これは所得税法施行規則93条2項で、 令和8年12月31日までに提出すべき源泉徴収票についてはまだ現行の規定です。
前項の場合において、次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該各号の規定に該当する給与等に係る同項の源泉徴収票は、税務署長に提出することを要しない(所得税法施行規則93条2項)
| 号 | 提出を要しない場合 |
|---|---|
| 1号 | 同一人に対するその年中の年末調整を受けた給与等(所得税法204条1項2号に規定する者に支払う給与等および2号の役員分を除く)の支払金額が500万円以下 |
| 2号 | 同一人に対するその年中の年末調整を受けた給与等で、法人がその役員(相談役、顧問その他これらに類する者を含む)に支払うものの支払金額が150万円以下 |
| 3号 | 同一人に対するその年中の1号・2号以外の給与等で、給与所得者の扶養控除等申告書を提出した者(2号の役員を除く)に対して、その提出の際に経由した給与等の支払者が支払うものの支払金額が250万円以下 |
| 4号 | 同一人に対するその年中の1号から3号以外の給与等の支払金額が50万円以下 |
条文は「提出することを要しない」側から書かれています。 したがって数えるのは、 この4つの号に当たらないものです。表を言い換えると、こうなります。
| 区分 | 提出すべきであった(=数える) |
|---|---|
| 年末調整をした一般の職員 | 支払金額が500万円を超えるもの |
| 年末調整をした役員(相談役・顧問その他これらに類する者を含む) | 支払金額が150万円を超えるもの |
| 年末調整をした弁護士・税理士等(所得税法204条1項2号の者) | 支払金額が250万円を超えるもの |
| 年末調整をしなかった者のうち、扶養控除等申告書を提出した者で、その年中に退職した者、または災害により源泉徴収税額の徴収猶予・還付を受けた者 | 支払金額が250万円を超えるもの(役員は50万円を超えるもの) |
| 年末調整をしなかった者のうち、扶養控除等申告書を提出した者で、主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため年末調整をしなかった者 | 全部 |
| 扶養控除等申告書を提出しなかった者(乙欄・丙欄) | 支払金額が50万円を超えるもの |
1号の括弧書きを落とさないでください。 500万円で切れるのは、所得税法204条1項2号の 弁護士・司法書士・税理士等と役員を除いた人です。弁護士・税理士等に給与として支払っている 場合は250万円、役員なら150万円で判定します。
2,000万円の行も落とさないでください。 条文の上では、2,000万円を超えて年末調整をしなかった 人の給与等も3号に当たるので、250万円を超えていれば数えることになります。国税庁の表は、 これを独立の行として「全部」と書いています(タックスアンサー No.7411、前掲Q&A 問7)。
役員の150万円も、現職の役員だけではありません。 国税庁は「法人の役員(現に役員を していなくても、その年中に役員であった者を含みます。)」としています(同No.7411)。 年の途中で退任した人を一般の職員として500万円で数えると、枚数が足りなくなります。
設例:役員・職員あわせて54名の法人で、判定枚数は8枚になります
数字で見ます。以下の人数・金額は、説明のために作った架空のものです。
| 区分 | 人数 | 1人あたりの年間支払金額 | 改正前の範囲 | 改正後の範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 役員(常勤・年末調整済) | 2 | 960万円 | 2 | 2 |
| 役員(非常勤・年末調整済) | 1 | 120万円 | 0 | 1 |
| 職員(年末調整済) | 6 | 620万円 | 6 | 6 |
| 職員(年末調整済) | 21 | 430万円 | 0 | 21 |
| 中途退職者(扶養控除等申告書あり) | 3 | 180万円 | 0 | 3 |
| 中途退職者(扶養控除等申告書あり) | 1 | 22万円 | 0 | 0 |
| 非常勤職員(乙欄・申告書なし) | 20 | 38万円 | 0 | 20 |
| 合計 | 54 | 8 | 53 |
- 改正前の提出範囲で数えた枚数 … 8枚(30枚以上ではない → 義務なし)
- 改正後の提出範囲で数えた枚数 … 53枚(30枚以上だが、判定には使わない)
54名いても、判定に使う枚数は8枚です。 内訳を1行ずつ確かめます。 非常勤の役員(120万円)は2号の150万円以下なので数えません。430万円の職員21名は 1号の500万円以下なので数えません。中途退職者の180万円は3号の250万円以下、 乙欄の38万円は4号の50万円以下です。残るのは役員2名と620万円の職員6名で、合わせて8枚になります。
同じ法人で、職員27名のうち500万円を超える人数だけを振ってみます。
| 500万円を超える職員 | 判定枚数 | 義務 |
|---|---|---|
| 0名 | 2枚 | なし |
| 8名 | 10枚 | なし |
| 16名 | 18枚 | なし |
| 24名 | 26枚 | なし |
| 27名(全員) | 29枚 | なし |
この法人は、職員27名の全員が500万円を超えても29枚で、30枚に届きません。 この設例では、 残りの区分(非常勤役員の120万円、中途退職者の180万円と22万円、乙欄の38万円)がいずれも それぞれの金額以下なので、数えられるのは役員2名と職員27名の合計29名が上限になります。 30枚に届かせるには、役員2名のほかに500万円を超える職員が28名必要で、いまの人数では足りません。 給与所得の源泉徴収票だけで30枚に当たるのは、それぞれの区分の金額(職員は500万円、 役員は150万円、弁護士・税理士等は250万円)を超える人が、あわせて30人いる規模です。 金額の低い区分に人数が寄っている法人では、職員の給与が高くなくても届くことがあります。
国税庁の例と合わせて確かめます
Q&A 問9は、令和11年に給与支払報告書を提出する場合の例を2つ挙げています。
<例1>基準年である令和9年に、支払金額600万円の年末調整済給与支払報告書50枚を市区町村に提出し、税務署に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされている場合、「基準年(令和9年)に提出すべき給与所得の源泉徴収票」の枚数は50枚と判定されます。
<例2>基準年である令和9年に、①支払金額600万円の年末調整済給与支払報告書20枚、②支払金額40万円の乙欄適用給与支払報告書15枚を市区町村に提出し、税務署に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされている場合、改正前の提出範囲に当てはめると、①は「提出すべき給与所得の源泉徴収票」に含まれる一方、②は「提出すべき給与所得の源泉徴収票」に含まれず、「基準年(令和9年)に提出すべき給与所得の源泉徴収票」の枚数は20枚と判定されます。
例2の②が外れるのは、40万円が4号の50万円以下だからです。①+②は35人ですが、 判定枚数は20枚で、義務はありません。上の表の当てはめと同じ結果になります。
「実際に税務署へ出した枚数は0枚」でも0枚になりません
みなし提出が始まると、税務署には1枚も出さない年が出てきます。それでも枚数は0になりません。
なお、ここでいう「基準年に税務署に提出すべきであった源泉徴収票」には、支払報告書を市区町村に提出したため、税務署に提出したものとみなされた源泉徴収票も含まれます。そのため、基準年において給与支払報告書を市区町村に提出したことにより税務署にはみなし提出となっている場合(=実際に税務署に提出した源泉徴収票としては0枚)であっても、「基準年に税務署に提出すべきであった源泉徴収票」は0枚とはなりませんのでご注意ください。
(同Q&A 問9)
「出していないから0枚」は通りません。 みなし提出された分を、改正前の提出範囲で数え直します。
給与支払報告書も、同じ年からeLTAXまたは光ディスク等になります
ここで市区町村側の話がつながります。地方税法317条の6第5項です。
第一項又は第三項の規定により給与支払報告書を提出する義務がある者で、当該給与支払報告書の提出期限の属する年において所得税法第二百二十六条第一項に規定する源泉徴収票について同法第二百二十八条の四第一項の規定の適用を受けるものは、第一項又は第三項の規定にかかわらず、当該給与支払報告書に記載すべきものとされるこれらの規定に規定する事項(中略)を次に掲げる方法のいずれかにより第一項又は第三項に規定する市町村の長に提供しなければならない(地方税法317条の6第5項)
挙げられている方法は2つです。
| 号 | 方法 |
|---|---|
| 1号 | 地方税関係手続用電子情報処理組織を使用し、かつ、地方税共同機構を経由して行う方法(eLTAX) |
| 2号 | 給与支払報告書記載事項を記録した光ディスク等を提出する方法 |
「所得税法228条の4第1項の規定の適用を受けるもの」という書き方なので、 国税側の判定が、そのまま地方税側の義務になります。 別に数え直すわけではありません。 国税庁の手引も、同じことを平易に書いています。
前々年(基準年)に税務署に提出すべきであった給与所得の源泉徴収票(源泉徴収票のみなし提出の特例により税務署に提出したものとみなされたものも含みます。)の枚数が30枚以上であった場合については、eLTAX 又は光ディスク等の電子的方法で提出する必要があります。
(同手引4ページ)
公的年金等支払報告書についても、同条6項に同じ作りの規定があります。
なお、eLTAXと光ディスク等は、義務の上では同じ扱いですが、従業員への効き方が違います。 国税庁は、マイナポータル連携の対象になるのを eLTAXで出した場合として書いています。
令和9年1月1日以後に提出する給与支払報告書についても、eLTAX で提出されたものについては、令和9年2月以降、マイナポータル連携の対象となります(公的年金等支払報告書は対象となりません。詳細は問16 をご覧ください。)。
(国税庁「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」問14)
光ディスク等についても、源泉徴収票の側で明示されています。
また、事業主の方が給与所得の源泉徴収票をe-Taxで提出した場合には、マイナポータル連携により、従業員の方が確定申告を行う際に給与所得の源泉徴収票の情報が確定申告書の該当項目に自動で入力可能となりますが、給与所得の源泉徴収票を光ディスク等で提出した場合には、マイナポータル連携は利用できませんのでご注意ください。
(国税庁「法定調書の光ディスク等による提出のご案内」)
給与支払報告書を光ディスク等で出した場合について正面から述べた資料は、確認できませんでした。 ここは断定しません。確認できるのは「eLTAXで出せば対象になる」ところまでで、 従業員の確定申告を楽にしたいなら、光ディスク等ではなくeLTAXを選ぶという判断材料にはなります。
質疑応答事例は、この連動を一文で書いています。
また、給与所得(及び公的年金等)の源泉徴収票のe-Tax又は光ディスク等による提出が義務付けられた年分については、市区町村に提出する給与支払報告書(及び公的年金等支払報告書)についても光ディクス等又はeLTAX(地方税ポータルシステム)による提出が義務化されています。
(前掲 質疑応答事例。「光ディクス等」は原文ママ。正しくは光ディスク等)
みなし提出の特例があるので、源泉徴収票の側で義務がかかっていても、 実際に電子で出す先は市区町村だけになります。 給与支払報告書をeLTAXで出せば、 税務署への源泉徴収票の提出はそれでみなされます。
報酬等の支払調書が先に30枚に当たることがあります
枚数を抑える経過措置があるのは、給与所得の源泉徴収票と公的年金等の源泉徴収票だけです (改正所規附則10②・11②)。ほかの法定調書にはありません。 とくに報酬等の支払調書は、提出範囲の金額が低く置かれている区分があります。
弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超えるもの
(国税庁 タックスアンサー No.7431)
5万円です。 外部講師に1回だけ謝金を払った、広報誌に寄稿してもらって原稿料を払った、 という支払が、そのまま1枚ずつ積み上がります。
ただし、報酬等の支払調書の提出範囲は5万円だけではありません。 同じタックスアンサーは、 次のように区分しています。
| 区分 | 提出範囲 |
|---|---|
| 外交員・集金人・電力量計の検針人・プロボクサー等の報酬、バーやキャバレー等のホステス等の報酬、広告宣伝のための賞金 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの |
| 馬主に支払う競馬の賞金 | 同一人に対するその年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払を受けた者に係る、その年中のすべての支払金額 |
| 職業野球の選手などに支払う報酬・契約金 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの |
| 弁護士や税理士等に対する報酬、原稿料や画料、講演料等 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの |
| 社会保険診療報酬支払基金(令和8年10月から「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」に名称が変更)が支払う診療報酬 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの |
数える前に、自分の支払がどの区分に当たるかを確かめてください。
金額の判定には、消費税の扱いの決まりもあります。
提出範囲の金額については、消費税および地方消費税の額を含めて判断しますが、消費税および地方消費税の額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断しても差し支えありません。
(同 No.7431)
5万円の境目にいる支払は、これで枚数が動きます。
| 区分 | 人数 | 年間支払額 | 5万円超(=数える) |
|---|---|---|---|
| 顧問税理士 | 1 | 60万円 | 1 |
| 弁護士 | 1 | 35万円 | 1 |
| 外部講師(複数回) | 12 | 12万円 | 12 |
| 外部講師(1回のみ) | 18 | 6万円 | 18 |
| 広報誌の原稿料(個人) | 8 | 7.2万円 | 8 |
| 単発の講師 | 14 | 3万円 | 0 |
| 合計 | 54 | 40 |
数は同じ54でも、こちらは40枚になります。30枚以上なので、2年後の提出は電子に限られます。 人数・金額は説明のために作った架空のものですが、外部に研修・執筆・診断などを頼むことが多い 学校法人・自治体では、給与所得の源泉徴収票より先に報酬等の支払調書が基準に当たることがあります。
| 給与所得の源泉徴収票 | 報酬等の支払調書 | |
|---|---|---|
| いま(令和8年分)の提出範囲 | 中途退職者の30万円以下を除く全員(令和8年分から広がった) | 弁護士・税理士等への報酬、原稿料、講演料等と職業野球の選手などへの報酬・契約金は同一人に年5万円超。外交員・ホステス等の報酬、広告宣伝の賞金、社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬は50万円超、馬主の競馬の賞金は1回75万円超(提出範囲の金額に改正はない) |
| 枚数判定に当てはめる範囲 | 改正前の提出範囲(500万円・150万円・250万円・50万円・2,000万円超は全部) | いまの提出範囲そのまま |
| 枚数を抑える経過措置 | あり | なし |
設例の法人は、給与所得の源泉徴収票では義務なし、報酬等の支払調書では義務ありになります。 種類ごとに判定するので、片方だけ電子で出し、もう片方は紙でも構いません。
★自治体の審議会・委員会の委員報酬は、報酬等の支払調書ではありません
ここは取り違えやすいところです。 委員に「報酬」という名前で払っていても、 所得税法上は給与等として扱うのが原則です。
(委員手当等)
28-7 国又は地方公共団体の各種委員会(審議会、調査会、協議会等の名称のものを含む。)の委員に対する謝金、手当等の報酬は、原則として、給与等とする。ただし、当該委員会を設置した機関から他に支払われる給与等がなく、かつ、その委員会の委員として旅費その他の費用の弁償を受けない者に対して支給される当該謝金、手当等の報酬で、その年中の支給額が1万円以下であるものについては、課税しなくて差し支えない。この場合において、その支給額が1万円以下であるかどうかは、その所属する各種委員会ごとに判定するものとする。
(所得税基本通達28-7)
給与等に当たるものは、報酬等の支払調書の対象から外れます。所得税法204条2項1号が、 同条1項の源泉徴収義務を「前項に規定する報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、 第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(中略)に該当するもの」には 適用しないとしているからです。
つまり自治体の委員報酬は、報酬等の支払調書ではなく、給与所得の源泉徴収票の側で数えます。 ただし通達は「原則として」であり、1万円以下の非課税の扱いにも2つの条件 (その委員会を設置した機関から他に支払われる給与等がなく、かつ、 その委員会の委員として旅費その他の費用の弁償を受けない)が付いています。 自分の支給実態がどちらなのかは、支給要綱と源泉徴収の実務に当たって確かめてください。
退職所得の源泉徴収票は、令和8年分から全員分になります
もう1つ、令和8年分から枚数が増える法定調書があります。退職所得の源泉徴収票です。
退職所得の源泉徴収票等は、退職手当等を支払ったすべての方について作成し、提出する必要があります。
(注)令和7年12月31日以前に支払うべき退職手当等については、支払ったすべての方について退職所得の源泉徴収票等を作成し、交付することとされていますが、税務署と市区町村へ提出しなければならないのは、受給者が法人の役員である場合に限られています。
(国税庁 タックスアンサー No.7421)
改正の内容と理由は、財務省の解説にあります。
税務当局の適正執行の確保などの観点から、退職所得の源泉徴収票の提出省略範囲を定める規定が廃止され、法人の役員以外の居住者に対して支払う退職手当等に係る退職所得の源泉徴収票についても、税務署長に提出しなければならないこととされました(旧所規94②)。
(財務省「令和7年度 税制改正の解説」121ページ)
上記 2 ⑶の改正は、令和 8 年 1 月 1 日以後に支払うべき退職手当等について提出し、又は交付する源泉徴収票について適用し(後略)
(同122ページ)
「令和8年分以降」ではなく「令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等」で切れます。 また、市区町村側は逆に軽くなっています。
(注)令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等に係る特別徴収票については、当分の間、市区町村への提出を省略することができます。
(前掲 No.7421)
変わったのは提出範囲だけではありません。 同じ令和7年度税制改正で、様式に【番号】欄が 設けられています。
○ 【番号】欄の創設
支払われた退職手当等が退職一時金等に該当するなどの場合には、その退職手当等の区分に応じそれぞれ定められた番号を記載することになります。
(国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」2ページ)
財務省の解説は、退職一時金等なら1、老齢一時金なら2、特定譲渡制限付株式等の譲渡制限が 解除されたことによる経済的利益なら3、新株予約権等の行使により取得した株式に係る経済的利益 なら4、これらが組み合わさる場合は5から7と、7つの区分を挙げています(「令和7年度 税制改正の 解説」121〜122ページ、所得税法施行規則別表第六(二))。 「全員分になった」で止めずに、様式と記載要領まで確かめてください。
退職所得の源泉徴収票は、様式が給与所得の源泉徴収票とは別(別表第六(二))なので、 枚数も別に数えます。退職者が年に数名の規模なら、30枚に当たることはまずありません。
いま確認すること
令和9年1月の提出に向けて、いま手元で確かめられるのは次の順序です。
- 令和7年(基準年)に税務署へ提出した法定調書を、種類ごとに数える。 合計表の控えが 残っていれば、そこに種類ごとの提出枚数が書かれています
- 源泉徴収票の枚数は、改正前の提出範囲で数え直す。 令和7年に提出した分はまだ改正前の 範囲なので、正しく提出していれば、その枚数がそのまま判定枚数になります。提出漏れが あった分は「提出すべきであった」枚数に含めて数えます
- 支店など、提出先の税務署が分かれているなら、その単位で数える
- 種類ごとに30枚以上のものを洗い出す。 それが令和9年に紙で出せない法定調書です
- 該当するものがあれば、提出の方法を決めて事前手続を済ませる。 光ディスク等は事前手続が 不要ですが、規格とレコードの記録要領に合わせてCSVを作る必要があります。e-Taxは開始届出書、 認定クラウド等は利用開始の届出です
- 源泉徴収票が該当するなら、給与支払報告書もeLTAXまたは光ディスク等になることを確認する
- 期限は令和9年2月1日(月)。 1月31日が日曜日に当たるため、翌日に繰り下がります (国税通則法10条2項、給与支払報告書は地方税法20条の5第2項)
書面で提出する場合の様式も変わっています。手引は「令和8年9月の国税システムの更改に伴い、 書面で税務署に提出する際の法定調書の様式が変更されています」として、国税庁ホームページから 最新の様式をダウンロードするよう案内しています。昨年の様式の使い回しは避けてください。
まとめ
- 電子的提出義務の基準は、令和9年1月1日以後に提出すべき法定調書から30枚以上になります。令和8年12月31日までに提出すべき分は、実際に提出するのが令和9年以後になっても100枚以上のままです(財務省「令和6年度 税制改正の解説」116ページ、改正法附則5、37、57)
- 数えるのは基準年=提出期限の属する年の前々年に提出すべきであった枚数です。令和9年1月提出分の基準年は令和7年で、判定材料はすでに手元にあります
- 判定は法定調書の種類ごと(所得税法施行規則97条の4第1項の「表ごと」)、かつ提出義務を有する者ごと(質疑応答事例)に行います。法人全体の合計では判定しません
- 給与所得の源泉徴収票は、令和8年分から提出範囲が全員分に広がりましたが、枚数判定は改正前の提出範囲で行います(Q&A 問9、改正所規附則10②・11②の経過措置)。設例では53枚ではなく8枚で判定します
- みなし提出で税務署に出していない分も、0枚にはなりません
- 源泉徴収票の側で義務がかかると、給与支払報告書もeLTAXまたは光ディスク等になります(地方税法317条の6第5項)
- 枚数を抑える経過措置があるのは、給与所得の源泉徴収票と公的年金等の源泉徴収票だけです(改正所規附則10②・11②)。報酬等の支払調書は、弁護士・税理士等への報酬や講演料等なら同一人に年5万円超で1枚ずつ積み上がるので、外部への謝金・原稿料が多い法人ではこちらが先に基準に当たることがあります(なお、自治体の審議会等の委員報酬は、原則として給与等であって報酬等の支払調書の対象ではありません。所得税基本通達28-7、所得税法204条2項1号)
- 光ディスク等は事前の承認・届出が不要です。義務がかかる場合は、もともと承認・届出の規定がありません(所得税法228条の4第1項2号。令和5年度税制改正で廃止されたのは、義務がかからない人が任意に光ディスク等で出すときの要件です)。e-Taxと認定クラウド等には事前手続が要ります