中小企業向け税務

交際費の「年800万円まで」は、1人1万円以下の飲食費を分けてから数えます

「中小企業は、交際費が年800万円まで経費になる」。決算前の打ち合わせで、最もよく出てくる一文です。

間違いではありません。ただし、この一文だけを持って帳簿を見ると、たいてい2か所でずれます。

ひとつは、800万円は自動では効かないこと。交際費等は原則として全額が損金不算入で、800万円は「することができる」と書かれた選択制の特例です。申告書に明細書を付けなければ適用されません。

もうひとつは、800万円の枠に入る前に外れる支出があること。1人当たり1万円以下の飲食費は、そもそも交際費等に当たりません。枠を食わないので、実質的に使える金額は800万円より大きくなります。ただし外れるかどうかは、記録の付け方と、消費税を税込で経理しているか税抜で経理しているかで変わります。

自社で判定できるところまで、条文と通達の原文に沿って整理します。

結論

支出枠(800万円)を使うか根拠
1人当たり1万円以下の飲食費で、所定の5項目を記載した書類を保存しているもの使わない(そもそも交際費等でない)措置法第61条の4第6項2号・第8項、措置法施行令第37条の5第1項
同じ飲食で、書類を保存していないもの使う同上(保存が適用の条件)
会議に関連して茶菓・弁当を供与するために通常要する費用使わない措置法第61条の4第6項3号、措置法施行令第37条の5第2項2号
カレンダー・手帳などを贈与するために通常要する費用使わない措置法第61条の4第6項3号、措置法施行令第37条の5第2項1号
専ら従業員の慰安のために行われる運動会・演芸会・旅行等のために通常要する費用使わない措置法第61条の4第6項1号
社内の役員・従業員だけの飲食使う(1万円以下でも外れない。ただし社内行事は下の通達で外れることがある)措置法第61条の4第6項の括弧書き、措置法通達61の4(1)-10
接待の場への送迎費、ゴルフに伴う飲食、飲食物の詰め合わせの贈答使う接待飲食費に関するFAQ Q3

そして、枠そのものにも条件が3つ付きます。資本金1億円以下であること、別表十五を申告書に付けること、事業年度が12か月に満たなければ月数で按分すること、の3つです。

数字で見ると、1人1万円以下の飲食費を分けたかどうかで損金不算入額が動きます。設例(架空)で、支出額1,200万円のうち1万円以下の飲食費が180万円、カレンダー代が20万円、残りのうち接待飲食費が600万円ある会社の場合、参加者の数まで記録していれば損金不算入額は200万円、記録していなければ380万円です。差は180万円で、外れなかった金額とちょうど同じになります。

制度のかたち — 原則は全額が損金不算入

最初に、順番を確かめます。措置法第61条の4第1項です。

法人が平成二十六年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(以下この条において「適用年度」という。)において支出する交際費等の額(当該適用年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(中略)が百億円以下である法人(中略)については、当該交際費等の額のうち接待飲食費の額の百分の五十に相当する金額を超える部分の金額)は、当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

本体は「損金の額に算入しない」です。括弧の中で、資本金100億円以下の法人について「接待飲食費の50%相当額を超える部分」に縮められています。つまり資本金100億円超の法人は交際費等の全額が損金不算入で、100億円以下の法人は接待飲食費の50%相当額だけが損金になります。

適用期限は令和9年3月31日までに開始する事業年度です。財務省「令和6年度 税制改正の解説」は「制度の適用期限が、令和9年3月31日まで3年延長されました(措法61の4①)」としています。

そのうえで第2項が、中小法人向けの選択肢を置いています。

前項の場合において、法人(中略)のうち当該適用年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が一億円以下であるもの(次に掲げる法人を除く。)については、前項の交際費等の額のうち定額控除限度額(八百万円に当該適用年度の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額をいう。)を超える部分の金額をもつて、同項に規定する超える部分の金額とすることができる。

語尾は「することができる」です。800万円は原則ではなく、第1項の本則に代えて選べる計算方法です。この形を押さえておくと、次に見る明細書の添付が「手続」ではなく「適用の条件」であることが分かります。

枠が効く条件は3つ

1. 資本金1億円以下であること(ただし例外がある)

第2項は「次に掲げる法人を除く。」として、資本金1億円以下でも使えない法人を挙げています。筆頭が次です。

普通法人のうち当該適用年度終了の日において法人税法第六十六条第五項第二号又は第三号に掲げる法人に該当するもの

法人税法第66条第5項第2号は「大法人(次に掲げる法人をいう。以下この号及び次号において同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人」で、大法人の筆頭が「資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人」です。

資本金5億円以上の会社に100%持たれている子会社は、自社の資本金がいくら小さくても定額控除限度額を使えません。法人税法第66条第5項第3号は、複数の大法人に合わせて100%持たれている場合です。このほか、第2項の本文は投資法人と特定目的会社を外しており、第2項2号は通算法人についての定めです(この記事は通算制度を扱いません)。

この場合、損金算入限度額は接待飲食費の50%相当額だけになります。設例(架空)で、支出交際費等の額1,000万円・接待飲食費600万円の会社なら、損金算入限度額は300万円で、損金不算入額は700万円です。同じ数字で定額控除限度額を使える会社なら損金不算入額は200万円ですから、差は500万円になります。

2. 別表十五を申告書に付けること

第7項が一文で置いています。

第二項の規定は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に同項に規定する定額控除限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。

「限り、適用する」です。付けなければ第1項の本則に戻ります。

ここでいう明細書が別表十五「交際費等の損金算入に関する明細書」です。令和7年4月1日以後終了事業年度分の様式は、上段が5行になっています。

欄名称中身
1支出交際費等の額下段「(8)の計」=支出額から控除される費用の額を引いた額
2支出接待飲食費損金算入基準額下段「(9)の計」×50/100
3中小法人等の定額控除限度額(1)と「800万円×月数/12」のうち少ない金額(通算法人は別表十五付表「5」の金額を使う)
4損金算入限度額(2)又は(3)
5損金不算入額(1)-(4)

4欄が「(2)又は(3)」と書かれているところが、第1項と第2項の選択がそのまま様式に出ている箇所です。下段は科目ごとに、支出額(6欄)、交際費等の額から控除される費用の額(7欄)、差引交際費等の額(8欄)、(8)のうち接待飲食費の額(9欄)の4列になっています。1人1万円以下の飲食費は7欄に入り、8欄に残りません。

なお、第7項は添付先として確定申告書等・修正申告書・更正請求書を挙げていますが、「期限後申告書を除く」とは書いていません。同じ条の第3項第3号はわざわざ「確定申告書等(期限後申告書を除く。)」と書いているので、書き分けられています。法人税法第2条第31号は「確定申告書」を「第七十四条第一項(確定申告)又は第百四十四条の六第一項若しくは第二項(確定申告)の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)をいう」と定義しています。

3. 12か月に満たない事業年度は月数で按分すること

定額控除限度額は「八百万円に当該適用年度の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額」です。月数の数え方は第4項にあります。

前二項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

設立1期目や決算期を変更した年は、ここで枠が縮みます。8か月なら800万円×8/12で約533万円、6か月なら400万円です。

ここが効いてくるのは、接待飲食費の50%にはこの按分が無いことです。第1項は月数に触れていません。事業年度が短いほど、50%を選ぶ側が相対的に有利になります。後ろで数字を出します。

1人1万円以下の飲食費は、枠を使う前に外れる

どう判定するか

交際費等の定義そのものに、除外が書き込まれています。第6項の柱書きと第2号です。

第一項、第三項及び前項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい(後略)

二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用

政令が措置法施行令第37条の5第1項です。

法第六十一条の四第六項第二号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、一万円とする。

計算は「飲食費として支出する金額 ÷ 参加した者の数」です。1件ごとに判定します。この金額が1万円以下なら、その費用は交際費等に当たりません。損金不算入の対象にならないので、800万円の枠も食いません。

金額基準が5,000円から1万円に上がったのは令和6年度改正です。財務省「令和6年度 税制改正の解説」は「交際費等の範囲から除外される飲食費が1人当たり1万円以下(改正前:5,000円以下)とされました(措令37の5①)」としたうえで、適用関係を「上記2⑴の改正は、法人が令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用し、法人が同日前に支出した飲食費については、従前どおりとされています(改正措令附則16)」としています。区切るのは事業年度ではなく、支出した日です。

書類を保存していることが条件

第8項です。

第六項第二号の規定は、財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。

財務省令が措置法施行規則第21条の18の4で、記載事項を5つ挙げています。

#記載事項
1飲食等のあった年月日
2参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
3参加した者の数
4飲食費の額、飲食店等の名称、その所在地
5その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項

領収書を綴じているだけでは、2と3が残りません。1人当たりの金額は参加者の数で割って出すので、人数の記録が無ければ判定そのものができません。

なお、取引先と共同で開催して費用を分担した場合は、措置法通達61の4(1)-23の(注)が扱っています。「その飲食等のために要する費用の総額を当該飲食等に参加した者の数で除して計算した金額が10,000円以下であるときに、同号の規定の適用がある」としたうえで、「ただし、分担又は負担した法人側に当該費用の総額の通知がなく、かつ、当該飲食等に要する1人当たりの費用の金額がおおむね10,000円程度に止まると想定される場合には、当該分担又は負担した金額をもって判定して差し支えない」としています。原則は総額です。自社の負担額で判定してよいのは、総額の通知がなく、かつ、 1人当たりの費用がおおむね1万円程度に止まると想定される場合に限られます。 「かつ」なので、総額が分からないだけでは足りません。

外れないもの

社内だけの飲食

社内の役員・従業員だけの飲食は、1人1万円以下でも交際費等から外れません。この除外は、第6項の後半にある「飲食費」の定義の括弧書きに置かれています。

第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。

括弧書きが置かれているのは接待飲食費の定義の中ですが、その括弧の末尾で「第二号において『飲食費』という」と定義されています。1万円以下の除外を定める第6項2号が使う「飲食費」も、この括弧書きが付いたものです。社内だけの飲食は、1万円以下の除外からも接待飲食費の50%からも、同じ一文で外れます。

そもそも交際費等の相手方は社外に限られません。措置法通達61の4(1)-22は「『得意先、仕入先その他事業に関係のある者等』には、直接当該法人の営む事業に取引関係のある者だけでなく間接に当該法人の利害に関係ある者及び当該法人の役員、従業員、株主等も含むことに留意する」としています。

ただし、社内の行事が全部これに当たるわけではありません。措置法通達61の4(1)-10が、交際費等に含まれないものを挙げています。

(1) 創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用 (2) 従業員等(従業員等であった者を含む。)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用

「おおむね一律に」が条件です。役員だけ、部署だけ、という形にすると、この通達からは外れます。

出向者が絡むときの判定は、国税庁「接待飲食費に関するFAQ」のQ5が示しています。「出向者が出向先である親会社の役員等を接待する会合に親会社の役員等の立場で出席しているような場合に支払う飲食代は、社内飲食費には該当しない」「出向者が自社の懇親会の席に、あくまで自社の役員等の立場で出席しているような場合に支払う飲食代は、社内飲食費に該当する」としています。どちらの立場で出席したかで分かれます。

そもそも飲食費に当たらないもの

先に、このFAQの版について一言。 「接待飲食費に関するFAQ」は平成26年4月1日現在の 法令によるもので、1人当たりの金額は5,000円、飲食費の条番号は旧第4項のままです。 この記事がここから引いているのは、金額基準の改正で変わっていない論点だけです (飲食費の範囲、社内飲食費、選択適用、更正の請求)。金額と条番号は、施行令・施行規則と タックスアンサー No.5265 から引いています。

同じFAQのQ3が3つ挙げています。ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用、接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費、飲食物の詰め合わせを贈答するために要する費用です。理由も書かれています。送迎費については「本来、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用として支出したものであり、その送迎費は飲食費に該当しない」。

一方で、持ち帰りは飲食費に入ります。Q2は「飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する『お土産代』」を飲食費に挙げています。得意先の事務所に差し入れる弁当代も、措置法通達61の4(1)-15の2が飲食等に含まれるとしています。詰め合わせの贈答との境目は、その場で飲食されることが想定されているかどうかです。

会議費と贈答品は、別の入口で外れる

1万円の判定にかける前に外れるものもあります。措置法施行令第37条の5第2項です。

一 カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用 二 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用 三 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

2号の範囲は措置法通達61の4(1)-21が示しています。「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用は、原則として(中略)『会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用』に該当する」。金額の上限は書かれておらず、基準は「通常供与される昼食の程度を超えない」です。1号の「これらに類する物品」も、通達61の4(1)-20が「多数の者に配付することを目的とし主として広告宣伝的効果を意図する物品でその価額が少額であるもの」としています。

「1万円」は消費税の経理方式で変わる

ここは見落とされやすい箇所です。

国税庁の法令解釈通達「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日付直法2-1。以下「消費税経理通達」)の9は、少額の減価償却資産などの金額基準について「法人がこれらの規定の適用がある減価償却資産に係る取引につき適用することとなる税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用することとなる方式により算定した価額により判定することに留意する」としたうえで、続けて次のように書いています。

措置法に規定する特別償却等において定められている金額基準又は措置法第61条の4第6項第2号《交際費等の損金不算入》に規定する金額基準についても、同様とする。

タックスアンサー No.5265 も「上記2の費用の金額基準である10,000円の判定や交際費等の額の計算は、法人の適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)により算定した価額により行います」としています。

消費税等の税率は、消費税法第29条第1号の100分の7.8と、地方税法第72条の83の「七十八分の二十二」を合わせて10%です。同じ飲食で結論が分かれます。

飲食の内容税抜経理で判定税込経理で判定
税抜50,000円(税込55,000円)・5人10,000円 → 外れる11,000円 → 外れない
税抜45,000円(税込49,500円)・5人9,000円 → 外れる9,900円 → 外れる

税込経理の法人が1人1万円以下に収めるには、税抜の単価で約9,091円までに抑える必要があります(10,000円÷1.1=9,090.909…円)。端数まで詰めると、税抜9,090円なら税込9,999円で収まり、9,091円では税込が1万円を超えます。同じ「1人1万円以下」でも、税抜の単価で見た線は約909円低いところに引かれます。

税抜経理でも、課税売上高が5億円を超える、または課税売上割合が95%未満の場合には、仕入税額控除ができなかった消費税等(控除対象外消費税額等)が出ることがあります。消費税経理通達12の(注)2は「税抜経理方式を適用することとなる場合における交際費等に係る課税仕入れ等の仮払消費税等の額のうち控除対象外消費税額等に相当する金額は、交際費等の額に含まれることになる」としています。(注)3は、そのうち飲食費に係る金額は飲食費の額に含まれるとしています。別表十五の下段にも「交際費等の額に係る控除対象外消費税額等」の行があります。

800万円と接待飲食費50%は、どちらを選ぶか

別表十五の4欄が「(2)又は(3)」なので、数字を両方出して大きいほうを使います。「接待飲食費に関するFAQ」のQ8は「中小法人については、接待飲食費の額の50%相当額の損金算入と、定額控除限度額までの損金算入のいずれかを、事業年度ごとに選択できる」としています。毎年決め直せます。

入れ替わる点は、式を並べると出ます。

  • 定額控除限度額を選ぶ … 損金算入限度額 = 支出交際費等の額と「800万円×月数÷12」の少ないほう
  • 接待飲食費50%を選ぶ … 損金算入限度額 = 接待飲食費×50%

50%のほうが大きくなるのは、接待飲食費が定額控除限度額の2倍を超えたときです。12か月の事業年度なら接待飲食費が1,600万円を超えたところで入れ替わります。設例(架空。支出交際費等の額2,000万円・12か月)で確かめます。

接待飲食費(2) 50%(3) 定額控除有利なほう(5) 損金不算入額
1,500万円750万円800万円800万円1,200万円
1,600万円800万円800万円同額1,200万円
1,700万円850万円800万円50%1,150万円

事業年度が短いと、この分岐点が下がります。定額控除限度額だけが月数で按分されるからです。

事業年度定額控除限度額入れ替わる接待飲食費
12か月800万円1,600万円
8か月約533万円約1,067万円
6か月400万円800万円

逆に、支出交際費等の額が定額控除限度額以下なら、50%を選ぶ意味はありません。3欄は(1)と「800万円×月数÷12」のうち少ないほうを書く欄なので、(1)がそのまま限度額になり、損金不算入額が0円になるからです。設例で、支出交際費等の額700万円が全額接待飲食費という会社でも、定額控除限度額を選べば損金不算入額は0円、50%を選ぶと350万円が限度額になり、350万円が損金不算入になります。

接待飲食費が多くても、まず枠に収まるかどうかを見るほうが先です。

記録の付け方で、損金不算入額が動く

1人1万円以下の飲食費と接待飲食費では、求められる記録が違います。措置法施行規則第21条の18の4は、同じ5項目を挙げながら、接待飲食費については「次に掲げる事項(第三号に掲げる事項を除く。)が記載されているもの」としています。第三号は「参加した者の数」です。

1人1万円以下の飲食費(交際費等から外す)接待飲食費(50%を損金にする)
必要な記録5項目すべて参加者の数を除く4項目
どこに財務省令で定める書類を保存法人税法上保存する帳簿書類に記載
根拠措置法第61条の4第8項措置法第61条の4第6項

参加者の数を記録していないと、1万円以下でも交際費等から外れません。設例(架空)で見ます。資本金1,000万円・12か月の会社で、交際費勘定の支出額が1,200万円、そのうち1人1万円以下の飲食費が180万円、カレンダー代が20万円、残りのうち接待飲食費が600万円とします。

欄参加者の数まで記録している参加者の数を記録していない
(1) 支出交際費等の額1,000万円1,180万円
(2) 支出接待飲食費損金算入基準額300万円390万円
(3) 中小法人等の定額控除限度額800万円800万円
(4) 損金算入限度額800万円800万円
(5) 損金不算入額200万円380万円

差は180万円で、外れなかった飲食費と同額です。右の列では接待飲食費が180万円増え、その半分だけ(2)が90万円上がっていますが、(4)は(3)の800万円のままなので、この90万円は結果に効いていません。定額控除限度額を選んでいる限り、接待飲食費の記録を増やしても損金は増えません。効くのは、交際費等から外れるかどうかのほうです。

なお、右の列で180万円が接待飲食費に入っているのは、帳簿書類の4項目は記載されている前提に置いているためです。4項目も記載がなければ、この180万円は(2)にも乗りません。

枠の外で起きること — 資産の取得価額に入れた交際費等

最後に、建設業や製造業で問題になる論点をひとつ置きます。

交際費等をいつの事業年度のものとして数えるかは、措置法通達61の4(1)-24が定めています。

(1) 取得価額に含まれている交際費等で同項に規定する適用年度(以下「適用年度」という。)の損金の額に算入されていないものであっても、支出の事実があった日を含む適用年度の交際費等に算入するものとする。 (2) 交際費等の支出の事実のあったときとは、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のあったときをいうのであるから、これらに要した費用につき仮払又は未払等の経理をしているといないとを問わないものとする。

仕掛品や建設中の固定資産の原価に入れていて、まだ費用になっていない交際費等も、支出した期の交際費等として数えます。損益計算書の交際費勘定だけを見ていると、ここが抜けます。

そのまま放置すると、損金不算入になった金額が資産の取得価額にも残ってしまいます。これを調整する扱いが措置法通達61の4(2)-7で、「当該適用年度の確定申告書において、当該原価算入額のうち損金不算入額から成る部分の金額を限度として、当該適用年度終了の時における棚卸資産の取得価額等を減額することができるものとする」としています。計算方法も示されており、損金不算入額に、支出した交際費等のうち取得価額に含まれている交際費等の占める割合を乗じた金額とすることができます。(注)で「この取扱いの適用を受けた場合には、その減額した金額につき当該適用年度の翌事業年度において決算上調整するものとする」としています。

決算前に確かめること

#確かめること根拠
1交際費勘定以外(会議費・福利厚生費・売上原価・仕掛品)に交際費等が入っていないか措置法通達61の4(1)-15・61の4(1)-24
21人1万円以下の飲食費について、参加者の氏名と人数が残っているか措置法第61条の4第8項、施行規則第21条の18の4
3その判定を、自社の経理方式(税込か税抜か)で行っているか消費税経理通達9
4社内だけの飲食を、1万円以下だからと外していないか措置法第61条の4第6項の括弧書き
5ゴルフ・観劇に伴う飲食や送迎費を、飲食費に入れていないか接待飲食費に関するFAQ Q3
6定額控除限度額と接待飲食費50%の両方を計算して比べたか別表十五4欄
7事業年度が12か月未満なら、月数で按分したか措置法第61条の4第2項・第4項
8別表十五を申告書に付けたか措置法第61条の4第7項

まとめ

  • 交際費等は原則として全額が損金不算入です。年800万円は「することができる」と書かれた選択制の特例で、別表十五を申告書に付けて初めて効きます(措置法第61条の4第2項・第7項)。
  • 資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の会社に100%持たれている子会社は使えません(同第2項1号、法人税法第66条第5項第2号)。
  • 1人当たり1万円以下の飲食費は、そもそも交際費等に当たりません。枠を食いませんが、参加者の数を含む5項目を記載した書類の保存が条件です(同第6項2号・第8項、施行規則第21条の18の4)。
  • 1万円の判定は、自社が税込経理か税抜経理かで変わります。税込経理なら、税抜の単価で約9,091円が目安になります(消費税経理通達9)。
  • 社内だけの飲食、ゴルフや旅行に伴う飲食、送迎費、飲食物の詰め合わせは、1万円以下でも外れません。
  • 定額控除限度額と接待飲食費50%は事業年度ごとに選べます。12か月なら接待飲食費が1,600万円を超えたところで入れ替わり、事業年度が短いほど分岐点は下がります。
  • 仕掛品や建設中の資産の原価に入れた交際費等も、支出した期の交際費等として数えます(措置法通達61の4(1)-24)。

数えはじめる前に分けておくことが、結局いちばん効きます。年度の途中から記録の様式を変えても、過ぎた分はさかのぼれません。

よくある質問

交際費が年800万円を下回っていれば、申告書で何もしなくてよいのですか。

いいえ。措置法第61条の4第7項は「第二項の規定は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に同項に規定する定額控除限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する」としています。明細書とは別表十五「交際費等の損金算入に関する明細書」です。第2項は「することができる」と書かれた選択制の特例なので、選んだことを申告書で示さないと効きません。付けなかった場合に戻るのは第1項の本則で、本則は接待飲食費の50%相当額を超える部分が損金不算入ですから、金額が800万円を下回っていても損金不算入額が出ることがあります。

資本金1,000万円の会社ですが、親会社が大きい場合も800万円を使えますか。

親会社の規模によります。措置法第61条の4第2項は、資本金1億円以下の法人から「普通法人のうち当該適用年度終了の日において法人税法第六十六条第五項第二号又は第三号に掲げる法人に該当するもの」を除いています。法人税法第66条第5項第2号は「大法人(次に掲げる法人をいう。以下この号及び次号において同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人」で、大法人とは「資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人」などです。資本金5億円以上の会社に100%持たれている子会社は、自社の資本金が1億円以下でも定額控除限度額を使えません。

1人1万円以下の飲食費なら、領収書だけ残しておけばよいですか。

いいえ。措置法第61条の4第8項は「第六項第二号の規定は、財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する」としています。租税特別措置法施行規則第21条の18の4が定める記載事項は5つで、年月日、参加した得意先等の氏名または名称およびその関係、参加した者の数、飲食費の額と店の名称・所在地、その他必要な事項です。領収書の金額と店名だけでは、参加した相手と人数が分かりません。1人当たりの金額は飲食費を参加者の数で割って出すので、人数が無いと判定そのものができません。

税込経理と税抜経理で、1万円の判定は変わりますか。

変わります。国税庁の法令解釈通達「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日付直法2-1。以下「消費税経理通達」)の9は、少額の減価償却資産などの金額基準について「法人がこれらの規定の適用がある減価償却資産に係る取引につき適用することとなる税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用することとなる方式により算定した価額により判定する」としたうえで、「措置法に規定する特別償却等において定められている金額基準又は措置法第61条の4第6項第2号《交際費等の損金不算入》に規定する金額基準についても、同様とする」としています。税込経理の法人が1人1万円以下に収めるには、税抜単価で約9,091円(10,000円÷1.1=9,090.909…円。端数まで詰めれば9,090円)までに収める必要があります。

社内の飲み会は、1人1万円以下なら交際費等から外れますか。

外れません。措置法第61条の4第6項は、接待飲食費の定義の中で「飲食費」を定め、その括弧書きで「専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。」としています。1万円以下の除外を定める第6項2号が使う「飲食費」もこれなので、社内だけの飲食は1万円以下の除外からも接待飲食費の50%損金算入からも、同じ一文で外れます。ただし、社内の行事がすべて交際費等になるわけではありません。措置法通達61の4(1)-10は「創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用」は交際費等に含まれないとしており、こちらは交際費等に当たらないので、損金不算入の対象になりません。

得意先とゴルフに行って、その後に食事をしました。食事代は1万円以下なので外せますか。

外せません。国税庁の「接待飲食費に関するFAQ」のQ3は、ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等について「その飲食等は主たる目的である催事と一体不可分なものとしてそれらの催事に吸収される行為と考えられますので、飲食等が催事とは別に単独で行われていると認められる場合(例えば、企画した旅行の行程の全てが終了して解散した後に、一部の取引先の者を誘って飲食等を行った場合など)を除き、ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用は飲食費に該当しない」としています。飲食費に当たらない以上、1万円の判定にも接待飲食費の50%にも乗りません。同じFAQは、接待の場への送迎費と、飲食物の詰め合わせの贈答も飲食費に当たらないとしています。

接待飲食費の50%を使い忘れて申告しました。やり直せますか。

更正の請求ができます。国税庁の「接待飲食費に関するFAQ」のQ9は「法人が、接待飲食費とすべき金額の一部又は全部につき50%相当額の損金算入をしていなかった場合には、更正の請求の要件である『課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと』に該当しますので、これを損金算入することを内容とする更正の請求書を提出することができます」としています。措置法第61条の4第7項も、定額控除限度額の明細書の添付先として更正請求書を挙げています。

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