自治体・公営企業

公営企業の予算は、議決の後も動かせる部分があります

猛暑で給水量が伸びた、受入量が増えて薬品費が足りない。こうした場面で「予算が無いので補正を待つ」という整理をしている団体があります。正確ではありません。

公営企業の予算には、議会の議決を経ずに動かせる部分が条文で用意されています。項の間の流用、業務量の増加に伴う弾力条項、建設改良費の繰越です。いずれも地方公営企業法と施行令に書かれているもので、運用上の裁量ではありません。

いっぽうで、動かせる範囲には条文どおりの限りがあります。「予算を超えて支出できる」と覚えてしまうと、使えない場面で使ってしまいます。どこまでが条文の中で、どこからが補正予算なのか。線を引いておきます。

結論

  • 項の間の流用はできますが、款の間はできません(施行令18条2項)。しかも項の間であっても、予算に流用の定めが置かれていなければできません(施行令17条1項7号)
  • 弾力条項(法24条3項)で使えるのは「業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額」までです。経費がそれ以上増えても、超えた分はこの条文では賄えません
  • 料金の改定・給与水準の改定・物価上昇による物件費の増加は、弾力条項では扱えません。総務省の通知が明示しています
  • 予備費のほうが先です。通知は「第一次的には予備費を充て、第二次的にこの規定が適用される」としています
  • 建設改良費の繰越に、議会の議決は要りません(法26条1項)。管理者が決め、翌事業年度の5月31日までに繰越計算書で長に報告し、長が次の会議で議会に報告します
  • 一般会計と、法を適用していない特別会計は、ここが逆です。繰越明許費は予算に定めておく必要があり(地方自治法213条)、弾力条項を使えるのは「その事業の経費を主として当該事業の経営に伴う収入をもつて充てるもので条例で定めるもの」に限られ(一般会計では使えません)、そこでも職員の給料は対象から外れます(同法218条4項、同法施行令149条)
  • 条文の主体は「管理者」です。管理者を置かない団体では長が行い(法8条2項)、財務規定等だけを適用している団体でも長が行います(法34条の2)

公営企業の予算は、官公庁予算と目的が違います

動かせる部分がある理由は、予算の役割そのものが違うところにあります。総務省の通知が、この点を正面から書いています。

一般会計の予算等いわゆる官公庁予算と異なるところは、官公庁予算においては歳出の規制に重点が置かれているのに対して、地方公営企業の予算においては、企業の効率的運営に主眼が置かれ、毎事業年度における企業運営の目標設定の意味を持つものであるので、予算には業務の予定量を定めるとともに収入及び支出についてはその大綱を定めるものとし(法第24条第1項)、また、業務量の増加に伴い収入が増加する場合には当該事務に要する経費について予算超過の支出を認める等、企業の経営活動が外部の事情の変動に応ずるよう図られているものであること

条文も同じことを言っています。

地方公営企業の予算は、地方公営企業の毎事業年度における業務の予定量並びにこれに関する収入及び支出の大綱を定めるものとする(地方公営企業法24条1項)

「大綱」です。 歳出の上限を1つずつ縛る書類ではなく、その年度の業務量と収支の枠を示す書類だという位置づけになっています。通知も、公営企業の予算は「官公庁予算に比し極めて弾力性に富む概括的な形成を採る」としています。

ただし、議決を経る相手が議会であることは変わりません。原案を作るのは管理者ですが、調製して議案として出すのは長です。

地方公共団体の長は、当該地方公営企業の管理者が作成した予算の原案に基いて毎事業年度地方公営企業の予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならない(地方公営企業法24条2項)

通知は、この役割分担についてこう書いています。

地方公営企業の予算の原案は当該地方公営企業の管理者が作成するのである(法第8条第1項第1号及び第9条第3号並びに第24条第2項)が、調製権及び提案権は地方公共団体の長の権限であること。なお、地方公共団体の長は、管理者に対する指示権が限定されている趣旨にもかんがみ、予算の調製に当たっては、できる限りその原案を尊重すべきものであること

動かせるもの・動かせないものの一覧

先に全体を置きます。議会の議決まで戻るのは、この表のうち2行だけです。

場面根拠議会の議決決めるのは
項の間の流用施行令18条2項ただし書要らない(ただし執行上の必要があり、かつ予算に流用の定めがあるときだけ)管理者
議決を経なければ流用できない経費との間の流用施行令18条3項必要議会(議案を出すのは長。法8条1項2号)
弾力条項(業務量の増加)法24条3項要らない(長を経て議会へ報告)管理者
建設改良費の繰越法26条1項要らない(同じく報告)管理者
事故繰越法26条2項ただし書要らない(同じく報告)管理者
継続費の逓次繰越施行令18条の2第1項要らない(同じく報告)管理者
上記のいずれでもない予算超過・予算外の支出施行令18条5項(支出できない)必要(予算を補正する。地方自治法218条1項)議会(議案を出すのは長。法8条1項2号)

表に入らないものが1つあります。款の間の流用です。 施行令18条2項の本文が禁じていて、ただし書で戻されているのは項の間だけなので、議決を取れば款をまたげる、という道はありません。議決が要るか要らないかという話にならないので、表には入れていません。

最後の行が効いてきます。施行令18条5項は、逃げ道が無いことをはっきり書いています。

法第二十四条第三項に規定する場合を除くほか、管理者は、支出の予算がなく、かつ、予備費支出、費目流用その他財務に関する規定により支出することができない場合においては、支出することができない。ただし、現金の支出を伴わない経費については、この限りでない(地方公営企業法施行令18条5項)

ただし書も読んでください。「現金の支出を伴わない経費については、この限りでない」です。 通知は、同じただし書を、支出できる側から言い換えています。

弾力条項を適用する場合のほか、管理者は、支出の予算がなく、かつ、予備費支出、費目流用その他財務に関する規定により支出することができない場合においては、支出することができないものであること。ただし、現金の支出を伴わない経費については、この場合においても、支出することができるものであること(施行令第18条第5項)

減価償却費や固定資産除却損のように現金が出ていかない費用は、予算額を超えても支出できないという制限の外にあります。通知も、収益的支出には「引当金繰入、減価償却費、たな卸資産減耗損、固定資産除却損及び繰延資産償却費等現金の支出を伴わないものも含まれるもの」としています。除却を予定より多く行った年に減価償却費や除却損が予算を超えても、それだけで支出ができない状態になるわけではありません。

流用 — 款はまたげず、項は予算に定めがあるときだけ

流用の条文は2つに分かれています。本文が禁止、ただし書が例外です。

予定支出の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互に流用することができない。ただし、予定支出の各項の経費の金額は、予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより流用することができる(地方公営企業法施行令18条2項)

読み落としやすいのは、ただし書が「各項の」としか書いていないところです。本文で款と項の両方を禁止し、ただし書で項だけを戻している。款の間は、どこにも戻されていません。

さらに、ただし書には条件が2つ付いています。

#条件原文
1執行上の必要があること「予算の執行上必要がある場合に限り」
2予算に流用の定めがあること「予算の定めるところにより流用することができる」

2つ目が実務で止まるところです。予算に記載すべき事項として、施行令17条1項7号が「予定支出の各項の経費の金額の流用」を挙げています。つまり、流用できる旨を予算に書いていなければ、項の間でも流用はできません。 執行の段階で流用の定めだけを後から設けることはできず、予算そのものを直す(補正する)ことになります。

議決を経なければ流用できない経費

同じ施行令17条1項の8号に、もう1つの記載事項があります。

議会の議決を経なければ流用することのできない経費(地方公営企業法施行令17条1項8号)

これを予算に書いた場合、その経費との間の流用には議決が必要になります。

予定支出の経費のうち予算で定める経費の金額と当該経費以外の経費の金額の間において相互に流用する場合は、議会の議決を経なければならない(地方公営企業法施行令18条3項)

何を書くかは団体が決めますが、通知が例を挙げています。

議会の議決を経なければ流用できない経費とは、職員給与費、交際費等が予想されるものであるが、これらの経費についての予備費の使用は、必要やむを得ざる場合で当該金額が多額にわたらないときに限られるべきであり、できる限り予算の修正措置を講ずるべきものであること

後半に注意してください。流用に議決が要る経費について予備費を使うことは、禁じられてはいませんが「必要やむを得ざる場合で当該金額が多額にわたらないときに限られるべき」とされています。 職員給与費が足りないときに予備費で埋めることを常態にすると、予算に議決の枠を置いた意味が無くなります。通知は「できる限り予算の修正措置を講ずるべき」としています。

なお、款項の立て方は予算様式に従います(施行令17条3項、施行規則45条・別記第1号様式)。通知は、収益的支出を「営業費用、営業外費用、特別損失及び予備費にそれぞれ区分して記載するもの」としています。自分の団体でどこが款でどこが項なのかは、予算書を開いて確かめてください。 同じ「○○費」でも、款なのか項なのかで流用できるかどうかが変わります。

弾力条項 — 使えるのは「増収額まで」です

条文はこうです。前段が要件と効果、後段が報告です。

業務量の増加に因り地方公営企業の業務のため直接必要な経費に不足を生じたときは、管理者は、当該業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額を当該企業の業務のため直接必要な経費に使用することができる。この場合においては、遅滞なく、管理者は、当該地方公共団体の長にその旨を報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない(地方公営企業法24条3項)

地方自治法施行令149条の見出しが「弾力条項の適用できない経費」なので、「弾力条項」という呼び方は法令の用語に近いものです。 通知も「いわゆる弾力条項」と呼んでいます。

要件を1つずつ分けると、次の3つが揃っていなければ使えません。

#要件落とすとどうなるか
1業務量の増加によって不足が生じたこと単価の上昇や給与水準の改訂による不足は入らない
2使う額がその業務量の増加によって増加する収入に相当する金額であること増収額を超える部分は、この条文では使えない
3充てる先がその企業の業務のため直接必要な経費であること間接的な経費や他の事業の経費には回せない

通知は、3つ目の「直接必要な経費」について例を挙げています。

この場合において地方公営企業の業務のため直接必要な経費とは、例えば交通事業にあっては、臨時に大量の乗客が増加した場合の運転車両の増加、運転時間の延長、あるいは水道事業にあっては、給水量の増加、給水時間の延長等によって直接必要となる増加人件費又は増加物件費をいうものであること

増加人件費も入っています。 業務量が増えたことで直接必要になった人件費であれば、条文上は対象から外れていません。これは、法を適用していない特別会計と違うところです。後ろの表で並べます。

なお、上に引いた通知の別の箇所には「業務量の増加に伴い収入が増加する場合には当該事務に要する経費について予算超過の支出を認める」という書き方があります。条文の文言は「当該企業の業務のため直接必要な経費」です。判断は条文の文言で行ってください。

上限は増えた収入に相当する金額です

要件2が、実務で最初に突き当たるところです。数字で置きます。以下は説明のための架空の例で、実在する団体の数値ではありません。

猛暑で給水量が伸びた水道事業を考えます。

項目金額内容
当初予算 給水収益80,000万円予定額
当初予算 営業費用76,000万円予定額
業務量の増加による増収4,200万円給水量の増加による給水収益の増
直接必要になった経費の増5,000万円増えた給水量にかかる動力費・薬品費

弾力条項で使えるのは「当該業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額」なので、上限は約4,200万円です。

項目金額計算
弾力条項の上限約4,200万円増収額に相当する金額
弾力条項で使える額約4,200万円5,000万円と4,200万円の小さいほう
残る不足額約800万円5,000万円 − 4,200万円

残る約800万円は、弾力条項では賄えません。 予備費を計上しているなら予備費、項の間の流用ができるなら流用、どちらも足りなければ補正予算です。

ここを「増えた経費の分だけ使える」と覚えていると、増収額を超えて執行してしまいます。条文が結び付けているのは、経費の増加額ではなく収入の増加額です。

物価上昇や給与改定では使えません

要件1も、同じくらい間違えやすいところです。通知が、使えない場面を名指しで挙げています。

この弾力条項の適用は、予算修正の時間的余裕がない場合等に限られるべきものであって、料金率の変更、給与水準の改訂、物価騰貴による物件費の変動等の場合は、この弾力条項を適用することなく、予算の補正によるべきものと考えられるものであること

挙げられているのは3つです。

場面弾力条項通知が示す道
料金率の変更使えない予算の補正
給与水準の改訂使えない予算の補正
物価騰貴による物件費の変動使えない予算の補正

動力費の単価が上がったことによる不足は、ここに当たります。 同じ「動力費が足りない」でも、給水量が増えたことによる不足(要件1を満たす)と、単価が上がったことによる不足(満たさない)は別の話です。

数字で並べると、違いがはっきりします。こちらも架空の例です。

項目金額弾力条項で使える額
業務量の増加による増収なし—
動力費の増(単価の上昇)3,000万円なし

業務量が増えていないので増収もなく、上限がゼロになります。3,000万円は全額、別の手当てが必要です。

予備費のほうが先です

弾力条項は、使える場面であっても最初に出てくるものではありません。通知が順序を示しています。

いわゆる弾力条項は、真にやむを得ない場合に限って発動すべきものと考えられるものであって、一般に特別会計は予備費を設けることは任意とされており、予備費を設けた場合は、第一次的には予備費を充て、第二次的にこの規定が適用されるものと解すべきものであること

「第一次的には予備費」です。予備費については、地方自治法217条1項が本文で計上を義務とし、ただし書で特別会計を外しています。

予算外の支出又は予算超過の支出に充てるため、歳入歳出予算に予備費を計上しなければならない。ただし、特別会計にあつては、予備費を計上しないことができる(地方自治法217条1項)

通知は、収益的支出の区分の1つとして予備費を挙げています。予備費を置いていない団体は、弾力条項と流用と補正予算しか手元に無いことになります。 置くかどうかは任意ですが、置いていないこと自体が執行の幅を狭めている、という理解でよいところです。

先ほどの設例に戻ると、残った約800万円を予備費で充てる場合はこうなります。

項目金額計算
予備費の計上額1,500万円当初予算
予備費から充てる額約800万円弾力条項で足りない額
予備費の残約700万円1,500万円 − 800万円

議決は要りませんが、報告は2段階です

弾力条項を使ったときの手続きは、条文の後段にあります。議決ではなく報告で、しかも2段階です。

順誰が何をいつ
1管理者長に、弾力条項を適用した旨を報告遅滞なく
2長議会に、その旨を報告次の会議

通知も、この報告を受けることが長の権限として留保されていることを挙げています。

予算のいわゆる弾力条項発動の報告(法第24条第3項)、予算の繰越使用計画の報告(法第26条第3項)、計理状況の報告(法第31条)及び業務状況を説明する書類の提出(法第40条の2第1項)を受けること

報告を飛ばしても支出が無効になるとは条文に書かれていませんが、条文が「報告しなければならない」と書いているのは長の側です。 管理者から長への報告は「報告するものとし」、長から議会への報告は「報告しなければならない」。書き分けられているので、議会への報告が落ちている状態は、条文の文言に照らして説明が難しくなります。

繰越 — 建設改良費は議決が要りません

ここが一般会計と最も違うところです。公営企業では、建設改良費の繰越に議会の議決が出てきません。

予算に定めた地方公営企業の建設又は改良に要する経費のうち、年度内に支払義務が生じなかつたものがある場合においては、管理者は、その額を翌年度に繰り越して使用することができる(地方公営企業法26条1項)

通知は、もう一歩踏み込んで書いています。

予算に定めた地方公営企業の建設又は改良に要する経費のうち、事業年度内に支払義務が生じなかったものがある場合においては、管理者は、その額を翌年度において予算に計上することなく、繰り越して使用することができるものであること(法第26条第1項)

「翌年度において予算に計上することなく」です。 翌年度の予算に繰越額を計上し直す必要がありません。

注意すべきは、この繰越が建設改良費に限られていることです。条文が「建設又は改良に要する経費のうち」と書いているので、収益的支出はここに入りません。

建設改良費の繰越は、契約の有無を問いません

条文が求めているのは「年度内に支払義務が生じなかつたもの」だけです。契約をしていたかどうか、事故があったかどうかは、26条1項の要件に入っていません。

数字で置きます。架空の例です。

項目金額内容
建設改良費の予算額32,000万円予算に定めた建設改良に要する経費の額
年度内に支払義務が生じた額23,500万円検査が済み支払義務が確定した分
繰り越して使用できる額約8,500万円32,000万円 − 23,500万円

事故繰越は、建設改良費以外にも及びます

26条2項は、本文が原則、ただし書が例外という作りです。

前項の規定による場合を除くほか、毎事業年度の支出予算の金額は、翌事業年度において使用することができない。ただし、支出予算の金額のうち、年度内に支出の原因となる契約その他の行為をし、避け難い事故のため年度内に支払義務が生じなかつたものについては、管理者は、その金額を翌事業年度に繰り越して使用することができる(地方公営企業法26条2項)

ただし書の対象は「支出予算の金額のうち」です。 建設改良費に限っていないので、収益的支出もただし書の対象になり得ます。ただし要件が2つ付きます。

#要件原文
1年度内に契約その他の行為をしていること「年度内に支出の原因となる契約その他の行為をし」
2避け難い事故のため支払義務が生じなかったこと「避け難い事故のため年度内に支払義務が生じなかつた」

通知は、2つ目について「その後に災害等避け難い事故により」としています。契約をしていれば繰り越せるわけではありません。 26条1項(建設改良費)が契約を問わないのに対し、26条2項ただし書は契約を要件にしている。この非対称を取り違えると、収益的支出を契約の有無だけで繰り越してしまいます。

継続費は、継続年度の終わりまで繰り越せます

継続費を設けている場合は、さらに別の繰越があります。

地方公営企業の継続費に係る毎事業年度の支出予定額のうち、当該事業年度内に支払義務が生じなかつたものがある場合においては、管理者は、その額を継続年度の終わりまで逓次繰り越して使用することができる(地方公営企業法施行令18条の2第1項)

継続費そのものの根拠は地方自治法212条で、「予算の定めるところにより、その経費の総額及び年割額を定め」るものです。継続費を設けること自体は予算の定めなので議決が要りますが、その中での逓次繰越は管理者が行います。

報告は翌事業年度の5月31日までです

繰越は3種類とも、手続きが報告で揃っています。期限も様式も条文と規則にあります。

繰越の種類根拠報告の様式期限
建設改良費の繰越法26条1項繰越計算書(別記第8号様式)。継続費に係るものは継続費繰越計算書(別記第6号様式)翌事業年度の5月31日
事故繰越法26条2項ただし書繰越計算書(別記第8号様式)。継続費に係るものは継続費繰越計算書(別記第6号様式)翌事業年度の5月31日
継続費の逓次繰越施行令18条の2第1項継続費繰越計算書(別記第6号様式)翌事業年度の5月31日

法第二十六条第三項の規定により管理者が地方公共団体の長に対してすべき報告は、総務省令で定める様式により、繰越計算書(継続費に係るものにあつては、継続費繰越計算書)をもつて、翌事業年度の五月三十一日までにしなければならない(地方公営企業法施行令19条)

様式は施行規則47条が定めています。繰越計算書が別記第8号様式、継続費繰越計算書が別記第6号様式、継続費精算報告書が別記第7号様式です。括弧書きを落とさないでください。 法26条1項・2項による繰越であっても、それが継続費に係るものであれば、使うのは繰越計算書ではなく継続費繰越計算書です。通知も「施行規則別記第8号様式の繰越計算書(継続費に係るものにあっては、施行規則別記第6号の様式の継続費繰越計算書)をもって」としています。

報告の流れは弾力条項と同じ2段階で、管理者が長へ、長が次の会議で議会へ報告します(法26条3項)。議決を取る話ではありませんが、この記事で扱った3つ(流用・弾力条項・繰越)の手続きのうち、日付で期限が切られているのはここだけです(弾力条項の報告は「遅滞なく」です)。決算の作業と重なる時期なので、決算書類の束に紛れないよう、別の期限として管理するほうが安全です。

一般会計・法非適用の特別会計との違い

同じ団体の中で、会計によって扱いが変わります。並べます。

場面法を適用している公営企業一般会計・法非適用の特別会計
項の間の流用執行上必要があり予算に定めがあれば可(施行令18条2項ただし書)執行上必要があり予算に定めがあれば可(地方自治法220条2項ただし書)
弾力条項を使える会計法を適用している企業(条例の定めは要らない。法24条3項)その事業の経費を主として事業の収入で充てる特別会計で、条例で定めたものに限る(地方自治法218条4項)。一般会計では使えない
弾力条項から外れる経費政令の定めは置かれていない職員の給料(地方自治法施行令149条)
弾力条項を使うのは管理者(長へ報告、長が議会へ報告)長(長が議会へ報告)
年度内に支出が終わらなかった経費の繰越建設又は改良に要する経費は予算の定めが要らない(法26条1項)繰越明許費として予算に定める(地方自治法213条)
事故繰越可(法26条2項ただし書)可(地方自治法220条3項ただし書)

弾力条項の2行は、条文を並べると差がはっきりします。

普通地方公共団体の長は、特別会計のうちその事業の経費を主として当該事業の経営に伴う収入をもつて充てるもので条例で定めるものについて、業務量の増加により業務のため直接必要な経費に不足を生じたときは、当該業務量の増加により増加する収入に相当する金額を当該経費(政令で定める経費を除く。)に使用することができる(地方自治法218条4項)

地方自治法第二百十八条第四項に規定する政令で定める経費は、職員の給料とする(地方自治法施行令149条)

地方自治法218条4項には「(政令で定める経費を除く。)」という括弧書きがあり、その中身が職員の給料です。 地方公営企業法24条3項には、この括弧書きがありません。前に引いた通知が「増加人件費」を直接必要な経費の例に挙げているのは、この違いと整合しています。

もう1つ、条文の文言が違うところがあります。事故繰越について、地方自治法220条3項ただし書には「(当該支出負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に基づきこれに関連して支出を要する経費の金額を含む。)」という括弧書きがありますが、地方公営企業法26条2項ただし書には、この括弧書きが置かれていません。 条文の文言としての違いで、関連経費の扱いまで断定できるものではありませんが、同じ「事故繰越」という呼び方で一般会計と同じ範囲を想定すると、根拠が無いところまで広がります。

決めるのは管理者です。ただし置かない団体もあります

ここまで「管理者」と書いてきましたが、条文の主体が管理者であることと、自分の団体に管理者がいることは別の話です。

第七条ただし書の規定により管理者を置かない地方公共団体においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行う(地方公営企業法8条2項)

管理者を置かないことができるのは、施行令8条の2が挙げる規模の企業以外です。水道事業であれば、こう書かれています。

水道事業(簡易水道事業を除く。第八条の四及び第二十六条の六において同じ。)で、常時雇用される職員の数が二百人以上であり、かつ、給水戸数が五万戸(水道用水供給事業にあつては、給水能力が一日二十万立方メートル)以上であるもの(地方公営企業法施行令8条の2第1号)

これに届かない団体は、条例で管理者を置かないことができます。 「かつ」なので、職員数と給水戸数の両方を満たす企業だけが、管理者を必ず置く側に残ります。片方だけでは残りません。

号は5つあります。 水道事業(1号)、工業用水道事業(2号)、軌道・自動車運送・鉄道事業(3号)、電気事業(4号)、ガス事業(5号)で、それぞれ職員数と事業規模の基準が置かれています。自分の事業の号を見てください。

財務規定等だけを適用している場合は、別の条文が効きます。

第二条第二項又は第三項の規定により地方公共団体の経営する企業に財務規定等が適用される場合においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行う。ただし、管理者の権限のうち当該企業の出納その他の会計事務及び決算に係るものについては、条例で定めるところにより、その全部又は一部を当該地方公共団体の会計管理者に行わせることができる(地方公営企業法34条の2)

ここで落としやすいのは「だけ」です。 法34条の2が長に権限を移すのは、財務規定等のみが適用されている場合です。通知が、この点を2か所で書いています。

法第2条第2項の規定により財務規定等が当然に適用される場合又は法第2条第3項の規定により財務規定等が条例(一部事務組合又は広域連合にあっては、規約。)で定めるところにより適用される場合においては、法第7条の規定の適用がないので管理者を設置することはできないが、この管理者が行うべき権限は、当該地方公共団体の長が行うものであること(法第34条の2本文)

なお、地方公共団体は、財務規定等が当然に適用される病院事業については、条例(一部事務組合又は広域連合にあっては、規約。以下(十一)までにおいて同じ。)で定めるところにより、財務規定等を除く法の規定を条例で定める日から適用することができるものであり、この場合においては、結果的に法の規定の全部が適用されることとなるものであること(法第2条第3項及び施行令第1条第1項)

したがって病院事業は、どちらにもなります。 法2条2項で財務規定等が当然に適用されるので、それだけなら長が行い、管理者は置けません。いっぽうで、条例で「財務規定等を除く法の規定」も適用している病院事業は、結果として法の全部が適用されるので法7条が働き、管理者を置く側に戻ります(病院事業管理者を置いている団体がこれです)。自分の団体の適用条例を見ないと、どちらかは決まりません。

条例で財務規定等だけを適用した下水道事業は、前者に当たります。

団体の状況弾力条項・繰越を決めるのは
管理者を置いている管理者(法24条3項・26条1項の文言どおり)
条例で管理者を置いていない長(法8条2項)
財務規定等のみが適用されている長(法34条の2)。通知は「管理者を設置することはできない」としている

ただし書も読んでおいてください。34条の2のただし書で会計管理者に行わせることができるのは「出納その他の会計事務及び決算に係るもの」です。予算の執行に関する判断は、ここに含まれていません。

自分の団体で確かめること

書類を開けばその日に分かるものを挙げます。

#確かめることどこを見るか
1予算に流用の定めがあるか予算の本文。施行令17条1項7号の記載があるか
2議決を経なければ流用できない経費を定めているか同8号。職員給与費・交際費を挙げているか
3予備費を計上しているか収益的支出の区分。通知は営業費用・営業外費用・特別損失及び予備費に区分するとしている
4繰越計算書を5月31日までに長へ出しているか前年度の繰越。決算書類の付属物として扱っていないか
5議会への報告が記録に残っているか弾力条項・繰越の報告。会議録に出ているか
6弾力条項を使った年の理由が業務量の増加か適用の記録。単価の上昇を理由にしていないか

1と2は、当初予算を作る段階で決めておくものです。執行の途中で定めだけを後から足すことはできず、予算を直すことになります。年度が始まる前に見ておくほうが早く済みます。

6は、過去に遡って直せるものではありませんが、同じ理由づけを次の年も繰り返さないために確かめる価値があります。 通知が名指しで外している3つ(料金率の変更・給与水準の改訂・物価騰貴による物件費の変動)が理由になっていた場合、本来は補正予算を通すべき場面でした。

まとめ

  • 公営企業の予算は「業務の予定量並びにこれに関する収入及び支出の大綱」を定めるもので(法24条1項)、歳出を1つずつ縛る書類とは位置づけが違います。通知も、官公庁予算は歳出の規制に重点、公営企業の予算は企業の効率的運営に主眼があるとしています
  • 流用は、款の間はできず、項の間は「予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより」できます(施行令18条2項)。予算に流用の定め(施行令17条1項7号)が無ければ、項の間でもできません
  • 弾力条項の上限は「業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額」です(法24条3項)。経費の増加額ではありません。増収が4,200万円で経費の増加が5,000万円なら、使えるのは約4,200万円まで、残る約800万円は別の手当てが必要です
  • 料金率の変更・給与水準の改訂・物価騰貴による物件費の変動は、弾力条項では扱えません。通知が「予算の補正によるべきもの」としています
  • 予備費が先です。通知は「第一次的には予備費を充て、第二次的にこの規定が適用される」としています。特別会計の予備費は任意(地方自治法217条1項ただし書)なので、置いていない団体は手元の選択肢が1つ少ない状態です
  • 建設改良費の繰越に議会の議決は要りません(法26条1項)。通知は「翌年度において予算に計上することなく」としています。一般会計の繰越明許費は予算に定める必要があり(地方自治法213条)、ここが逆向きです
  • 26条1項は契約を要件にしていませんが、26条2項ただし書(事故繰越)は契約を要件にしています。同じ「繰越」でも要件が違います
  • 繰越の報告は、翌事業年度の5月31日までに繰越計算書で長へ(施行令19条、施行規則47条・別記第8号様式)。そこから長が次の会議で議会へ報告します(法26条3項)
  • 決めるのは管理者ですが、管理者を置かない団体では長(法8条2項)、財務規定等だけを適用している団体でも長(法34条の2)です。条例で財務規定等だけを適用した下水道事業が後者です。病院事業はどちらにもなります。財務規定等だけなら長(管理者は置けません)、条例で財務規定等を除く法の規定も適用していれば結果的に全部適用で管理者を置く側です(通知 第一節 三(七)・(十二))
  • どの手段でも足りないときは、施行令18条5項が「支出することができない」と書いています。ただし「現金の支出を伴わない経費については、この限りでない」というただし書があります

よくある質問

予算を超える支出が必要になりました。必ず補正予算が要りますか。

必ずではありません。業務量が増えたことによって収入も増えている場合は、増えた収入に相当する金額を、その業務のため直接必要な経費に使うことができます(地方公営企業法24条3項)。議会の議決は要らず、管理者が長に報告し、長が次の会議で議会に報告します。ただし使える額は増収額までで、料金の改定や給与水準の改定、物価上昇による物件費の増加は対象になりません。総務省の通知は、これらの場合は「弾力条項を適用することなく、予算の補正によるべきもの」としています。

弾力条項と予備費は、どちらを先に使いますか。

予備費が先です。総務省の通知は「予備費を設けた場合は、第一次的には予備費を充て、第二次的にこの規定が適用されるものと解すべきもの」としています。あわせて、弾力条項そのものを「真にやむを得ない場合に限って発動すべきもの」「予算修正の時間的余裕がない場合等に限られるべきもの」としています。

建設改良費が年度内に使い切れませんでした。繰越明許費の議決が要りますか。

公営企業では要りません。地方公営企業法26条1項は、予算に定めた建設改良に要する経費のうち年度内に支払義務が生じなかったものを、管理者が翌年度に繰り越して使用できるとしています。総務省の通知は「その額を翌年度において予算に計上することなく、繰り越して使用することができる」としています。一般会計の繰越明許費(地方自治法213条)は予算の定めるところにより繰り越すので、議会の議決を経た予算に書いておく必要があります。ここが一般会計と違うところです。

繰越の手続きは、いつまでに何をしますか。

管理者が、翌事業年度の5月31日までに繰越計算書で長に報告し、報告を受けた長が次の会議で議会に報告します(地方公営企業法26条3項、施行令19条)。様式は施行規則47条が定めており、繰越計算書は別記第8号様式、継続費繰越計算書は別記第6号様式です。議決ではなく報告ですが、期限は条文に書かれています。

款をまたぐ流用はできますか。

できません。施行令18条2項の本文が「予定支出の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互に流用することができない」としています。ただし書で、各項の経費の金額は「予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより」流用できるとされていますが、これは項の間の話で、款の間は残りません。なお、項の間であっても、予算に流用の定め(施行令17条1項7号)が置かれていなければできません。

出典

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