自治体・公営企業

資金不足比率は、流動負債と流動資産を比べた数字ではありません

決算の数字が固まったあと、貸借対照表の流動負債と流動資産を見比べて「今年は資金不足比率が出そうだ」と見当をつける。そういう読み方で説明されることがあります。正確ではありません。

資金不足比率の分子は、流動負債と流動資産の差ではありません。企業債は、何に充てたかによって、足す側と引く側に分かれます。建設改良に充てた企業債は、1年以内に償還する分が流動負債に載っていても引きます。逆に、建設改良以外に充てた地方債は、固定負債に載っていても足します。

令和6年度決算の確報値で数えると、流動負債が流動資産を上回っていた法適用企業は1,700会計ありました。そのうち1,652会計は、公表された資金不足比率が「−」です。見当のつけ方が、そもそも別の指標を見ていることになります。

結論

  • 分子(資金の不足額)は、流動負債から建設改良費等に充てた企業債等を引き、建設改良費等以外の経費に充てた地方債の現在高を足して、流動資産を引いた額です。正の値になったときだけ、そこから解消可能資金不足額を引きます
  • 令和6年度決算では、流動負債が流動資産を上回っていた法適用企業1,700会計のうち1,652会計が、資金不足額ゼロでした。逆に、流動資産のほうが多いのに資金不足額が出た会計が3会計あります
  • 解消可能資金不足額は例外ではなく、計算の本体の一部です。控除する前に資金不足額が生じていた134会計のうち、78会計がこれでゼロになっています
  • 分母は営業収益の額から受託工事収益の額を引いた額です(施行令17条1号)。指定管理者が収受する利用料金は加えます。宅地造成事業のみを行う法適用企業だけは、資本の額と負債の額の合算額です
  • 経営健全化基準は5分の1、つまり20%です(施行令19条)。公営競技を行う法適用企業だけ零です
  • 20%以上でも、経営健全化計画を定めることにならない場合があります。まず対象から外れるのが、事業を開始する前の公営企業と、繰越欠損金がない法適用企業です(法23条1項の括弧書き)。対象に入っても、すでに同じ公営企業について計画を定めているとき、または1年だけ超えて翌年度は確実に下回ると認められるときは、定めなくてよいとされています(同項ただし書・施行令20条1項。後者は理由の公表と総務大臣への報告が義務)
  • 比率が「−」の年も、毎年度やることが3つあります。監査委員の審査、議会への報告、公表です(法22条1項)。算定の基礎となる書類は5年間備え置きます

比率の形は、条文ではこうなっています

まず、法律の側の定めは短いものです。

前項に規定する「資金不足比率」とは、公営企業ごとに、政令で定めるところにより算定した当該年度の前年度の資金の不足額を政令で定めるところにより算定した当該年度の前年度の事業の規模で除して得た数値をいう(健全化法22条2項)

「公営企業ごとに」と書かれているところが、まず健全化判断比率と違います。実質赤字比率や将来負担比率は団体の指標ですが、資金不足比率は会計ごとの指標です。ひとつの団体が水道・下水道・病院を経営していれば、3つの比率が別々に出ます。一部事務組合や広域連合も算定します。

総務省が示している式は次のとおりです。

資金の不足額(法適用企業)=[流動負債+建設改良費等以外の経費の財源に充てるため起こした地方債の現在高-流動資産]-解消可能資金不足額(総務省「健全化判断比率等の算定方法」)

この角括弧の中に、流動負債にも流動資産にも載っていない「建設改良費等以外の経費の財源に充てるため起こした地方債の現在高」が入っていることが、読み方の分かれ目です。貸借対照表の流動の部だけを見ていては、この項目は出てきません。

分子は、A・B・Cを組み立ててからDを引きます

政令の側は、連結実質赤字比率の規定(施行令3条)を準用する形で書かれています。

第三条(第一項第一号イ(4)及び第二号イ(5)を除く。)の規定は、法第二十二条第二項に規定する政令で定めるところにより算定した当該年度の前年度の資金の不足額について準用する(施行令16条)

準用された施行令3条1項1号を、総務省の算定様式の記号に合わせて並べると次のようになります。宅地造成事業を行っていない法適用企業の場合です。

記号中身条文上の位置
A流動負債の額 − 控除企業債等 − 控除未払金等施行令3条1項1号イ
B建設改良費等以外の経費の財源に充てるために起こした地方債の現在高 − そのうち流動負債として整理されているものの現在高同号ロ(地方財政法施行令15条1項2号)
C流動資産の額 − 控除財源同号ハ
D解消可能資金不足額施行令3条2項

A+B−Cが正の値になったときだけ、資金の不足額があるものとして扱われます。そこからDを引き、引いた結果が負になるときは零とします。総務省の記載要領が算式の後にこう書いています。

(A+B-C>0であれば算入。ただし、この場合において、A+B-C-D<0となるときはA+B-C-D=0とする。)(総務省「資金不足比率を算定するための様式に関する記載要領」)

Aの引き算の中身が、冒頭に書いた「企業債の扱いが逆になる」ところです。

控除企業債等:令和6年度決算において貸借対照表の流動負債に計上されている企業債及び他の会計からの長期借入金で、建設改良費等に充てるためのものの額(同記載要領)

控除未払金等:令和6年度決算において貸借対照表に計上されている一時借入金及び未払金のうち、建設改良費に係るものであって、その支払財源に充てるために令和7年度において地方債を起こすこととしているもの又は他の会計からの長期借入金をすることとしているものの額(同記載要領) このほか、流動負債に計上されているPFI(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の選定事業)に係る建設事業費等の支出予定額も、様式ではAから控除することとされています。

企業債は、何に充てたかで足す側と引く側に分かれます

同じ「地方債」が、Aでは引かれ、Bでは足されます。線を引いているのは資金使途です。

地方債・長期借入金の種類貸借対照表のどこにあるか分子での扱い
建設改良費等に充てたもの流動負債(1年以内償還予定)Aで引く
建設改良費等に充てたもの固定負債そもそもAに入っていないので関係しない
建設改良費等以外の経費に充てたもの流動負債Aに残る(Bの側から除かれるので二重に数えない)
建設改良費等以外の経費に充てたもの固定負債Bで足す

ここで言う「建設改良費等」は、建設改良費そのものだけではありません。施行令3条1項1号イ(1)が「当該経費に準ずる経費として総務省令で定める経費」を含めており、施行規則1条の2がそれを地方債に関する省令12条各号に送っています。同条が挙げているのは、出資金・貸付金、建設中の施設に係る地方債の元金償還金、未利用または利用率が著しく低い施設に係る地方債の利子、供用開始後の施設に係る地方債の元金償還金とその施設の減価償却費相当額との差額に相当する経費(4号イ)、災害応急事業費・災害復旧事業費・災害救助事業費などです。4号には柱書に条件が付いています。その経費の財源に充てるために起こした地方債の償還年限が、建設改良費の財源に充てるために起こした地方債または負担金に係る施設の耐用年数の範囲内であるものに限られます。

資本費平準化債は、建設改良費等に準ずる経費の財源として扱われるので、Bには入りません。元金償還金と減価償却費相当額との差額に充てるものが、4号イに当たります。総務省の記載要領は、資本費平準化債を「建設改良費に準ずる経費として地方債に関する省令(平成18年総務省令54号)第12条第2号及び第4号に規定する経費の財源に充てるために起こした地方債。利払いに係る平準化債を含まない。」と定義しています。同じ「平準化債」でも、利払いに充てるものは扱いが分かれます。

同じ会計に、2つの「資金の不足額」が並びます

施行令16条が準用の範囲を限っていることには、実務上の意味があります。連結実質赤字比率に使う資金の不足額と、資金不足比率に使う資金の不足額は、同じ会計でも一致しないことがあります。

外されているのは施行令3条1項1号イ(4)、つまり「連結実質赤字比率を適切に算定するために流動負債の額から控除すべき負債の額として総務省令で定める額」です。同号ハの読み替えも同じ趣旨で、流動資産側の省令控除が落とされています。総務省の記載要領は、算式の末尾に注をつけてこう確認しています。

*:A及びCの算式に含まれる「控除額」は連結実質赤字比率算入時のみ算定に用いるものであり、公営企業ごとの資金不足比率の算定には用いない。(同記載要領)

算定様式でも、この2つは別の欄になっています。「(8)資金不足額・剰余額(連結実質赤字比率)」と「(9)資金不足額(資金不足比率)」で、記載要領は前者が負の値、後者が正の値で表示されることに留意するよう書いています。団体の連結実質赤字比率の説明に使った数字を、そのまま会計の資金不足比率の説明に使わないでください。

ただし、額そのものがずれるのは、この省令による控除額が入っている会計だけです。記載要領はこの控除額を「連結実質赤字比率の算定上、現金会計である他会計(一般会計又は法非適用会計等)との間で生じる重複額」と説明しています。令和6年度決算の確報値では、法適用企業4,480会計のうち控除額が入っていたのは47会計で、その47会計はいずれも資金剰余で、資金不足額は出ていません。つまり令和6年度に公表された資金不足額について、2つの額が食い違った会計はありません。資金不足額が公表された56会計では、違うのは符号の向きだけです。資金不足額が出ていない会計は、(9)の欄そのものが「−」になります。

令和6年度決算の実額で確かめる

以下はすべて、総務省が公表している令和6年度資金不足比率等(確報値)の実額です。単位は千円です。架空の設例ではありません。

流動負債が流動資産を80億円上回っていても、比率は「−」

青森県青森市の下水道事業会計です。

項目金額(千円)
流動負債8,639,011
控除企業債等6,949,783
A1,689,228
B(算入地方債)0
流動資産580,802
C580,802
A+B−C1,108,426
D(解消可能資金不足額)4,143,196
資金の不足額0
公表された資金不足比率−

流動負債と流動資産の差は8,058,209千円、約80億円です。しかし流動負債のうち6,949,783千円は建設改良費等に充てた企業債なので、Aでは引かれます。残ったA+B−Cは1,108,426千円で、ここから減価償却前経常利益による方式で算定した解消可能資金不足額4,143,196千円を引くので、資金の不足額は零になります。

この会計は、繰越欠損金もゼロです。流動の部の差だけを見て資金不足を見込むと、80億円ずれます。

流動資産のほうが多いのに、資金不足額が出る

福岡県糸田町の町立緑ヶ丘病院事業特別会計です。法適用企業です。

項目金額(千円)
流動負債121,945
控除企業債等1,348
A120,597
B(算入地方債)103,045
流動資産197,978
C197,978
A+B−C25,664
D(解消可能資金不足額)0
資金の不足額25,664
事業の規模366,902
公表された資金不足比率6.9%

流動資産のほうが76,033千円多い会計です。それでも、建設改良費等以外の経費に充てた地方債の現在高103,045千円がBで足されるため、資金の不足額が25,664千円出ます。

25,664 ÷ 366,902 = 6.9948%ですが、公表値は6.9%です。四捨五入なら7.0%になります。端数は切り捨てです。総務省の算定様式では、比率の欄に ROUNDDOWN(資金不足額/事業の規模,3)*100 という式が入っており、小数第2位以下を切り捨てて小数第1位までで表示します。事業の規模が零のときは「※」が表示されます。

20%を超えた会計

秋田県仙北市の仙北市病院事業会計です。令和6年度決算に基づく資金不足比率が、全国で20%以上となった3会計のうちのひとつです。

項目金額(千円)
流動負債2,503,680
控除企業債等544,959
A1,958,721
B(算入地方債)283,345
流動資産602,543
C602,543
A+B−C1,639,523
D(解消可能資金不足額)311,673
資金の不足額1,327,850
事業の規模3,776,865
公表された資金不足比率35.1%
繰越欠損金7,781,943

1,327,850 ÷ 3,776,865 = 35.1575%で、切り捨てて35.1%です。解消可能資金不足額を引いた後でも1,327,850千円が残り、法適用企業で繰越欠損金もあるので、経営健全化計画の対象になります。

同市の経営健全化計画の概要は、令和8年5月15日の官報告示で公表されています。計画期間は令和7年度から令和10年度までの4年間で、資金不足比率の見通しは令和7年度57.9%、令和8年度34.4%、令和9年度21.2%、令和10年度18.3%とされています。

1,700会計のうち1,652会計は、資金不足額がゼロでした

令和6年度決算の確報値は、全国5,428会計分あります。法適用企業が4,480会計、法非適用企業が948会計です。流動負債と流動資産がどちらも数値で入っている法適用企業4,478会計について数えると、次のようになります。

流動負債と流動資産の関係会計数うち資金不足額が出た会計
流動負債 > 流動資産1,70048
流動負債 ≦ 流動資産2,7783

流動負債が流動資産を上回っていた1,700会計のうち、資金不足額が出たのは48会計だけです。残りの1,652会計は公表上「−」です。そして、流動資産のほうが多い2,778会計のうち3会計では、資金不足額が出ています。

控除の効き方と、20%以上になった会計の数も見ておきます。

区分会計数
解消可能資金不足額を引く前に資金不足額があった134
 うち控除後も残った(=資金不足額が公表された)56
 うち控除でゼロになった78
資金不足比率が20%以上(経営健全化基準以上)3

20%以上の3会計は、秋田県仙北市の病院事業会計(35.1%)、山口県宇部市の農業集落排水事業特別会計(128.5%)、鹿児島県屋久島町の船舶事業特別会計(137.4%)です。後の2つは、分母の小ささが比率を押し上げています。宇部市の農業集落排水事業特別会計は事業の規模が19,813千円、屋久島町の船舶事業特別会計は38,655千円です。資金の不足額の絶対額はそれぞれ25,461千円・53,123千円で、仙北市の病院事業会計の1,327,850千円とは桁が違います。

資金不足比率は額ではなく比率なので、小さな会計では跳ねます。これは制度の想定内です。総務省の質疑応答も、休業が長期にわたって営業収益が零に近づく場合について、こう答えています。

通常どおり、営業収益の額を基本とした分母を用いる。(総務省「健全化法に関するQ&A」資金不足比率 問4)

解消可能資金不足額は、例外ではなく本体の一部です

施行令3条2項が、資金の不足額から控除する額を定めています。

前項の規定により算定した資金の不足額の全部又は一部が、公営企業に係る施設の建設改良費等の財源に充てるために起こした地方債の元金償還金で当該年度の前年度までに償還されたものの合計額が当該施設に係る当該年度の前年度までの減価償却費の額の合計額を超えていることその他これに準ずる事由として総務省令で定める事由により生じているものであると認められる場合においては、同項の規定にかかわらず(中略)これらの事由により生じている資金の不足額として総務省令で定めるところにより算定した額を控除した額とする(施行令3条2項)

元金償還が減価償却より先に進むことで生じている資金不足は、控除するという考え方です。資本費平準化債が狙っているものと、同じところを見ています。

総務省は制度の趣旨をこう説明しています。

法律案の国会審議における附帯決議等を踏まえ、下水道、地下鉄など事業の性質上、構造的に資金不足が生じる事由がある公営企業については、健全化法における比率の算定の際に、将来解消が見込まれる「解消可能資金不足額」を資金不足額から控除。(総務省「解消可能資金不足額の算定方法(資金不足比率)」)

算定の方法は施行規則6条1項が1号から5号まで並べており、そのいずれかで算定した額と、同条2項の地方債現在高との合算額が解消可能資金不足額になります。

方式(施行規則6条1項の号)使える事業残存耐用年数に相当する年数
累積償還・償却差額算定方式(1号)公営企業の全事業用いない
減価償却前経常利益による負債解消可能額算定方式・法適用企業(2号)主に路面交通事業を営む鉄道事業・軌道事業25年
同(2号)主に地下鉄事業・新交通システム事業を営む鉄道事業・軌道事業45年
同(2号)下水道事業45年
減価償却前経常利益による負債解消可能額算定方式・法非適用企業(3号)下水道事業45年
個別計画策定算定方式(4号)下水道事業(供用開始後15年以内)用いない
基礎控除額算定方式(5号。4号に代えて使える)下水道事業(供用開始後15年以内)用いない

年数と対象事業は、施行規則6条が「総務大臣が定める」としているところを、総務省告示第百九十号が埋めています。

(1) 主に路面交通事業を営む鉄道事業又は軌道事業 25年/(2) 主に地下鉄事業、新交通システム事業を営む鉄道事業又は軌道事業 45年/(3) 下水道事業 45年(総務省告示第百九十号「解消可能資金不足額に関する基準等」第三の1)

規則第6条第1項第4号及び第5号に規定する総務大臣が定める事業は下水道事業とし、同項第4号に規定する総務大臣が定める期間は15年とする。(同基準 第四の1)

告示が15年と書いているのは4号についてだけですが、5号にも同じ期間がかかります。施行規則6条1項4号の括弧書きが「次号において同じ」と書いているためです。記載要領も、4号・5号のどちらについても「対象事業は供用開始後15年以内の下水道事業のみであることに留意してください」と注記しています。

2号・3号の方式の名称は、記載要領(令和6年度決算算定分)の表記に合わせて「減価償却前経常利益による負債解消可能額算定方式」と書きました。告示第百九十号は、同じ方式を「減価償却前経常利益による負債償還可能額算定方式」と書いています。告示と突き合わせるときは、名称が一致しないことを前提に読んでください。

どの方式を使えるかは、事業の種類で決まります。下水道事業と鉄軌道事業には減価償却前経常利益による方式がありますが、それ以外の事業では累積償還・償却差額算定方式と、施行規則6条2項の地方債現在高しか使えません。先に見た青森市の下水道事業会計が4,143,196千円を控除できたのは、下水道事業に45年の方式があるからです。病院事業にはこれがないので、仙北市の病院事業会計の控除額は311,673千円にとどまっています。しかもこの311,673千円は、施行規則6条2項の地方債の現在高だけで、同条1項の方式で算定した額は零です。

施行規則6条2項が合算する地方債は、建設改良費等以外の経費に充てた地方債のうち、前年度に経常利益(法非適用企業では経常利益に相当する額)があった企業が起こしたもの、または総務大臣・都道府県知事の同意または許可を得て起こしたものです。Bで足した地方債が、Dで戻ってくる形になっています。ただし、Bと同じ額が戻るわけではありません。Bは現在高から流動負債として整理されている分を引いた額ですが、施行規則6条2項が合算するのは引く前の現在高です。2項の額がBを上回ることがあります。先に見た仙北市の病院事業会計がそれで、Bの283,345千円に対して2項の額は311,673千円です。

分母は、営業収益から受託工事収益を引いた額です

法適用企業(宅地造成事業のみを行うものを除く。)に係る特別会計 当該年度の前年度の営業収益の額(中略)から受託工事収益の額を控除した額(施行令17条1号)

項目分母での扱い
営業収益の額基礎になる
受託工事収益の額控除する
指定管理者が収受した利用料金の額加える(指定管理者制度で利用料金制を導入している場合)
営業外収益の額入らない
宅地造成事業のみを行う法適用企業営業収益ではなく、資本の額と負債の額の合算額を使う(施行令17条2号)

受託工事収益を落とさないでください。分母が大きくなる方向の誤りなので、比率は小さく出ます。金額は会計ごとに違うので、自分の会計の損益計算書で受託工事収益を確かめることになります。

法非適用企業は、営業収益に相当する収入の額から受託工事収益に相当する収入の額を控除した額です(施行令17条3号)。

20%を超えたときに何をするのか

経営健全化基準は施行令19条が定めています。

法第二十三条第一項に規定する政令で定める数値は、五分の一(公営競技を行う法適用企業にあっては、零)とする。(施行令19条)

5分の1、つまり20%です。公営競技を行う法適用企業だけは零です。20%という水準の意味について、総務省は次のように説明しています。

経営健全化基準(早期健全化基準に相当する基準)は、地方債協議・許可制度における許可制移行基準を勘案して20%とする。(営業収益/年の5%程度の合理化努力×4年のイメージ)(総務省「早期健全化基準、財政再生基準、経営健全化基準の考え方」)

年間の営業収益の5%を削る努力を4年続けて埋まる水準、という置き方です。分母が営業収益であることと、この20%は一体の設計です。

対象は「繰越欠損金があるものに限る」と括弧書きで画されています

地方公共団体は、公営企業(事業を開始する前の公営企業を除き、法適用企業にあっては、繰越欠損金があるものに限る。)の資金不足比率が公営企業の経営の健全化を図るべき基準として政令で定める数値(中略)以上である場合には、当該公営企業について、当該資金不足比率を公表した年度の末日までに、当該年度を初年度とする公営企業の経営の健全化のための計画(中略)を定めなければならない。ただし、この項の規定により既に当該公営企業について経営健全化計画を定めている場合その他政令で定める場合は、この限りでない。(健全化法23条1項)

括弧書きが2つ入っています。事業を開始する前の公営企業は除かれ、法適用企業は繰越欠損金があるものに限られます。法非適用企業にはこの限定がありません。資金不足額は貸借対照表の流動の部を中心に測るもので、損益の累積である繰越欠損金とは別の数字です。資金不足比率が20%以上になっても、法適用企業で繰越欠損金がなければ、この条項による計画の策定義務は生じません。

ただし書は、すでに同じ公営企業について経営健全化計画を定めている場合と、政令で定める場合の2つを除いています。前者は、この条項で既に計画を定めている公営企業について、同じ条項でもう1本定める義務は生じないという意味です。後者の政令は次のものです。

法第二十三条第一項ただし書に規定する政令で定める場合は、当該年度の前年度の資金不足比率が経営健全化基準未満である場合又は公営企業の事業を開始した日が当該年度の前年度の中途である場合であって、当該年度の翌年度の資金不足比率が経営健全化基準未満となることが確実であると認められるときとする。(施行令20条1項)

総務省の質疑応答は、これを「1年度のみ資金不足比率が経営健全化基準を超える公営企業」についての規定だと説明し、あわせて次の注意をしています。

ただし、この場合、要件となる翌年度の資金不足比率について慎重に試算することが望まれる。(中略)なお、この規定を適用する際には、同条第2項により、該当すると判断する理由の公表及び総務大臣への報告が義務付けられており、手続きに留意が必要である。(総務省「健全化法に関するQ&A」資金不足比率 問4)

「今年だけだから」で済ませられる制度ではありません。施行令20条2項は「直ちに、その旨及び当該場合に該当すると判断した理由を公表し、かつ、総務大臣に報告しなければならない」としており、施行規則24条が報告書の様式まで定めています。

計画に書く7項目は条文に並んでいます

#項目根拠
1資金不足比率が経営健全化基準以上となった要因の分析法23条2項1号
2計画期間同2号
3経営の健全化の基本方針同3号
4資金不足比率を経営健全化基準未満とするための方策同4号
5各年度ごとの前号の方策に係る収入及び支出に関する計画同5号
6各年度ごとの資金不足比率の見通し同6号
7その他経営の健全化に必要な事項同7号

法23条2項は、計画の性格をこう定めています。

経営健全化計画は、当該公営企業の経営の状況が悪化した要因の分析の結果を踏まえ、当該公営企業の経営の健全化を図るため必要な最小限度の期間内に、資金不足比率を経営健全化基準未満とすることを目標として、次に掲げる事項について定めるものとする。(健全化法23条2項)

「必要な最小限度の期間内に」という縛りがあります。一方で、ある年度に基準未満になればそれで足りるというものではありません。総務省の質疑応答は、期間の切り方についてこう答えています。

経営健全化計画は、資金不足比率を経営健全化基準未満とすることを目標として策定されるものであるが、単にある年度に基準未満となればよいものではなく、安定的に基準未満になることを目標とすべきもの。このため、経営健全化計画の期間については、n年度までとするのではなく、資金不足比率が安定的に基準未満となる年度までとすべきである。(総務省「健全化法に関するQ&A」財政健全化計画、財政再生計画及び経営健全化計画の策定 問3)

計画は長が作成して議会の議決を経て定め、定めたら速やかに公表し、都道府県・指定都市は総務大臣に、市町村・特別区は都道府県知事に報告します(法24条が準用する法5条1項・2項)。実施状況は毎年9月30日までに議会に報告し、公表し、同じ先に報告します(法24条が準用する法6条1項)。

比率が「−」の年も、毎年度やることが3つあります

公営企業を経営する地方公共団体の長は、毎年度、当該公営企業の前年度の決算の提出を受けた後、速やかに、資金不足比率及びその算定の基礎となる事項を記載した書類を監査委員の審査に付し、その意見を付けて当該資金不足比率を議会に報告し、かつ、当該資金不足比率を公表しなければならない。(健全化法22条1項)

「資金不足比率が出た場合には」とは書かれていません。資金不足額がなければ公表する比率は「−」ですが、審査・報告・公表の3つは毎年度必要です。

22条1項が直接求めているのは3つですが、22条3項が健全化判断比率の規定を準用しているので、実際にはもう2つ続きます。

やること根拠補足
監査委員の審査に付す法22条1項意見の決定は監査委員の合議(法22条3項が準用する法3条2項)
議会に報告する法22条1項監査委員の意見を付けて
公表する法22条1項インターネットの利用及び公衆に見やすいその他の方法(施行令25条)
総務大臣・都道府県知事に報告する法22条3項が準用する法3条3項都道府県・指定都市は総務大臣、市町村・特別区は都道府県知事
算定の基礎となる書類を備え置く法22条3項が準用する法3条6項公表した日から5年間(施行令18条)

起点は「決算の提出を受けた後」で、議会の認定ではありません

法22条1項の起点は、決算の認定ではなく決算の提出です。法適用企業であれば、管理者が毎事業年度終了後2月以内に決算を調製して長に提出します(地方公営企業法30条1項)。議会の認定は、遅くとも事業年度終了後3月を経過した後において最初に招集される定例会です(同条4項)。条文の順序では、資金不足比率の手続は決算の認定より前に始まります。

実務上は決算審査との関係が問題になるため、総務省の質疑応答がこの点を正面から扱っています。

しかしながら、地方団体の財政規模や決算の議会認定のスケジュール等を踏まえると、決算審査を待っていては財政指標の円滑な審査が行うことが困難な場合も想定されることから、そうした場合においては、決算数値の正確性が確認された上で、決算審査と財政指標の審査が並行して行われる場合もありうる。(原文ママ。総務省「健全化法に関するQ&A」財政指標の審査 問1)

引用中の「円滑な審査が行うことが困難」は原文のままです。文意は「円滑な審査を行うことが困難」と読めます。決算審査の終了を待たずに並行させてよい場合がある、というのが答えの結論です。

同じ質疑応答集には、議会が閉会中の場合の扱いもあります。

議会閉会中に議会に対して報告を行う場合は、対外的に議会を代表する議長に対して報告することとなる。(同Q&A 議会報告・公表等 問7)

そして、報告・公表した後に算定の誤りが見つかったときは、放置できません。

長は財政指標を修正の上、監査委員の審査に付しその意見とともに再び議会に報告し、公表を行うべき。(同Q&A 議会報告・公表等 問5)

自分の会計で確かめること

  • Aの控除企業債等を取っているか。流動負債に計上した企業債・他会計長期借入金のうち、建設改良費等に充てたものを拾えているか
  • Bを拾っているか。建設改良費等以外の経費に充てた地方債の現在高を、固定負債の分まで含めて把握しているか。漏らすと比率が小さく出ます
  • 「建設改良費等」に準ずる経費を取り違えていないか。資本費平準化債は地方債に関する省令12条4号イに当たるのでBに入りません
  • 連結実質赤字比率に使った資金の不足額を流用していないか。省令による控除額の扱いが違うので、同じ会計で2つの額が出ます
  • 分母から受託工事収益を引いているか。指定管理者が収受した利用料金を加えているか
  • 解消可能資金不足額について、使える方式を確かめたか。下水道事業・鉄軌道事業以外は累積償還・償却差額算定方式が中心になります。算定の基礎になる元金償還額と減価償却費の累計は、総務省が「早期に着手することが望ましい主な事務」に挙げています
  • 比率が「−」でも、審査・議会報告・公表を済ませているか。算定の基礎となる書類を5年間備え置いているか
  • 20%以上になったとき、繰越欠損金の有無を確認したか。法適用企業の計画義務は繰越欠損金があるものに限られます。施行令20条1項を使うなら、理由の公表と総務大臣への報告が必要です

まとめ

資金不足比率は、貸借対照表の流動の部を比べた数字ではありません。流動負債から建設改良費等に充てた企業債等を引き、建設改良費等以外の経費に充てた地方債の現在高を足して、流動資産を引く。正の値になればそこから解消可能資金不足額を引く。この4段階が分子で、分母は営業収益から受託工事収益を引いた額です。

令和6年度決算では、流動負債が流動資産を上回っていた法適用企業1,700会計のうち1,652会計が資金不足額ゼロで、逆に流動資産のほうが多い会計のうち3会計で資金不足額が出ました。流動の部を見比べるだけでは、方向を間違えることがあります。

20%を超えても、法適用企業で繰越欠損金がなければ経営健全化計画の義務は生じません。1年だけ超えた場合の救済もありますが、理由の公表と総務大臣への報告が条件です。そして比率が「−」の年も、監査委員の審査・議会への報告・公表の3つは毎年度の義務で、算定の基礎となる書類は5年間備え置くことになります。

よくある質問

流動負債が流動資産を上回っています。資金不足比率は出ますか。

出るとは限りません。分子の計算では、流動負債に計上されている企業債や他の会計からの長期借入金のうち、建設改良費等に充てるためのものを引きます。令和6年度決算では、流動負債と流動資産がどちらも数値で入っている法適用企業4,478会計のうち、1,700会計が流動負債のほうが多い状態でした。そのうち1,652会計は資金不足額がゼロで、公表された資金不足比率は「−」です。逆に、流動資産のほうが多いのに資金不足額が出た会計も3会計あります。

資金不足がない年は、何もしなくてよいのですか。

いいえ。健全化法22条1項は、資金不足比率の有無にかかわらず、毎年度、資金不足比率とその算定の基礎となる事項を記載した書類を監査委員の審査に付し、意見を付けて議会に報告し、かつ公表することを求めています。公表は「インターネットの利用及び公衆に見やすいその他の方法」によります(施行令25条)。算定の基礎となる事項を記載した書類は、公表した日から5年間、事務所に備えて置かなければなりません(施行令18条)。

資金不足比率が20%を超えました。必ず経営健全化計画を作ることになりますか。

法適用企業については、繰越欠損金があるものに限られます。健全化法23条1項が対象を「公営企業(事業を開始する前の公営企業を除き、法適用企業にあっては、繰越欠損金があるものに限る。)」と括弧書きで画しているためです。同項ただし書は、すでに同じ公営企業について経営健全化計画を定めている場合も除いています。また、前年度の資金不足比率が基準未満で今回初めて超えた場合などで、翌年度に確実に基準未満となると認められるときは、計画を定めないことができます(施行令20条1項)。ただしこの場合は、その旨と理由を直ちに公表し、総務大臣に報告する義務があります(同条2項)。

解消可能資金不足額は、特別な事情がある団体だけの話ですか。

違います。令和6年度決算では、これを引く前に資金不足額が生じていた134会計のうち、78会計が控除によってゼロになりました。残ったのは56会計です。下水道事業・鉄軌道事業には減価償却前経常利益による方式があり、残存耐用年数に相当する年数は下水道事業と地下鉄事業で45年、主に路面交通事業を営む事業で25年とされています(総務省告示第190号)。累積償還・償却差額算定方式は公営企業の全事業が対象です。

事業の規模は、料金収入の合計でよいのですか。

営業収益の額から受託工事収益の額を控除した額です(施行令17条1号)。指定管理者制度で利用料金を指定管理者の収入として収受させている場合は、その額を営業収益の額に加えます。宅地造成事業のみを行う法適用企業だけは例外で、資本の額と負債の額の合算額を分母に使います(同条2号)。休業が長期にわたって営業収益が零に近づいた場合も、総務省の質疑応答は「通常どおり、営業収益の額を基本とした分母を用いる」としています。

出典

制度の内容は改正されることがあります。判断の際は必ず出典元の最新情報をご確認ください。

お問い合わせ・ご相談

学校法人の会計監査、公営企業の会計指導、税務申告のことなら鳥生紘平公認会計士事務所にお任せください。

初回相談は無料です

受付時間: 平日 9:00〜18:00