自治体・公営企業

リースを賃貸借処理のままにできる公営企業があります — 注記は残ります

「公営企業会計を適用したので、リースも資産に計上することになりました」

下水道事業の担当課からこう聞くことが、いまでも年に何度かあります。その事業では、計上しないままにできます。

地方公営企業法施行規則は、ファイナンス・リース取引を売買として処理することを原則にしたうえで、賃貸借処理のままにできる場合を3つ置いています。そのうち1つは、下水道事業や簡易水道事業のように、法2条1項各号に掲げる事業でも病院事業でもない事業を正面から挙げたもので、規模の条件が付いていません。

ところが、総務省が公開している指針(告示)とその説明資料は、3つのうち2つしか挙げていません。指針だけを読むと、下水道事業は「重要性が乏しいとき」しか逃げ場がないように見えます。

この記事は、どの事業のどのリース契約に売買処理が要るのかを、条文と総務省のQ&Aの原文で確かめます。公営企業会計そのものの地図は公営企業会計の概要、資産に計上した後の除却と減損は固定資産の除却と減損で扱っています。

結論

  • 原則は売買処理です。 指針第9章第1は「ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行い」としており、規則5条2項1号チ・2号ルがリース資産を、規則7条2項6号・3項12号がリース債務を、それぞれ勘定区分に置いています
  • 賃貸借処理のままにできるのは、規則55条の3つの場合です。 1号は法2条1項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業(下水道事業・簡易水道事業など)で、規模の条件がありません。2号は法2条1項各号の事業のうち、令8条の2各号に当たらないもの(水道事業なら、職員200人以上かつ給水戸数5万戸以上に当たらないもの)。3号はリース物件の重要性が乏しいとき
  • 病院事業は、1号にも2号にも入りません。 1号が明文で除き、2号は法2条1項各号の事業に限られます。残るのは3号だけです
  • 総務省の指針(告示)・説明資料・取扱通知は、55条の3つのうち2つしか挙げていません。 1号が落ちています。ただし令和5年3月の「公営企業会計適用後のQ&A集」では、総務省が下水道事業について1号で答えています。運用では1号が生きています。 判定は規則の現行条文で行ってください
  • 所有権が移転するファイナンス・リースには、1号・2号が使えません。 どちらも括弧書きで所有権移転外に限っているので、事業の種類や規模による特例は効きません。残るのは3号で、こちらの基準は所有権移転外より狭く、300万円の線がありません
  • 「重要性が乏しい」の基準は、法令にも指針にもありません。 見直しQ&A 7-4が、質問の中で「法令、指針上明らかでない」と認めたうえで示しています
  • 55条が外すのは勘定区分の4か所だけです。 賃貸借処理を選んでも、未経過リース料相当額の注記(規則42条1号)は残ります
  • リース資産の取得とリース債務の計上に、4条予算の経理は要りません(見直しQ&A 7-3)。要るのはリース料の支払と、月割計算をする場合の減価償却費のほうです
  • 費用の合計は、どちらを選んでも変わりません。 変わるのは置き場所です。設例では年792,000円のうち、売買処理なら740,000円が営業費用(減価償却費)、52,000円が営業外費用(支払利息)に分かれ、賃貸借処理なら792,000円全額が営業費用に出ます

この記事が前提にしている人

地方公営企業法の規定の全部または一部が適用されている事業の、会計を預かっている方です。水道事業・下水道事業・病院事業のいずれでも使えるように書いています。法の適用そのもの(法適化)の段取りは下水道事業の法適化で扱いました。

まだ法を適用していない事業には、この記事は効きません。 施行規則は法の適用を受ける企業の会計を定めるものなので、官庁会計で経理している事業では、リース料は歳出のままです。

原則は売買処理です

まず原則を確かめます。指針(平成24年総務省告示第18号)の第9章第1です。

ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行い、オペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う。

分かれ目は、ファイナンス・リースかオペレーティング・リースかです。規則1条14号が定義しています。

ファイナンス・リース取引 リース契約に基づくリース期間の中途において当該リース契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引であつて、リース物件の借主が、当該リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴つて生じる費用等を実質的に負担することとなるものをいう

「かつ」です。 中途解約ができないこと(またはそれに準ずること)と、経済的利益の享受と費用負担の両方が要ります。オペレーティング・リース取引は、規則1条15号が「ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいう」としているだけなので、ファイナンス・リースの定義に当たらなければこちらになります。

貸借対照表に出てくる場所は4か所です

売買処理をすると、リース資産とリース債務が貸借対照表に載ります。規則が置いている場所は4か所です。

場所条文原文
有形固定資産規則5条2項1号チ「リース資産(当該地方公営企業がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であつて、当該リース物件がイからトまで及びヌに掲げるものである場合に限る。)」
無形固定資産規則5条2項2号ル「リース資産(当該地方公営企業がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であつて、当該リース物件がロからヌまで及びヲに掲げるものである場合に限る。)」
固定負債規則7条2項6号「ファイナンス・リース取引におけるリース債務であつて、次項第十二号に掲げるもの以外のもの」
流動負債規則7条3項12号「ファイナンス・リース取引におけるリース債務であつて、一年内に期限が到来するもの」

この4か所が、あとで出てくる特例で外れる場所です。 規則55条が「適用しないことができる」と書いているのは、この4つの規定だけです。注記も減価償却も、55条の射程に入っていません。

有形と無形に分かれていることにも気をつけてください。リース物件がソフトウェア(規則5条2項2号ヌ)なら無形固定資産の側のリース資産に、機械及び装置(同項1号ニ)なら有形固定資産の側に入ります。

リース資産の減価償却は、自己資産と同じではありません

所有権が移転しないファイナンス・リースのリース資産については、減価償却の方法が別に定められています。規則17条1項です。

償却資産のうちリース資産(ファイナンス・リース取引のうち、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められない取引に係る資産に限る。)の減価償却は、第十四条第一項の規定にかかわらず、定額法によつて行うものとする。

定率法は選べません。そして同条2項が、減価償却額の計算を読み替えています。読み替えは4か所で、うち3か所が有形固定資産の規定(規則15条1項)に対するものです。

通常の有形固定資産(規則15条1項)リース資産(規則17条2項の読み替え後)
帳簿原価から帳簿原価の10%に相当する金額を控除した金額に償却率を乗じる帳簿原価に償却率を乗じる(10%の控除がない)
別表第二号に定める耐用年数に応じた償却率リース契約に基づくリース期間に応じた償却率
ただし書により、累計は帳簿原価の95%相当額が上限ただし書が適用されない(上限がない)

残存価額を置かず、リース期間で償却し切る形になります。指針第9章第2の2も「所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却は、定額法によって行い、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額を零として減価償却費を算定する(規則第17条)」としています。

4か所めの読み替えは、無形固定資産の側です。 規則17条2項は「前条第一項中「別表第三号に定める耐用年数」とあるのは「リース契約に基づくリース期間」と」とも読み替えています。前条=規則16条1項が無形固定資産の減価償却額の規定です。こちらはもともと帳簿原価そのものに、別表第三号の耐用年数に応じた別表第四号の償却率を乗じる形なので、10%の控除も95%の上限も初めからありません。ソフトウェアのリースは、15条1項ではなく16条1項を読んでください。 変わるのは耐用年数がリース期間になる点だけです。

所有権が移転するファイナンス・リースは、こちらに入りません。 規則17条1項の括弧書きが「所有権が借主に移転すると認められない取引に係る資産に限る」としているためです。指針第9章第2の1も「自己所有の固定資産に適用する減価償却の方法と同一の方法により算定する」としています。耐用年数は別表第二号で、定率法を採っている団体なら定率法です。ただし、どの物件でも定率法が選べるわけではありません。 規則14条1項が有形固定資産の減価償却を「定額法又は定率法(平成十年四月一日以後に取得した建物にあつては、定額法)」とし、無形固定資産は「定額法によつて行うものとする」としているので、建物とソフトウェアは定額法です。

賃貸借処理のままにできるのは、3つの場合です

ここが本題です。規則55条です。

(リース会計に係る特例) 第五十五条 次の各号のいずれかに該当するときは、第五条第二項第一号チ及び第二号ル並びに第七条第二項第六号及び第三項第十二号の規定を適用しないことができる。 一 ファイナンス・リース取引(リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められない取引に限る。)におけるリース物件の借主(次号において「リース借主」という。)が法第二条第一項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業であるとき 二 リース借主が法第二条第一項各号に掲げる事業であつて、令第八条の二各号に掲げる事業以外のものであるとき 三 リース物件の重要性が乏しいものであるとき

「次の各号のいずれかに該当するとき」です。 3つのうちどれか1つに当たればよく、全部を満たす必要はありません。

もう1つ、1号と2号は所有権移転外のファイナンス・リースに限られます。 1号の括弧書きが「リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められない取引に限る」としており、2号の「リース借主」はその括弧書きの中で定義された語(「次号において「リース借主」という。」)なので、2号も同じ限定を受けます。3号にはこの限定がありません。

1号 — 下水道事業・簡易水道事業など。規模の条件はありません

1号は「ファイナンス・リース取引(略)におけるリース物件の借主(次号において「リース借主」という。)が法第二条第一項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業であるとき」です。主語は「リース物件の借主」で、「リース借主」はここで次号のために定義される語です(2号だけがこの語を使います)。どの事業が外れるのかは、法2条を読むと分かります。

項事業法の適用
法2条1項水道事業(簡易水道事業を除く)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、鉄道事業、電気事業、ガス事業法の全部が当然に適用
法2条2項病院事業財務規定等が当然に適用
法2条3項上の2項に定めるもののほか、条例(一部事務組合・広域連合は規約)で定めるところにより法の全部または一部を適用した事業条例・規約による任意の適用

法2条3項の原文です。

前二項に定める場合のほか、地方公共団体は、政令で定める基準に従い、条例(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百八十四条第一項の一部事務組合(以下「一部事務組合」という。)又は広域連合(以下「広域連合」という。)にあつては、規約)で定めるところにより、その経営する企業に、この法律の規定の全部又は一部を適用することができる。

下水道事業・簡易水道事業・介護サービス事業などは、この3項で法を適用している事業です。 法2条1項各号にも病院事業にも当たらないので、規則55条1号に当たります。

この号には、規模の条件が一切ありません。 職員が何人でも、処理区域が何ヘクタールでも、年間のリース料がいくらでも、所有権が移転しないファイナンス・リースであれば賃貸借処理のままにできます。法適化を終えたばかりで固定資産台帳の整備に手いっぱいの事業にとっては、ここが効きます。

2号 — 水道事業などで、管理者を置かないことができる規模のとき

2号は「リース借主が法第二条第一項各号に掲げる事業であつて、令第八条の二各号に掲げる事業以外のものであるとき」です。令8条の2は、見出しが「管理者を置かないことができる企業」で、構造が二重否定になっています。

法第七条ただし書に規定する政令で定める地方公営企業は、次に掲げる事業(略)以外の事業とする。 一 水道事業(簡易水道事業を除く。第八条の四及び第二十六条の六において同じ。)で、常時雇用される職員の数が二百人以上であり、かつ、給水戸数が五万戸(水道用水供給事業にあつては、給水能力が一日二十万立方メートル)以上であるもの 二 工業用水道事業で、常時雇用される職員の数が百人以上であり、かつ、給水能力が一日五十万立方メートル以上であるもの 三 軌道事業、自動車運送事業又は鉄道事業で、これらの事業を通じて、常時雇用される職員の数が二百人以上であり、かつ、事業の用に供する車両の数が百五十両以上であるもの 四 電気事業で、常時雇用される職員の数が百人以上であり、かつ、発電所の最大出力の合計が五万キロワツト以上であるもの 五 ガス事業で、常時雇用される職員の数が百人以上であり、かつ、供給戸数が二万戸以上であるもの

規則55条2号が指しているのは「令第八条の二各号に掲げる事業以外のもの」なので、上の各号の要件を満たさない事業が特例を使えます。言い換えると、管理者を置かないことができる規模の企業です。指針もこの読み方を括弧で補っています(後述)。

各号はいずれも「かつ」です。 水道事業なら、職員200人以上であることと、給水戸数5万戸以上であることの両方を満たしたときに初めて令8条の2各号に該当します。職員が250人いても給水戸数が4万戸なら該当しないので、規則55条2号で特例が使えます。どちらか一方で判定しないでください。

この号も、1号から引き継いだ「リース借主」の定義により所有権移転外に限られます。

3号 — リース物件の重要性が乏しいとき

3号は「リース物件の重要性が乏しいものであるとき」だけです。1号・2号と違い、所有権移転外に限る括弧書きが付いていません。 したがって所有権が移転するファイナンス・リースでも、重要性が乏しければこの号で賃貸借処理ができます。見直しQ&A 7-4も、所有権移転ファイナンス・リース取引について「通常の賃貸借取引と同様の会計処理が認められるリース契約」の基準を示しています。ただしその基準は所有権移転外より狭いので、次の節で分けて扱います。

病院事業だけは、1号にも2号にも入りません

ここは見落とされます。

  • 1号は「法第二条第一項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業であるとき」と、病院事業を明文で除いています
  • 2号は「リース借主が法第二条第一項各号に掲げる事業であつて」と限定しており、病院事業は法2条2項の事業なので入りません

病院事業に残るのは3号だけです。 総務省の説明資料「地方公営企業会計制度の見直しについて」も、中小規模の公営企業の特例の基準として「地方公営企業法第2条第1項各号に掲げる事業であって、地方公営企業法施行令第8条の2の管理者を置かなければならない企業に該当しないものを、中小規模の公営企業とする。」としたうえで、次の一文を置いています。

※なお、病院事業については、中小規模の特例は設けない。

300床の病院でも20床の診療所でも、規模では外れません。医療機器のファイナンス・リースは金額が大きくなりやすいので、3号で逃げられる契約も限られます。しかも所有権が移転する契約なら、3号の基準から300万円の線が落ちます(後述)。病院事業は、原則どおり売買処理をする前提で組み立ててください。

総務省の指針と説明資料は、2つしか挙げていません

指針(平成24年総務省告示第18号)の第9章第1は、原則を述べたあと、ただし書で特例を2つ挙げています。

ただし、次のいずれかに該当するときは、事務負担の軽減の観点から、ファイナンス・リース取引であっても、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる(規則第55条)。 (1)所有権移転外ファイナンス・リース取引(ファイナンス・リース取引のうち、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められないものをいう。以下同じ。)におけるリース物件の借主が法第2条第1項各号に掲げる事業であって、令第8条の2各号に掲げる事業以外のもの(管理者を置かないことができる企業)であるとき (2)リース物件の重要性が乏しいものであるとき

(1)が規則55条2号、(2)が3号に対応します。1号が載っていません。 根拠として挙げられているのは「(規則第55条)」だけで、号の限定はありません。

指針だけを読むと、下水道事業は(1)に当たりません。 下水道事業は法2条1項各号の事業ではないからです。結果として「重要性が乏しいとき」しか特例がないように読めてしまいます。実際、法適化した下水道事業で、300万円を超えるリース契約を全部資産計上している例を見ます。

同じことが説明資料にも言えます。上に引いた「中小規模の公営企業」の基準も、法2条1項各号の事業だけを対象にしています。現行の規則55条には1号があり、こちらが法令です。

取扱通知も同じです。 地方公営企業法の施行に関する取扱通知(昭和27年9月29日自乙発第245号。最終改正 令和4年6月30日総財公第96号)の第1章第3節十六(二)です。

(1)ファイナンス・リース取引(リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められない取引に限る。)におけるリース物件の借主が法第2条第1項各号に掲げる事業であって、施行令第8条の2各号に掲げる事業以外のもの(管理者を置かないことができる企業であるとき)、又は(2)リース物件の重要性が乏しいものであるときについては、事務負担の軽減の観点から、ファイナンス・リース取引であっても、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができるものであること(施行規則第55条)。

令和4年6月30日まで改正経過が進んでいる通知ですが、やはり2つです。 平成24年1月27日に出た版(総財公第11号による改正後)とこの箇所の本文は同じで、1号は入っていません。

それでも総務省は、1号で判定しています

資料に1号が落ちていることと、総務省が1号を認めていないことは別です。総務省が令和5年3月に出した「公営企業会計適用後の会計業務に関するQ&A集」には、下水道事業からの質問と回答が、そのまま載っています。

下水道事業会計は則第55条第1号により、リース会計を適用する必要がないと考えています。当該条文の適用によりリース会計を適用しないことを選択した場合についても、未経過リース料の注記を行わなければならないのでしょうか。(質問) 則第55条第1号により、リース会計を適用しない場合(所有権移転外ファイナンス・リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う場合)でも、未経過リース料の注記は必要となります(則第42条第1号)。(回答)

質問の前提——下水道事業は55条1号でリース会計を適用しなくてよい——を、総務省は否定していません。 否定したのは注記まで要らないという部分だけです。同じQ&A集には「則第55条第1号及び同上第2号に該当する地方公営企業については、所有権移転外リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができます」と、1号と2号を並べて書いた質問も載っています。

つまり、1号が落ちているのは指針・説明資料・取扱通知の書き方のほうで、運用では1号が生きています。 判定は規則の現行条文で行い、資料の記述と食い違うときは条文を採ってください。

引用はいずれも原文のままです。 ただし指針について総務省が公開しているのは、平成24年1月27日の告示本体(縦書き)と同じ内容の横書き版だけで、改正後の本文は掲載されていません。 本記事の指針の引用はこの公開版によっています。上の取扱通知は令和4年6月30日まで改正経過が進んでいる版です。

なお、規則55条1号・2号の文言は所有権移転外に限られていますが、指針の(1)も同じ限定を置いているので、この点に食い違いはありません。

附則にも、条番号のずれがあります

もう1つ、原文のまま読むと行き先が合わない引用があります。平成24年総務省令第6号の附則7条です。

新規則第五条第二項第一号チ、同項第二号ル、第七条第二項第六号、同条第三項第十二号、第十七条、第三十五条第六号及び第四十二条の規定にかかわらず、最初適用事業年度の前事業年度の末日以前にリース契約に基づくリース期間が開始される契約に係るファイナンス・リース取引(新規則第一条第二号に規定するものであって、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められないものに限る。)については、総務大臣の定めるところにより会計処理を行うことができる。

「新規則第一条第二号」は原文ママです。 現行の施行規則1条で、ファイナンス・リース取引を定義しているのは14号です。2号は帳簿原価の定義(「償却資産を取得し又は改良したときにおいて、当該償却資産を示す勘定に計上する価額をいう」)で、リース取引とは関係がありません。古い資料で定義の引き当て先を確認するときは、現行の号に当て直してください。

「重要性が乏しい」の基準は、法令にも指針にもありません

3号の「重要性が乏しい」には、条文も指針も基準を置いていません。基準を示しているのは、総務省の会計基準見直しQ&A 7-4だけです。そして質問の側が、基準が法令にないことを正面から書いています。

1.所有権移転ファイナンス・リース取引、2.所有権移転外ファイナンス・リース取引、3.解約不能なオペレーティング・リース取引それぞれのリース取引の重要性の判断基準については、法令、指針上明らかでないが、どのように考えればよいか。

回答が示している基準は、取引の種類ごとに違います。

取引重要性が乏しいと認められる場合(いずれかに該当)効果
所有権移転ファイナンス・リース①購入時に費用処理するもの ②リース期間が1年以内であるもの通常の賃貸借取引と同様の会計処理
所有権移転外ファイナンス・リース①購入時に費用処理するもの ②リース期間が1年以内であるもの ③1契約あたりのリース料総額が300万円以下のもの通常の賃貸借取引と同様の会計処理
解約不能なオペレーティング・リース①購入時に費用処理するもの ②リース期間が1年以内であるもの ③事前解約予告期間中にリース料を支払うもの ④1契約あたりのリース料総額が300万円以下のもの未経過リース料の注記を要しない

表の行を1つずつ読んでください。 効果の列が違います。ファイナンス・リースの2行は会計処理の話で、オペレーティング・リースの行は注記の話です。オペレーティング・リースはもともと賃貸借処理なので、重要性が乏しいことで外れるのは注記のほうになります。

所有権移転のものには、300万円の基準がありません

1行目をもう一度見てください。所有権移転ファイナンス・リース取引の基準は①と②の2つで、300万円の基準が入っていません。

リース料総額500万円・リース期間5年の契約で考えます。所有権が移転しないなら③に当たらず(500万円 > 300万円)、①②にも当たらないので、重要性が乏しいとは認められません。所有権が移転するものは、③の線そのものがありません。 リース料総額が200万円でも、購入時に費用処理するものでもリース期間1年以内でもなければ、重要性が乏しいとは認められません。「300万円以下なら賃貸借処理でよい」を所有権移転のものに当てはめないでください。

所有権移転ファイナンス・リース取引については、移行時の扱いも違います。見直しQ&A 7-2が「賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことは認められない」としています。移行時の扱いは、後の「移行のときの扱い」で分けて書きます。

リース比率は「10%未満」が条件です。向きを間違えないこと

所有権移転外ファイナンス・リースには、もう1つ別の簡便さがあります。見直しQ&A 7-4の2(2)です。

(2)リース資産総額に重要性が乏しいと認められ、支払リース料のうち利息相当額について簡便な経理方法(利息相当額をリース期間定額法により計上する方法、又は利息相当額を損益計算に計上せず、全額元本相当額として処理する方法)が認められるリース契約。具体的には以下の式を満たす場合。 未経過リース料期末残高/(未経過リース料期末残高+有形固定資産+無形固定資産)<10%

これは賃貸借処理を認めるものではなく、売買処理の中で利息相当額の計算を簡単にしてよいという話です。資産には計上します。

条件は「10%未満」です。 分母に有形固定資産と無形固定資産が入るので、固定資産を多く持つ事業ほど比率が小さくなり、簡便な経理ができます。取得原価3,700,000円のリース資産を例に、固定資産の額を振ってみます。分子は各事業年度末の未経過リース料期末残高なので、下の表は契約した直後(=取得原価と同額)で代表させた概算です。 年度が進めば分子は小さくなるので、初年度に10%以上でも後の年度で10%未満になることがあります。

有形固定資産+無形固定資産リース比率簡便な経理
30,000,000円10.98%10%以上なので使えない
100,000,000円3.57%使える
5,000,000,000円0.07%使える

管や施設を抱える水道事業・下水道事業は分母が大きく、まず10%には届きません。比率が10%に届いてしまうのは、固定資産をほとんど持たない事業のほうです。 「規模が小さいほど簡便な方法が使える」という向きで覚えていると逆になります。

なお、説明資料「地方公営企業会計制度の見直しについて」の図は、同じ比率の分母を「当該期末残高+固定資産」と書いています。Q&Aのほうは「未経過リース料期末残高+有形固定資産+無形固定資産」で、投資その他の資産が入りません。固定資産は有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産からなるので(規則5条2項)、説明資料の書き方だと分母が広くなります。

判定には見直しQ&A 7-4の式を使ってください。 日付の前後ではありません。説明資料には平成24年5月版と平成25年12月版があり、総務省が現在リンクしているのは後者で、7-4(平成25年6月28日)より後に出ています。 それでも7-4を採るのは、7-4が「法令、指針上明らかでない」と認めたうえで基準そのものを定めた回答で、説明資料の図はそれを1行に縮めた要約だからです。

特例を使っても、注記は残ります

ここが最も落ちます。規則55条が「適用しないことができる」としているのは、規則5条2項1号チ・2号ル、7条2項6号・3項12号の4か所だけです。注記を定めた規則42条は、55条に挙げられていません。

(リース契約により使用する固定資産に関する注記) 第四十二条 リース契約により使用する固定資産に関する注記は、次の各号に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。 一 ファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である地方公営企業が当該ファイナンス・リース取引について通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行つていない場合における当該ファイナンス・リース取引に係る当該事業年度の末日における未経過リース料相当額 二 オペレーティング・リース取引(リース契約に基づくリース期間の中途において当該リース契約を解除することができるものを除く。)に係る当該事業年度の末日における未経過リース料相当額

1号は、売買処理をしていない場合に注記を求める規定です。 つまり規則55条で賃貸借処理を選んだ契約が、そのまま1号の対象になります。特例は「貸借対照表に載せなくてよい」という意味であって、「何も示さなくてよい」という意味ではありません。

説明資料も同じことを書いています。「中小規模の地方公営企業においては、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができるものとする。なお、この場合は、未経過リース料を注記することとする(則§55、§42Ⅰ)。」

注記の区分としては、規則35条6号の「リース契約により使用する固定資産に関する注記」に入ります。置く先は、法25条の予算に関する説明書と、法30条9項の決算について作成すべき書類などです(規則35条)。予算の側にも注記が要ることに注意してください。

未経過リース料相当額の示し方について、説明資料は1年以内のリース期間に係るものと、それ以外に区分する形を示しています。

※ 未経過リース料について、1年以内のリース期間に係るものと、これ以外のリース期間に係るものとに区分して注記

この区分は規則42条の文言にはありません。 総務省が図の中で示したものです。売買処理をした場合に固定負債と流動負債へ分ける(規則7条2項6号・3項12号)のと平行させた形になっています。

解約できるオペレーティング・リースだけが、注記から外れます

規則42条2号の括弧書きが効きます。「リース契約に基づくリース期間の中途において当該リース契約を解除することができるものを除く」です。解約できるオペレーティング・リースは注記が要らず、解約できないものは要ります。 コピー機や庁用車のように毎年度更新している契約は、解約できる形になっていれば注記の対象から外れます。

あわせて、両号に共通する柱書の括弧書き「(重要性の乏しいものを除く。)」があります。重要性が乏しいかどうかは、上の表のとおりオペレーティング・リースだけ基準が4つ(事前解約予告期間中にリース料を支払うものが加わります)です。

売買処理をすると、非資金取引の注記が出てきます

ここまでは賃貸借処理を選んだ側の注記です。売買処理を選ぶと、別の注記が1つ増えます。 規則38条の予定キャッシュ・フロー計算書等に関する注記です。

(予定キャッシュ・フロー計算書等に関する注記) 第三十八条 予定キャッシュ・フロー計算書等に関する注記は、重要な非資金取引(資金の増加又は減少を伴わない取引であつて、かつ、翌事業年度以降のキャッシュ・フローに重要な影響を与えるものをいう。)の内容とする。

指針第12章第3の2が、この「重要な非資金取引」の例を4つ挙げていて、その3つめがリースです。

(1)現物出資の受入による資産の取得 (2)資産の交換 (3)ファイナンス・リース取引による資産の取得 (4)PFI契約等による資産の取得

リース資産の取得は、現金が動かないまま資産と負債が両建てで載る取引です。 4条予算の経理が要らないのと同じ理由(後述)で、キャッシュ・フロー計算書にも出てきません。だから注記で示すことになります。注記の区分は規則35条2号です。特例を使って賃貸借処理を選んだ契約は、そもそも資産計上しないので、この注記の対象にはなりません。

長期継続契約のリース債務は、別の注記が要ります

売買処理をした場合の話です。地方自治法234条の3の長期継続契約に係るリース債務については、見直しQ&A 7-5が別の注記を求めています。

なお、上記に該当するリース契約を資産及び負債として計上する場合は、当該負債のうち、地方自治法第234条の3に基づく長期継続契約に係る金額について、注記により示す必要がある(則§44)。 注記例 ・長期継続契約に係るリース債務 通常の売買取引の方法に準じた会計処理を行ったリース取引に係るリース債務のうち、地方自治法第234条の3に基づく長期継続契約に係るものは下記の金額である。 短期リース債務 ○○円 長期リース債務 △△円

根拠は規則44条の「その他の注記」です。

その他の注記は、第三十七条から前条までに掲げるもののほか、予定キャッシュ・フロー計算書等、予定貸借対照表等又は予定損益計算書等により地方公営企業の財産、損益又はキャッシュ・フローの状況を正確に判断するために必要な事項とする。

規則42条の注記とは別の注記です。 42条は賃貸借処理をした契約について、44条は売買処理をした契約のうち長期継続契約に係るものについて、それぞれ示すことになります。

そして、ここに判定の論点が1つあります。長期継続契約には「当該リース契約に係る予算が削除もしくは減額された場合、契約を解除できる」といった条項が入ります。これを解約可能と見てオペレーティング・リースに分類すると、資産にも載らず42条1号の注記も要らないことになります。それは認められていません。

契約当事者同士が、当該予算制約事項を前提として、長期にわたりリース物件の貸借を行う意思があるリース契約について、当該予算制約事項による契約解除条項をもってキャンセラブル(解約可能)とは判断することはできない。

地方自治法234条の3の原文も確かめておきます。

普通地方公共団体は、第二百十四条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

4条予算の経理は要りません

実務でよく止まるところです。見直しQ&A 7-3です。

リース資産の取得に際しては、公営企業が現金の収受を行うことはないため、リース資産の取得やリース債務の計上についての4条予算経理は不要である(固定資産を年賦購入契約により購入する場合と同様。)。 ただし、当該事業年度に生じたリース料の支払や、減価償却を月割計算で行う場合における減価償却費については予算経理が必要である。

資産と債務の計上には予算が要らず、支払と減価償却には要ります。 現金が動かない部分は予算の外、という線です。予算の流用・弾力条項・繰越の扱いは予算の流用と弾力条項、繰越で扱いました。

リース料の支払を何で計上するかについては、見直しQ&A 7-1が答えています。売買処理をした場合の支払は、賃借料ではなくなります。

お見込みのとおり。「リース債務支払額」等で計上することになる。

数字で見ると、どこが変わるのか

以下の設例はすべて架空で、実在する団体や契約ではありません。計算は scripts/calc/lease-baibai-shori-tokurei.py で行い、出力を転記しています。四捨五入にそろえてあります。

設例の条件

  • 水道事業(常時雇用される職員180人・給水戸数4万戸)。令8条の2第1号に当たらないので、規則55条2号の特例が使える
  • 検針用の携帯端末の所有権移転外ファイナンス・リース。リース期間5年、年額リース料792,000円(期末払い)、リース料総額3,960,000円
  • 取得原価3,700,000円、利息相当額260,000円(3,700,000円+260,000円=3,960,000円)

リース料総額3,960,000円は300万円を超え、リース期間も1年を超えるので、見直しQ&A 7-4の重要性の基準には当たりません。規則55条3号では逃げられず、使えるのは2号のほうです。

減価償却費は規則17条の読み替え後の計算です。耐用年数5年の定額法の償却率は別表第四号で0.200なので、3,700,000円×0.200=740,000円が毎年度の減価償却費になります。5年で3,700,000円を償却し切ります。

簡便処理と賃貸借処理 — 費用の合計は同じで、置き場所が違う

利息相当額をリース期間定額法で配分する簡便処理(見直しQ&A 7-4の2(2))を選んだ場合と、規則55条2号で賃貸借処理を選んだ場合を並べます。

年度売買:減価償却費売買:支払利息売買:計賃貸借:支払リース料
1740,000円52,000円792,000円792,000円
2740,000円52,000円792,000円792,000円
3740,000円52,000円792,000円792,000円
4740,000円52,000円792,000円792,000円
5740,000円52,000円792,000円792,000円
累計3,700,000円260,000円3,960,000円3,960,000円

毎年度の費用の合計は同じです。 違うのは置き場所で、営業費用に出るのは売買処理なら740,000円、賃貸借処理なら792,000円です。差は52,000円で、売買処理ではこの分が営業外費用(支払利息)に移ります。

つまり売買処理のほうが営業損益は良く見え、経常損益は同じになります。 どちらを選ぶかは費用の総額の問題ではなく、営業損益をどう示すかの問題です。あわせて、売買処理では貸借対照表にリース資産とリース債務が両建てで載ります。

原則処理(利息法)は、初年度が重くなります

簡便な経理の対象にならない場合は、利息相当額を利息法で配分します。年額リース料792,000円が5年続いて現在価値が3,700,000円になる利子率は2.3073%で、償却表は次のようになります。

年度期首リース債務支払利息元本返済減価償却費費用計賃貸借処理との差
13,700,000円85,369円706,631円740,000円825,369円+33,369円
22,993,369円69,065円722,935円740,000円809,065円+17,065円
32,270,434円52,385円739,615円740,000円792,385円+385円
41,530,819円35,320円756,680円740,000円775,320円-16,680円
5774,139円17,861円774,139円740,000円757,861円-34,139円
累計—260,000円3,700,000円3,700,000円3,960,000円0円

初年度の費用は825,369円で、賃貸借処理の792,000円より33,369円大きくなります。 5年の合計は3,960,000円で一致します。

上振れが何で決まるのかを確かめておきます。初年度の費用は「減価償却費+取得原価×利子率」で、賃貸借処理は年額リース料です。減価償却費は取得原価をリース期間で割った額に固定されているので、上振れの大きさは利子率で決まります。 取得原価を3,700,000円に固定し、利子率だけを動かすと次のようになります。

利子率年額リース料初年度の支払利息初年度費用 − 年額リース料
0.5%751,137円18,500円+7,363円
1.0%762,347円37,000円+14,653円
2.0%784,986円74,000円+29,014円
3.0%807,912円111,000円+43,088円
5.0%854,607円185,000円+70,393円

利子率が0に近づけば上振れも0に近づき、賃貸借処理と一致します。「売買処理にすると初年度が重い」のは、リース料に含まれている金利が前のほうに寄るからです。 リース期間定額法の簡便処理を選べる場合は、この前寄せが起きません。

営業収支比率で論じる話ではありません

営業費用の置き場所が変わるのなら、比率が動くのではないかと思うところです。確かめます。営業収益1,000,000,000円、リース以外の営業費用950,000,000円の事業で、上の契約が1件あるとします。

処理営業費用営業収支比率
賃貸借処理950,792,000円105.18%
売買処理950,740,000円105.18%

動きません。 差は0.006ポイントです。10億円規模の事業で52,000円の差なので、当然そうなります。同じ契約が100件あれば営業費用の差は5,200,000円になり、営業収支比率は97.16%から97.66%へ0.49ポイント動きますが、そのくらいの件数を抱える事業は分母も大きくなります。

処理方法の選択を、比率を良くする手段として考えないでください。 選ぶ理由は事務負担と情報開示のどちらを採るかであって、指針も「事務負担の軽減の観点から」と書いています。経営指標の側は投資・財政計画の前提のほうに効きます。売買処理をすれば固定資産と固定負債が増えるので、資産の更新需要や負債の見通しを立てるときの数字が変わります。

移行のときの扱い

法を適用した年度、あるいは新しい会計基準を最初に適用した年度より前に始まっているリース契約の扱いです。平成24年総務省令第6号の附則7条が、所有権移転外ファイナンス・リースについて「総務大臣の定めるところにより会計処理を行うことができる」としており、その定めは指針の第13章第4(リース会計に関する経過措置)に置かれています。指針に附則はありません。 移行の経過措置は本文の第13章にまとまっています。

最初適用事業年度の前事業年度の末日以前にリース契約に基づくリース期間が開始された契約に係る所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理は、次のいずれかの方法により行う(改正省令附則第7条)。 (1)最初適用事業年度の初日以後にリース期間が開始されたリース契約に係る取引と同様の扱いとする。この場合、最初適用事業年度の初日までの累積的影響額は特別損失として処理する。 (2)最初適用事業年度の前事業年度の末日における未経過リース料相当額又は未経過リース料期末残高相当額(未経過リース料相当額から利息相当額を控除して得た額に相当する額をいう。以下同じ。)を取得原価とし、最初適用事業年度の初日に取得したものとしてリース資産に計上する。未経過リース料期末残高相当額を取得原価とした場合、最初適用事業年度の初日以後の残存期間における利息相当額については、その総額をリース期間中の各事業年度に定額で配分することができる。 (3)引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行う。この場合にはその旨を注記しなければならない。

(3)があります。 既存契約は賃貸借処理を続けられます。ただし「その旨を注記しなければならない」が付きます。

(2)では、利息相当額を含んだ額(未経過リース料相当額)を取得原価にすることもできます。 「又は」でつながっているので、どちらでも構いません。含まない額(未経過リース料期末残高相当額)を選んだときだけ、残存期間の利息相当額を定額で配分してよいという後段が効きます。

所有権が移転するものには、(3)がありません

所有権移転ファイナンス・リースには、賃貸借処理を続ける道がありません。そもそも附則7条の括弧書きが「リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められないものに限る」としているので、経過措置そのものが所有権移転外のためのものです。見直しQ&A 7-2が、所有権が移転するものをどう扱うかを答えています。

所有権移転外ファイナンス・リース取引と異なり、最初適用事業年度の前事業年度の末日以前にリース契約に基づくリース期間が開始された契約に係るものについても、賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことは認められない。 当該取引の会計処理は、次のいずれかの方法により行うこととなる。 ①最初適用事業年度の初日以後にリース期間が開始されたリース契約に係る取引と同様の扱いとする(最初適用事業年度の初日までの累積的影響額は特別損失として処理する)。 ②最初適用事業年度の前事業年度の末日における未経過リース料期末残高相当額(未経過リース料相当額から利息相当額を控除して得た額に相当する額をいう。以下同じ。)を取得原価とし、最初適用事業年度の初日に取得したものとしてリース資産に計上する。未経過リース料期末残高相当額を取得原価とした場合、最初適用事業年度の初日以後の残存期間における利息相当額については、その総額をリース期間中の各事業年度に定額で配分することができる。

①②は、指針第13章第4の(1)(2)と並びは同じです。 ただし②の取得原価は「未経過リース料期末残高相当額」だけで、「未経過リース料相当額又は」が入っていません。 利息相当額を含んだ額は使えないということです。同じQ&A 7-2は、これにあわせて、平成24年3月6日付け事務連絡の別添「地方公営企業会計基準の見直しに係る財務諸表の試算方法について」のうち、所有権移転ファイナンス・リース取引について書かれた②も訂正しています。

[移行処理作業] リース取引に関する会計基準 1.最初適用事業年度の前事業年度の末日以前にリース契約に基づくリース期間が開始された契約に係る所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理を、次のいずれかの方法により行う。 ①(略) 正 ② 最初適用事業年度の前事業年度の末日における未経過リース料期末残高相当額(未経過リース料相当額から利息相当額を控除して得た額に相当する額をいう。以下同じ。)を取得原価とし、最初適用事業年度の初日に取得したものとしてリース資産に計上する。 誤 ② 最初適用事業年度の前事業年度の末日における未経過リース料相当額又は未経過リース料期末残高相当額(未経過リース料相当額から利息相当額を控除して得た額に相当する額をいう。以下同じ。)を取得原価とし、最初適用事業年度の初日に取得したものとしてリース資産に計上する。

訂正の対象は、この事務連絡の所有権移転の側だけです。 見出しが「所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理」になっていることを確かめてください。所有権移転外を定めた指針第13章第4は訂正されていないので、上に引いた(2)の「未経過リース料相当額又は」はそのまま効いています。 所有権が移転するかどうかで、取得原価に選択肢があるかが変わります。引用はいずれも原文のままにしてあります。

いま確認すること

上から順に見れば、自分の事業がどこにいるか分かります。

  1. その事業に、地方公営企業法の規定が適用されているか。 適用していなければ、この記事の話は始まりません
  2. 事業の種類を確かめる。 下水道事業・簡易水道事業など、法2条1項各号でも病院事業でもない事業なら、規則55条1号で規模を問わず賃貸借処理のままにできます。指針に載っていない号なので、条文で確かめてください(総務省のQ&A集も1号で答えています)
  3. 病院事業なら、規模では外れません。 使えるのは規則55条3号(重要性が乏しいとき)だけです
  4. 法2条1項各号の事業なら、令8条の2各号に当たるかを見る。 水道事業は職員200人以上かつ給水戸数5万戸以上。片方だけでは該当しません
  5. 契約ごとに所有権が移転するかを分ける。 移転するものには規則55条1号・2号が使えません。残るのは3号だけで、その重要性の基準からは300万円の線が落ちます
  6. 賃貸借処理を選んだ契約について、未経過リース料相当額の注記があるか。 規則42条1号は55条で外れません。予算に関する説明書の側にも要ります
  7. 解約できないオペレーティング・リースの注記があるか。 規則42条2号です。解約できるものは外れます
  8. 売買処理をした分について、非資金取引の注記があるか。 規則38条です。現金が動かないのでキャッシュ・フロー計算書に出てきません
  9. 長期継続契約のリース債務を注記しているか。 売買処理をした分について、規則44条の「その他の注記」で示します
  10. 移行前から続いている契約の扱いを決めているか。 所有権移転外なら賃貸借処理の継続もできますが、その旨の注記が要ります。所有権が移転するものに賃貸借処理の継続はなく、取得原価も未経過リース料期末残高相当額だけです

まとめ

  • 原則はファイナンス・リースの売買処理です(指針第9章第1)。リース資産は規則5条2項1号チ・2号ル、リース債務は規則7条2項6号・3項12号に置かれます
  • 賃貸借処理のままにできるのは規則55条の3つの場合で、「いずれかに該当するとき」です。 1号は法2条1項各号でも病院事業でもない事業(下水道事業・簡易水道事業など)で、規模の条件がありません。 2号は法2条1項各号の事業で令8条の2各号に当たらないもの。3号は重要性が乏しいとき。1号と2号は所有権移転外に限られ、3号にはその限定がありません
  • 病院事業は1号にも2号にも入りません。 1号が明文で除き、2号は法2条1項各号の事業に限られます。説明資料も「病院事業については、中小規模の特例は設けない」としています
  • 指針(告示)・説明資料・取扱通知は、55条の3つのうち2つしか挙げていません。 1号が落ちています。それでも総務省は令和5年3月のQ&A集で下水道事業について1号で答えているので、運用では1号が生きています。 附則7条の「新規則第一条第二号」も、現行では1条14号です。いずれも引用は原文のままにしてあり、判定は現行条文で行ってください
  • 「重要性が乏しい」の基準は法令にも指針にもなく、見直しQ&A 7-4にだけあります。 所有権移転外には1契約あたりのリース料総額300万円以下という基準がありますが、所有権移転のものにはありません
  • リース比率(Q&A 7-4の2(2))は「10%未満」が条件で、しかも賃貸借処理を認めるものではありません。 利息相当額の計算を簡単にしてよいという話で、資産には計上します。固定資産が大きい事業ほど比率が小さく、対象になります
  • 55条が外すのは勘定区分の4か所だけです。 未経過リース料相当額の注記(規則42条1号)は残り、予算に関する説明書の側にも要ります。解約できるオペレーティング・リースだけが注記から外れます(同条2号の括弧書き)
  • 売買処理を選んだ場合は、逆に注記が2つ出てきます。 リース資産の取得は現金が動かないので重要な非資金取引に当たり(規則38条・指針第12章第3の2)、長期継続契約に係るリース債務は規則44条の「その他の注記」で示します(見直しQ&A 7-5)
  • 予算が減額されたら解除できる条項は、解約可能とは判断できません(見直しQ&A 7-5)
  • リース資産の取得とリース債務の計上に4条予算の経理は要りません(見直しQ&A 7-3)。要るのはリース料の支払と、月割計算をする場合の減価償却費です
  • 移行前から始まっている契約は、所有権が移転するかで扱いが分かれます。 所有権移転外なら指針第13章第4が3つの方法を置いていて、賃貸借処理の継続もでき(その旨の注記が要ります)、取得原価は未経過リース料相当額と未経過リース料期末残高相当額のどちらでも構いません。所有権が移転するものは賃貸借処理の継続が認められず、取得原価も未経過リース料期末残高相当額だけです(見直しQ&A 7-2)
  • 費用の合計は、どちらを選んでも変わりません。 設例では年792,000円のうち、売買処理なら740,000円が減価償却費で営業費用に、52,000円が支払利息で営業外費用に分かれます。営業収支比率は1契約では0.006ポイントしか動かないので、処理方法の選択を比率を良くする手段として考えないでください
  • 利息法を使う場合は、初年度が重くなります。 設例では825,369円で、賃貸借処理より33,369円大きくなります。上振れの大きさは利子率で決まり、利子率が0に近づけば一致します

よくある質問

下水道事業です。リースは必ず資産に計上しなければならないのでしょうか。

いいえ。地方公営企業法施行規則55条1号は、所有権が借主に移転すると認められないファイナンス・リース取引について、「リース物件の借主(次号において「リース借主」という。)が法第二条第一項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業であるとき」は、リース資産とリース債務の勘定区分の規定を「適用しないことができる」としています。下水道事業は法2条3項により条例で法を適用する事業で、法2条1項各号にも病院事業にも当たりませんので、この号に当たります。職員数や処理区域の規模は条件になっていません。ただし、賃貸借処理を選んだ場合でも、規則42条1号により未経過リース料相当額の注記は必要です(重要性の乏しいものを除きます)。

総務省の指針を読んだのですが、55条の特例は2つしか書いてありません。

そのとおりで、指針(平成24年総務省告示第18号)の第9章第1は「(1)所有権移転外ファイナンス・リース取引…におけるリース物件の借主が法第2条第1項各号に掲げる事業であって、令第8条の2各号に掲げる事業以外のもの(管理者を置かないことができる企業)であるとき」「(2)リース物件の重要性が乏しいものであるとき」の2つを挙げ、根拠として「(規則第55条)」としています。現行の規則55条は3号あり、指針の(1)が2号、(2)が3号に対応します。1号(法2条1項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業)は指針に載っていません。取扱通知(最終改正 令和4年6月30日総財公第96号)の第1章第3節十六(二)も同じ2つです。ただし総務省が令和5年3月に出した「公営企業会計適用後の会計業務に関するQ&A集」には、下水道事業について「則第55条第1号により、リース会計を適用しない場合(所有権移転外ファイナンス・リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う場合)でも、未経過リース料の注記は必要となります(則第42条第1号)。」という回答が載っており、1号で判定する前提が置かれています。資料の書き方に1号が落ちているだけなので、判定は規則の現行条文で行ってください。

病院事業です。小規模なので特例が使えますか。

規模では使えません。規則55条1号は「法第二条第一項各号に掲げる事業及び病院事業以外の事業」としており、病院事業を明文で除いています。2号は「リース借主が法第二条第一項各号に掲げる事業であつて」と限定していて、病院事業は法2条2項で財務規定等が適用される事業なので、こちらにも入りません。総務省の説明資料「地方公営企業会計制度の見直しについて」も「※なお、病院事業については、中小規模の特例は設けない。」と書いています。病院事業に残るのは3号(リース物件の重要性が乏しいとき)だけです。

「リース物件の重要性が乏しい」かどうかは、どこで判定するのですか。

法令と指針には基準がありません。総務省の会計基準見直しQ&A 7-4が、質問の中で「それぞれのリース取引の重要性の判断基準については、法令、指針上明らかでないが、どのように考えればよいか」と書いたうえで基準を示しています。所有権移転外ファイナンス・リース取引については「①購入時に費用処理するもの ②リース期間が1年以内であるもの ③1契約あたりのリース料総額が300万円以下のもの」のいずれかに該当するものです。法令に書かれた基準ではないので、団体として採る基準を企業管理規程や内部の取扱いで明らかにしておくほうが安全です。

リース資産を計上するとき、4条予算(資本的収支)の経理が必要ですか。

不要とされています。見直しQ&A 7-3は「リース資産の取得に際しては、公営企業が現金の収受を行うことはないため、リース資産の取得やリース債務の計上についての4条予算経理は不要である(固定資産を年賦購入契約により購入する場合と同様。)」としています。ただし同じ回答が「当該事業年度に生じたリース料の支払や、減価償却を月割計算で行う場合における減価償却費については予算経理が必要である」と続けています。資産と債務の計上には予算が要らず、支払と減価償却には要るという分かれ方です。

予算が減額されたら解除できる条項が入っています。解約可能なのでファイナンス・リースではないと考えてよいですか。

いいえ。見直しQ&A 7-5は、地方自治法234条の3に基づく長期継続契約について「契約当事者同士が、当該予算制約事項を前提として、長期にわたりリース物件の貸借を行う意思があるリース契約について、当該予算制約事項による契約解除条項をもってキャンセラブル(解約可能)とは判断することはできない」としています。さらに、売買処理をする場合には「当該負債のうち、地方自治法第234条の3に基づく長期継続契約に係る金額について、注記により示す必要がある(則§44)」とされており、短期リース債務と長期リース債務に分けた注記例が示されています。

所有権が移転するファイナンス・リースにも特例はありますか。

1号と2号は使えません。どちらも「リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借主に移転すると認められない取引に限る」という括弧書きを置いているので、事業の種類や規模による特例は効きません。使えるのは3号(リース物件の重要性が乏しいものであるとき)だけで、こちらは所有権移転外に限る括弧書きがありません。ただし重要性の基準が狭く、見直しQ&A 7-4が所有権移転ファイナンス・リース取引について挙げているのは「①購入時に費用処理するもの ②リース期間が1年以内であるもの」の2つだけで、300万円の基準はありません。移行時の扱いも違い、同Q&A 7-2は「所有権移転外ファイナンス・リース取引と異なり、最初適用事業年度の前事業年度の末日以前にリース契約に基づくリース期間が開始された契約に係るものについても、賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことは認められない」としています。

出典

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