自治体・公営企業

一般会計からの繰入金は、どの条文で受け入れたかで後が変わります

決算書の「他会計補助金」「他会計出資金」「他会計借入金」を、まとめて「繰入金」と呼んでいる場面があります。説明としては通りますが、この3つは別の条文で入ってきたもので、受け入れた後に起きることが違います。

地方公営企業法には、一般会計等から特別会計へお金が入る場面が4つ、別々に置かれています。負担(法17条の2)、補助(法17条の3)、出資(法18条)、長期貸付け(法18条の2)です。このうち、入口の条文が義務の形(「負担するものとする」)で書かれているのは1つだけで、残る3つは「することができる」です。 そして、負担区分に基づかない出資には納付金、負担区分に基づかない長期貸付けには利息がついてきます。

財政当局との協議で「繰入れの根拠は何か」と聞かれたときに答えるのは、繰出基準の項目名ではなく、この4本のどれかです。順に見ていきます。

結論

  • 条文は4本あります。 負担(法17条の2第1項)・補助(法17条の3)・出資(法18条1項)・長期貸付け(法18条の2第1項)。「負担するものとする」と書かれているのは負担だけで、残る3つは「することができる」です
  • 負担区分に基づかない出資を受けると、納付金を納付します(法18条2項)。負担区分に基づかない長期貸付けを受けると、適正な利息を支払います(法18条の2第2項)。負担金として受け入れた場合には、どちらもありません
  • 法17条の2第1項は「政令で定めるもの」です。 その政令(施行令8条の5)が事業の区分を設けているのは水道事業・工業用水道事業・病院事業・軌道事業の4つだけで、下水道事業と簡易水道事業は出てきません
  • 繰出基準は通知です。 令和8年度の繰出基準(令和8年4月1日付け総財公第18号)の前文は、繰出しを行ったときは「その一部について地方交付税等において考慮する」としています。全額ではありません
  • 「基準内繰入」「基準外繰入」という言葉は、法・施行令・施行規則・繰出基準・取扱通知のどれにも出てきません
  • 建設改良に充てる繰入金は、補助金・負担金として受け入れたときだけ繰延収益になります(施行令26条1項、施行規則21条1項)。出資金なら資本金、長期貸付けなら他会計借入金で、繰延収益にはなりません(施行規則の条文上の語は「長期借入金」です)
  • 予算の記載事項に挙がっているのは「一般会計又は他の特別会計からの補助金」です(施行令17条1項9号)。出資金・長期の貸付けはこの号には挙がっていません

「基準内」「基準外」は、原典に出てこない言葉です

繰入金の話は、たいてい「基準内か基準外か」から始まります。ところが、この2つの語は原典にありません。

原典「基準内」「基準外」
地方公営企業法無し無し
地方公営企業法施行令無し無し
地方公営企業法施行規則無し無し
令和8年度の地方公営企業繰出金について(総財公第18号)無し無し
取扱通知(自乙発第245号。最終改正 総財公第96号)無し無し

実務で通じる言葉なので使って構いませんが、議会や監査で「根拠は」と問われたときに返す言葉ではありません。 返すのは条文です。

条文は4本あります

負担 — 法17条の2第1項。「負担するものとする」

原文はこうです。

次に掲げる地方公営企業の経費で政令で定めるものは、地方公共団体の一般会計又は他の特別会計において、出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法により負担するものとする。 一 その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費 二 当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費

読みどころが3つあります。

1つ目は「負担するものとする」で、ここだけが義務の書き方です。取扱通知も「負担をしなければならないものであること(法第17条の2第1項)」としています。

2つ目は「出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法により」です。負担区分に基づく負担は、負担金という形だけではありません。出資でも長期貸付けでも「負担」になり得ます。 この点が、後で出てくる法18条・法18条の2との区別につながります。

3つ目は「政令で定めるもの」です。1号・2号は性質を書いただけで、実際に何が対象かは政令が定めます。

なお、この原則が何と何の間の話なのかについて、取扱通知が注意書きを置いています。

なお、この経費の負担の原則は、同一の地方公共団体の内部における地方公営企業の特別会計と一般会計等との間の経費の負担区分を定めたものであり、国と地方公共団体等の間又は地方公共団体相互間の経費の負担区分を定めたものではないこと。

国庫補助金や、他団体からの負担金は、この条文の話ではありません。

政令が区分を設けているのは、4つの事業だけです

施行令8条の5が、法17条の2第1項の「政令で定めるもの」を定めています。1項(法17条の2第1項1号に当たるもの)はこうです。

法第十七条の二第一項第一号に規定する経費で政令で定めるものは、次の各号に掲げる事業の区分に応じ、当該各号に定める経費(当該経費に係る特定の収入がある場合には、当該特定の収入の額をこえる部分)とする。

挙げられている事業と経費を並べます。

根拠事業経費
施行令8条の5第1項1号水道事業公共の消防のための消火栓に要する経費その他水道を公共の消防の用に供するために要する経費及び公園その他の公共施設において水道を無償で公共の用に供するために要する経費
施行令8条の5第1項2号工業用水道事業公共の消防のための消火栓に要する経費その他工業用水道を公共の消防の用に供するために要する経費
施行令8条の5第1項3号病院事業看護師の確保を図るために行う養成事業に要する経費、救急の医療を確保するために要する経費及び集団検診、医療相談等保健衛生に関する行政として行われる事務に要する経費
施行令8条の5第2項1号軌道事業当該軌道事業の用に供する車両以外の車両が通行することにより必要を生じた軌道敷の維持、修繕及び改良並びに道路における交通の混雑を緩和するため当該軌道事業を経営する地方公共団体の長が必要と認めた場合に行なう軌道の撤去に要する経費
施行令8条の5第2項2号病院事業山間地、離島その他のへんぴな地域等における医療の確保をはかるため設置された病院又は診療所でその立地条件により採算をとることが困難であると認められるものに要する経費及び病院の所在する地域における医療水準の向上をはかるため必要な高度又は特殊な医療で採算をとることが困難であると認められるものに要する経費
施行令附則14項病院事業(当分の間)病院及び診療所の建設又は改良に要する経費

水道事業・工業用水道事業・病院事業・軌道事業の4つです。下水道事業も簡易水道事業も、ここには出てきません。

病院事業の建設改良費が本則ではなく附則にあるのは、見落としやすいところです。施行令附則14項は「(一般会計等において負担する経費に関する経過措置)」という見出しで、こう書かれています。

法第十七条の二第一項第二号に規定する病院事業の経費で政令で定めるものは、当分の間、第八条の五第二項第二号に定める経費のほか、病院及び診療所の建設又は改良に要する経費(当該経費に充てることができる病院事業の経営に伴う収入の額をこえる部分に限る。)とする。

政令に挙がっていても、そのまま全額ではありません

ここが、負担区分を「対象経費の一覧」として読んでしまうと落ちる点です。1項と2項には、それぞれ別の絞りがかかっています。

1項は、括弧書きで「当該経費に係る特定の収入がある場合には、当該特定の収入の額をこえる部分」としています。取扱通知は、この「特定の収入」を「当該経費に充てるべき国庫補助金、負担金、分担金等の収入」としています。

2項は、括弧書きで「当該経費に充てることができる当該事業の経営に伴う収入の額をこえる部分に限る」としています。取扱通知の説明はこうです。

ただし、これらの経費についての一般会計等の負担は、当該事業において能率的な経営を行ってもなお当該事業の経営に伴う収入をもって充てることができない部分に限られるものであり(施行令第8条の5第2項)、これらの経費がそのまま直ちに一般会計等の負担になるという趣旨ではないこと。

「対象経費に当たるか」と「いくらが負担になるか」は別の問いです。 対象経費に当たったうえで、収入で充てられない部分に限られます。

そして、その外側については法17条の2第2項が線を引いています。

地方公営企業の特別会計においては、その経費は、前項の規定により地方公共団体の一般会計又は他の特別会計において負担するものを除き、当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てなければならない。

いわゆる独立採算の原則ですが、条文は「前項の規定により……負担するものを除き」から始まります。負担区分の内側を先に決め、残りを経営に伴う収入で賄う、という順序です。

補助 — 法17条の3。場面が限られます

地方公共団体は、災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合には、一般会計又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に補助をすることができる。

「することができる」で、かつ「災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合」という限定があります。 では「特別の理由」とは何か。取扱通知が書いています。

特別の理由により必要がある場合とは、災害に準じるような一時的な企業外の要因又は要請により企業会計において所要経費を賄うことが客観的に困難又は不適当な場合をいうものであり、補助は経費負担の原則の例外をなすものであるのでその運用に当たっては真にやむを得ないものに限定されるべきであること。

「一時的な」「企業外の」という2語が効きます。構造的な収支不足は、一時的でも企業外でもありません。

出資 — 法18条。負担区分に基づくもの以外は、納付金がつきます

地方公共団体は、第十七条の二第一項の規定によるもののほか、一般会計又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に出資をすることができる。

書き出しの「第十七条の二第一項の規定によるもののほか」が本体です。出資には2種類あります。負担区分に基づく出資(法17条の2第1項の「出資……の方法により負担する」)と、それ以外の出資(法18条1項)です。そして、2項が置かれているのは後者だけです。

地方公営企業の特別会計は、前項の規定による出資を受けた場合には、利益の状況に応じ、納付金を一般会計又は当該他の特別会計に納付するものとする。

取扱通知は、法18条1項の「必要な出資」の中身をこう限定しています。

この場合の必要な出資とは、地方公営企業が、経済性を発揮して独立採算を建前とした運営を行い、住民に対するサービスを確保するため必要かつ適切な建設改良工事を行うに当たって、自己資本として必要とされる一般会計等からの出資及び財産等の移管による現物出資をいうものであって、収益的収支の不足を賄うためのようなものをいうものではないこと。

出資金は、赤字を埋めるための器ではありません。 具体例として通知が挙げているのは、建設当初の元入れと、事業施設の拡張に要する経費(その資金を企業債で賄った場合の元金償還金を含む)に充てるための出資です。

納付金の性格についても通知が書いています。

納付金は、自己資本に対する報酬としての性格を有するものであり、その性格上定額でなく、利益の状況に応じて利益処分として納付するものであること。

長期貸付け — 法18条の2。負担区分に基づくもの以外は、利息がつきます

出資と同じ組み立てです。

地方公共団体は、第十七条の二第一項の規定によるもののほか、一般会計又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に長期の貸付けをすることができる。

地方公営企業の特別会計は、前項の規定による長期の貸付けを受けた場合には、適正な利息を一般会計又は当該他の特別会計に支払わなければならない。

4本を並べる

条文書き方受け入れた後に払うもの貸借対照表のどこへ
負担(法17条の2第1項)負担するものとする納付金・利息は無し(ただし長期の貸付けの方法によったときは元本の返済がある)方法による(出資なら資本金、長期の貸付けなら負債、負担金なら収益又は繰延収益)
補助(法17条の3)することができる無し収益又は繰延収益
出資(法18条1項)することができる納付金(利益の状況に応じ)資本金
長期貸付け(法18条の2第1項)することができる元本の返済と適正な利息他会計借入金(施行規則の条文では長期借入金。固定負債又は流動負債)

1行ずつ読むと、「負担」の行だけは貸借対照表の行き先が1つに決まりません。 負担は目的を示した条文で、方法は「出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法」のいずれでもよいからです。会計処理を決めるのは、負担区分に当たるかどうかではなく、どの方法で受け入れたかです。

繰出基準は、法令ではありません

実務で日常的に参照しているのは、条文ではなく毎年度の繰出基準でしょう。令和8年度の分は、令和8年4月1日付け総財公第18号(総務副大臣通知)です。その位置づけは、別紙の前文に書かれています。

最近における社会経済情勢の推移、地方公営企業の現状にかんがみ、地方公営企業法等に定める経営に関する基本原則を堅持しながら、地方公営企業の経営の健全化を促進し、その経営基盤を強化するため、毎年度地方財政計画において公営企業繰出金を計上することとしています。 その基本的な考え方は、下記のとおりですので、地方公営企業の実態に即しながら、運営していただくようお願いします。 なお、一般会計がこの基本的な考え方に沿って公営企業会計に繰出しを行ったときは、その一部について地方交付税等において考慮するものですので、御承知願います。

3つ確認できます。

  • これは「基本的な考え方」を示した通知です。 法17条の2第1項や施行令8条の5の条番号は、この通知の本文には出てきません
  • 裏付けは地方財政計画への計上です
  • 交付税等で考慮されるのは「その一部について」です

3つ目は、財政当局との協議で前提がずれやすいところです。繰出基準に沿った繰出しであることと、その額が交付税で戻ってくることは、別の話です。

趣旨欄の書きぶりが、事業によって分かれています

繰出基準の項目は、おおむね「(1)趣旨」と「(2)繰出しの基準」の2段で書かれています(病院事業の11「救急医療の確保に要する経費」と17「経営基盤強化対策に要する経費」だけは、さらに(1)(2)…に分かれ、その下に「ア 趣旨」「イ 繰出しの基準」が入ります)。この趣旨欄の文末が、2通りに分かれます。

  • 「……について一般会計が負担するための経費である」
  • 「……の一部について繰り出すための経費である」

令和8年度の繰出基準で、事業ごとに数えるとこうなります。

繰出基準の章項目数「一般会計が負担するための経費である」「繰り出すための経費である」その他の書き方
第1 上水道事業9261(出資に要する経費)
第2 工業用水道事業1100
第3 交通事業11173
第4 病院事業171610
第5 簡易水道事業7070
第6 市場事業2020
第7 下水道事業160160
第8 港湾整備事業1010
第9 その他9081
合計7320485

「一般会計が負担するための経費である」と書かれている20項目は、上水道事業・工業用水道事業・交通事業(軌道敷の維持等の1項目)・病院事業に収まっています。 施行令8条の5と附則14項が区分を設けている4事業と、同じ範囲です。

病院事業は17項目のうち16項目までが「一般会計が負担するための経費である」ですが、17「経営基盤強化対策に要する経費」だけは、(1)から(5)までのすべての趣旨欄が「繰り出すための経費である」です。事業の単位で「この事業は負担、この事業は繰出し」と割り切れるわけではありません。

たとえば上水道事業の消火栓の項目は、こう書かれています。

公共消防のための消火栓に要する経費その他水道を公共の消防の用に供するために要する経費について一般会計が負担するための経費である。

いっぽうで、同じ上水道事業でも出資の項目は書き方が違います。

上水道事業の経営基盤の強化及び資本費負担の軽減を図るための出資に要する経費である。

下水道事業の16項目は、すべて「繰り出すための経費である」です。16項目の先頭に置かれている雨水処理の項目も同じです。

(1)趣旨 雨水処理に要する経費について繰り出すための経費である。 (2)繰出しの基準 雨水処理に要する資本費及び維持管理費に相当する額とする。

ここで注意してほしいのは、書きぶりが違うことから「下水道の繰入れは根拠が弱い」と読まないことです。 繰出基準の裏付けは地方財政計画への計上であって、施行令8条の5に挙がっているかどうかではありません。読み取れるのは、下水道事業の繰入れを説明するときに、法17条の2第1項を根拠として挙げることはできないということです。挙げるなら、繰出基準の該当項目と、法17条の2第1項・17条の3・18条・18条の2のうちどの方法で受け入れたかになります。

受け入れた側の会計処理

ここから先は、繰入金が決算にどう出るかです。同じ金額でも、受け入れ方によって損益計算書に出る年が変わります。

建設改良に充てる補助金・負担金は、繰延収益になります

施行令26条1項です。

減価償却を行うべき固定資産(固定資産のうち、土地、立木その他総務省令で定めるもの以外のものをいう。)の取得又は改良に充てるための補助金、負担金その他これらに類するもの(次項において「補助金等」という。)の交付を受けた場合においては、その交付を受けた金額に相当する額を、繰延収益として整理しなければならない。

「しなければならない」です。 勘定科目は施行規則21条1項が定めています。「第七条第四項第一号に規定する補助金等の額は、長期前受金勘定に整理するものとする」。

ここでいう補助金等は、国庫補助金に限りません。施行規則7条4項1号は「償却資産の取得又は改良に充てるための補助金、負担金その他これらに類するもの」としており、一般会計からの負担金・補助金もこれに当たります。

企業債の元金償還に充てる繰入金も、補助金等の例によります

見落としやすいのが施行規則21条3項です。

企業債(償却資産の取得又は改良に充てるために起こした企業債に限る。)の元金の償還に要する資金に充てるため、一般会計又は他の特別会計から繰入れを行つた場合においては、当該繰入金の額について、前二項に規定する補助金等の例により整理するものとする。ただし、各事業年度における当該償却資産の減価償却額と当該一般会計又は他の特別会計からの繰入金の額との差額が重要でないときは、この限りでない。

資産を取得した年の繰入れではなく、元金償還の年に受け入れた繰入れでも、長期前受金に整理します。括弧書きで「償却資産の取得又は改良に充てるために起こした企業債に限る」という限定があり、ただし書で差額が重要でないときは不要とされています。

出資金・長期貸付けでは、繰延収益になりません

施行令26条1項が対象にしているのは「補助金、負担金その他これらに類するもの」です。出資金は資本金に、長期貸付けは一般会計又は他の特別会計からの長期借入金(施行規則7条2項3号・4号、3項4号・5号。取扱通知は貸借対照表の科目として「他会計借入金」を挙げています)に整理され、どちらも繰延収益ではありません。

したがって、出資金・長期貸付けで賄った資産の減価償却費は、収益化されずにそのまま費用として残ります。

設例 — 同じ1億円でも、損益への出方が違います

ここからは架空の設例です。実在する団体の数字ではありません。

前提値
取得する償却資産の帳簿原価300,000,000円
耐用年数50年
償却方法定額法
別表第四号の償却率(耐用年数50年・定額法)0.020
一般会計から受け入れる額100,000,000円

減価償却費は施行規則15条1項で計算します。定額法では「当該有形固定資産の当該事業年度開始の時における帳簿原価から当該帳簿原価の百分の十に相当する金額を控除した金額に……償却率を乗じて算出した金額」です。

(300,000,000円 − 30,000,000円) × 0.020 = 5,400,000円

これが毎年度の減価償却費です。ここに、受け入れ方の違いが乗ります。

補助金・負担金として受け入れた場合

長期前受金が100,000,000円立ちます。戻入額は施行令26条2項の算式で、減価償却費に「当該固定資産の帳簿価額に対する繰延収益の額の割合」を乗じます。

年度期首の帳簿価額期首の繰延収益比率(繰延収益÷帳簿価額)減価償却費長期前受金戻入正味の費用
1年目300,000,000円100,000,000円3分の15,400,000円1,800,000円3,600,000円
2年目294,600,000円98,200,000円3分の15,400,000円1,800,000円3,600,000円
50年目35,400,000円11,800,000円3分の15,400,000円1,800,000円3,600,000円

比率は50年間動きません。 減価償却を1年行うと帳簿価額は5,400,000円減り、繰延収益はその3分の1の1,800,000円減ります。分子と分母が同じ割合で減るので、比率は初年度の値のまま固定されます。 耐用年数を10年・20年・40年に変え、繰入割合を10%・50%に変えても、比率が年度によって動くことはありませんでした。

出資金・長期貸付けとして受け入れた場合

長期前受金が立たないので、戻入もありません。減価償却費5,400,000円が、そのまま毎年度の費用になります。

受け入れ方1年あたりの減価償却費1年あたりの戻入1年あたりの正味の費用
補助金・負担金5,400,000円1,800,000円3,600,000円
出資金5,400,000円0円5,400,000円
長期貸付け5,400,000円0円5,400,000円

差は1年あたり1,800,000円です。50年の累計で見るとこうなります。

受け入れ方減価償却費の累計戻入の累計正味の費用の累計
補助金・負担金270,000,000円90,000,000円180,000,000円
出資金・長期貸付け270,000,000円0円270,000,000円

受け入れた100,000,000円のうち、50年で収益になるのは90,000,000円です

上の表で気づくところがあります。50年間の戻入の累計は90,000,000円で、受け入れた100,000,000円に届きません。残る10,000,000円は、50年たっても長期前受金のまま貸借対照表にあります。

理由は減価償却の側にあります。施行規則15条1項の定額法は、帳簿原価から「百分の十に相当する金額」を控除した額に償却率を乗じるので、耐用年数が到来した時点での減価償却累計額は帳簿原価の90%にとどまります(この設例では270,000,000円)。戻入はその償却に連動するので、耐用年数が到来した時点で収益になっているのも、繰入金の90%です。 耐用年数と繰入割合を振って計算しても、この比率は変わりませんでした。

ただし、残る10%がそこで固定されるわけではありません。 施行規則15条1項にはただし書があります。

ただし、有形固定資産の減価償却額は、当該有形固定資産の帳簿原価から当該帳簿原価の百分の五に相当する金額を控除した金額から前事業年度までにおいて行つた減価償却累計額を控除した金額を超えることはできない。

1項の本文には「耐用年数が到来したら償却をやめる」という定めがありません。止めているのはこのただし書で、上限は帳簿原価の95%相当額です。したがって、資産をなお事業の用に供している限り、耐用年数が到来した後も同じ額の償却が続き、累計が95%に達したところで止まります。この設例では51年目・52年目に各5,400,000円、53年目に4,200,000円を償却して累計が285,000,000円に達し、そこで止まります。長期前受金戻入も同じ比率で続くので、戻入の累計は95,000,000円まで伸び、残るのは5,000,000円です。

さらに、鉄筋コンクリート造の建物や構築物など施行規則15条3項に掲げるものは、帳簿価額が帳簿原価の5%に達した後もなお事業の用に供されている場合には、1円に達するまで償却できるとされています。

残りが出るのは、そのうえでの除却や減損のときです。施行令26条2項は「減価償却又は除却を行う際に、当該固定資産の減価償却費又は残存価額に相当する額に……割合を乗じて得た額を償却しなければならない」としており、除却時には残存価額に対応する分が戻入されます。「耐用年数が終わったら長期前受金もゼロになる」という前提で収支を見積もると、ずれます。 逆に、「耐用年数が終われば10%が貸借対照表に残り続ける」という前提も正しくありません。

予算に書くこと

繰入金は予算にも出てきます。施行令17条1項は、予算に記載する事項を12個挙げており、その9号がこれです。

九 一般会計又は他の特別会計からの補助金

挙がっているのは「補助金」です。出資金・長期の貸付けはこの号には挙がっていません(額そのものは2号の「予定収入及び予定支出」に入ります)。この調書の書き方について、取扱通知が指示を置いています。

予算様式第11条他会計からの補助金には、収益的収入予算及び資本的収入予算に含まれている補助金について、補助の理由及び補助をした会計並びに補助の金額を明瞭に記載するものであること。

「補助の理由」を書くことになっています。 前の年の予算書を写すだけにしていると、この欄が最初に形骸化します。

自分の団体で確かめること

#確かめることどこを見るか
1繰入金が、科目のうえで補助金・負担金・出資金・他会計借入金に分かれているか決算報告書と貸借対照表。「繰入金」の一括りになっていないか
2出資金として受け入れたものが、法17条の2第1項によるものか法18条1項によるものか整理されているか後者なら納付金(法18条2項)の検討が必要
3他会計借入金に利息を付しているか法18条の2第2項。負担区分に基づくもの以外は「支払わなければならない」
4建設改良に充てた繰入金を、受け入れた年度の収益にしていないか施行令26条1項。補助金・負担金なら長期前受金
5企業債の元金償還に充てた繰入金を、長期前受金に整理しているか施行規則21条3項。ただし書の「重要でないとき」に当たるかの判断を残しているか
6予算の「他会計からの補助金」に補助の理由を書いているか施行令17条1項9号。前年の写しになっていないか
7投資・財政計画で、長期前受金の残が耐用年数の到来でゼロになる前提にしていないか定額法では耐用年数の到来時点で帳簿原価の10%相当が残る。なお使用していれば償却は95%まで続く(施行規則15条1項ただし書)

1は、2から5までの前提になります。科目が分かれていなければ、どの条文で受け入れたのかを後から復元できません。 繰入れの決定文書と予算書を突き合わせるところから始めてください。

2と3は、払っていないことに気づいていないという形で出ます。どちらも条文上は「納付するものとする」「支払わなければならない」です。負担区分に基づくものであれば不要なので、不要であることの根拠を残しておくのが実務的な落ち着き先になります。

まとめ

  • 一般会計等から特別会計に入る場面は、条文上4つあります。負担(法17条の2第1項)・補助(法17条の3)・出資(法18条1項)・長期貸付け(法18条の2第1項)。「負担するものとする」と書かれているのは負担だけです
  • 負担は目的を定めた条文で、方法は「出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法」のいずれでもよい。だから「負担区分に基づくかどうか」と「会計処理がどうなるか」は別の問いです
  • 負担区分に基づかない出資には納付金(法18条2項)、負担区分に基づかない長期貸付けには適正な利息(法18条の2第2項)がつきます。条文の書き出しが「第十七条の二第一項の規定によるもののほか」なので、負担区分に基づくものはこの2つから外れます
  • 法17条の2第1項は「政令で定めるもの」で、施行令8条の5が区分を設けているのは水道事業・工業用水道事業・病院事業・軌道事業の4つです(病院事業の建設改良費は施行令附則14項で「当分の間」加えられています)。下水道事業と簡易水道事業は出てきません
  • 政令に挙がっていても、そのまま全額ではありません。1項は「特定の収入の額をこえる部分」、2項は「経営に伴う収入の額をこえる部分に限る」です。取扱通知も「これらの経費がそのまま直ちに一般会計等の負担になるという趣旨ではないこと」としています
  • 補助(法17条の3)は「災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合」に限られます。取扱通知は「一時的な企業外の要因又は要請」とし、「真にやむを得ないものに限定されるべき」としています。構造的な収支不足は、この条文では説明できません
  • 繰出基準(令和8年4月1日付け総財公第18号)は通知で、裏付けは地方財政計画への計上です。交付税等で考慮されるのは「その一部について」で、全額ではありません
  • 「基準内」「基準外」という語は、法・施行令・施行規則・繰出基準・取扱通知のどこにもありません。実務では通じますが、根拠として示す言葉ではありません
  • 建設改良に充てる補助金・負担金は繰延収益(長期前受金)になります(施行令26条1項、施行規則21条1項)。企業債の元金償還に充てる繰入金も同じ扱いです(施行規則21条3項)。出資金・長期貸付けは繰延収益になりません
  • 設例では、同じ100,000,000円を受け入れても、1年あたりの正味の費用は補助金・負担金なら3,600,000円、出資金・長期貸付けなら5,400,000円になりました。差は1,800,000円です
  • 長期前受金の戻入は減価償却に連動するので、耐用年数が到来した50年目までの累計は90,000,000円にとどまります。定額法は帳簿原価の10%を控除した額に償却率を乗じるためです。ただし償却はそこで終わりません。 施行規則15条1項ただし書が累計の上限を帳簿原価の95%としているので、なお使用していれば53年目まで償却と戻入が続き、戻入の累計は95,000,000円になります。残りが出るのは除却・減損のときです
  • 予算の記載事項(施行令17条1項9号)に挙がっているのは「補助金」です。取扱通知は、調書に「補助の理由及び補助をした会計並びに補助の金額」を明瞭に記載するものとしています

よくある質問

繰出基準に載っている繰出しは、全額が交付税で措置されるのですか。

いいえ。令和8年度の繰出基準(令和8年4月1日付け総財公第18号)の前文は「なお、一般会計がこの基本的な考え方に沿って公営企業会計に繰出しを行ったときは、その一部について地方交付税等において考慮するものですので、御承知願います」としています。「その一部について」です。繰出基準に沿った繰出しであることと、その額が交付税で戻ってくることは別の話なので、財政当局との協議の場で同じものとして扱わないでください。

「基準外繰入」は法令違反なのですか。

そもそも「基準内」「基準外」という言葉は、地方公営企業法・施行令・施行規則・繰出基準・取扱通知のどれにも出てきません。法令が区別しているのは、負担区分に基づく負担(法17条の2第1項)、補助(法17条の3)、出資(法18条)、長期貸付け(法18条の2)です。繰出基準に載っていない繰入れは、この4つのどれかに当てはめて説明することになります。補助であれば「災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合」という限定が条文にかかります。

出資金として受け入れると、何か払うことになりますか。

なります。法18条2項は「地方公営企業の特別会計は、前項の規定による出資を受けた場合には、利益の状況に応じ、納付金を一般会計又は当該他の特別会計に納付するものとする」としています。「前項の規定による出資」なので、負担区分に基づく出資(法17条の2第1項)ではなく、法18条1項による出資を受けた場合の話です。取扱通知は、納付金を「自己資本に対する報酬としての性格を有するもの」とし、「その性格上定額でなく、利益の状況に応じて利益処分として納付するもの」としています。

下水道事業の繰入金は、法17条の2第1項を根拠にできますか。

法17条の2第1項は「次に掲げる地方公営企業の経費で政令で定めるもの」としており、その政令である施行令8条の5は、事業の区分として水道事業・工業用水道事業・病院事業(1項)と軌道事業・病院事業(2項)を挙げています。下水道事業は挙がっていません。令和8年度の繰出基準でも、下水道事業の16項目はすべて趣旨欄が「繰り出すための経費である」で、上水道事業の消火栓等や病院事業のように「一般会計が負担するための経費である」とは書かれていません。

建設改良に充てる繰入金は、受け入れた年度の収益になりますか。

なりません。償却資産の取得または改良に充てるための補助金・負担金その他これらに類するものを受けたときは、その額を繰延収益として整理します(施行令26条1項、施行規則21条1項)。貸借対照表では長期前受金になり、その資産の減価償却・除却・減損に合わせて収益化していきます。ただし、これは補助金・負担金として受け入れた場合の話で、出資金として受け入れれば資本金、長期貸付けとして受け入れれば他会計借入金になり、繰延収益にはなりません。

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