中小企業向け税務

回収できない売掛金はいつ落とせるのか — 1年たてば、ではありません

取引先が払わない。督促しても返事がない。そのうち連絡が取れなくなった。

このとき「取引をやめてから1年たてば貸倒れにできる」と説明されることがありますが、正確ではありません。1年の取扱いには3つの限定が付いていて、そのどれかを外すと使えません。しかも1年の数え始めは、取引をやめた日とは限りません。

そしてもう一つ。法人税で貸倒損失にできたからといって、消費税が自動的に減るわけではありません。消費税には別の条文があり、控除できない場面が決まっています。

自社で判定できるところまで、原文に沿って整理します。

結論

貸倒れの入口は3つあり、どれに当たるかでできることが変わります。

入口根拠落とせる額経理の要否
切捨て・債務免除があった法人税基本通達9-6-1切り捨てられた額・免除した額不要(当期の損金になる)
全額が回収できないことが明らかになった同9-6-2全額損金経理が必要
取引停止から1年以上たった・同一地域の少額債権同9-6-3備忘価額を控除した残額損金経理が必要

そして消費税は、法人税とは別の条文で、別に判定します。免税事業者であった時期の売上に係るものと、免税事業者に戻った後・廃業した後に生じたものは、控除できません。

法人税の3つの入口

根拠は法人税法22条3項3号の「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」で、その具体的な取扱いが法人税基本通達9-6-1から9-6-3までに置かれています。タックスアンサーも根拠法令等として「法法22、法基通9-6-1〜3」を挙げています。

9-6-1 — 切捨て・債務免除

通達は次の4つを挙げています。番号まで含めて原文のとおりです。

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額 (2) 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額 (3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額 イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの (4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

(4) は自分から債権を放棄する場合です。「債務超過の状態が相当期間継続し」「書面により明らかにされた」の2つが条件になっています。口頭の放棄や、一時的に債務超過になっただけの相手への放棄は、この号には乗りません。

9-6-2 — 全額が回収できないことが明らかになった

法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。 (注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

ここで落ちるのは「全額」です。半分だけ回収できそうにない、という理由で半分を落とす規定ではありません。一部を費用にする制度は貸倒引当金で、これは後述のとおり別の制度です。

担保物があるときは、処分した後でなければ落とせません。さらに国税庁は、連帯保証人がいる場合について次のように答えています。

金銭債権について連帯保証人がいる場合には、その連帯保証人は、その債務の返済に関しては債務者と同等の立場にあると考えられることから、その連帯保証人等の資産状況、支払能力等を勘案して、その貸付金が回収不能かどうかの判断をすることになります。

債務者本人の資料をそろえただけでは足りません。

9-6-3 — 取引停止から1年以上

債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9-6-3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。 (1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。) (2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき (注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

「1年たてば落とせる」に付いている3つの限定

よく知られているのは (1) の1年ですが、本文と注に限定が3つ入っています。

限定原文の文言外れると
対象は売掛債権だけ「売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない」貸付金その他これに準ずる債権には使えない
継続的な取引をしていた相手に限る「継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したため」一度だけ取引した相手には使えない
担保物がない場合に限る「当該売掛債権について担保物のある場合を除く」担保を取っていると使えない

注が挙げている例が分かりやすいところです。「不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者」への売掛金は、1年たっても9-6-3では落とせません。この場合に落とすなら、9-6-1か9-6-2のどちらかに当てはめることになります。

なお (2) は1年を待ちません。同一地域の相手に対する売掛債権の総額が取立費用に満たない場合で、支払を督促しても弁済がないときです。遠方の少額債権を複数抱えている場合に効きます。担保物の除外は (1) にだけ置かれていて (2) には付いていませんが、代わりに督促の事実が条件になっています。

1年の数え始めは、取引をやめた日とは限りません

(1) の括弧書きがここに係っています。

債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合

つまり、次の3つを並べて最も遅いものから数えます。

  • 取引を停止した時
  • 最後の弁済期
  • 最後の弁済の時

原則と例外を逆にしないでください。原文が起算点として置いているのは「債務者との取引を停止した時」で、括弧書きがそれを動かすのは「最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合」だけです。弁済期も最後の入金も取引停止より前にあるなら、起算点は取引停止の時そのものになります。動くことがある、というのが正確なところです。

実際に当てはめます。3月決算の法人で、次のような相手だったとします(説明のための架空の例です)。

項目日付
取引を停止した時2025年3月31日
最後の弁済期2025年5月31日
最後の弁済の時(一部入金)2025年6月20日

最も遅いのは2025年6月20日ですから、1年以上経過するのは2026年6月20日以後です。これは2026年4月1日から2027年3月31日までの事業年度に入ります。取引停止の2025年3月31日から数えると2026年3月31日に1年たつので、1期早く落としてしまうことになります。

ここで効いてくるのが「最後の弁済の時」です。回収のために催促して、相手が少額でも振り込んでくれると、その日から1年の数え直しになります。回収努力と税務上の処理時期が逆方向に動くので、入金があった日付は記録しておく必要があります。

9-6-1だけは、経理していなくても当期の損金になります

3つの入口は、文末が違います。ここは読み飛ばされやすいところです。

入口文末
9-6-1「その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する」
9-6-2「その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる」
9-6-3「貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める」

9-6-1は「損金の額に算入する」と書かれていて、損金経理が条件になっていません。更生計画の認可で債権が切り捨てられたのに帳簿で何もしていなければ、その事業年度の損金になっているのが正しい状態で、翌期に気づいて落とすという処理にはなりません。

逆に9-6-2と9-6-3は、損金経理をしなければ落ちません。要件を満たしている年に経理を忘れると、その年の損金にはなりません。なお9-6-2は「その明らかになった事業年度において」と年を指定しているのに対し、9-6-3は損金経理をした事業年度を指定する文言を置いていません。

消費税は、別の条文で別に判定します

ここが実務で一番取り違えられるところです。消費税の根拠は消費税法39条1項です。

事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)を行つた場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなつたときは、当該領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額(中略)の合計額を控除する。

「政令で定める事実」は消費税法施行令59条、そこから更に「財務省令で定める事実」が消費税法施行規則18条にあります。法律・政令・省令の3階層に分かれているので、1つだけ読むと列挙を取りこぼします。

並べると、法人税の通達とほぼ同じ内容です。

事実法人税消費税
更生計画認可の決定による切捨て通達9-6-1(1)消費税法39条1項(本文)
再生計画認可の決定による切捨て通達9-6-1(1)施行令59条1号
特別清算に係る協定の認可の決定による切捨て通達9-6-1(2)施行令59条2号
全額を弁済できないことが明らか通達9-6-2施行令59条3号
関係者の協議決定による切捨て通達9-6-1(3)イロ施行規則18条1号イロ
書面による債務免除通達9-6-1(4)施行規則18条2号
取引停止から1年以上経過通達9-6-3(1)施行規則18条3号イ
同一地域の債権総額が取立費用未満通達9-6-3(2)施行規則18条3号ロ

1年の取扱いの文言も、ほぼそのまま重なっています。

継続的な取引を行つていた債務者につきその資産の状況、支払能力等が悪化したことにより、当該債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該取引を停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後一年以上経過した場合(当該債権について担保物がある場合を除く。)

消費税法基本通達14-2-1も「不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る債権について同号に規定する経理を行ったとしても、法第39条第1項(中略)の規定は適用されない」としています。継続的な取引という限定は、消費税にも付いています。

消費税で控除できない4つの場面

事実が同じでも、消費税だけ控除できない場面があります。

1. 課税売上げに対応しない債権と、免税取引に係る債権

39条1項の対象は「課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権」です。貸付金の貸倒れや、非課税売上げ・不課税の代金は対象になりません。

そして39条1項は、その課税資産の譲渡等から「第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの」を括弧書きで除いています。7条1項は輸出免税、8条1項は輸出物品販売場(免税店)の規定です。つまり輸出免税の売上げに係る売掛金は、課税資産の譲渡等でありながら、この括弧書きで対象から外れています。もともと消費税を預かっていないので、戻すものがないという筋です。輸出の割合が大きい事業者ほど、法人税で落とせる額と消費税で控除できる額の差が開きます。

法人税は9-6-1と9-6-2が「金銭債権」を対象にしているので、同じ債権でも法人税だけ落ちる形になります。

2. 免税事業者であった課税期間の売上に係るもの

課税事業者が、免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係る売掛金等につき貸倒れが生じ、当該課税資産の譲渡等の価額の全部又は一部の領収をすることができなくなった場合であっても、当該領収をすることができなくなった金額については法第39条第1項(貸倒れに係る消費税額の控除)の規定の適用はないのであるから留意する。

インボイスの登録で課税事業者になった事業者に、これが効きます。登録前の売上が回収できなくなっても、消費税の控除はありません。売上に消費税が課されていないので、戻すものがないという筋です。

3. 免税事業者に戻った後・廃業した後に生じたもの

課税事業者が事業を廃止し、又は免税事業者となった後において、課税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係る売掛金等につき貸倒れが生じ(中略)場合であっても、当該領収をすることができなくなった金額については、法第39条第1項(貸倒れに係る消費税額の控除等)の規定の適用はないのであるから留意する。

課税事業者だったときの売上なのに、貸倒れが起きた時点で免税事業者に戻っていると控除できません。回収の見込みが薄い売掛金を抱えたまま免税事業者に戻ると、消費税だけ納めて控除は受けられないという結果になります。

4. 書類を保存していない場合

消費税法39条2項が保存を適用要件にしています。

前項の規定は、事業者が財務省令で定めるところにより同項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を保存しない場合には、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

その「財務省令で定めるところ」が消費税法施行規則19条です。

法第39条第1項の規定の適用を受けようとする事業者は、同項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を整理し、同項に規定する領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の末日の翌日から二月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には、一月)を経過した日から七年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。

起算日は課税期間の末日ではありません。3月決算の法人が2027年3月31日に終わる課税期間に貸倒れを計上したなら、末日の翌日が2027年4月1日、そこから2月を経過した日が2027年6月1日で、保存期間はここから7年間です。保存する書類は「事実が生じたことを証する書類」ですから、更生計画の認可決定の通知、債務免除を伝えた書面の控え、督促の記録、入金の履歴といったものが対象になります。

控除する税額の計算

控除する額は、貸倒れになった税込金額から逆算します。消費税法39条1項の括弧書きが計算方法です。

当該税込価額に百十分の七・八(当該税込価額が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額

国税庁の「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方」は、税込560,000円を貸倒処理した設例で「560,000円 × 7.8/110 = 39,709円」と計算しています。同じ資料は「金額の計算過程において生じた1円未満の端数については、その都度切り捨てます」としています。

下の表の標準税率の列はこの国税庁の設例と同額で、軽減税率の列は端数が出ない金額を選んだ説明用の例です。地方消費税の額と合計は、電卓で追えるように四捨五入して「約」を付けています。

項目標準税率(税込560,000円)軽減税率(税込540,000円)
申告書で控除する消費税額560,000 × 7.8/110 = 39,709円540,000 × 6.24/108 = 31,200円
地方消費税の減る額(78分の22)約11,200円約8,800円
合わせて納税額が減る額約50,909円約40,000円

地方消費税の税率は地方税法72条の83が「地方消費税の税率は、七十八分の二十二とする」と定めています。国税分に78分の22を掛けるので、合わせると税込金額の110分の10(軽減税率なら108分の8)にあたる金額になります。検算すると560,000 × 10/110 = 約50,909円、540,000 × 8/108 = 40,000円で、上の表と一致します。

ただし申告書の上では、差引税額と譲渡割額にそれぞれ百円未満の切捨てが入ります。同じ国税庁の設例でも、差引税額は「320,212円 ⇒ 320,200円(百円未満切捨て)」、譲渡割額は「90,312円 ⇒ 90,300円(百円未満切捨て)」となっています。実際に納める額の差は、上の表の金額から端数分だけずれます。

税率は売上を計上したときの税率で決まります。貸倒れになった年の税率ではありません。39条1項の括弧書きが「当該税込価額が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には」と、もとの譲渡が軽減対象かどうかで率を分けており、国税庁も過去の税率について「平成26年4月1日から令和元年9月30日までの課税資産の譲渡等に係る売掛金等が貸倒れとなった場合には」と、譲渡等の時期で区切っています。なお国税庁はタックスアンサーに「令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の譲渡について、消費税率が引き下げられます」という注記を置いています。飲食料品を扱う事業者は、引下げ後の扱いを国税庁の案内で確認してください。この記事の計算は、現在の39条1項の率によっています。

標準税率分と軽減税率分に分かれていないとき

貸倒れになった売掛金に、標準税率の売上と軽減税率の売上が混ざっていることがあります。税率ごとに分かれていないときの計算は、消費税法施行令60条1項が定めています。

当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額が課税資産の譲渡等(軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係る部分と軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分とに合理的に区分されていないときは、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に、当該貸倒れ等の対象となつた課税資産の譲渡等の税込価額の合計額のうちに軽減対象課税資産の譲渡等の税込価額の占める割合を乗じて計算した金額を、当該軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分の金額として、同条第一項の規定を適用する。

条件は「合理的に区分されていないとき」です。区分されていれば、それぞれの率で計算します。区分していないときに初めて、売上全体に占める軽減対象の割合で按分することになります。消費税法基本通達14-2-3も、区分することが「著しく困難であるとき」は「貸倒れとなったときにおけるそれぞれの債権の額の割合」で計算できるとしています。貸倒れにした後で回収したときの按分は、施行令60条2項です。

簡易課税でも控除します

簡易課税を選んでいると使えないと思われがちですが、使えます。消費税法37条1項が置き換えているのは「第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額」で、39条はこの範囲に入っていません。実際に国税庁の「申告書(簡易課税用)の書き方」にも「貸倒れに係る税額⑥」欄があり、「課税売上げに係る売掛金等のうち、貸倒れとなったものがある場合には、その貸倒れに係る税額を計算します」と書かれています。

備忘価額はいくら残すのか

9-6-3は「備忘価額を控除した残額」としていますが、金額は定められていません。消費税法施行規則18条3号も「当該債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして経理したこと」としているだけです。

税込880,000円の売掛金で備忘価額を1円とするなら、貸倒れとして経理する額は879,999円になります。1円でも残っていれば債権は帳簿に残り、その相手が消えていないことが分かる状態になります。実務では1円を使うことが多いところですが、原文に定めはありません。

備忘価額を残すこと自体は、法人税の通達と消費税の施行規則の両方が要件にしています。片方だけの話ではありません。

貸倒引当金は別の制度です

一部だけを費用にできるのは、貸倒引当金です。根拠は法人税法52条で、使える法人は52条1項の1号から3号に列挙されています。中小企業に効くのは1号で、次の3つが挙がっています。

イ 普通法人(投資法人及び特定目的会社を除く。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの(第六十六条第五項第二号又は第三号(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に掲げる法人に該当するもの及び同条第六項に規定する大通算法人を除く。)又は資本若しくは出資を有しないもの(同項に規定する大通算法人を除く。) ロ 公益法人等又は協同組合等 ハ 人格のない社団等

括弧の中が効きます。資本金が1億円以下でも、66条5項2号・3号に掲げる法人(資本金5億円以上の大法人などに完全支配されている普通法人)と、同条6項の大通算法人は、ここから除かれます。資本金の額だけを見て判定できる制度ではありません。

ロとハも落とさないでください。学校法人のような公益法人等と協同組合等、人格のない社団等は、資本金の有無とは別にロ・ハで対象になります。銀行・保険会社は52条1項2号、リース資産の対価に係る金銭債権その他の金融に関する取引に係る金銭債権を有する法人は52条1項3号で対象です。そして次の2点が付いています。

  • 損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額であること(52条1項・2項)
  • 確定申告書に「損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」(52条3項)

明細の記載が抜けたときは、そこで終わりとは限りません。52条4項が「税務署長は、前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項及び第二項の規定を適用することができる」としています。ただし認めるかどうかは税務署長の判断で、自分で判定できる基準ではありません。記載して出すのが原則です。

さらに52条10項が、繰り入れた金額は「当該事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する」としています。引当金は翌期に全部戻ります。貸倒損失のように一度で終わる処理ではありません。

そして貸倒引当金に消費税の控除はありません。消費税法39条1項が求めているのは「領収をすることができなくなつた」ことで、見込額の計上はこれに当たりません。

個人事業主は根拠条文が違います

ここまでは法人の話です。個人事業主の場合、根拠は所得税法51条2項です。

居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

条文は「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた」債権としています。事業に当たらない規模の業務の場合は、この条文の対象から外れます。

不動産の貸付けが事業に当たるかどうかについて、国税庁はタックスアンサーで次の基準を示しています(根拠法令等に所得税基本通達26-9が挙がっています)。

不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。 ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。 (1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。 (2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

アパートを数室だけ貸しているような場合は、この基準に届きません。そのときに効くのは所得税法64条1項です。

その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

必要経費に落とすのではなく、その収入がなかったものとみなすという作りです。しかも「その年分の各種所得の金額の計算の基礎となる収入金額」としていますから、動くのは貸倒れが起きた年分ではなく、その収入を計上した年分です。国税庁も次のように書いています。

賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、不動産貸付けが事業として行われている場合は、回収不能となった年分の必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直します。

64条1項が「政令で定めるところにより」と委ねている先は所得税法施行令180条2項です。同項は、なかったものとみなす金額に上限を置いています。

法第六十四条第一項に規定する収入金額又は総収入金額で、回収することができないこととなつたもの(同条第二項の規定により回収することができないこととなつたものとみなされるものを含む。)又は返還すべきこととなつたもの(以下この項において「回収不能額等」という。)のうち、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額に達するまでの金額は、同条第一項に規定する各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。 一 回収不能額等が生じた時の直前において確定している法第六十四条第一項に規定する年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額 二 前号に掲げる金額の計算の基礎とされる各種所得の金額のうち当該回収不能額等に係るものから、当該回収不能額等に相当する収入金額又は総収入金額がなかつたものとした場合に計算される当該各種所得の金額を控除した残額

回収できなくなった金額が全部そのまま落ちるのではなく、2つの金額のうち低いほうが限度になります。

51条2項とは、落ちる年分も効き方も違います。事業に当たる規模かどうかで分けて考える必要があります。

消費税のほうは法人と同じです。消費税法39条1項の主体は「事業者」で、消費税法2条1項4号が「事業者 個人事業者及び法人をいう」と定めています。個人事業主も同じ条文で控除します。

まとめ

  • 「取引停止から1年」には3つの限定が付いています。対象は売掛債権だけで貸付金は含まれず、継続的な取引をしていた相手に限られ、担保物がある場合は除かれます
  • 1年の数え始めは取引をやめた日とは限りません。取引停止の時・最後の弁済期・最後の弁済の時のうち、最も遅い時から数えます。催促して一部でも入金があれば数え直しです
  • 全額回収不能で落とすなら「全額」です。担保物は処分した後、保証債務は履行した後、連帯保証人の支払能力まで見ます
  • 9-6-1の切捨て・債務免除だけは損金経理が要件ではありません。経理していなくても、事実が発生した事業年度の損金です
  • 消費税は別に判定します。課税売上げに対応しない債権、輸出免税などの免税取引に係る債権、免税事業者であった課税期間の売上に係るもの、免税事業者に戻った後・廃業した後の貸倒れは控除できません
  • 消費税は書類の保存が適用要件です。起算日は課税期間の末日ではなく、末日の翌日から2月を経過した日で、そこから7年間です
  • 簡易課税でも貸倒れに係る税額は控除します。37条1項が置き換えているのは30条から36条までの仕入税額控除だけです
  • 一部だけを費用にするのは貸倒引当金で、別の制度です。翌期に全額が益金に戻り、消費税の控除もありません

回収できない売掛金は、落とせる時期を1期間違えるだけで、税額が動きます。判定に迷う債権がある場合や、免税事業者だった時期の売掛金が残っている場合は、資料をお持ちいただければ一緒に確認します。

よくある質問

取引先と取引をやめてから1年たちました。売掛金を貸倒れにしてよいですか。

相手と債権の性質によります。法人税基本通達9-6-3は、対象を「売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。)」に限っています。さらに同通達の注が「(1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない」としています。一度だけ取引した相手への売掛金には使えません。また担保物がある場合も除かれます。

1年は、取引をやめた日から数えるのですか。

取引をやめた日からとは限りません。通達は「債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合」としています。取引停止より後に弁済期が来ていたり、後から一部でも入金があれば、起算点はその遅いほうに動きます。催促して少額でも振り込んでもらうと、1年の数え直しになります。

売掛金のうち、回収できそうにない半分だけを落とすことはできますか。

その理由ではできません。法人税基本通達9-6-2は「その全額が回収できないことが明らかになった場合」の取扱いで、一部が回収できないことを理由に一部だけを落とす規定ではありません。一部だけを費用にする制度は貸倒引当金(法人税法52条)で、こちらは別の制度です。なお取引停止から1年以上経過した場合(9-6-3)は、備忘価額を残した残額を落とす形になります。

担保を取っています。相手の支払能力がないことは明らかなのですが。

担保物を処分してからです。法人税基本通達9-6-2は「当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする」としています。取引停止から1年以上経過した場合(9-6-3(1))も、担保物のある場合は除かれています。保証債務についても、同通達の注が「現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできない」としています。

連帯保証人がいる場合はどう考えますか。

連帯保証人の支払能力も見ます。国税庁は「金銭債権について連帯保証人がいる場合には、その連帯保証人は、その債務の返済に関しては債務者と同等の立場にあると考えられることから、その連帯保証人等の資産状況、支払能力等を勘案して、その貸付金が回収不能かどうかの判断をすることになります」としています。債務者本人が払えないことだけでは足りません。

法人税で貸倒損失にできれば、消費税も自動的に減りますか。

別に判定します。消費税は消費税法39条1項の控除で、対象は課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権に限られます。課税売上げに対応しない債権(貸付金や非課税売上げの代金)は対象外で、輸出免税など消費税が免除される売上げに係る債権も、39条1項の括弧書きで対象から外れています。さらに、免税事業者であった課税期間に行った課税資産の譲渡等に係る売掛金が貸倒れになった場合は控除できず(消費税法基本通達14-2-4)、課税事業者が事業を廃止し、または免税事業者となった後に貸倒れが生じた場合も控除できません(同14-2-5)。

簡易課税を選んでいます。貸倒れの分は控除できますか。

控除できます。簡易課税の規定(消費税法37条1項)が置き換えているのは「第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額」であって、39条はその範囲に入っていません。国税庁の「法人用 消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方」にも「貸倒れに係る税額⑥」欄の記載方法が載っており、「課税売上げに係る売掛金等のうち、貸倒れとなったものがある場合には、その貸倒れに係る税額を計算します」としています。

貸倒れにした後で、相手が払ってきたらどうなりますか。

戻し入れます。消費税法39条3項は「第一項の規定の適用を受けた同項の事業者が同項の規定の適用を受けた課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をしたときは、当該領収をした税込価額に係る消費税額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなしてその事業者のその領収をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算する」としています。法人税では回収した金額が益金になります。なお、1項の控除を受けていない貸倒額を回収した場合は、3項の加算もありません(消費税法基本通達14-2-4の注)。廃業した後や免税事業者になった後に、課税事業者であった課税期間に控除を受けた貸倒額を回収した場合も、3項の加算はありません(同14-2-5の注)。

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