「30万円未満なら一括で経費にできる」と覚えている方が多い制度です。
その30万円が、40万円に変わりました。 令和8年度の税制改正です。適用期限も延びました。
ただし、ここで多くの方が引っかかります。変わる日は「決算期の初日」ではなく「取得の日」です。 そして、金額の基準が緩くなった一方で、使える法人の範囲は逆に狭くなりました。 この2つを取り違えると、決算の組み方が変わります。
結論
- 取得価額の基準は 30万円未満 → 40万円未満
- 適用期限は 令和11年3月31日まで3年延長
- 分かれ目は 令和8年4月1日以後に「取得」したかどうか。事業年度や年分の区切りではない
- 年間の上限300万円は変わっていない
- 対象になる法人・個人の従業員数の要件は 500人以下 → 400人以下に引き下げ(特定法人は従前どおり300人以下)
- 固定資産税(償却資産)の扱いは変わらない。 全額を損金にしても申告の対象に残る(ソフトウエアなどの無形減価償却資産は、そもそも償却資産ではない)
改正されたことは3つです
改正は令和8年3月31日に成立・公布され、令和8年4月1日施行です(別段の定めがあるものを除く)。財務省が公表している新旧対照表で、条文がどう書き換わったかを確かめられます。
国税庁のタックスアンサー No.5408 も、本稿の確認日(2026年10月10日)の時点で「令和8年4月1日現在法令等」に更新されています。「中小企業者等が、取得価額が40万円未満である減価償却資産(以下「少額減価償却資産」といいます。)を平成18年4月1日から令和11年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には」と書かれ、注記で「令和8年度法人税関係法令の改正により、令和8年4月1日以後に取得などをした少額減価償却資産に係る取得価額の基準については、40万円未満(改正前:30万円未満)に引き上げられました。」としています。
ただし、e-Gov の法令検索は、同じ日の時点で条文そのものが改正前のままです。 租税特別措置法67条の5第1項は「令和八年三月三十一日まで」「三十万円未満」、28条の2第1項も同じで、どちらも既に過ぎた期限が表示されています(原文ママ)。一方で、施行令のほうは改正後になっています(39条の28第1項1号は「四百人以下」)。法律と政令で反映状況が食い違っているので、「条文に載っていないから改正されていない」とは読めません。 条文で確かめるなら、財務省が公表している新旧対照表に当たってください。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 1単位あたりの取得価額 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 適用期限(取得等の期間の終わり) | 令和8年3月31日 | 令和11年3月31日 |
| 従業員数の要件(特定法人以外) | 500人以下 | 400人以下 |
| 従業員数の要件(特定法人) | 300人以下 | 300人以下(変更なし) |
| 事業年度(年分)ごとの上限 | 300万円 | 300万円(変更なし) |
法人の条文(租税特別措置法67条の5第1項)は、こう書き換わりました。先が改正後、後が改正前です。
平成十八年四月一日から令和十一年三月三十一日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が四十万円未満であるもの
平成十八年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が三十万円未満であるもの
個人事業主の条文(同法28条の2第1項)も、同じ日付・同じ金額に書き換わっています。法人と個人で基準が違うことはありません。
引き上げの理由は、財務省の解説にこう書かれています。
これは、近年の物価の上昇を契機として、対象法人の減価償却資産の取得の実態等を踏まえて見直されたものです
分かれ目は事業年度ではなく「取得の日」
ここが実務で最も効きます。改正法の附則は、こう定めています。
新租税特別措置法第六十七条の五第一項の規定は、同項に規定する中小企業者等が施行日以後に取得又は製作若しくは建設をする同項に規定する少額減価償却資産について適用し、旧租税特別措置法第六十七条の五第一項に規定する中小企業者等が施行日前に取得又は製作若しくは建設をした同項に規定する少額減価償却資産については、なお従前の例による
「施行日以後に取得」した資産が新しい基準の対象です。 事業年度が令和8年4月1日以後に始まるかどうかではありません。個人事業主も同じで、「令和8年分だから40万円」ではありません。
そうすると、決算期によって次のように分かれます。
| 決算期・年分 | 基準の適用 |
|---|---|
| 3月決算法人の令和8年3月期 | 期間の全部が30万円未満 |
| 3月決算法人の令和9年3月期 | 期間の全部が40万円未満 |
| 12月決算法人の令和8年12月期 | 1月〜3月の取得は30万円未満、4月〜12月の取得は40万円未満 |
| 個人事業主の令和8年分 | 1月〜3月の取得は30万円未満、4月〜12月の取得は40万円未満 |
| 個人事業主の令和9年分 | 期間の全部が40万円未満 |
3月決算法人以外は、どこかの期で2つの基準が並びます。 12か月の事業年度なら、決算期の末日が3月31日でない限り、どこかの事業年度の途中に令和8年4月1日が入るからです(設立や決算期の変更で令和8年4月1日がちょうど期首になる期は、分かれません)。12月決算法人なら令和8年12月期、9月決算法人なら令和8年9月期、個人事業主なら令和8年分です。並ぶのはその1期(1年分)だけで、次の期からは全部が40万円未満になります。
数字で見ます。以下の設例はすべて説明のために作った架空のものです。
設例1 12月決算法人の令和8年12月期。1台32万円のパソコンを、2月に2台、7月に4台取得した。
| 取得日 | 1単位の取得価額 | その日の基準 | 判定 | 特例で損金算入 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年2月10日 | 32万円 | 30万円未満 | 基準以上なので対象外 | 0円 |
| 令和8年2月10日 | 32万円 | 30万円未満 | 基準以上なので対象外 | 0円 |
| 令和8年7月15日 | 32万円 | 40万円未満 | 対象 | 32万円 |
| 令和8年7月15日 | 32万円 | 40万円未満 | 対象 | 32万円 |
| 令和8年7月15日 | 32万円 | 40万円未満 | 対象 | 32万円 |
| 令和8年7月15日 | 32万円 | 40万円未満 | 対象 | 32万円 |
取得価額の合計は192万円、このうち特例で損金算入できるのは128万円です。2月に取得した64万円分は通常の減価償却になります。同じ型番の同じ値段のパソコンなのに、買った月で扱いが変わります。
設例2 個人事業主の令和8年分。1台35万円の機械を、3月と9月に1台ずつ取得した。
3月取得分は対象外、9月取得分だけが対象です。特例で必要経費に算入できるのは35万円、残りの35万円は通常の減価償却になります。
したがって、令和8年1月〜3月に30万円以上40万円未満のものを買った方は、その分だけは特例を使えません。 令和9年に行う令和8年分の確定申告で、ここを取り違えると過大に必要経費を計上することになります。
年間300万円の上限は上がっていません
引き上げられたのは1単位あたりの基準だけです。 事業年度(個人は年分)ごとの上限300万円は、条文のまま据え置かれています。
この場合において、当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円(当該事業年度が一年に満たない場合には、三百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする(租税特別措置法67条の5第1項後段)
1単位あたりの枠が30万円から40万円に広がり、合計の枠は据え置き。つまり、単価の大きいものを選ぶほど、上限に早く届きます。
事業年度が1年に満たない場合は月数で按分します。設立第1期や決算期を変更した期が該当します。
| 事業年度の月数 | 上限 |
|---|---|
| 6か月 | 150万円 |
| 7か月 | 175万円 |
| 11か月 | 275万円 |
| 12か月 | 300万円 |
月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数は1か月とします(同条2項)。
なお個人事業主の場合、按分するのは業務を開始した年と廃止した年だけです(同法28条の2第1項)。年の途中で事業年度が切れるという概念がないためです。
上限は、資産1つを割って使えません
条文をもう一度読みます。限度額の対象は「その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額」です。
限度されているのは「資産の取得価額の合計額」であって、「金額」ではありません。 資産1つの取得価額を途中で区切って、一部だけ特例を使うことはできません。全額を損金経理することが要件になっているためです。
設例3 1台38万円の什器を8台取得した(すべて令和8年4月1日以後)。
| 金額 | |
|---|---|
| 取得価額の合計(38万円×8台) | 304万円 |
| 特例の対象になる台数 | 7台 |
| 特例で損金算入できる金額(38万円×7台) | 266万円 |
| 8台目(通常の減価償却になる) | 38万円 |
| 使い残した枠(300万円−266万円) | 34万円 |
「300万円ちょうどまで使えて4万円だけ切り捨てられる」のではありません。 8台目を入れると304万円になって上限を超えるので、7台目までで止まります。差は34万円です。
この使い残しは300万円を単価で割った余りです。単価を振って確かめると、次のようになります。
| 1単位の取得価額 | 使える台数 | 特例で損金算入 | 使い残した枠 |
|---|---|---|---|
| 15万円 | 20台 | 300万円 | 0円 |
| 25万円 | 12台 | 300万円 | 0円 |
| 29万9,000円 | 10台 | 299万円 | 1万円 |
| 35万円 | 8台 | 280万円 | 20万円 |
| 38万円 | 7台 | 266万円 | 34万円 |
| 39万9,000円 | 7台 | 279万3,000円 | 20万7,000円 |
「単価が大きいほど使い残しが増える」わけではありません。 15万円や25万円のようにちょうど割り切れる単価では使い残しが出ません。正しくは、単価が大きいほど使い残しの上限(単価−1円)が大きくなるということです。上の表では38万円のときに使い残しが最大になりました。
300万円に近い金額まで買う年は、単価の組み合わせで数十万円が動きます。 発注の前に計算しておく価値のある論点です。
従業員数の要件は、逆に厳しくなりました
この改正には、対象を狭める側の変更も含まれています。 金額の引き上げだけを見て見落とすと、使えない年に使ってしまいます。
租税特別措置法施行令39条の28第1項は、こう定めています。
法第六十七条の五第一項に規定する事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定めるものは、次に掲げる法人とする。 一 常時使用する従業員の数が四百人以下の法人(特定法人(法人税法第七十五条の四第二項に規定する特定法人をいう。次号において同じ。)を除く。) 二 常時使用する従業員の数が三百人以下の特定法人
改正前は1号が「五百人以下」でした。財務省の解説は、この結果をこう説明しています。
すなわち、特定法人以外の法人について、対象となる法人から常時使用する従業員の数が400人超500人以下である法人が除外されました
この変更も「取得の日」で分かれます。 令和8年4月1日以後に取得したものには400人以下が、それより前に取得したものには500人以下が適用されます。
個人事業主も同じで、租税特別措置法施行令18条の5第1項は「常時使用する従業員の数が四百人以下の個人とする」に改められています。
「常時使用する従業員」の数え方
この人数は、雇用形態で決まりません。措置法通達67の5-1の2は、こう述べています。
措置法令第39条の28第1項各号に規定する「常時使用する従業員の数」は、常用であると日々雇い入れるものであるとを問わず、事務所又は事業所に常時就労している職員、工員等(役員を除く。)の総数によって判定することに留意する。この場合において、法人が酒造最盛期、野菜缶詰・瓶詰製造最盛期等に数か月程度の期間その労務に従事する者を使用するときは、当該従事する者の数を「常時使用する従業員の数」に含めるものとする
パート・アルバイト・日雇いも含めた総数です。 役員は除きます。季節的に数か月だけ働く方も含めます。
個人事業主については、措置法通達28の2-1の2 が同じ趣旨を定めています。ただしこちらは「事務所又は事業所に常時就労している職員、工員等の総数によって判定する」で、「役員を除く。」の括弧書きがありません。 個人事業主に役員がいないためです。
400人という線に近い会社は、ここの数え方で結論が変わります。 社会保険の被保険者数や、給与支払報告書の枚数とは一致しません。
対象になる法人・個人
金額と人数のほかに、いくつか条件があります。順に確かめてください。
| # | 条件 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 青色申告 | 青色申告書を提出する法人・個人であること |
| 2 | 中小企業者等であること | 法人は中小企業者または農業協同組合等。中小企業者は、資本金の額・出資金の額が1億円以下の法人(大規模法人の支配下にあるものを除く)など |
| 3 | 適用除外事業者でないこと | 基準年度の所得金額の年平均が15億円を超える法人は、中小企業者から除かれる |
| 4 | 従業員数 | 400人以下(特定法人は300人以下) |
| 5 | 除かれる法人 | 通算法人。中小企業経営強化税制の特定認定を受けた特定事業者等のうち、特定経営力向上計画に減価償却資産が記載されているもの |
対象になるかどうかの判定の時期も決まっています。 措置法通達67の5-1は、原則として「少額減価償却資産の取得等…をした日及び当該少額減価償却資産を事業の用に供した日の現況によるもの」としています。ただし、事業年度終了の日において要件に該当する法人(通算法人を除く)が、その事業年度の中小企業者等に該当する期間に取得等して事業の用に供した資産を対象として適用を受けている場合は、これを認めるとされています。
この判定の時期の話に、適用除外事業者かどうかの判定は入りません。 同じ通達が括弧書きで「措置法第42条の4第19項第8号に規定する適用除外事業者に該当するかどうかの判定を除く。」と明記しています。適用除外事業者かどうかは基準年度(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度)の所得で決まるので、取得の日や事業の用に供した日の現況では判定しません。上の表の3番だけは、判定の基準になる期間が違います。
期中に資本金を増やした場合や、従業員が400人を超えた場合は、この判定時期が結論を分けます。
40万円未満かどうかは「1単位」で見ます
合計額ではありません。措置法通達67の5-2は、こう定めています。
取得価額が40万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては一の工事等ごとに判定する
この通達は、本稿の確認日(2026年10月10日)の時点で「40万円未満」と書かれています。 末尾の改正履歴は「(平19年課法2-3「五十三」、令8年課法2-9「三十五」により追加)」(原文ママ)です。同じページの67の5-2の3 が「令4年課法2-14「六十五」により追加、令8年課法2-9「三十五」により改正」と書き分けているのに対し、67の5-2 は2つの通達を並べて「追加」としています。改正前の通達の原文には当たれていないため、金額がいつどう書き換わったかは断定しません。 現に「40万円未満」と書かれていることだけを根拠にしています。
なお、所得税側の通達は、改正の進み方がそろっていません。 判定単位の通達(措置法通達28の2-2)は、同じ確認日の時点で「取得価額が40万円未満であるかどうか」に改められています。改正履歴は「(平15課個2-25、課審4-39追加、令8課個2-10、課審5-4改正)」(原文ママ)で、法人側と違って「改正」と書かれています。一方、後述する明細書の添付の通達(28の2-3)は、同じ日の時点で「取得価額30万円未満」のままです。同じ所得税の同じページの中で、金額が2つ並んでいます。 個人事業主の方は、どちらを見たかで金額が違って見えます。
実務で問題になるのは「1組」「1そろい」です。応接セットは1そろいで判定します。机と椅子を別々の請求書で買っても、通常1単位として取引される単位で見ます。請求書の分け方で単位が決まるわけではありません。
なお対象は有形資産に限りません。国税庁は「器具および備品、機械および装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウエア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となり、また、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります」としています。
10万円未満・20万円未満との使い分け
似た制度が3つあります。同じ資産に重ねて使うことはできません。
| 制度 | 根拠 | 対象 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 少額の減価償却資産 | 法人税法施行令133条 | 取得価額10万円未満、または使用可能期間1年未満 | 損金経理した額を全額損金算入 |
| 一括償却資産 | 法人税法施行令133条の2 | 取得価額20万円未満 | 取得価額の合計を3年(36か月)で均等に損金算入 |
| 少額減価償却資産の特例 | 租税特別措置法67条の5 | 取得価額10万円以上40万円未満(令和8年4月1日以後取得) | 全額損金算入。事業年度で合計300万円まで |
除外の根拠は、2つに分かれています。 取り違えると「選べる」と「選べない」が逆になります。
10万円未満のものは、条文が特例の対象から外しています。 租税特別措置法67条の5第1項は、40万円未満の減価償却資産のうち「その取得価額が十万円未満であるもの及び第五十三条第一項各号に掲げる規定の適用を受けるものその他政令で定めるものを除く」としています。取得価額が10万円未満なら、それだけで「少額減価償却資産」に当たりません。どちらを使うかという選択の余地はありません。
20万円未満のものは選べます。 租税特別措置法施行令39条の28第2項1号が対象から除いているのは、法人税法施行令133条または133条の2の適用を受ける資産です。一括償却資産にすれば特例は使えず、一括償却資産にしなければ特例を使えます。したがって、一括償却資産との間で選べるのは10万円以上20万円未満の範囲です。
使用可能期間が1年未満のものは、取得価額が20万円以上でも選べます。 法人税法施行令133条1項は、取得価額が10万円未満のものと並べて「前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるもの」を対象にしています。取得価額が10万円以上40万円未満でも、使用可能期間が1年未満なら133条1項で全額を損金にできます。そちらを使えば、300万円の枠を消費しません。 枠が埋まりそうな年は、ここも見てください。
300万円の枠が埋まりそうな年は、20万円未満のものを一括償却資産に回して枠を残す、という判断があり得ます。 一括償却資産は取得価額の合計を36で除して事業年度の月数を乗じた額が限度なので、12か月の事業年度ならその年の損金は3分の1になりますが、枠を単価の大きいものに使えます。
このほか、租税特別措置法上の特別償却・税額控除・圧縮記帳との重複適用はできません。国税庁は「この特例の適用を受ける資産は、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳と重複適用はできません」としています。
貸付けの用に供したものも除かれます。 除外そのものを定めているのは租税特別措置法施行令39条の28第2項で、「貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した減価償却資産」を対象から外しています。時期は令和4年4月1日が境です。国税庁が別表十六(七)の注意事項に「貸付け(主要な事業として行われるものを除きます。)の用に供したもの(令和4年4月1日以後に取得等をするものに限ります。)」と書いており、同日前に取得していたものは除外されません。何が「主要な事業として行われる貸付け」に当たるかは、措置法通達67の5-2の3が4つの例を挙げています。
全額を損金にしても、固定資産税(償却資産)は残ります
ここが見落とされます。 法人税・所得税で全額を経費にしたことと、固定資産税の扱いは連動していません。
地方税法341条4号は、償却資産から「その取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産」を除いています。その政令が、地方税法施行令49条です。
法第三百四十一条第四号に規定する政令で定める資産は、法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、法人税法施行令第百三十三条第一項若しくは第百三十三条の二第一項又は所得税法施行令第百三十八条第一項若しくは第百三十九条第一項の規定によりその取得価額…の全部又は一部が損金又は必要な経費に算入される資産とする。ただし、法人税法第六十四条の二第一項又は所得税法第六十七条の二第一項に規定するリース資産にあつては、当該リース資産の所有者が当該リース資産を取得した際における取得価額が二十万円未満のものとする
挙げられているのは、10万円未満・使用可能期間1年未満(法人税法施行令133条1項)と一括償却資産(同133条の2第1項)、およびその所得税版だけです。 租税特別措置法67条の5も28条の2も、この列挙に入っていません。
そして、ただし書がこの除外をさらに狭めています。 法人税法64条の2第1項・所得税法67条の2第1項のリース資産については、「当該リース資産の所有者が当該リース資産を取得した際における取得価額が二十万円未満のもの」に限って償却資産から外れます。この特例は所有権移転外リース取引で賃借人が取得したとされる資産にも使えますが、償却資産から外れるかどうかは、特例とは無関係にこの20万円の線で決まります。
したがって、この特例で全額を損金にした資産は、償却資産として残ります。 毎年1月1日現在の償却資産について、その所在・種類・数量・取得時期・取得価額・耐用年数などを、1月31日までに所在地の市町村長に申告することになります(地方税法383条)。課税標準は取得価額そのものではなく、賦課期日における価格です(同法349条の2)。償却資産の免税点は課税標準となるべき額150万円、固定資産税の標準税率は1.4%です(同法351条・350条1項)。
ただしソフトウエアや特許権は償却資産ではありません。 地方税法341条4号が「鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く」としているためです。
単価38万円のものを7台(266万円)まとめて買うと、法人税では今期に全額落ちますが、固定資産税では翌年から課税標準に乗ってきます。 「一括で経費になるから有利」という説明だけで判断すると、ここが抜けます。
既存の設備を改良した費用は、原則として対象外
資本的支出は、原則としてこの特例の対象になりません。措置法通達67の5-3です。
法人が行った資本的支出については、取得価額を区分する特例である令第55条第1項((資本的支出の取得価額の特例))の規定の適用を受けて新たに取得したものとされるものであっても、法人の既に有する減価償却資産につき改良、改造等のために行った支出であることから、原則として…「取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産」に当たらないのであるが、当該資本的支出の内容が、例えば、規模の拡張である場合や単独資産としての機能の付加である場合など、実質的に新たな資産を取得したと認められる場合には、当該資本的支出について、同項の規定を適用することができるものとする
「新たに取得したものとされる」からといって、自動的に対象になるわけではありません。 実質的に新たな資産を取得したと認められるかどうかで分かれます。
そもそもその支出が資本的支出なのか修繕費なのかが先です。修繕費なら全額が費用になるので、この特例を考える必要はありません。判定には順序があります。
手続き
法人は明細書の添付が要件です。 租税特別措置法67条の5第3項は「確定申告書等に同項の規定の適用を受ける少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する」としています。国税庁は、この明細書を別表16(7)としています。損金経理も要件です。
個人事業主は、青色申告決算書で済ませられます。 措置法通達28の2-3は、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に次の3つを記載して提出し、かつ当該減価償却資産の明細を別途保管している場合には、明細書の提出を省略して差し支えないとしています。
- 取得価額30万円未満の減価償却資産について、措置法第28条の2第1項の規定を適用していること(原文ママ。この通達は本稿の確認日である2026年10月10日時点で40万円未満に改められていないため、金額は原文のとおり引用しています。法律は40万円未満に改正済みで、同じ所得税側でも判定単位の通達(28の2-2)は40万円未満に改められています。改まっていないのはこの通達です)
- 適用した減価償却資産の取得価額の合計額
- 適用した減価償却資産の明細は、別途保管していること
明細を別途保管することが省略の条件です。 記載だけして保管していないと、要件を満たしません。
まとめ
- 取得価額の基準は40万円未満になりました。 適用期限は令和11年3月31日まで3年延長されました
- 分かれ目は令和8年4月1日以後に「取得」したかどうかです。 事業年度や年分の区切りではありません。12月決算法人と個人事業主は、同じ期の中に2つの基準が並びます
- 年間300万円の上限は変わっていません。 1単位の枠だけが広がったので、単価の大きいものを選ぶと早く上限に届きます
- 上限は資産1つを割って使えません。 1台38万円を8台なら7台分の266万円までで、34万円の枠が残ります
- 従業員数の要件は500人以下から400人以下に下がりました。 400人超500人以下の法人は、令和8年4月1日以後に取得するものについて対象から外れました
- 「常時使用する従業員」はパート・日雇い・季節労働も含む総数です。 役員は除きます
- 40万円未満かどうかは1単位で見ます。 1台・1基、1個・1組・1そろいです
- 全額を損金にしても、固定資産税(償却資産)の申告対象には残ります。 10万円未満と一括償却資産だけが償却資産から外れており(リース資産はさらに、所有者の取得価額が20万円未満のものに限られます)、この特例は外れていません。ただしソフトウエアや特許権のような無形減価償却資産は、そもそも償却資産ではありません
- 資本的支出は原則として対象外です。 実質的に新たな資産を取得したと認められる場合に限られます
この制度は、単体で考えると使い方を間違えます。 300万円の枠をどの資産に割り当てるか、一括償却資産に回すものをどれにするか、固定資産税まで含めてどちらが有利か。設備投資の予定と決算期が分かれば、その年の枠の使い方を具体的に組めます。取得の時期を1か月ずらすだけで結論が変わる年です。 発注の前にご相談いただくのが最も効果があります。