中小企業向け税務

倒産防止共済を解約して入り直すと、2年間は掛金が経費になりません

利益が出そうな期に、倒産防止共済を解約して解約手当金を受け取り、同じ期のうちにまた入り直す。入り直した後の掛金が経費になるので、受け取った解約手当金と相殺できる——この進め方が、長いあいだ説明されてきました。

この進め方は、いま使えません。

令和6年度の改正で、共済契約の解除があった後に入り直した場合、その解除の日から2年を経過する日までに払った掛金は、支出した時には経費になりません。令和6年10月1日以後の解除について適用されています。

そして、ここを取り違えている説明が多いのですが、2年の起点になる「解除」は、自分で解約した場合だけではありません。掛金を滞納して機構から解除されたときも、事業を全部譲渡してみなし解除になったときも、同じ2年が付きます。

自社で判定できるところまで、原文に沿って整理します。

結論

いまどういう状態にあるかによって、掛金の扱いが変わります。

どういう状態かそのとき払う掛金の扱い根拠
解約していない(契約が続いている)支出した時に全額が損金・必要経費措置法66条の11第1項2号/28条1項2号
令和6年9月30日までに解除があり、入り直した支出した時に全額が損金・必要経費改正法附則53・附則30(適用は令和6年10月1日以後の解除から)
令和6年10月1日以後に解除があり、2年を経過する日までに払った損金・必要経費にならない(資産に計上する)措置法66条の11第2項/28条2項
令和6年10月1日以後に解除があり、2年を経過した後に払った支出した時に全額が損金・必要経費同上(期間を過ぎれば本則に戻る)

そして、2年の期間に払った掛金は消えるのではなく、出口にずれます。資産に計上しておき、次に解約手当金を受け取ったときに取り崩します。

掛金月額20万円で入り直した場合、2年間で480万円が資産計上になります。設例で後ろに示します。

まず、制度のかたちを確認します

税務の話に入る前に、共済そのものの輪郭を押さえておきます。ここを曖昧にしたまま「節税になる」という話だけを受け取ると、判断を間違えます。

何のための制度か

中小企業倒産防止共済法2条2項が、共済契約を次のように定義しています。

この法律において「共済契約」とは、中小企業者が独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)に掛金を納付することを約し、機構がその中小企業者の取引の相手方たる事業者につき次の各号のいずれかに該当する事態(以下「倒産」という。)が生ずることに関し、この法律の定めるところにより共済金を貸し付けることを約する契約をいう。

機構が約束しているのは共済金の貸付けです。給付ではありません。取引先が倒産したときに、無利子(法10条1項)で、かつ経済産業省令で定める場合を除いて担保も保証人も要らず(同2項)に資金を借りられる仕組みで、財務省の資料は「いわゆるセーフティーネット共済」と呼んでいます。

掛金は月額5,000円から20万円まで

法4条2項が決めています。

掛金月額は、五千円以上であつて五千円に整数を乗じて得た額とする。ただし、第九条第二項ただし書の政令で定める額の十分の一に相当する額(以下「掛金納付制限額」という。)の四十分の一に相当する額を超えてはならない。

上限は条文に金額で書かれていないので、2段階でたどります。施行令2条が「法第九条第二項ただし書の政令で定める額は、八千万円とする」としているので、掛金納付制限額は8,000万円の10分の1で800万円。掛金月額の上限はその40分の1で20万円です。

項目金額根拠
共済金の貸付限度額8,000万円施行令2条
掛金納付制限額(掛金総額の上限)800万円法4条2項(8,000万円の10分の1)
掛金月額の上限20万円法4条2項(800万円の40分の1)
掛金月額の下限と刻み5,000円以上、5,000円の整数倍法4条2項

掛金総額が800万円に達すると、それ以上は納付できません。法14条3項が「共済契約者は、掛金を納付することにより第十一条第四項の規定の例により算定される掛金総額が掛金納付制限額を超えることとなるときは、その超えることとなる額につき掛金を納付することができない」としています。

また、掛金総額が掛金月額の40倍に達している場合は、通知をすれば納付を止められます(法14条4項)。月額20万円なら40か月で上限に届くので、40か月で払い終わるのが上限まで積む場合の姿です。

掛金は分割できず、納付期限も決まっています

法14条2項は一文です。

掛金は、分割して納付することができない。

納付期限は法14条1項が置いています。「共済契約者は、第三項から第六項までに規定する場合を除き、共済契約が効力を生じた日の属する月から共済契約が解除された日の属する月までの各月につき、その月の末日(共済契約が解除された日の属する月にあつてはその解除の日)における掛金月額により、その月の末日(共済契約が効力を生じた日の属する月分及びその翌月分の掛金にあつては、共済契約が効力を生じた日の属する月の翌々月末日)までに掛金を納付しなければならない」としています。

掛金月額を下げるのは自由ではありません

増額と減額が対称になっていません。法8条1項と2項を並べます。

機構は、共済契約者から掛金月額の増加の申込みがあつたときは、これを承諾しなければならない。

機構は、共済契約者からの掛金月額の減少の申込みについては、経済産業省令で定める場合を除き、これを承諾してはならない。

増額は「承諾しなければならない」、減額は「承諾してはならない」です。減額が承諾される場合は施行規則9条が3つ挙げています。

一 共済契約者がその者の事業の規模を縮小したことにより従前の掛金月額による掛金の納付を継続する必要がなくなつたと認められるとき。 二 共済契約者が次に掲げる事由により従前の掛金月額による掛金の納付を継続することが著しく困難であると認められるとき。  イ 事業経営の著しい悪化  ロ 疾病又は負傷  ハ 危急の費用の支出 三 共済契約者が既に貸付けを受け、又は受けることとなつた共済金の額から既に償還した共済金の額を控除した額と法第十一条第四項の規定の例により算定される掛金総額の十倍に相当する額との合計額が法第九条第二項ただし書の政令で定める額に達しているとき。

「掛金が重いから下げる」は、この3つのどれかに当てはめて説明する必要があります。節税の都合で月額を上げたあと、やめたくなったら下げればよい、という前提では組めません。

12か月納めないうちに解除すると、1円も戻りません

解約手当金は法11条1項が定めています。

共済契約が解除された場合において掛金が納付された月数が十二月以上であるときは、機構は、共済契約者に解約手当金を支給する。

12月以上という条件が先に立っています。11か月で解除すると、納めた掛金は戻りません。

金額は法11条3項が「次項の規定により算定される掛金総額に、掛金が納付された月数、共済契約の解除の事由等を基礎として政令で定める割合を乗じて得た額とする」としており、その割合は施行令4条にあります。解除の事由ごとに別の率が置かれているところが見落とされやすい部分です。

掛金が納付された月数自分で解除(法7条3項)機構の職権による解除(法7条2項)みなし解除(法7条4項)
12月未満支給なし(法11条1項)支給なし(法11条1項)支給なし(法11条1項)
12月以上24月未満80%75%85%
24月以上30月未満85%80%90%
30月以上36月未満90%85%95%
36月以上40月未満95%90%100%
40月以上100%95%100%

自分で解除した場合は40月以上で100%になりますが、機構の職権による解除では、40月以上でも95%にとどまります。みなし解除は36月以上で100%に届きます。

さらに、不正行為による解除では解約手当金そのものが出ません。法11条2項が「第七条第二項第二号の規定により共済契約が解除されたときは、前項の規定にかかわらず、解約手当金は、支給しない。ただし、経済産業省令で定める特別の事情があつた場合は、この限りでない」としています。

掛金月額20万円で、共済金の貸付けを受けていない場合、自分で解除したときの金額はこうなります。

掛金が納付された月数掛金総額支給率解約手当金元本から減る額
11か月220万円支給なし0円220万円
12か月240万円80%192万円48万円
24か月480万円85%408万円72万円
30か月600万円90%540万円60万円
36か月720万円95%684万円36万円
40か月800万円100%800万円0円

掛金総額は、納付した掛金の合計から共済金の貸付額の10分の1などを控除した額です(法11条4項)。この表は貸付けを受けていない場合のものです。

掛金が経費になるのは、特例だからです

ここから税務です。掛金が払った時に経費になるのは、租税特別措置法が特例としてそう定めているからで、原則ではありません。

法人は措置法66条の11第1項です。

法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

対象になる掛金は同項2号です。

二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金

個人は措置法28条1項で、「その支出した日の属する年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する」としています。2号が掲げる掛金は法人と同じもので、条文上の違いは共済法の法律番号が括弧で入っているかどうかだけです。

共済法のほうにも対応する条文があります。法21条です。

この法律の規定に基づき掛金を納付した共済契約者については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、法人税又は所得税の課税につき特別の措置を講ずるものとする。

明細書を付けないと適用されません

ここを落とすと、要件を満たしていても経費になりません。措置法66条の11第3項です。

第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。

法人税の申告書では、令和7年4月1日以後終了事業年度分から別表十(八)がこれに当たります。名前は「社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の特別控除、特定の基金に対する負担金等の損金算入及び特定業績連動給与の損金算入に関する明細書」です。令和6年4月1日以後終了事業年度分までは、同じ名前の明細書が別表十(七)でした。番号だけを覚えていると取り違えます。

個人も同じ作りで、措置法28条3項が「確定申告書に同項に規定する金額の必要経費に関する明細書の添付がない場合には、適用しない」としています。

経費になるのは「現実に支払った日」です

未払計上では落ちません。措置法通達66の11-2が明示しています。

措置法第66条の11に規定する負担金の損金算入時期は、法人が当該負担金を現実に支払った日(財務大臣の指定前に支払ったものについては、その指定のあった日)を含む事業年度となることに留意する。

さらに注が付いています。

1 当該負担金の支払のための手形の振出し(裏書譲渡を含む。)の日は、現実に支払った日に該当しない。

個人も同じで、措置法通達28-2が「個人が当該負担金等を現実に支払った日(略)の属する年分となることに留意する」とし、同じ注を置いています。

前納は1年以内の分だけです

決算期末にまとめて前納する場合、どこまでが対象になるかが決まっています。措置法通達66の11-3です。

中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号に掲げる掛金に該当しない。

「前納の期間が1年以内であるものを除き」該当しないという書き方です。1年を超える前納をすると、その部分はこの特例の対象になりません。個人も同じで、措置法通達28-3が「中小企業倒産防止共済法(昭和52年法律第84号)の規定により共済契約を締結した者が……前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第28条第1項第2号に掲げる掛金に該当しない」としています。

なお、前納そのものは制度として用意されていて、掛金が減額されます。法15条1項が「機構は、共済契約者が、その納付すべき月の前月末日以前にする掛金の納付(以下「掛金前納」という。)をしたときは、経済産業省令で定めるところにより、その掛金の額を減額することができる」としており、減額の計算方法は施行規則37条1項にあります。

令和6年10月1日以後の解除には、2年の期間が付きました

ここが本題です。措置法66条の11に、第2項が入りました。

前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、法人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該法人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。

個人は措置法28条2項です。

前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、個人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該個人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。

「法人」が「個人」に変わっているだけで、2年の期間の作りは同じです。

国税庁の「令和6年度 法人税関係法令の改正の概要」は、こう要約しています。

特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における中小企業倒産防止共済事業に係る措置(※1)について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出するその共済契約に係る掛金については、本特例の適用ができないこと(支出時に損金不算入(資産計上))とされました(措法66の11②)(※2)。

適用されるのは令和6年10月1日以後の解除からです

適用の境目は、入り直した日ではなく解除の日です。財務省の「令和6年度 税制改正の解説」が条番号まで示しています。

上記2の改正は、法人の締結していた上記1⑵の共済契約につき令和6年10月1日以後に解除があった後上記1⑵の共済契約を締結したその法人がその共済契約について支出する上記1⑵の掛金について適用することとされています(改正法附則53)。

個人についても同じ資料の所得税関係の章にあり、根拠は改正法附則30です。

したがって、令和6年9月30日までに解除があった契約について入り直した場合は、その後の掛金も支出した時の損金・必要経費のままです。改正前の説明がそのまま残っている資料を読むときは、まず解除の日を確認してください。

「2年を経過する日」はいつか

条文は「その解除の日から同日以後二年を経過する日まで」としています。初日を入れるかどうかで1日ずれるので、期間の計算を確認します。

国税通則法10条1項は、国税に関する法律の期間計算をこう定めています。

一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。 二 期間を定めるのに月又は年をもつてしたときは、暦に従う。 三 前号の場合において、月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月にその応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

措置法66条の11第2項は「同日以後二年を経過する日」と書いていますから、1号ただし書の「別段の定め」に当たり、解除の日を算入します。そのうえで3号により、2年後の応当する日の前日に満了します。

つまり、解除の日の2年後の前日までです。2月29日に解除があった場合だけは例外で、2年後に応当する日がないため、3号ただし書によりその月の末日(2年後の2月28日)に満了します。

解除の日2年を経過する日
令和8年10月1日令和10年9月30日
令和8年4月1日令和10年3月31日
令和8年3月31日令和10年3月30日

国税庁の改正概要に載っているイメージ図も、同じ読み方で書かれています。図には「共済契約①の解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する掛金は、支出時に損金不算入」と記したうえで、日付として「X+1年4月1日」「~X+3年3月31日」「X+3年4月1日~」が置かれ、最後の区間が「支出時に損金算入」とされています。解除があったのが X+1年4月1日で、損金不算入の期間が X+3年3月31日に終わる、という関係です。4月1日から2年後の前日は3月31日ですから、条文の読み方と一致します。

「解除」は、自分で解約した場合だけではありません

ここが最も取り違えられています。条文は「解除があつた後」と書いているだけで、誰が解除したかを問うていません。財務省の解説が注で明示しています。

(注1) 上記の「解除」は、共済契約者による解除(中小企業倒産防止共済法7③)のほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構の職権による解除(中小企業倒産防止共済法7②)及びみなし解除(中小企業倒産防止共済法7④)も含まれます。

3つの解除が、共済法7条にそれぞれ置かれています。

どの解除か条文どんな場面か
共済契約者による解除法7条3項「共済契約者は、いつでも共済契約を解除することができる」自分で解約した
機構の職権による解除法7条2項掛金を12月分以上滞納した、または不正行為があった
みなし解除法7条4項死亡・解散・分割・事業の全部の譲渡しがあり、承継がなかった

機構が解除しなければならない場合は、法7条2項が2つ挙げています。

一 共済契約者が経済産業省令で定める一定の月分以上について掛金の納付を怠つたとき(経済産業省令で定める正当な理由がある場合を除く。)。 二 共済契約者が偽りその他不正の行為によつて共済金若しくは一時貸付金の貸付け又は早期償還手当金、解約手当金若しくは完済手当金の支給を受け、又は受けようとしたとき。

1号の「一定の月分」は施行規則6条1項が「十二月分とする」と定めています。掛金を1年間払わないと、機構は契約を解除しなければなりません。この解除も2年の起点です。資金が苦しくて払えなくなり、落ち着いてから入り直した場合に、掛金が2年間経費にならないという結果になります。

なお1号の括弧書きにある「正当な理由」は施行規則6条2項が置いており、「暴風、豪雨、洪水、地震その他の異常な自然現象又は火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する原因等の共済契約者がその責めに帰することができない事由により掛金を納付することができなかつたこと」とされています。列挙されているのは自然災害・火事・爆発とそれに類する原因で、いずれも「その責めに帰することができない事由」という枠の中にあります。資金繰りが苦しくて払えなかった、という事情をここに当てはめるのは難しいところです。

みなし解除は、承継の申出で避けられます

法7条4項は、みなし解除になる条件として、「承継がなかつたとき」という限定を置いています。

共済契約者が死亡し、解散し、分割(その事業の全部を承継させるものに限る。以下この項及び第十二条第一項において同じ。)をし、又はその事業の全部を譲り渡した場合において、第十二条第一項の規定による承継がなかつたときは、当該共済契約者に係る共済契約は、当該死亡、解散、分割又は事業の全部の譲渡しの時に解除されたものとみなす。

承継があれば、解除とはみなされません。法12条1項が承継の手続です。

共済契約者について、相続、合併若しくは分割又はその事業の全部の譲渡しがあつたときは、その包括承継人又はその事業の全部の譲受人(以下「承継人等」という。)は、経済産業省令で定める期間内に機構に申出をし、その承諾を得て、当該共済契約者の有していた地位を承継することができる。

期間は3月です。施行規則34条が「法第十二条第一項の経済産業省令で定める期間は、三月とする」としています。

3か月を過ぎると承継の道が閉じ、みなし解除として扱われます。そのうえで譲受け側が新しく契約すると、2年の期間が付きます。事業承継では、税務の前に3か月の手続を押さえるのが順序です。

2年の期間に払った掛金は、どうなるのか

払い損になるわけではありません。財務省の解説が注で続けています。

(注2) 本特例が適用されない期間内に支出された掛金は、資産計上することとなり、解約返戻金を受け取った場合に取り崩すこととなるほか、解約返戻金を受け取ることができないことが確定した場合に損金算入されます。

ここに出てくる「解約返戻金」は原文ママです。中小企業倒産防止共済法上の名称は解約手当金で、法2条6項が「この法律において『解約手当金』とは、機構が、共済契約を解除した者に対し、第十一条第一項の規定により支給する手当金をいう」と定義しています。生命保険の解約返戻金とは別の制度です。

この注を分けて読むと、出口は2つあります。

出口いつどうなる
解約手当金を受け取った次に解除したとき計上していた資産を取り崩す
解約手当金を受け取れないことが確定した解約手当金が支給されない解除になったときその時に損金に算入する

2つ目の「受け取ることができないことが確定した場合」が具体的にどの場面を指すかは、この注には書かれていません。共済法のほうで解約手当金が支給されないと定めているのは、掛金が納付された月数が12月未満の場合(法11条1項)と、不正行為による解除の場合(法11条2項)です。入り直して1年たたないうちにまた解除すると、資産に計上した掛金はそこで損金になり、解約手当金は入ってこないという形になります。

いずれにしても、起きているのは経費になる時期の繰延べです。切り捨てられるのではありません。

受け取った解約手当金のほうには、特例がありません

ここが制度の対称性です。措置法66条の11が定めているのは「支出した金額」の扱いだけで、受け取る側について何も置いていません。したがって法人税法22条2項の原則に戻ります。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

「別段の定めがあるものを除き」とありますが、解約手当金を益金から除く別段の定めは措置法にも置かれていません。財務省の解説が「解約返戻金を受け取った場合に取り崩す」と書いているのも、受け取った側が収益として立つことを前提にしています。

つまり、入口で経費にした分は、出口で戻ってきます。倒産防止共済は、税額を減らす制度ではなく、払う時期を動かす制度です。

設例

数字で見ます。以下の金額はスクリプトで計算した出力を転記しています。

前提

  • 3月決算の法人。共済金の貸付けは受けていない
  • 掛金月額20万円を40か月納付し、掛金総額800万円(掛金納付制限額)に達していた
  • 令和8年10月1日に自分で解除した(法7条3項)
  • 掛金が納付された月数は40月以上なので、支給率は100%(施行令4条2号)。解約手当金は800万円
  • 同じ令和8年10月1日に入り直し、掛金月額20万円を毎月末に納付する

最後の前提には注意が要ります。法14条1項は、契約が効力を生じた月分とその翌月分の掛金については「共済契約が効力を生じた日の属する月の翌々月末日」までに納付すればよいとしています。この設例は、最初の2か月分も繰り延べずに毎月末に払ったものとして計算しています。損金になるのは現実に支払った日ですから(措置法通達66の11-2)、実際に納付した日が違えば、下の表の回数と事業年度の区切りも動きます。

解除の日が令和8年10月1日なので、2年を経過する日は令和10年9月30日です。毎月末の納付でみると、令和8年10月末から令和10年9月末までの24回が、この期間の中に入ります。

事業年度ごとの振り分け

事業年度資産計上(回数)損金算入(回数)
令和9年3月期120万円(6回)0円(0回)
令和10年3月期240万円(12回)0円(0回)
令和11年3月期120万円(6回)120万円(6回)
令和12年3月期0円(0回)200万円(10回)

資産計上の累計は、24回で480万円です。令和11年3月期の途中(令和10年10月末の納付分)から、支出した時の損金に戻ります。

令和12年3月期が10回で止まるのは、掛金総額が掛金納付制限額(800万円)に達するからです。令和8年10月末から数えて40回目が令和12年1月末で、そこで上限に届きます。法14条3項が「掛金を納付することにより……掛金総額が掛金納付制限額を超えることとなるときは、その超えることとなる額につき掛金を納付することができない」としているので、以後は納付できません。損金算入の累計は16回で320万円、資産計上と合わせて800万円です。

解約手当金を受け取る期で、何が変わったか

解約手当金を受け取るのは令和9年3月期です。この期の数字を、改正前と並べます。

項目改正前改正後
益金(解約手当金)800万円800万円
掛金のうち損金になる額120万円0円
差引き680万円800万円

同じ期に入り直して相殺する、という組み方が成り立たなくなっています。改正前は入り直した後の掛金120万円が同じ期の損金になりましたが、改正後は0円です。所得は120万円増えます。

そして、ずれているのは初年度の120万円だけではありません。2年のあいだに払う480万円すべてが、払った期の損金から外れます。

解約せずに資金を得る道があります

資金が必要で解約を考えている場合は、一時貸付金を先に検討してください。法10条の2第1項です。

機構は、共済契約者が臨時に事業資金を必要とするときは、共済契約者に対し、その請求により一時貸付金を貸し付ける。ただし、貸し付けることとなる一時貸付金の額が少額であつて経済産業省令で定める額に達しない場合は、この限りでない。

限度額は法10条の2第2項が「その請求の時に共済契約が解除されたと仮定した場合に支給すべき解約手当金の額の範囲内において経済産業省令で定める額を限度とする」としており、施行規則25条がその額を、仮定した解約手当金の額に95%を乗じた額としています。

ここでどの解除事由で仮定するかを取り違えないでください。施行規則25条が原則として置いているのは、法7条2項1号(掛金の滞納による職権解除)で解除されたと仮定した場合の解約手当金です。上の支給率の表でいう「機構の職権による解除(法7条2項)」の列、つまり40月以上でも95%の列です。法7条3項(自分で解除した場合)の率を使うのは、括弧書きの場合、すなわち掛金総額が掛金納付制限額(800万円)に達している場合だけです。

掛金月額20万円を30か月納めた時点(掛金総額600万円。制限額には達していない)で請求すると、限度額は600万円 × 85% × 95% = 484万5,000円です。自分で解除した場合の率(90%)で計算すると513万円になり、28万5,000円ずれます。

項目内容根拠
限度額法7条2項1号で解除されたと仮定した場合の解約手当金の95%(掛金総額が掛金納付制限額に達している場合は法7条3項で仮定した額の95%)施行規則25条
担保・保証人提供させない法10条の2第4項
償還期間2年を超えない範囲で省令が定める法10条の2第3項
延滞したとき年14.6%の範囲内で違約金法10条の2第5項

契約を解除しないので、2年の期間も踏みません。利子は付きますから有利不利は場面によりますが、「解約しかない」という前提は条文上誤りです。

ただし、資金が要るのではなく利益を消したいという話であれば、一時貸付金は答えになりません。借入れであって収益ではないからです。そこは分けて考える必要があります。

判断の順序

共済の解約を検討するとき、確認する順序は次のようになります。

  1. 解約手当金がいくらになるかを、掛金が納付された月数と解除の事由から確かめる(法11条・施行令4条)。12月未満なら支給されません
  2. 資金が必要なのか、利益を消したいのかを分ける。資金が必要なだけなら一時貸付金で済むことがあります(法10条の2)
  3. 解約するなら、解約手当金が益金・総収入金額になる期を確認する。掛金が経費になった分は、ここで戻ってきます
  4. 入り直す予定があるなら、解除の日から2年を経過する日を計算する(措置法66条の11第2項・28条2項、国税通則法10条1項)。その日までに払う掛金は資産計上です
  5. 事業承継・組織再編が絡むなら、先に3か月の承継の申出を確認する(法12条1項・施行規則34条)。みなし解除を避けられます
  6. 掛金を経費にする年度は、明細書の添付を忘れない(措置法66条の11第3項・28条3項)

決算期末に慌てて決める話ではありません。決算賞与を当期の経費にする要件や役員報酬の決め方と同じで、期限と要件が先に決まっていて、後から動かせない種類の判断です。

まとめ

  • 令和6年10月1日以後に解除があった後に入り直した場合、解除の日から2年を経過する日までに払った掛金は、支出した時の損金・必要経費になりません(措置法66条の11第2項・28条2項)。適用の境目は入り直した日ではなく解除の日で、根拠は改正法附則53(法人)と附則30(個人)です
  • 2年を経過する日は、解除の日の2年後の前日です。条文が「同日以後」と書いているので初日を算入し(国税通則法10条1項1号ただし書)、応当する日の前日に満了します(同3号)
  • 2年の起点になる「解除」は、自分で解約した場合だけではありません。掛金を12月分以上滞納して機構に解除された場合(法7条2項1号・施行規則6条1項)と、死亡・解散・分割・事業の全部の譲渡しによるみなし解除(法7条4項)も含まれます
  • みなし解除は、3か月以内の承継の申出で避けられます(法12条1項・施行規則34条)。事業承継では税務より先にこの手続です
  • 2年の期間に払った掛金は、資産に計上して出口で取り崩します。切り捨てられるのではなく、経費になる時期がずれるだけです
  • 受け取った解約手当金には特例がありません。措置法が定めているのは支出した金額の扱いだけで、受け取る側は法人税法22条2項の原則に戻ります。入口で経費にした分は出口で戻ります
  • 経費になるのは現実に支払った日です(措置法通達66の11-2・28-2)。手形の振出しの日は該当せず、1年を超える前納は対象になりません(同66の11-3・28-3)
  • 明細書を付けないと適用されません(措置法66条の11第3項・28条3項)。法人税の申告書では令和7年4月1日以後終了事業年度分から別表十(八)で、それ以前は別表十(七)でした
  • 掛金月額の減額は自由ではありません(法8条2項・施行規則9条)。増額は機構が承諾しなければならない一方、減額は3つの場合に限られます

倒産防止共済は、取引先の倒産に備える制度です。節税の道具として出入りを繰り返す使い方は、令和6年度の改正で成り立たなくなりました。いま契約がある場合は、解約手当金がいくらになるか、入り直す予定があるか、事業承継の予定があるかで判断が変わります。決算の前に、契約内容と掛金の納付月数の資料をお持ちいただければ、一緒に確認します。

よくある質問

令和6年9月30日に解約して、すぐ入り直しました。この掛金は経費になりますか。

なります。2年の期間が付くのは、令和6年10月1日以後に解除があった場合です。財務省の「令和6年度 税制改正の解説」は「法人の締結していた上記1⑵の共済契約につき令和6年10月1日以後に解除があった後上記1⑵の共済契約を締結したその法人がその共済契約について支出する上記1⑵の掛金について適用することとされています(改正法附則53)」としています。個人も同じで、適用の根拠は改正法附則30です。令和6年9月30日までに解除があった契約については、入り直した後の掛金も支出した時の損金・必要経費のままです。

2年の期間に払った掛金は、結局経費にならないのですか。

支出した時には経費になりませんが、消えるわけではありません。財務省の解説は「本特例が適用されない期間内に支出された掛金は、資産計上することとなり、解約返戻金を受け取った場合に取り崩すこととなるほか、解約返戻金を受け取ることができないことが確定した場合に損金算入されます」としています(「解約返戻金」は原文ママ。法令上の名称は解約手当金です)。資産に計上しておき、次に解約手当金を受け取ったときにその資産を取り崩す形になります。したがって、ここで起きているのは経費の切捨てではなく、経費になる時期の繰延べです。

掛金の納付を1年間忘れていて、機構から契約を解除されました。入り直せば掛金は経費になりますか。

なりません。条文は「解除があつた後」と書いているだけで、誰が解除したかを問うていません。財務省の解説も「上記の『解除』は、共済契約者による解除(中小企業倒産防止共済法7③)のほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構の職権による解除(中小企業倒産防止共済法7②)及びみなし解除(中小企業倒産防止共済法7④)も含まれます」としています。掛金を12月分以上滞納すると機構は契約を解除しなければならないとされており(法7条2項1号・施行規則6条1項)、この解除も2年の起点になります。

事業を全部譲渡しました。譲受け側で入り直すときも2年待つのですか。

承継の申出をしていれば、そもそも解除になりません。法7条4項は、事業の全部の譲渡しがあった場合に「第十二条第一項の規定による承継がなかつたときは」解除されたものとみなすと書いています。法12条1項は、相続・合併・分割・事業の全部の譲渡しがあったときは経済産業省令で定める期間内に機構へ申出をして承諾を得れば地位を承継できるとしており、その期間は3月です(施行規則34条)。3か月を過ぎると承継の道がなくなり、みなし解除として扱われます。承継すれば契約が続くので、2年の話も出てきません。

掛金を経費にするのに、申告書で何か必要ですか。

明細書の添付が適用の条件です。措置法66条の11第3項は「第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない」としています。法人税の申告書では、令和7年4月1日以後終了事業年度分から別表十(八)「社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の特別控除、特定の基金に対する負担金等の損金算入及び特定業績連動給与の損金算入に関する明細書」がこれに当たります。令和6年4月1日以後終了事業年度分では同じ名前の明細書が別表十(七)でしたので、様式の番号だけを覚えていると取り違えます。個人も同じで、確定申告書に必要経費に関する明細書の添付がなければ適用されません(措置法28条3項)。

掛金を払わずに資金を作りたいのですが、解約しかありませんか。

一時貸付金があります。法10条の2第1項は「機構は、共済契約者が臨時に事業資金を必要とするときは、共済契約者に対し、その請求により一時貸付金を貸し付ける」としています。限度額は、請求の時に法7条2項1号(掛金の滞納による職権解除)で解除されたと仮定した場合の解約手当金の額に95%を乗じた額です(施行規則25条)。自分で解除した場合の支給率で仮定するのは、掛金総額が掛金納付制限額に達している場合だけなので、そこに達していない段階では、思っているより限度額は小さくなります。担保も保証人も要らず(法10条の2第4項)、償還期間は2年を超えない範囲で定められます(同3項)。利子は付きますが、契約を解除しないので2年の期間も踏みません。資金が要るのか、利益を消したいのかで、取るべき道が変わります。

掛金が重いので、月額を下げようと思います。自由に下げられますか。

下げられません。法8条2項は、掛金月額の減少の申込みについて「経済産業省令で定める場合を除き、これを承諾してはならない」としています。承諾される場合は施行規則9条の3つで、事業の規模を縮小したことにより従前の掛金月額による納付を継続する必要がなくなったと認められるとき、事業経営の著しい悪化・疾病または負傷・危急の費用の支出により継続が著しく困難と認められるとき、既に貸付けを受け、又は受けることとなった共済金の額から既に償還した額を控除した額と、掛金総額の10倍に相当する額との合計が8,000万円に達しているときです。増額の申込みは機構が承諾しなければならないとされていますが(同1項)、減額は対称ではありません。

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