書類を電子化する相談で、いちばん多く聞かれるのがこれです。「スキャンしたら、紙は捨てていいんですか」。
答えは「捨てていい」です。しかも月末や決算を待つ必要はなく、読み取った直後に捨てられます。ところが、捨てられなくなる条件が1つだけあります。そこに当たってしまうと、データを作ったのに紙も残さなければならず、電子化した意味がなくなります。
この記事は、その線がどこにあるのかを条文と国税庁の原文で示します。
結論
国税関係書類をスキャナ保存した場合、紙を捨ててよい時点はデータと紙を見比べて同じものになっていることを確かめた直後です。国税庁の一問一答【スキャナ保存関係】(令和8年7月)問3は「即時に廃棄して差し支えありません」としています。税務署への承認も届出も、通常は要りません。ただし棚卸表・貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類は、そもそもスキャナ保存の対象から外れています。
問3が「紙も残すことになる」場合として挙げているのは、入力期間を過ぎたときだけです。 受け取ってから読み取るまでの期限を過ぎた書類は、データを作っても紙を残さなければなりません。期限は「速やかに」ならおおむね7営業日以内、事務処理規程を定めて業務サイクルに乗せるなら最長2か月とおおむね7営業日以内です。
入力期間以外の要件を満たしていなかった場合も、そのデータは紙の代わりになりません。これは後の章で扱います。入力期間が特別なのは、過ぎてしまうと後から取り返せないという点です。解像度や検索機能は気づいた時点で直せますが、受け取った日は動きません。
満たすべき要件は書類の種類で3通りに分かれます。契約書・領収書のような重要書類、資金や物の流れに直結しない一般書類、そして始める前に受け取っていた過去分重要書類です。過去分重要書類だけは、あらかじめ適用届出書を出す必要があります。
要件を満たせていないまま紙を捨てると、そのデータは各税法上の書類として扱われないうえに、データの保存義務だけが残ります。消して身軽になれる話ではありません。
そして電子化しても保存期間は1日も短くなりません。法人は原則7年、欠損金額が生じた事業年度は10年で、起算日は決算日ではなく確定申告書の提出期限の翌日です。
以下、この順に見ていきます。
この記事が前提にしている人
電子帳簿保存法が対象にしているのは「保存義務者」で、法2条4号はこれを「国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされている者」と定義しています。つまり国税に関する法律で帳簿書類の保存を求められている人です。法人税・所得税だけでなく、消費税もここに入ります。
この記事は、法人と個人事業者を前提に書いています。学校法人や外郭団体で収益事業を行っていて法人税の帳簿書類を保存している場合は、その部分についてこの記事の話になります。
自治体の方も「法人税がないから対象外」ではありません。 地方公共団体に法人税はかかりませんが、消費税は別です。消費税法60条1項は「国若しくは地方公共団体が一般会計に係る業務として行う事業又は国若しくは地方公共団体が特別会計を設けて行う事業については、当該一般会計又は特別会計ごとに一の法人が行う事業とみなして、この法律の規定を適用する」としており、消費税法30条7項は仕入税額控除の適用を受けようとする事業者に「帳簿及び請求書等」の保存を求めています。上下水道事業などの特別会計で消費税の課税事業者になっている部分は、国税関係書類の保存義務者(法2条4号)に当たります。 つまりこの記事のスキャナ保存がそのまま使え、保存期間も消費税法施行令50条1項の7年がかかります。
スキャナ保存の対象にならない書類があります
最初に、対象の外にあるものを押さえておきます。電子化の計画を立ててから「これは入らない」と分かるより先に確かめたほうが早いところです。
法4条3項は「国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)」と書いています。この除かれるものが規則2条4項で、次のとおりです。
法第四条第三項に規定する財務省令で定める書類は、国税関係書類のうち、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類とする。
一問一答 問2は、これを受けて「規則第2条第4項に規定する書類とは、具体的には棚卸表、貸借対照表及び損益計算書などの計算、整理又は決算関係書類であり、これ以外の国税関係書類がスキャナ保存の対象となります」としています。
決算関係書類は、スキャナ保存で紙を置き換えることができません。 自社で作ったものを最初から電子で作成するなら法4条2項の電子書類保存という別の道がありますが、紙で作ったもの・紙で受け取ったものをスキャンして紙を捨てる、という扱いはできません。
もう1つ、同じ問2は伝票類について次のように書いています。
なお、売上伝票などの伝票類は、所得税法施行規則第63条第1項及び法人税法施行規則第59条第1項等に規定する保存すべき書類には当たらないことから、法第2条第2号((定義))に規定する国税関係書類に該当しないので、スキャナ保存の適用はありません。
国税関係書類に当たらないので、そもそも国税の保存義務の対象外ということです。社内の管理上必要なら残しますが、電子帳簿保存法の要件を気にする必要はありません。
紙を捨ててよいのは「同等確認」が終わった後です
ここが本題です。一問一答 問3は「スキャナ保存を適用している場合、国税関係書類の書面(紙)は、スキャナで読み取った後、即時に廃棄しても問題ないでしょうか」という問いに、こう答えています。
令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、以下(※)の場合を除いて、スキャナで読み取り、最低限の同等確認(電磁的記録の記録事項と書面の記載事項とを比較し、同等であることを確認(折れ曲がり等がないかも含みます。)することをいいます。以下同じです。)を行った後であれば、即時に廃棄して差し支えありません。
(※) 入力期間を経過した場合(【問30】のようなケースを除きます。)には、電磁的記録と合わせて国税関係書類の書面(紙)を保存する必要があります。
読むべきところは2つあります。
1つは「最低限の同等確認」の中身です。括弧の中に定義があり、データの記録事項と紙の記載事項を比べて同等であることを確かめることだとされています。折れ曲がりがないかも含む、とも書いてあります。スキャンボタンを押して終わりではなく、できたファイルを開いて紙と見比べる作業がここに入ります。逆に言えば、それ以上のことは求められていません。問3の解説は、令和3年度の税制改正で適正事務処理要件が廃止されたため「定期的な検査を行う必要がなくなりました」としています。以前は定期検査が終わるまで紙を残す必要がありましたが、いまはそれが外れています。
もう1つが、(※) の除き書きです。これが次の章の話になります。
収入印紙を貼った紙も捨てられます
契約書を電子化するときに必ず出てくるのが印紙の話です。問3は続けてこう書いています。
なお、印紙税の納税義務は課税文書を作成したときに成立するものであることから、スキャナ保存される国税関係書類の書面(紙)についても、印紙税の課税文書であれば収入印紙を貼付しなければなりませんが、収入印紙を貼付した後にスキャナで読み取って最低限の同等確認を行った後であれば、収入印紙が貼付された当該書面(紙)を即時に廃棄しても差し支えありません。
順番が決まっているところだけ注意してください。貼ってから読み取るのであって、読み取った後に貼るのでは、データが課税文書の状態を写していません。
ただし印紙税の還付だけは原本が要ります
同じ問3に、読み落とすと取り返しがつかない続きがあります。
ただし、印紙税の過誤納があった場合の過誤納還付申請については、当該過誤納となった事実を証するため必要な文書(原本)の提示が必要であり、スキャナデータ(又はスキャナデータを出力した文書)に基づいて印紙税の過誤納還付を受けることはできませんのでご注意ください。
印紙を貼りすぎた、契約が成立しなかったので貼った印紙が無駄になった、というときの還付は、原本を見せないと受けられません。データでは代わりになりません。
実務の落とし込みは単純です。印紙を貼った契約書のうち、金額を間違えたかもしれないもの・契約が流れる可能性が残っているものは、還付の見込みがなくなるまで紙を残す。それ以外は読み取って同等確認をした後に捨てる。この2つに分けておけば足ります。
捨てられなくなる条件は1つだけです
問3の (※) に戻ります。入力期間を過ぎた場合は、データと一緒に紙も保存する必要があります。なぜそうなるのかは、一問一答 問24が書いています。
誤って入力期間を経過した場合には、入力期間の制限というスキャナ保存における要件を満たしていない電磁的記録(法第4条第3項後段の規定により保存が行われている電子データ)となることから、当該電磁的記録をもって同項前段の規定による当該国税関係書類の保存に代えることはできず、元の書類は紙のまま保存することとなります。
入力期間は要件の1つなので、それを外すとデータが紙の代わりにならない。だから紙が残る。筋はこれだけです。
では入力期間は何日なのか。規則2条6項1号が2つの方法を置いています。
一 次に掲げる方法のいずれかにより入力すること。 イ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその作成又は受領後、速やかに行うこと。 ロ 当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
ロには「〜場合に限る」という条件が付いています。 事務処理規程を定めていなければロは使えず、イの「速やかに」しかありません。ここを落とすと、期限を2か月長く見積もることになります。
| 入力方式 | 期限 | 使うための条件 |
|---|---|---|
| イ 速やかに入力 | 作成・受領後おおむね7営業日以内 | なし |
| ロ 業務サイクル後速やかに入力 | 作成・受領から最長2か月とおおむね7営業日以内 | 各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る |
どちらを選んでもよく、課税期間の途中で変えることもできます。一問一答 問25は「それぞれに規定する要件を満たしてスキャナで読み取ることにより、どちらの方式を採用してもよく、また、課税期間の中途で変更することも納税者の選択により行うことができます」としています。
「速やかに」はおおむね7営業日以内
「速やかに」の日数は条文に書いてありません。取扱通達4-17が置いています。
4-17 規則第2条第6項第1号イ((入力方法))に規定する「速やかに」の適用に当たり、国税関係書類の作成又は受領後おおむね7営業日以内に入力している場合には、速やかに行っているものとして取り扱う。 なお、同号ロに規定する「速やかに」の適用に当たり、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、おおむね7営業日以内に入力している場合には同様に取り扱う。
「おおむね」が付いているので、7営業日を1日超えたら即アウトというものではありません。一問一答 問22は、おおむね7営業日以内に入力できない特別な事由がある場合について「そのおおむね7営業日以内に入力することができない事由が解消した後直ちに入力したときには、速やかに入力したものとして取り扱われます」としています。例として「毎日事務所へ出勤しない勤務形態の社員が受領した書類の入力等」が挙がっています。
ただし同じ問22は、こうも書いています。
おって、機器のメンテナンスを怠ったことにより、スキャナ機器の故障が生じた場合など明らかに保存義務者の責めに帰すべき事由が存在するときには、これらの取扱いはないこととなります。
自分の側の手落ちは「特別な事由」になりません。 スキャナが壊れていて1か月分溜めた、という理由は通りません。
その代わり、災害のときには別の受け皿があります。問22も触れている規則2条8項です。
法第四条第三項の保存義務者が、災害その他やむを得ない事情により、同項前段に規定する財務省令で定めるところに従って同項前段の国税関係書類に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明した場合には、前二項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。 ただし、当該事情が生じなかったとした場合において、当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでない。
「災害その他やむを得ない事情」の意味は取扱通達4-33にあり、「災害」は震災・風水害・火災など「自己の責任によらないものに基因する災害」、「やむを得ない事情」は「当該事業者の責めに帰することができない状況にある事態」とされています。同じ通達は「当該事象の発生前から保存に係る各要件を満たせる状態になかったものについては、これらの規定の適用はない」とも書いています。災害が起きる前から要件を外していた場合は救われません。 ここも、やることをやっていた人だけが対象です。
「業務サイクル後速やかに」は最長2か月とおおむね7営業日以内
ロの「その業務の処理に係る通常の期間」は、会社ごとの業務サイクルの長さです。取扱通達4-18が上限を置いています。
4-18 規則第2条第6項第1号ロ及び第2号ロ((入力方法))に規定する「その業務の処理に係る通常の期間」とは、国税関係書類の作成若しくは受領から入力まで又は作成若しくは受領からタイムスタンプを付すまでの通常の業務処理サイクルの期間をいうことに留意する。 なお、月をまたいで処理することも通常行われている業務処理サイクルと認められることから、最長2か月の業務処理サイクルであれば、「その業務の処理に係る通常の期間」として取り扱うこととする。
一問一答 問23は、これを足し合わせた結論を書いています。
最長では、国税関係書類の受領等から2か月とおおむね7営業日以内に入力すればよいこととなります。
注意するのは、ここでいう2か月は会社が規程で定めたサイクルの上限だということです。規程に「翌月末までに処理する」と書いてあれば、その会社の通常の期間は約1か月であって、2か月ではありません。問23は「仮に2週間を業務処理サイクルとしている企業であれば2週間とおおむね7営業日以内、20日を業務処理サイクルとしている企業であれば20日とおおむね7営業日以内に入力すればよいこととなります」としています。規程に短い期間を書くと、自分の期限が短くなります。
日付で確かめる
2か月の数え方は暦どおりです。問23は例を挙げています。
また、この場合、最長2か月とは暦の上での2か月をいうことから、例えば4月21日に受領した書類の場合、業務処理サイクルの最長2か月は6月20日であり、そのおおむね7営業日後までに入力すればよいこととなります。
この「応当する日の前日」という数え方は、国税通則法10条1項に書かれています。
二 期間を定めるのに月又は年をもつてしたときは、暦に従う。 三 前号の場合において、月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月にその応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
4月21日から2か月は、応当日である6月21日の前日、つまり6月20日に満了します。問23が挙げている6月20日と一致します。
3号のただし書は落とさないでください。 応当する日が無い月に行き着いたときは、その月の末日に満了します。後で出てくる例外がこれです。
なお、同項1号は「期間の初日は、算入しない」としていますが、問23は受け取った日(4月21日)そのものを起算日として数えて6月20日を出しています。初日を算入しない数え方だと1日後ろの6月21日になるので、問23の数え方のほうが1日短いことになります。期限の管理は問23に合わせておくのが安全です。
実際に手を動かすと次のようになります。営業日は会社の休業日によって変わるので、ここでは土日だけを除いて数えています。祝日を休業日にしている会社では後ろにずれます。
| 受け取った日 | 業務サイクル最長2か月の末日 | さらにおおむね7営業日後(土日のみ除外) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2027年4月21日 | 2027年6月20日 | 2027年6月29日 | 応当日6月21日の前日(10条1項3号本文) |
| 2027年1月31日 | 2027年3月30日 | 2027年4月8日 | 応当日3月31日の前日(10条1項3号本文) |
| 2027年7月31日 | 2027年9月30日 | 2027年10月11日 | 9月31日が無いので9月末日(10条1項3号ただし書) |
| 2027年12月31日 | 2028年2月29日 | 2028年3月9日 | 2月31日が無いので2月末日(10条1項3号ただし書) |
1月31日の行を見てください。3月は31日まであるのに、末日が3月30日になっています。応当する日の前日だからです。ここを1日多く見積もると、期限を過ぎていたことに後で気づきます。
ただし、下2行は末日になります。 7月31日に受け取った書類は9月31日という日が無いので9月30日、12月31日に受け取った書類は2月31日が無いので2月の末日に満了します。つまり、「月末に受け取ったら必ず応当日の前日」とも「必ず翌々月の末日」とも言えません。行き着く月に同じ日があるかどうかで分かれます。迷ったら、応当日が存在するかを先に確かめてください。
読み取りをやり直す場合
問3の (※) が除いている【問30】は、読み取りに失敗していて再スキャンが必要になった場合です。問30は、元の書類との同一性が確認できること(「折れ曲がりなど当該領収書等と同一性が確認でき」)を前提に、次の3つを満たせば当初の期限内にタイムスタンプが付されたものとして扱うとしています。
①当初の読み取りについて、受領の日からその業務の処理に係る通常の期間(最長2か月)を経過した後おおむね7営業日以内にタイムスタンプが付されていること、②当該スキャンミスを把握してからその業務の処理に係る通常の期間(最長2か月)を経過した後おおむね7営業日以内に再度タイムスタンプを付していること、③当該スキャンミスした電磁的記録についても読み取りし直した電磁的記録の訂正削除履歴(ヴァージョン管理)に基づき保存している場合
③に気をつけてください。失敗したデータを消してはいけません。 読み直したデータの訂正削除履歴として残っていることが条件になっています。失敗したものを削除して綺麗にしたくなるところですが、それをすると条件を外します。
要件は書類の種類で3通りに分かれます
入力期間以外の要件も見ておきます。一問一答 問10が、要件を書類の種類ごとに並べた表を載せています。それを条文の番号とともに整理すると次のようになります。「○」はその要件が必要、空欄は要らないという意味です。
| 要件 | 重要書類 | 一般書類 | 過去分重要書類 |
|---|---|---|---|
| 入力期間の制限(規則2条6項1号イ・ロ) | ○ | ||
| 200dpi以上の解像度(規則2条6項2号イ(1)) | ○ | ○ | ○ |
| 赤・緑・青それぞれ256階調以上(規則2条6項2号イ(2)) | ○ | グレースケール可 | ○ |
| タイムスタンプの付与(規則2条6項2号ロ) | ○ | ○ | ○ |
| 訂正・削除の履歴の確認等(規則2条6項2号ハ) | ○ | ○ | ○ |
| 帳簿との相互関連性(規則2条6項3号) | ○ | ○ | |
| 見読可能装置の備付け(規則2条6項4号) | ○ | カラーでなくてよい | ○ |
| 整然・明瞭な出力(規則2条6項4号イ〜ニ) | ○ | ○ | ○ |
| システム関係書類の備付け(規則2条6項6号) | ○ | ○ | ○ |
| 検索機能の確保(規則2条6項5号) | ○ | ○ | ○ |
| 事務の手続を明らかにした書類の備付け | ○ | ○ | |
| 所轄税務署長等への適用届出書 | ○ |
表の読み方を1行ずつ確かめてください。たとえば「入力期間の制限」の行は、重要書類では必要で、一般書類と過去分重要書類では要らないという意味です。「適用届出書」の行は、過去分重要書類だけに必要という意味です。
下2行は、問10の表では独立した行ではなく「その他」の注記として書かれています。一般書類については規則2条7項が、過去分重要書類については規則2条9項が、それぞれ条文で求めているものなので、ここでは行として立てました。タイムスタンプの行は、問10の表では3つの区分すべてに注が付いています。一般書類と過去分重要書類には「※3 当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、タイムスタンプの付与に代えることができる。」、重要書類には「※2 入力事項を規則第2条第6項第1号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができる。」です。重要書類にも代わりの道があります。
その代わりの道が条文のどこにあるかを見ておきます。規則2条6項2号の柱書は「当該保存義務者が同号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合にあっては、ロに掲げる要件を除く」としており、入力期間内に入力したことが確認できるシステムに入れていれば、タイムスタンプを付けなくてよいことになります。一問一答 問21の解説は、その「確認できる場合」の例として、訂正削除履歴の要件を満たすクラウドサーバで保存し「当該クラウドサーバがNTP(Network Time Protocol)サーバと同期するなどにより」入力時期の確認ができる場合を挙げています。市販の経費精算サービスがこの形を取っていることが多いので、タイムスタンプを別に契約する必要があるかは、使うソフトの仕様で決まります。
検索機能も見ておきます。規則2条6項5号は、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を条件に設定できること、日付と金額は範囲を指定できること、2以上の項目を組み合わせられることを求めています。ただし6項の柱書が「当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、第五号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件を除く」としており、税務調査でデータを渡せるようにしておけば、範囲指定と組合せの機能は要りません。一問一答 問46は、電子取引で認められている索引簿方式について「一覧表を作成して、個々の保存ファイル名と対応させること(いわゆる索引簿方式)により検索機能を確保する方法は、スキャナ保存にも適用して差し支えありません」としたうえで、「スキャナ保存と電子取引に係る取引情報に係る電磁的記録の保存について、同じ索引簿や保存システムを使用することも、検索により探し出された記録事項のみが整然とした形式及び明瞭な状態で出力されるのであれば、特段問題はありません」としています。
告示は「スキャナ保存できる書類」を定めたものではありません
ここが最も取り違えられているところです。
「一般書類」は条文に直接書かれておらず、規則2条7項が「国税関係書類のうち国税庁長官が定める書類」と委ねています。その告示が平成17年国税庁告示第4号で、最終改正は令和8年3月31日の国税庁告示第15号です。告示の本文はこうなっています。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第二条第七項に規定する国税庁長官が定める書類は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第二号に規定する国税関係書類のうち、次に掲げる書類以外の書類とする。
太字にしたところが肝心です。告示は一般書類を列挙していません。列挙されているのは重要書類のほうで、一般書類はその残り全部です。 一問一答 問2も、告示について次のように念を押しています。
さらに、スキャナ保存に関しては平成17年国税庁告示第4号がありますが、この告示はスキャナ保存できる書類を定めたものではなく、スキャナ保存できる書類のうち、規則第2条第7項の規定により、次の要件を不要としてスキャナ保存が可能となる書類を定めたものです。
したがって、手元の書類がどちらなのかを判定する手順は次のようになります。告示の各号を見て、載っていれば重要書類。載っていなければ一般書類。 「一般書類の一覧に自社の書類が無いから対象外だ」という読み方は、逆です。
告示の各号に挙がっているのは、要約すると次のものです。
| 号 | 挙がっている書類 |
|---|---|
| 一 | 所得税法施行規則63条3項の現金預金取引等関係書類のうち、日々の合計金額の一括記載に係る取引を確認するための書類 |
| 二 | 所得税法施行規則102条3項2号の書類のうち、日々の合計金額を一括記録した場合の記載があるもの |
| 三 | 法人税法施行規則59条4項等に規定する帳簿代用書類 |
| 四 | 法人税法施行規則59条の2第1項・67条の2第1項に規定する特定事項記載書類 |
| 五 | 次のイ〜リ(前各号に掲げるものを除く) |
五号は「など」で済ませられません。 この号だけイからリまで9つに分かれており、手元の書類がどちらなのかを判定するにはここを全部見る必要があります。要約して並べます(告示のPDFは1ページ目が五号の柱書までで、イ以降は2ページ目です。1ページ目だけ見て終わらないでください)。
| 五号の枝 | 挙がっている書類 |
|---|---|
| イ | 契約書、契約の申込書(定型的な約款があらかじめ定められている場合のその申込書を除く。ただしロに掲げる書類に当たるものは除かれない)その他これらに準ずる書類 |
| ロ | 預貯金の預入・引出しに際して作成された書類、預貯金の口座の設定・解約に際して作成された書類、為替取引に際して作成された書類(対価の支払を口座振替の方法によるものとする契約の申込みに際して作成された申込書を除く)その他これらに準ずる書類 |
| ハ | 領収書その他現金の収受・払出しその他の支払手段の授受に際して作成された書類 |
| ニ | 請求書その他これに準ずる書類(支払手段による対価の支払を求めることを内容とするものに限る) |
| ホ | 支払のために提示された手形又は小切手 |
| ヘ | 納品書その他棚卸資産の引渡しに際して作成された書類(棚卸資産の引渡しを受けた者が作成したものを除く) |
| ト | 所得税法施行規則68条の3第1号・法人税法施行規則62条の3第1号の内部取引に該当する資産の移転・役務の提供その他の事実を記載した、イ〜ヘに相当する書類 |
| チ | 消費税法30条11項の本人確認書類 |
| リ | 自己の作成したイ〜ニの書類の写し、及びトのうちイ〜ニに相当する書類の写し |
請求書(ニ)と納品書(ヘ)が重要書類の側にあります。 五号をイ・ロ・ハで打ち切ると、いちばん枚数の多い書類の区分を間違えます。
イの括弧書きが、実務ではもっと効きます。約款が決まっている契約の申込書は重要書類から除かれますが、その除外にさらに除外が入れ子になっています。 原文は「契約の申込書(当該契約に係る定型的な約款があらかじめ定められている場合における当該契約の申込書(ロに掲げる書類に該当するものを除く。)を除く。)」です。つまり約款が決まっている申込書でも、それがロの書類(口座の設定に際して作成された書類など)に当たるなら、除外されず重要書類のままです。「約款があるから一般書類」と一段で判定しないでください。
逆に、ロのほうにも除外があります。対価の支払を口座振替にする契約の申込みに際して作られた書類はロから抜けており、だから次に出てくる一般書類の例示に、保険契約申込書やクレジットカード発行申込書と並んで口座振替依頼書が挙がります。
四号の特定事項記載書類は、令和8年度の税制改正で入った新しいものです。法人税法施行規則59条の2第1項は、青色申告法人が関連者との間で工業所有権等の譲渡・貸付けや一定の役務の提供を受けた場合に、「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」に対価の算定に必要な事項の記載がないときは、それを明らかにする書類を確定申告書の提出期限までに取得・作成して7年間保存することを求めています(青色申告法人以外の普通法人等も同様で、その根拠が67条の2第1項です)。タックスアンサー No.5930は適用時期を「青色申告法人の令和8年4月1日以後に開始する事業年度に行う関連者間取引について」としています。グループ会社と取引がある法人は、保存する書類が1種類増えており、それは重要書類の側に入ります。
なお告示の冒頭には、制定当時の条番号が残っています。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(平成十年大蔵省令第四十三号)第三条第六項の規定に基づき、同項に規定する国税庁長官が定める書類を次のように定め、平成十七年四月一日から適用する。
(原文ママ)です。現在の根拠条文は施行規則2条7項で、告示本文の2段落目はそちらを引いています。1段落目は制定時の文言のままなので、条文を探すときは2条7項を見てください。
一般書類は入力期間に縛られません
一般書類の実益は、入力期間の制限が外れることです。一問一答 問47が具体例を挙げています。
イ 保険契約申込書、電話加入契約申込書、クレジットカード発行申込書のように別途定型的な約款があらかじめ定められている契約申込書 ロ 口座振替依頼書 ハ 棚卸資産を購入した者が作成する検収書、商品受取書 ニ 注文書、見積書及びそれらの写し ホ 自己が作成した納品書の写し
注文書と見積書がここに入っているのは、実務では大きいところです。問48は「他の要件を満たす限り、過去において受領等した書類についてもスキャナ保存することが可能となります」としており、何年も前の注文書や見積書を、届出なしに今からまとめて電子化できます。
ただしタイムスタンプの時期は決まっています。問49は、一般書類については「①作成又は受領後、おおむね7営業日以内(事務処理規程を定めている場合には、その業務の処理に係る通常の期間(最長2か月)を経過した後おおむね7営業日以内)に付す」か、その期間を過ぎたものは「②(①の期間を過ぎたものについては)正しく読み取られていることを確認した都度付す」としています。読み取る作業と確認する作業を分けて後回しにすると、ここを外します。
一般書類には、もう1つ必要なものがあります。規則2条7項は「当該電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限る。)の備付け」を求めています。重要書類でロの方式を使うときに必要な「各事務の処理に関する規程」とは別物です。一問一答 問53が違いを説明しています。
「各事務の処理に関する規程」とは、作業責任者、処理基準及び判断基準等を含めた業務サイクルにおけるワークフローなどの企業の方針を定めたものです。それに対して「事務の手続を明らかにした書類」とは、責任者、作業の過程、順序及び入力方法などの手続を明確に表現したものをいいます。
どちらにも責任者を決めることが入っています。国税庁は規程のサンプルを一問一答の後ろに載せているので、自前で考える必要はありません。
過去の書類を電子化するには届出が要ります
重要書類のほうは、始める日より前に受け取っていた分を後から電子化するのに届出が必要です。規則2条9項が、スキャナ保存に代える日(基準日)より前に作成・受領した重要書類を「過去分重要書類」と呼び、あらかじめ適用届出書を所轄税務署長に提出したときは入力期間の要件が外れるとしています。
一問一答 問54は「過去分重要書類のスキャナ保存については入力期間の制限はありませんので、数か月間に渡ってスキャナ保存の作業を行うことも可能です」としています。倉庫に積んである契約書を何か月かかけて電子化するのは、この届出で可能になります。
ただし1回しか使えません。規則2条9項は括弧書きで「従前において当該過去分重要書類と同一の種類の書類に係る適用届出書を提出していない場合に限る」としており、問54はその理由をこう書いています。
これは、電磁的記録による保存等を断続的に行い、取りやめの都度、適用届出書の提出を繰り返し行うことにより、過去分重要書類について、その作成・受領後に「速やか」に行うことなく、継続的にスキャナ保存を可能とする潜脱行為を防止する観点から措置されたものとされています。
同じ種類の書類について2回目は出せません。 契約書だけ先に出して、翌年に領収書で出すことはできますが、契約書でもう一度は出せません。倉庫の分を一度に片付けるつもりで出してください。
届出先にも決まりがあります。一問一答 問55は、事業所ごとに帳簿書類を保存している場合について「法人自体が、本店所在地の所轄税務署長に対して過去分重要書類の適用届出書を提出する必要があります」としています。事業所の長が各所轄に出すのではありません。
一般書類には届出は要りません。問54は「なお、一般書類については、入力期間の制限なく適時に入力がすることができますので(【問47】参照)、適用届出書の提出は必要ありません」としています。
要件を満たせていないと、データだけが残ります
要件を満たしていなかったことに後から気づいたとき、何が起きるのか。ここは条文を2つ並べると分かります。
まず法4条3項の後段です。
この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、当該保存義務者は、当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。
括弧書きに注意してください。「当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く」とあります。紙を残していればこの規定は働きません。紙を捨てたときだけ、データの保存義務が残ります。 その期間は規則2条12項が定めています。
法第四条第三項後段に規定する財務省令で定める要件は、同項後段の国税関係書類に係る電磁的記録について、当該国税関係書類の保存場所に、国税に関する法律の規定により当該国税関係書類の保存をしなければならないこととされている期間、保存が行われることとする。
次に法8条1項です。
第四条第一項、第二項若しくは第三項前段又は第五条各項のいずれかに規定する財務省令で定めるところに従って備付け及び保存が行われている国税関係帳簿又は保存が行われている国税関係書類に係る電磁的記録(略)に対する他の国税に関する法律の規定の適用については、当該電磁的記録(略)を当該国税関係帳簿又は当該国税関係書類とみなす。
みなされるのは「財務省令で定めるところに従って」保存されているものだけです。要件を満たしていないデータは、国税関係書類とみなされません。
この2つを合わせると、データを保存する義務はあるのに、そのデータは書類として扱われないという状態になります。一問一答 問59がその帰結を書いています。
そのような場合には、スキャナ保存に係る国税関係書類(紙原本)の保存がある場合を除き、仕入税額控除の否認や青色申告の承認の取消しがされる可能性があります。ただし、青色申告の承認の取消しについては、当該保存義務の不履行の事実及びその程度のほか、記帳状況、改善可能性等を総合勘案の上、真に申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上、その適用を判断しています。
取消しが自動的に来るわけではありませんが、判断の材料に「改善可能性」が入っています。問59は最後に「なお、スキャナ保存の要件を満たして保存ができなかった場合には、その原因等をまとめておくことが望ましいと考えられます」としています。気づいた時点で、何がどう満たせていなかったのかを記録に残してください。 データを消すのは最悪の手です。保存義務だけは残っているので、消すと何も残りません。
途中でやめる場合
スキャナ保存をやめて紙に戻す場合も、捨てた紙は戻りません。一問一答 問63が整理しています。
スキャナ保存を適用していた保存義務者が途中でスキャナ保存を取りやめることとした場合、電磁的記録の基となった書類を廃棄している場合は、その取りやめることとした日において保存している電磁的記録を、当該国税関係書類の保存期間が満了するまでそのままスキャナ保存の要件に従って保存することになりますが、電磁的記録の基となった書類を保存しているときは当該書類を保存する必要があります。
やめた後も、既に紙を捨てた分のデータは保存期間が終わるまで要件どおりに持ち続けることになります。 システムを解約するときは、ここが引っかかります。問64は、サービスを乗り換える場合について「旧システムに保存しているスキャナデータだけでなく、スキャナデータを保存した時刻と、それ以降に改変されていないことの証明に必要な情報についても、データ移行の前後でこれらの全てが改変されていないことを確保した状態で新システムへのデータ移行を行う必要があります」としています。タイムスタンプの代替要件でやってきた場合は「移行データにタイムスタンプを付与するなどの対応をする必要があります」とされています。
ソフトを選ぶときに、入れるときのことだけでなく出すときのことを確認しておく理由がここにあります。
電子化しても保存期間は変わりません
電子化の目的が「紙を置く場所をなくすこと」なら、ここも押さえておく必要があります。データになっても、持っておく年数は1日も変わりません。
一問一答 問9がはっきり書いています。
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の保存方法等について所得税法、法人税法その他の国税に関する法律の特例を定めるものであることから、スキャナデータについてもそれぞれの法律で定められた期間保存する必要があります。
法人の年数は法人税法施行規則59条1項です。
青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(略)に保存しなければならない。
欠損金額が生じた事業年度だけ10年になります。規則26条の3第1項です。
内国法人が法第五十七条第一項(欠損金の繰越し)の規定の適用を受けようとする場合(略)には、当該内国法人は、同項の欠損金額が生じた事業年度の第五十九条第一項各号(帳簿書類の整理保存)に掲げる帳簿書類(略)を整理し、第五十九条第二項に規定する起算日から十年間、これを納税地(略)に保存しなければならない。
ここは読み間違えやすいところです。10年になるのは欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類だけです。繰越控除を使っている間の全事業年度が10年になるわけではありません。タックスアンサー No.5930の注3も「青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります」と、事業年度を特定して書いています。
個人事業者(青色申告者)は、所得税法施行規則63条1項で書類の一部が5年になります。
第六十条第一項(決算)に規定する青色申告者は、次に掲げる帳簿及び書類を整理し、起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)、これをその者の住所地(略)に保存しなければならない。
括弧書きの中が肝心です。5年でよいのは、3号の書類のうち現金預金取引等関係書類に当たらないものです。領収証や預金通帳は現金預金取引等関係書類なので7年、請求書や見積書や納品書は5年、という分かれ方になります。
ただし規模が小さい方は、領収証も5年でよくなります。 同条2項です。
前項の青色申告者で、その年三月十五日における前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額(略)が同号に規定する金額以下であるものは、前項の規定にかかわらず、その年において作成し、又は受領した同項第三号に掲げる書類については、起算日から五年間を超えて保存することを要しない。
「同号に規定する金額」は所得税法施行令195条1号の300万円です。つまり前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下なら、3号の書類は現金預金取引等関係書類も含めて5年で足ります。 一問一答 問9の表も、個人事業者(青色申告者)の現金預金取引等関係書類の「7年」に注を付けて「※ 前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は、5年間の保存が必要です。」としています。領収証の束を2年分余計に抱えている方が実際にいます。
なお5年で足りるのは3号の書類だけです。帳簿(1号)と決算関係書類(2号)は300万円以下でも7年です。
一問一答 問9の表は、個人事業者(青色・白色の共通欄)にさらに注意書きを付けています。
消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等及び適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として交付した適格請求書の写しや提供した電磁的記録については、上記にかかわらず7年間保存する必要があります。
消費税の課税事業者は、仕入税額控除のために保存する請求書等を5年で捨てられません。 この7年の根拠は消費税法施行令50条1項です(適格請求書の写し等の保存は別の定めによるもので、この条文ではありません)。
| 誰の・何の書類か | 年数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 青色申告法人の帳簿・書類 | 7年 | 法人税法施行規則59条1項 |
| 青色でない普通法人等の帳簿・書類 | 7年 | 法人税法施行規則67条2項 |
| 法人の帳簿・書類(欠損金額が生じた事業年度) | 10年 | 法人税法施行規則26条の3第1項 |
| 個人(青色)の帳簿・決算関係書類・現金預金取引等関係書類 | 7年 | 所得税法施行規則63条1項 |
| 個人(青色)のその他の書類 | 5年 | 所得税法施行規則63条1項の括弧書き |
| 個人(青色)で前々年分の不動産所得+事業所得が300万円以下の方の取引書類 | 5年 | 所得税法施行規則63条2項 |
| 課税事業者が仕入税額控除のために保存する請求書等 | 7年 | 消費税法施行令50条1項 |
| 株式会社の会計帳簿とその事業に関する重要な資料 | 10年 | 会社法432条2項 |
| 株式会社の計算書類とその附属明細書 | 10年 | 会社法435条4項 |
法人は7年で、青色かどうかで変わりません。 上に引いた規則59条1項は青色申告法人の規定ですが、青色でない普通法人等についても規則67条2項が「普通法人等は、前条第一項に規定する帳簿及び前項各号に掲げる書類を整理し、第五十九条第二項(帳簿書類の整理保存)に規定する起算日から七年間(略)保存しなければならない」としており、年数も起算日も同じです。
消費税には、知っておくと負担が下がる定めがあります。消費税法施行令50条1項のただし書です。
ただし、財務省令で定める場合に該当する法第三十条第七項に規定する帳簿又は請求書等については、同日から五年間を超えて保存をすることを要しない。
この「財務省令で定める場合」が消費税法施行規則15条の6で、帳簿については「当該帳簿に記載された事項に係る(略)請求書等(略)を令第五十条第一項本文の規定に基づいて保存する場合」、請求書等については「当該請求書等に記載され、又は記録された事項に係る帳簿を同項本文の規定に基づいて保存する場合」とされています。
つまり帳簿と請求書等の両方を7年持つ必要はなく、どちらか一方を7年持てば、もう一方は5年でよいということです。ただしこれは消費税の話なので、法人税の7年(規則59条1項)が別にかかります。法人が請求書を5年で捨てられるわけではありません。
起算日は決算日ではありません
年数より間違いが多いのが、どこから数えるかです。法人税法施行規則59条2項です。
前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(次の各号に掲げる事業年度にあつては、当該各号に定める月数。以下この項において同じ。)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。
一問一答 問9の表の注が、これを「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日を起算日とします。」と言い換えています。タックスアンサー No.5930も「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません」という書き方です。決算日ではなく、申告期限の翌日からです。 だから3月決算なら実際には7年2か月持つことになります。
さらに、申告期限の延長特例を受けている法人は後ろにずれます。規則59条2項1号が、延長されている事業年度については「その延長に係る月数に二を加えた月数」としています。1か月延長なら3か月後が起算日です。
実際に計算すると次のようになります。3月決算の法人で、事業年度終了の日が2027年(令和9年)3月31日の帳簿書類です。遠い年は和暦で書くと読み替えが面倒なので、ここから先は西暦で揃えます。計算はスクリプトで行い、出力を写しています。
| 区分 | 起算日 | 満了日 | 捨てられるのは |
|---|---|---|---|
| 原則7年 | 2027年6月1日 | 2034年5月31日 | 2034年6月1日以後 |
| 欠損金額が生じた事業年度(10年) | 2027年6月1日 | 2037年5月31日 | 2037年6月1日以後 |
| 申告期限を1か月延長している法人(7年) | 2027年7月1日 | 2034年6月30日 | 2034年7月1日以後 |
満了日の出し方は、入力期間のところで見た国税通則法10条1項3号です。「月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する」とされているので、起算日が2027年6月1日なら7年後の応当日(2034年6月1日)の前日、つまり2034年5月31日に満了します。起算日が月の末日のときは、同号のただし書で応当日が無い月の末日に満了することになります。
個人事業者は所得税法施行規則63条4項です。
第一項及び第二項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいう。
2026年(令和8年)分なら、起算日は2027年3月16日です。7年の満了は2034年3月15日、5年の満了は2032年3月15日になります。
会社法の10年のほうが後に来ます
株式会社の場合、税法だけ見て捨てると会社法に引っかかります。会社法432条2項です。
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
435条4項は計算書類について「株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない」としています。
年数が10年であるだけでなく、起算点も違います。 税法は申告期限の翌日からですが、会社法は閉鎖の時・作成した時からです。上の3月決算の例で、会計帳簿の閉鎖が2027年3月31日だとすると、会社法の10年は2037年3月末ごろまで届きます。税法の7年が2034年5月31日に終わった後も、約2年10か月残るという計算になります(1,035日。スクリプトで算出)。
実務の落とし込みは「会計帳簿と計算書類は10年、取引の書類は税法の年数」で足ります。会社法432条2項の「その事業に関する重要な資料」の範囲は条文からは確定できませんが、会計帳簿の裏づけになる資料がここに入ると考えると、長いほうに合わせておくのが安全です。
電子取引のデータを印刷してスキャンすることはできません
最後に、混ざりやすいところを1つ。メールに添付されて届いた請求書のPDF、ネットバンキングの振込データ、ECサイトの領収書は「電子取引」のデータで、スキャナ保存ではなく電子取引データ保存のほうで扱います。
これを印刷してスキャナ保存に回すことはできません。一問一答 問65は「認められません」と答えたうえで、理由をこう書いています。
他者から受領した電子データを書面等に出力して保存することは、電子帳簿保存法や他の税法に基づくものではありませんので、当然、その出力書面等は電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存の対象となりません。
出力した紙が国税関係書類ではないので、スキャナ保存の対象にならないという筋です。ただし同じ問65は「電子帳簿保存法に従った電子データの保存が適切に行われている前提で、それとは別に各納税者が社内経理の便宜などのために書面等への出力を行うことや、スキャナで読み取るなどの処理を行うこと自体を禁止するものではありません」としています。社内用に印刷するのは自由です。
スキャナ保存は希望者のみの制度ですが、電子取引データ保存は対応が必要な制度です。この違いは電子帳簿保存法 — 義務なのは3つのうち1つだけですで整理しています。
いま決めること
手を動かす順に並べます。
- 対象から外れるものを分ける。 棚卸表・貸借対照表・損益計算書と、計算・整理・決算に関して作成されたその他の書類は、スキャナ保存の対象外です(規則2条4項)。売上伝票などの伝票類は国税関係書類に当たらないので、電子帳簿保存法の要件は関係ありません(一問一答 問2)。
- 残りを重要書類と一般書類に分ける。 平成17年国税庁告示第4号の各号に載っているものが重要書類、載っていないものが一般書類です。五号はイからリまであるので、途中で切らずに全部見てください。請求書(ニ)と納品書(ヘ)は重要書類、注文書と見積書は一般書類です(一問一答 問47)。
- 重要書類の入力方式を決める。 「速やかに」(おおむね7営業日以内)でいくか、事務処理規程を定めて「業務サイクル後速やかに」でいくか。規程を作るなら、書く期間が自分の期限になります。
- 使うソフトの仕様を確認する。 タイムスタンプを別に契約するのか、入力時期の確認で代えられるのか。検索は範囲指定と組合せまでできるのか、ダウンロードの求めに応じる形にするのか。乗り換えるときにデータをどう出せるのか(一問一答 問64)。
- 責任者を決めて書類に書く。 一般書類の「事務の手続を明らかにした書類」も、重要書類の「各事務の処理に関する規程」も、責任者が定められていることが条件です(一問一答 問53)。
- 過去の分をやるなら、届出のタイミングを決める。 重要書類は適用届出書が必要で、同じ種類では2回出せません(規則2条9項・一問一答 問54)。一般書類は届出なしで過去分も入れられます。
- 印紙を貼った契約書の扱いを決める。 還付の見込みが残っているものだけ紙を置く、という線を引いておきます(一問一答 問3)。
- 保存期間の管理表を作る。 電子化しても年数は変わりません。欠損金額が生じた事業年度と、会社法の10年を別の列にしておくと、捨てる判断が機械的にできます。
まとめ
- 紙を捨ててよいのは、読み取ってデータと紙を見比べた直後です。 一問一答 問3は「即時に廃棄して差し支えありません」としています。承認も届出も通常は要りません。
- 問3が「紙も残すことになる」場合として挙げているのは、入力期間を過ぎたときだけです。 「速やかに」はおおむね7営業日以内(取扱通達4-17)、事務処理規程を定めれば最長2か月とおおむね7営業日以内(取扱通達4-18・一問一答 問23)。規程に短い期間を書くと、自分の期限が短くなります。入力期間が特別なのは、過ぎてしまうと後から取り返せないところです。
- 2か月は暦どおりに数えます。 原則は応当する日の前日に満了しますが、行き着く月にその日が無ければその月の末日に満了します(国税通則法10条1項3号ただし書)。1月31日なら3月30日、7月31日なら9月30日と、月末に受け取っても答えが揃いません。
- 告示は重要書類を列挙したもので、一般書類はその残り全部です。 「一般書類の一覧に載っていないから対象外」は逆の読み方です。五号はイからリまで9つに分かれていて、請求書と納品書も重要書類の側にあります。注文書・見積書は一般書類に入り、入力期間に縛られません。
- 要件を満たさないまま紙を捨てると、データの保存義務だけが残ります。 そのデータは各税法上の書類とみなされず(法8条1項・一問一答 問59)、保存期間までは持ち続けることになります(法4条3項後段・規則2条12項)。消してはいけません。
- 電子化しても保存期間は変わりません。 法人は青色・白色とも原則7年、欠損金額が生じた事業年度は10年。起算日は決算日ではなく申告期限の翌日です。個人(青色)は、前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下なら取引書類が5年で足ります(所得税法施行規則63条2項)。株式会社は会計帳簿と計算書類が会社法の10年で、こちらが後に来ます。
- メールで届いたPDFを印刷してスキャンすることはできません。 それは電子取引のデータで、別の制度の話です。