改正私立学校法が令和7年4月1日に施行され、学校法人の情報公表の条文が入れ替わりました。決算が終わったところで迷うのが、「計算書類はウェブサイトに載せなければならないのか」「載せるとしてどこまでか」という点です。
ここは、法人の区分によって義務の強さが変わるところです。公表しなければならないのは大臣所轄学校法人等で、それ以外の学校法人は努力義務にとどまります。そして、公表する対象は計算書類だけではありません。
自法人が大臣所轄学校法人等に当たるかどうかの判定は会計監査人の設置が義務になる学校法人はどこまでかで、計算書類そのものの新旧の対応は学校法人の計算書類は何が変わったかで整理しました。この記事では、作った書類を外に出す段階だけを条文で確かめます。
結論
- 公表しなければならないのは大臣所轄学校法人等です(私立学校法151条)。それ以外の学校法人は「公表するよう努めなければならない」という努力義務です(同法137条)
- 公表の対象は計算書類だけではありません。 施行規則49条が挙げているのは、計算書類等・監査報告(会計監査人を置く学校法人は会計監査報告を含む)・財産目録等の3つです
- 大臣所轄学校法人等の公表方法は、インターネットの利用に限られます(施行規則55条1項)。努力義務のほうは「インターネットの利用その他の方法」ですので、条文の形が違います
- 起点は「作成した」ときで、定時評議員会ではありません(151条2号)。備置きの起点とは別に管理する必要があります
- ウェブサイトに載せても、備置きは無くなりません。 文部科学省は、インターネット上での公表をもって保存・備置きに代えることはできないと明示しています
公表義務が掛かるのは、大臣所轄学校法人等です
出発点は私立学校法137条です。すべての学校法人に掛かりますが、語尾が「努めなければならない」になっています。
学校法人は、次に掲げる事項をインターネットの利用その他の方法により公表するよう努めなければならない。 一 寄附行為の内容 二 計算書類等、監査報告(会計監査人設置学校法人にあつては、会計監査報告を含む。)及び財産目録等のうち文部科学省令で定めるものの内容(137条)
これに対して、大臣所轄学校法人等には151条が別に用意されています。
大臣所轄学校法人等は、第百三十七条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、遅滞なく、文部科学省令で定めるところにより、当該各号に定める事項を公表しなければならない。 一 第二十三条第一項若しくは第百八条第三項の認可を受けた場合又は同条第五項の規定による届出をした場合 寄附行為の内容 二 計算書類等、監査報告、会計監査報告及び財産目録等を作成した場合 これらのもののうち文部科学省令で定めるものの内容(151条)
「第百三十七条の規定にかかわらず」と書かれていますので、大臣所轄学校法人等については137条ではなく151条が適用されます。努力義務が義務に格上げされる、という関係です。
| 区分 | 根拠 | 公表 | 方法として条文が挙げているもの |
|---|---|---|---|
| 大臣所轄学校法人等 | 151条・施行規則55条1項 | しなければならない | インターネットの利用 |
| 大臣所轄学校法人等以外の学校法人 | 137条 | するよう努めなければならない | インターネットの利用その他の方法 |
文部科学省の説明資料も、改正前後の比較表で「インターネット等による公表」の欄をこう書いています。
大臣所轄学校法人等:義務(151) 大臣所轄学校法人等以外の法人:努力義務(137)(説明資料49頁)
ここで注意していただきたいのは、「知事所轄だから努力義務」ではないことです。 大臣所轄学校法人等は、文部科学大臣が所轄庁である学校法人だけを指す言葉ではありません。
この章において「大臣所轄学校法人等」とは、文部科学大臣が所轄庁である学校法人及びそれ以外の学校法人でその事業の規模又は事業を行う区域が政令で定める基準に該当するものをいう。(143条)
政令で定める基準は私立学校法施行令3条にあります。知事所轄学校法人であっても、これに当たれば大臣所轄学校法人等です。 所轄庁は都道府県のままですが、151条の公表義務は掛かります。文部科学省も「知事所轄学校法人が大臣所轄学校法人等に該当することとなった場合でも、所轄庁は都道府県のまま変更なし」(説明資料21頁)としています。判定の基準そのものは会計監査人の設置が義務になる学校法人はどこまでかで扱いましたので、そちらをご覧ください。
なお、専修学校・各種学校のみを設置する法人(準学校法人)についても、152条6項によってこれらの規定が準用されます。
何を公表するのか — 計算書類だけではありません
137条2号も151条2号も、具体的な書類を「文部科学省令で定めるもの」に委ねています。その省令が施行規則49条です。
法第百三十七条第二号(法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の文部科学省令で定めるものは、次に掲げる書類とする。 一 計算書類等 二 監査報告(会計監査人を置く学校法人にあつては、会計監査報告を含む。) 三 財産目録等(法第百七条第一項第二号(法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の名簿に記載され、又は記録された事項中、個人の住所に係る記載又は記録の部分を除く。)(施行規則49条)
大臣所轄学校法人等についても、同じ49条各号が使われます。
法第百五十一条第二号(法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の文部科学省令で定めるものは、第四十九条各号に掲げる書類とする。(施行規則55条2項)
ここで効いてくるのが、「計算書類等」と「財産目録等」がどちらも法律上の定義語だということです。定義は別の条文にあります。
学校法人は、毎会計年度終了後三月以内に、文部科学省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類等(計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下同じ。)及び事業報告書並びにこれらの附属明細書をいう。以下同じ。)を作成しなければならない。(103条2項)
学校法人は、毎会計年度終了後三月以内に(中略)、文部科学省令で定めるところにより、次に掲げる書類を作成しなければならない。 一 財産目録 二 役員及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿 三 第百条第一項に規定する報酬等の支給の基準を記載した書類 2 前項各号に掲げる書類(以下「財産目録等」という。)は、電磁的記録をもつて作成することができる。(107条1項・2項)
定義を開くと、公表する書類は次のようになります。
| 施行規則49条の号 | 中身 | 根拠となる条文 |
|---|---|---|
| 1号(計算書類等) | 貸借対照表、収支計算書 | 103条2項の括弧書き(計算書類) |
| 1号(計算書類等) | 事業報告書 | 103条2項 |
| 1号(計算書類等) | 計算書類の附属明細書、事業報告書の附属明細書 | 103条2項 |
| 2号 | 監事の監査報告 | 施行規則49条2号 |
| 2号 | 会計監査報告(会計監査人を置く学校法人) | 施行規則49条2号の括弧書き |
| 3号 | 財産目録 | 107条1項1号 |
| 3号 | 役員及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿(住所の部分は公表の対象から除かれる) | 107条1項2号、施行規則49条3号の括弧書き |
| 3号 | 報酬等の支給の基準を記載した書類 | 107条1項3号 |
寄附行為は2号ではなく1号(137条1号・151条1号)に別建てで書かれていますので、これに加わります。
改正前から大臣所轄学校法人には公表義務がありましたので、「今までどおり載せている」という法人もあると思います。そこで見落としが起きやすいのが、今回の改正で増えた分です。文部科学省は説明資料のQ&Aでこう答えています。
Q1:第151条において大臣所轄学校法人等が公表しなければならない事項は、これまで大臣所轄学校法人が公表しなければならなかった内容と何か異なるのか。 A1:これまで対象となっていた内容に加え、貸借対照表・収支計算書・事業報告書の附属明細書、会計監査報告、評議員の報酬等の支給基準を公表しなければならなくなります。(説明資料249頁・275頁)
附属明細書・会計監査報告・評議員の報酬等の支給基準の3つです。改正前の様式のまま更新している法人は、ここが抜けたままになっていないか確かめてください。
名簿の「住所」は、公表する対象から外れています
施行規則49条3号の括弧書きをもう一度読んでください。公表対象は「財産目録等(……個人の住所に係る記載又は記録の部分を除く。)」です。括弧の中で対象が画されていますので、名簿は公表しますが、住所の部分は公表義務の対象ではありません。
閲覧請求に対する扱いは、条文の形が違います。
前項の規定にかかわらず、学校法人は、第一項第二号の名簿について前項各号に掲げる請求があつた場合には、当該名簿に記載され、又は記録された事項中、個人の住所に係る記載又は記録の部分を除外して、同項各号の閲覧をさせることができる。(107条6項)
閲覧のほうは「除外して……閲覧をさせることができる」で、法人の側に選択の余地がある書き方です。公表のほうは省令が対象から落としています。同じ「住所を出さない」でも、条文上の位置づけが違います。 実務ではどちらも住所を伏せる運用になりますが、根拠を聞かれたときに取り違えないようにしてください。
いつ公表するのか — 起点は「作成した」ときです
151条2号は「計算書類等、監査報告、会計監査報告及び財産目録等を作成した場合」に「遅滞なく」公表する、と書いています。起点は作成した時であって、定時評議員会の終結の時ではありません。
では「作成した」のはいつか。計算書類等の作成期限は会計年度終了後3か月以内です(103条2項)。そして作成した計算書類等は監査を受け、理事会の決議による承認を受けます(104条1項から3項)。文部科学省は、この3か月以内という期限を理事会承認の期限として説明しています。
なお、改正後の私学法では、計算書類等の理事会承認期限について会計年度終了後3か月「以内」との期限を設けているのみですので(後略)(説明資料228頁・令和5年12月12日追加のQ&A)
財産目録については、より直接的に書かれています。
法人として前年度末資産総額を示す財産目録を作成するのは理事会であり(財産目録の「作成」は、理事会承認を持って完了)、評議員会には報告となります(理事会議決→評議員会報告)。(説明資料229頁・令和5年12月12日追加のQ&A)
財産目録が理事会の決議による承認を受けなければならないことは、施行規則43条1項が定めています。ただし、この省令が承認の対象としているのは財産目録(107条1項1号)だけです。役員及び評議員の名簿(同項2号)と報酬等の支給の基準を記載した書類(同項3号)には、理事会の承認を求める規定がありません。これらの作成期限は107条1項の「毎会計年度終了後三月以内」で、公表の起点は実際に作成した時です。
監査報告と会計監査報告も、作成するのは理事会ではありません。監事の監査報告は施行規則31条・35条が、会計監査人の会計監査報告は同34条が、それぞれ監事・会計監査人の作成するものと定めており、記載事項にはいずれも「監査報告を作成した日」「会計監査報告を作成した日」が入っています。104条3項は理事会の承認を「監査報告の内容を踏まえて行う」としていますので、監査報告は理事会の承認より前に出来上がっています。「作成した」の中身は、書類ごとに違います。
学校法人の会計年度は「四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる」と法律で決まっていますので(98条)、令和7年度に係る計算書類等の作成期限は令和8年6月30日です。
寄附行為の公表は、これとは別の起点です。151条1号は、設立の認可(23条1項)、寄附行為変更の認可(108条3項)、軽微な変更の届出(108条5項)を受けた場合・した場合を挙げています。決算の時期とは関係なく、その都度です。
| 公表するもの | 起点 | 根拠 |
|---|---|---|
| 寄附行為の内容 | 設立・変更の認可を受けたとき、又は軽微な変更を届け出たとき | 151条1号 |
| 計算書類等 | 作成したとき(監査を受けた後の理事会の承認) | 151条2号、104条3項 |
| 監査報告・会計監査報告 | 作成したとき(監事・会計監査人が作成した日。理事会の承認より前) | 151条2号、施行規則31条・34条・35条 |
| 財産目録 | 作成したとき(理事会の承認) | 151条2号、施行規則43条1項 |
| 役員及び評議員の名簿、報酬等の支給の基準を記載した書類 | 作成したとき(毎会計年度終了後3か月以内。理事会の承認を求める規定は無い) | 151条2号、107条1項 |
備置きの起点は、これとはさらに別に定められています。計算書類等及び監査報告は「定時評議員会の日の一週間前の日」から5年間(106条1項)、財産目録等は「当該会計年度に係る定時評議員会の日」から5年間です(107条3項)。公表・計算書類等の備置き・財産目録等の備置きで、起点が3つとも違います。 日程表を作るときは、ひとまとめにせずに分けてください。
どこに公表するのか — 義務のほうはインターネットに限られます
137条の努力義務は「インターネットの利用その他の方法により」ですので、条文はインターネット以外の方法を排除していません。ところが151条の義務のほうは、省令が方法を絞っています。
法第百五十一条(法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の規定による公表は、インターネットの利用により行うものとする。(施行規則55条1項)
「その他の方法」がありません。 大臣所轄学校法人等は、インターネット以外の方法で公表しても151条を果たしたことにはなりません。
文部科学省の説明資料は、この条文のポイントを「大臣所轄学校法人等は、次(のうち文部科学省令で定めるもの)の内容をインターネットなどで公表しなければならない」(説明資料274頁)と要約しています。137条のポイント欄も「インターネットなどで公表するよう努めなければならない」(説明資料248頁)で、同じ言い回しです。資料は2つの条文を同じ形で要約していますが、151条の方法は省令が限定しています。 資料の「など」を根拠に、インターネット以外の方法でも足りると読まないでください。
なお、省令が定めているのは「インターネットの利用により行う」ということだけで、どのページに載せるか、いつまで載せ続けるかは書かれていません。 ここは各法人の運用の判断になります。ただし、備置きのほうには5年間という期間が条文で定められていますので(106条1項、107条3項)、ウェブサイトから外したかどうかとは別に、事務所での備置きは続ける必要があります。
計算書類は令和7年度の決算から、財産目録等は施行日からです
改正法は令和7年4月1日に施行されましたが、計算書類の公表について経過措置が置かれています。
新私立学校法第六十八条(会計帳簿及びこれに関する資料並びに貸借対照表等(貸借対照表、収支計算書及び事業報告書並びにこれらの附属書類、監査報告並びに会計監査報告をいう。以下この項において同じ。)に係る部分に限る。)、第百二条、第百三条(第一項を除く。)、第百四条から第百六条まで、第百三十七条(第二号中貸借対照表等に係る部分に限る。)及び第百五十一条(第二号中貸借対照表等に係る部分に限る。)(これらの規定を新私立学校法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の規定は、施行日以後に開始する会計年度に係る会計帳簿及びこれに関連する資料並びに貸借対照表等について適用し、施行日前に開始した会計年度に係る貸借対照表、収支計算書、事業報告書及び監査報告書の作成、備置き、閲覧、公表、理事会への提出並びに評議員会への提出及び報告については、なお従前の例による。(改正法附則4条1項)
長い条文ですが、公表について読むべき点は2つです。
- 新しい137条2号・151条2号が適用されるのは、貸借対照表等に係る部分については「施行日以後に開始する会計年度」からです。学校法人の会計年度は4月1日に始まりますので(98条)、令和7年度(令和7年4月1日開始)の決算が最初になります
- 括弧書きが「第二号中貸借対照表等に係る部分に限る」となっていますので、財産目録等に係る部分はこの経過措置に入っていません
2つ目は読み飛ばしやすいところです。文部科学省の説明資料も、財産目録等関係の改正について「施行日(令和7年4月1日)から適用」(説明資料50頁)と書いており、計算書類関係の「令和7年度の決算書類から適用」(説明資料49頁)と区別しています。
公表と、備置き・閲覧と、所轄庁への提出は別の義務です
ここが実務で最も混ざります。文部科学省のQ&Aが、はっきり否定しています。
「保存」は倉庫等で単に保管しておくこと、「備置き」は主たる事務所等において利害関係者等の請求があれば容易に閲覧させ又は謄本等を交付することができる状態で保管することを意味します。 計算書類等を電磁的記録をもって作成している場合、原本の「保存」「備置き」も電磁的に行うことができると解されますが、インターネット上で公表することをもって「保存」「備置き」に代えることはできません。(説明資料235頁・令和5年12月12日追加のQ&A)
整理すると次のようになります。
| 義務 | 何をするか | 期間・期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 保存 | 計算書類及びその附属明細書を保管する | 作成した時から10年間 | 103条4項 |
| 備置き(主たる事務所) | 計算書類等及び監査報告を、請求に応じられる状態で置く | 定時評議員会の日の一週間前の日から5年間 | 106条1項 |
| 備置き(主たる事務所) | 財産目録等を、請求に応じられる状態で置く | 当該会計年度に係る定時評議員会の日から5年間 | 107条3項 |
| 閲覧への対応 | 請求を受けて閲覧させる(計算書類等について債権者から請求があれば謄本等の交付も) | 業務時間内はいつでも | 106条3項・4項、107条5項 |
| 公表 | インターネットに載せる(努力義務にとどまる法人は、その他の方法でもよい) | 作成後(寄附行為は認可・届出の後)、遅滞なく | 151条(137条の努力義務に時期の定めは無い) |
| 所轄庁への提出 | 計算書類及びその附属明細書と翌会計年度の収支予算書に、公認会計士又は監査法人の監査報告(会計監査人設置学校法人等は会計監査報告)を添付して出す(補助金の交付を受ける学校法人) | 毎会計年度終了後3月以内 | 私立学校振興助成法14条2項から4項 |
この表の最後の行の「監査報告」は、監事の監査報告ではありません。助成法は、補助金の交付を受ける学校法人に対して、計算書類及びその附属明細書について公認会計士又は監査法人の監査を受けることを求めており(同法14条2項)、所轄庁へ添付して出すのはその監査を行った公認会計士又は監査法人が作成する監査報告です(同条3項・4項)。会計監査人設置学校法人と大臣所轄学校法人等は、これに代えて私立学校法86条2項の会計監査報告を添付します。なお、補助金の額が少額である場合において所轄庁の許可を受けたときは、公認会計士又は監査法人の監査も、監査報告の添付も要りません(同法14条2項ただし書・4項ただし書)。
閲覧について、大臣所轄学校法人等にはもう一つ特例があります。
第百四十四条第三項の規定により大臣所轄学校法人等を会計監査人設置学校法人とみなして適用する第百六条の規定の適用については、同条第四項中「当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の債権者以外の利害関係人は」とあるのは、「何人も」とする。 2 大臣所轄学校法人等についての第百七条の規定の適用については、同条第五項中「当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の利害関係人は」とあるのは、「何人も」とする。(149条)
利害関係人に限られていた閲覧請求権者が、大臣所轄学校法人等では「何人も」に読み替えられます。公表義務とセットで、外に開く度合いが一段上がっているとみてください。
ただし、これは改正で新しく広がった扱いではありません。文部科学省の新旧比較表は、改正前の欄にも「大臣所轄学校法人:何人も/知事所轄学校法人:利害関係人」と書いています(説明資料49頁・50頁の「現行」欄)。変わったのは扱いの中身ではなく、「何人も」の対象になる法人の範囲です。知事所轄学校法人でも大臣所轄学校法人等に該当すれば、ここに入ります。
公表しなかった場合にどうなるか
過料の対象になる行為は163条が列挙しています。そこには、書類を備え置かなかったとき(3号)と、正当な理由がないのに閲覧等を拒んだとき(4号)が入っています。
三 第二十七条第一項若しくは第二項、第四十三条第五項、第七十八条第二項、第百六条第一項若しくは第二項(中略)又は第百七条第三項若しくは第四項の規定(中略)に違反して、書類又は電磁的記録を備え置かなかつたとき。(163条3号)
一方、151条は163条の列挙に入っていません。 公表しなかったこと自体に過料の定めはない、ということです。
ただし、それで義務の重さが変わるわけではありません。所轄庁には措置命令の権限があります。
所轄庁は、学校法人が、法令の規定、法令の規定に基づく所轄庁の処分若しくは寄附行為に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該学校法人に対し、期限を定めて、違反の停止、運営の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。(133条1項)
151条は法令の規定ですので、公表を怠れば133条1項の対象になり得ます。過料の規定が無いことを「守らなくてよい」と読まないでください。
報酬等の支給の基準は、内容が変わらなくても毎年度作ります
最後に、毎年の実務で引っかかりやすい点を一つ。財産目録等に含まれる「報酬等の支給の基準を記載した書類」は、107条1項が毎会計年度終了後3月以内に作成するものとしており、内容に変更がない年を除いていません。とはいえ、同じ基準を毎年作り直すのは実態に合いません。文部科学省はこう答えています。
Q1:報酬等の支給の基準について、内容に変更が無い場合であっても、毎会計年度毎に作成しなければならないのか。 【令和5年12月12日更新】 A1:内容に変更がない場合には、理事会において報酬基準の内容を確認した旨と確認した日付を記載した書類を作成・公表すれば足りるものと考えます。なお、その際の記載箇所や記載ぶりの詳細については、各学校法人のご判断で決定いただくものと考えています。(説明資料237頁・令和5年12月12日更新のQ&A)
理事会で内容を確認し、その旨と日付を書いた書類を作って公表する、という手順です。 確認そのものを省いてよいという話ではありませんので、理事会の議事に毎年載せておいてください。
まとめ
- 公表しなければならないのは大臣所轄学校法人等です(151条)。それ以外の学校法人は努力義務です(137条)。知事所轄学校法人でも大臣所轄学校法人等に該当すれば義務が掛かります
- 公表する書類は、計算書類等・監査報告(会計監査報告を含む)・財産目録等と、寄附行為です(施行規則49条、55条2項、137条1号、151条1号)
- 改正で増えたのは、附属明細書・会計監査報告・評議員の報酬等の支給基準の3つです
- 名簿の住所の部分は、公表の対象から外れています(施行規則49条3号の括弧書き)
- 起点は作成したときです。ただし「作成した」の中身は書類ごとに違い、計算書類等と財産目録は理事会の承認ですが、監査報告・会計監査報告は監事・会計監査人が作成した日で、名簿と報酬等の支給の基準を記載した書類には理事会の承認を求める規定がありません。備置きの起点(定時評議員会の日の一週間前の日/定時評議員会の日)とは別に管理してください
- 大臣所轄学校法人等の公表方法はインターネットの利用に限られます(施行規則55条1項)
- 計算書類の公表について新しい条文が適用されるのは、施行日以後に開始する会計年度からです。学校法人の会計年度は4月始まりですので、令和7年度の決算が最初になります
- 財産目録等は、この経過措置に入っていません。施行日(令和7年4月1日)から新しい条文が掛かります
- ウェブサイトに載せても、保存・備置き・所轄庁への提出は無くなりません