学校法人会計

理事会・評議員会・監事の権限がどう変わったか — 旧法と条文で比べる

改正私立学校法が2025年4月1日に施行されました。寄附行為は作成例に沿って直し終えた法人が多いと思いますが、日々の決裁や会議の運営が旧法の習慣で回っていることがあります。理事長の決裁で足りるのか、理事会の決議が要るのか、評議員会に諮るのか。この判断の境目が、改正でいくつも動きました。

ここでは、理事会・評議員会・監事の権限を、旧法の条文と新法の条文を1つずつ突き合わせる形で整理します。「強化された」という言い方をせず、旧法に何が書いてあったかを先に示します。改正前の姿を確かめないと、増えたのか減ったのかを取り違えるためです。

結論

  • 意思決定機関は理事会、評議員会は諮問機関という枠組みそのものは維持されています(説明資料6頁)。変わったのは、誰を選ぶ権限がどこにあるかと、理事会を止めるための手段です
  • 理事長を選ぶのは理事会になりました(37条1項)。旧法では、寄附行為の定めるところにより理事のうち一人が理事長となる、という書き方でした(旧35条2項)
  • 監事を選ぶのも解任するのも評議員会の決議です(45条1項、48条1項)。旧法では、評議員会の同意を得て理事長が選任していました(旧38条4項)。解任の決議は3分の2以上の多数が必要です(76条2項)
  • 理事と評議員の兼職は禁止されました(31条3項)。旧法では、評議員のうちから選任された者が理事に含まれることが必須でした(旧38条1項2号)。ここは可能から不可能へ反転しています
  • 理事会が理事に委任できない事項が9項目、そのうち5項目は評議員会の意見を聴かなければなりません(36条3項・4項)。聴く主体は理事長ではなく理事会です
  • 評議員会は、理事の解任・差止め・責任追及の引き金を引けます(33条2項、67条1項、140条1項)。いずれも自分で決めるのではなく、理事選任機関・監事・学校法人に求める形です
  • 可否同数のときに議長が決める規定は無くなりました(旧36条6項、旧41条7項)。新法に対応する規定はありません
  • 経過措置はまだ終わっていません。大臣所轄学校法人等以外の学校法人では、令和9年4月1日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時まで、評議員の構成についての緩和された基準が続きます(改正法附則2条2項)

旧法では、判断の主語が「理事長」でした

旧法の条文を並べると、同じ言葉が繰り返し出てきます。

理事のうち一人は、寄附行為の定めるところにより、理事長となる。(旧35条2項)

理事会は、理事長が招集する。(旧36条3項前段)

理事会に議長を置き、理事長をもつて充てる。(旧36条4項)

監事は、評議員会の同意を得て、理事長が選任する。(旧38条4項)

評議員会は、理事長が招集する。(旧41条3項)

次に掲げる事項については、理事長において、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならない。(旧42条1項柱書)

理事長は、毎会計年度終了後二月以内に、決算及び事業の実績を評議員会に報告し、その意見を求めなければならない。(旧46条)

理事会を招集し、その議長を務め、監事を選び、評議員会を招集し、評議員会に諮る——どの入口にも理事長が立っていました。理事会の職務は「学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する」(旧36条2項)と1文で書かれているだけで、理事に委任できない事項の列挙もありませんでした。

改正の狙いは、この構造を組み替えることでした。概要はこう書いています。

「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理し、私立学校の特性に応じた形で「建設的な協働と相互けん制」を確立。(概要)

置かなければならない機関が増えました

まず、法人に置くものが変わりました。

学校法人は、理事、理事会、監事、評議員及び評議員会並びに理事選任機関を置かなければならない。(18条1項)

旧法で置くことが定められていたのは、役員(理事5人以上及び監事2人以上・旧35条1項)、理事会(旧36条1項)、評議員会(旧41条1項)でした。理事選任機関が新しく加わっています。

理事選任機関の構成、運営その他理事選任機関に関し必要な事項は、寄附行為をもつて定める。(29条)

条文は構成を指定していません。評議員会を理事選任機関とすることも、第三者を含む選考委員会とすることもできます。文部科学省の説明資料は、評議員会とする場合と選考委員会とする場合の両方について、選任の流れの例を示しています(説明資料43頁・44頁)。

評議員の定数の下限は下がりました

定数の定めも変わりました。

理事の定数は五人以上、監事の定数は二人以上、評議員の定数は六人以上とし、それぞれ寄附行為をもつて定める。この場合において、寄附行為をもつて定める評議員の定数は、寄附行為をもつて定める理事の定数を超える数でなければならない。(18条3項)

旧法はこうでした。

評議員会は、理事の定数の二倍をこえる数の評議員をもつて、組織する。(旧41条2項)

理事の定数ごとに、評議員の最少人数を並べます。

理事の定数旧法(理事の2倍を超える数)新法(6人以上かつ理事の定数を超える数)
5人11人以上6人以上
6人13人以上7人以上
7人15人以上8人以上
10人21人以上11人以上
15人31人以上16人以上

理事の定数と同じだけ下限が下がるという関係になります。ただし、後で見る評議員の構成の上限(62条5項)は総数に対する割合ですので、人数を減らすほど上限に引っかかりやすくなります。人数を先に決めず、構成の要件を満たせる人数から決めてください。

理事会が決めること——理事に委任できない9項目

新法は、理事会の職務を5号に分けて書き(36条2項)、そのうえで理事に委任できない事項を9項目列挙しました。

理事会は、学校法人の業務に係る次に掲げる事項の決定を理事に委任することができない。(36条3項柱書)

さらに、そのうちの一部については評議員会の意見を聴くことが義務づけられています。

理事会は、前項第一号、第二号又は第六号から第八号までに掲げる事項についての決定をするときは、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならない。(36条4項)

「第一号、第二号又は第六号から第八号まで」を9項目に当てはめると、次のようになります。

36条3項の号事項評議員会の意見聴取(36条4項)
1号重要な資産の処分及び譲受け必要
2号多額の借財必要
3号学校法人の設置する私立学校の校長その他の重要な役割を担う職員の選任及び解任不要
4号従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止不要
5号理事の職務の執行が法令及び寄附行為に適合することを確保するための体制その他学校法人の業務の適正を確保するために必要なものとして文部科学省令で定める体制の整備不要
6号予算及び事業計画の作成又は変更必要
7号第百条第一項に規定する報酬等の支給の基準の策定又は変更必要
8号収益を目的とする事業に関する重要事項必要
9号前各号に掲げるもののほか、学校法人の業務に関する重要事項不要

9号を見てください。 「学校法人の業務に関する重要事項」は理事会が決めなければならない事項ですが、意見聴取の対象には入っていません。旧法では、この位置にあった「その他学校法人の業務に関する重要事項で寄附行為をもつて定めるもの」(旧42条1項9号)が意見聴取の対象でした。旧法の寄附行為でこの9号に何を書いていたかを確かめてください。 新法でも評議員会に諮り続けたいのであれば、寄附行為で評議員会の職務として定める必要があります(66条2項5号)。

また、旧法の意見聴取事項と並べると、対象が広がっているものと、聴く主体が変わったものがあります。

旧42条1項新法変わったところ
1号 予算及び事業計画36条3項6号・4項聴く主体が理事長から理事会へ
2号 事業に関する中期的な計画(旧45条の2第2項)148条2項・3項作成義務の対象が文部科学大臣所轄の法人から大臣所轄学校法人等へ
3号 借入金(一時の借入金を除く)及び重要な資産の処分36条3項1号・2号資産の「譲受け」が加わった。「借入金」が「多額の借財」になり、一時の借入金を除く括弧書きは無くなった
4号 役員に対する報酬等の支給の基準36条3項7号・100条1項支給の基準の対象に評議員が加わった
5号 寄附行為の変更108条2項大臣所轄学校法人等では決議が必要(150条)
6号 合併126条2項同上
7号 解散(旧50条1項1号〈評議員会の議決を要する場合を除く〉及び3号に掲げる事由による解散)109条2項理事会の決議による決定(1号)のみが対象になり、目的たる事業の成功の不能(3号)は意見聴取の対象から外れた
8号 収益事業に関する重要事項36条3項8号・4項聴く主体が理事長から理事会へ
9号 寄附行為で定める重要事項36条3項9号意見聴取の対象から外れた

3号の「譲受け」は見落としやすいところです。旧法は「重要な資産の処分」だけを挙げていましたので、校地や建物を取得する側の決定は、条文上の意見聴取事項ではありませんでした。新法は処分と譲受けを並べています。

借入れのほうも書き方が変わっています。旧法は「借入金(当該会計年度内の収入をもつて償還する一時の借入金を除く。)」と、除く範囲を括弧書きで示していました(旧42条1項3号)。新法は「多額の借財」です(36条3項2号)。一時の借入金を除く、という括弧書きはありません。 代わりに「多額の」という限定が付きましたので、どこからを多額とみなすかを法人側で決めておく必要があります。

4号も対象が広がっています。報酬等の支給の基準を定める義務の条文は、こうなっています。

学校法人は、役員及び評議員に対する報酬等(報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当をいう。以下この条において同じ。)について、文部科学省令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該学校法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めなければならない。(100条1項)

旧42条1項4号は「役員に対する報酬等」でした。評議員に対する報酬等の支給の基準も、定めて、その基準に従って支給しなければなりません(100条2項)。評議員に報酬を出していない法人でも、基準そのものは必要です。

評議員会の意見聴取や決議を、寄附行為で省くことはできません

新法は、逃げ道を1つ塞いでいます。

学校法人は、この法律の規定により評議員会の意見の聴取又は決議を要することとされた事項について、評議員会の意見の聴取又は決議を要しない旨を寄附行為をもつて定めることができない。(66条3項)

前項の規定は、この法律の規定により評議員会の意見の聴取を要する事項について、評議員会の意見の聴取に代えてその決議を要する旨を寄附行為をもつて定めることを妨げない。(66条4項)

下げることはできず、上げることはできるという構造です。旧法にあったのは、このうち上げる側だけでした。「前項各号に掲げる事項は、寄附行為をもつて評議員会の議決を要するものとすることができる」(旧42条2項)という定めはありましたが、要らないと定めることを禁じる規定はありませんでした。

理事長を選ぶのは理事会になりました

学校法人には理事長一人を置くものとし、寄附行為をもつて定めるところにより、理事のうちから、理事会が選定する。(37条1項)

旧35条2項の「理事のうち一人は、寄附行為の定めるところにより、理事長となる」と読み比べてください。文部科学省の説明資料も、改正前の理事長の選定等を「寄附行為の定めによる」と整理しています(説明資料12頁)。新法は、寄附行為の定めに従って理事会が選定する、という行為を要求しています。

ここで1つ注意があります。条文に「解職」という語はありません。 文部科学省の説明資料は、改正のポイントの表で「理事会が選定(・解職)する(37Ⅰ)」と書いており、選定権限の裏側として理事会が解職できるという理解を示しています(説明資料12頁)。条文の文言ではありませんので、寄附行為に解職の手続と決議要件を書いておくのが安全です。なお理事長を解職しても理事の地位は残ります。理事そのものの解任は理事選任機関の権限です(33条1項)。

新法は、理事長以外に代表業務執行理事と業務執行理事を置くことができるとし(37条2項)、いずれも理事会が選定するとしています(37条3項・4項)。これらの理事には理事会への報告義務があります。

第三十七条第五項の規定により学校法人の業務を執行する理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事(第九十四条第一項及び第二項において「業務執行理事等」という。)は、毎会計年度に四月を超える間隔で二回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。(39条1項)

「四月を超える間隔で二回以上」です。年2回を同じ時期にまとめて行うことはできません。大臣所轄学校法人等では「三月に一回」と読み替えられます(146条2項)。

監事は、評議員会が選び、評議員会が解任します

監事は、学校運営その他の学校法人の業務又は財務管理について識見を有する者のうちから、寄附行為をもつて定めるところにより、評議員会の決議によつて、選任する。(45条1項)

旧38条4項は「監事は、評議員会の同意を得て、理事長が選任する」でした。同意から決議へ、選任行為の主体が理事長から評議員会へという2つの変化が同時に起きています。

議案を出す側にも制約が入りました。

理事は、監事の選任に関する議案を評議員会に提出するには、監事の過半数の同意を得なければならない。(49条1項)

監事は、理事に対し、監事の選任を評議員会の会議の目的とすること又は監事の選任に関する議案を評議員会に提出することを請求することができる。(49条2項)

解任も評議員会の決議によります。

監事が第三十三条第一項各号に掲げる事由のいずれかに該当するときは、寄附行為をもつて定めるところにより、評議員会の決議によつて、当該監事を解任することができる。(48条1項)

この決議は普通決議ではありません。

前項の規定にかかわらず、第四十八条第一項又は第九十二条第一項の評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の数の三分の二以上に当たる多数をもつて行わなければならない。(76条2項)

さらに、決議で解任されなかった場合の道も用意されています。監事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があったにもかかわらず解任の議案が否決されたときは、評議員は、その評議員会の日から30日以内に解任を請求する訴えを提起できます(48条2項)。

監事の職務で増えたところ

旧法の監事の職務は、旧37条3項に7号で書かれていました。新法は52条に職務の柱を置き、53条から59条までに個別の権限を置いています。増えたところを条文で押さえます。

1つ目は、評議員会への出席です。

監事は、理事会及び評議員会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。(55条1項)

旧法で出席と意見陳述の対象として挙げられていたのは、理事会だけでした。

七 学校法人の業務若しくは財産の状況又は理事の業務執行の状況について、理事会に出席して意見を述べること。(旧37条3項7号)

2つ目は、不正を発見したときの報告先です。 ここは助詞が変わっています。

五 第一号から第三号までの規定による監査の結果、学校法人の業務若しくは財産又は理事の業務執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを所轄庁に報告し、又は理事会及び評議員会に報告すること。(旧37条3項5号)

監事は、学校法人の業務若しくは財産又は理事の業務の執行に関し、不正の行為若しくは法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したとき、又は不正の行為がなされ、若しくは法令若しくは寄附行為の重大な違反が生ずるおそれがあると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会及び評議員会並びに所轄庁に報告しなければならない。(56条2項)

旧法は「所轄庁に報告し、又は理事会及び評議員会に報告する」で、どちらかを選べる形でした。新法は「理事会及び評議員会並びに所轄庁に報告しなければならない」で、3つすべてが報告先です。加えて、発見したときだけでなく「おそれがあると認めるとき」も対象になり、「遅滞なく」が入りました。理事の業務の執行に関するものであれば、理事選任機関にも報告します(56条3項)。

3つ目は、子法人の調査権限です。

監事は、その職務を行うため必要があるときは、学校法人の子法人に対して事業の報告を求め、又はその子法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。(53条2項)

ただし無条件ではありません。「前項の子法人は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる」(53条3項)という受け手側の規定が付いています。

4つ目は、議案の調査義務です。

監事は、理事が評議員会に提出しようとする議案、書類その他文部科学省令で定めるものを調査しなければならない。この場合において、法令若しくは寄附行為に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を評議員会に報告しなければならない。(54条)

「調査しなければならない」です。議案が回ってきたときに見る、という任意の作業ではありません。評議員会の招集通知は会日の1週間前までに発せられますので(70条4項)、監事が調査する時間を逆算して議案を固める段取りが要ります。

なお、会計監査人を置いた法人での監事と会計監査人の役割分担は、監事と会計監査人の役割分担で条文ごとに整理しました。

評議員会は「諮問機関」のままです。ただし引き金を引けます

ここは誤解が生じやすいところです。文部科学省は、改正の基本的な考え方としてこう書いています。

今回の改正では、「意思決定機関」は理事会であり、評議員会は「諮問機関」であるという基本的な枠組みは維持する。その上で、評議員会等による理事会等に対するチェック機能を高めることとしている。(説明資料6頁)

説明資料の評議員会の位置付けの欄も、改正前が「基本的に諮問機関」、改正後が「基本的に諮問機関だが、監視・牽制機能等を強化」です(説明資料17頁)。評議員会が学校法人の業務を決める機関になったわけではありません。

意見を述べ、諮問に答えるという中心の部分は、旧法から引き継がれています。読み比べてください。

評議員会は、学校法人の業務若しくは財産の状況又は役員の業務執行の状況について、役員に対して意見を述べ、若しくはその諮問に答え、又は役員から報告を徴することができる。(旧43条)

一 学校法人の業務若しくは財産の状況又は役員の職務の執行の状況について、役員に対して意見を述べ、又はその諮問に答えること。(66条2項1号)

「報告を徴することができる」が、新法の1号からは落ちています。 私立学校法の本則に「報告を徴」という文言はありません。もっとも、評議員会が説明や報告を受ける場面が無くなったわけではありません。理事は、評議員会において評議員から特定の事項について説明を求められた場合には、必要な説明をしなければならず(39条2項)、この規定は監事にも準用されます(55条2項)。ただし、その事項が会議の目的である事項に関しないものである場合その他正当な理由がある場合として文部科学省令で定める場合は、説明の義務はありません(39条2項ただし書)。監事は、学校法人の業務・財産の状況や理事の職務の執行の状況について、理事会及び評議員会並びに理事選任機関に対し報告することを職務としています(52条3号)。評議員会が役員に報告を求めるという書き方から、役員の側に説明・報告の義務を置く書き方に変わっています。

変わったのは、法律上の決議事項が増えたことと、理事会や理事選任機関を動かすための手続が用意されたことです。

法律が評議員会の決議を要求している事項を並べます。

決議事項条文決議の要件
監事の選任45条1項過半数(76条1項)
監事の解任48条1項3分の2以上(76条2項)
会計監査人の選任80条過半数(76条1項)
会計監査人の解任83条1項過半数(76条1項)。緊急のときは監事の全員の合意でも解任できる(83条2項)
役員等の損害賠償責任の全部の免除91条全員一致(76条3項)
役員等の損害賠償責任の一部の免除92条1項3分の2以上(76条2項)
理事の解任を理事選任機関に求めること33条2項過半数(76条1項)
理事の行為の差止めの訴えの提起を監事に求めること67条1項過半数(76条1項)
責任追及の訴えの提起を求めること140条1項過半数(76条1項)
寄附行為の変更(軽微な変更を除く)・任意解散・合併150条過半数(76条1項)。大臣所轄学校法人等に限る

旧法で法律上「評議員会の議決」とされていたのは、寄附行為に定めがある場合の任意解散(旧50条1項1号)と合併(旧52条1項ただし書)、それに準用による役員の責任の免除(旧44条の5が準用する一般社団・財団法人法113条1項。旧41条9項により3分の2以上)でした。監事については、条文の書き方が評議員会の「同意」で、選任行為の主体は理事長でした(旧38条4項)。その他の重要事項は「意見の聴取」です(旧42条1項)。

そのうえで、理事会や理事選任機関を動かすための手続が3つあります。

求める先内容否決・不作為のときの次の手
理事選任機関(33条2項)理事の解任を求める議案が否決された日、又は解任を求める決議の日から2週間以内に解任がされなかったときは、その日から2週間を経過した日から30日以内に、評議員が解任を請求する訴えを提起できる(33条3項)
監事(67条1項)理事の行為の差止めの訴えの提起を求める議案が否決されたとき、又は決議後遅滞なく手続が行われないときは、評議員が差止めの訴えを提起できる(67条2項)
学校法人(140条1項)役員・会計監査人・清算人の責任を追及する訴えの提起を求める決議の日から60日以内に訴えを提起しないときは、理事(理事の責任を追及する訴えの場合は監事)が、提起しない理由を評議員会に報告しなければならない(140条2項)

いずれも、評議員会が自分で解任したり訴えたりする形ではありません。 まず本来の権限者に求める、という建て付けです。

そして3つで、その先が違います。理事の解任(33条3項)と差止め(67条2項)では、求めた先が動かなかったときに評議員が個人として訴えを起こせます。責任追及の訴えはそうなっていません。評議員が責任追及の訴えを起こす規定は置かれていません。 責任追及の訴えについて準用される一般社団・財団法人法の規定は279条・280条の2・281条4項・283条1項で(141条)、社員による責任追及の訴えの規定(同法278条)は入っておらず、283条1項の準用では「又は社員は、確定した」を「は、確定した」と読み替えて社員を外しています。学校法人が60日以内に提起しなければ、理事(理事の責任を追及する訴えの場合は監事)が、提起しない理由を評議員会に報告するところまでです(140条2項)。

33条3項の期間は読み間違えやすいので、条文をそのまま引きます。

前項の場合において、理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があつたにもかかわらず、当該理事の解任を求める旨の議案が評議員会において否決されたとき、又は当該理事の解任を求める旨の評議員会の決議があつた日から二週間以内に理事選任機関による解任がされなかつたときは、評議員は、当該議案が否決された日又は当該決議があつた日から二週間を経過した日から三十日以内に、当該理事の解任を請求する訴えを提起することができる。(33条3項)

訴えを提起できるのは、解任を求める議案が否決された場合だけではありません。 決議が通ったのに理事選任機関が2週間動かなかった場合も対象です。しかも、この訴えには「理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があつた」という前提が付いています。33条1項の解任事由(職務上の義務違反、職務怠慢、心身の故障、寄附行為で定める事由)よりも重い要件です。理事選任機関が解任できる場面と、評議員が訴えを起こせる場面は同じではありません。

理事と評議員の兼職は、必須から禁止に変わりました

理事は、監事又は評議員を兼ねることができない。(31条3項)

旧法はこうでした。

理事となる者は、次の各号に掲げる者とする。 一 当該学校法人の設置する私立学校の校長(学長及び園長を含む。以下同じ。) 二 当該学校法人の評議員のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者(寄附行為をもつて定められた者を含む。次号及び第四十四条第一項において同じ。) 三 前二号に規定する者のほか、寄附行為の定めるところにより選任された者(旧38条1項)

2号が効いています。 旧法では、評議員のうちから選任された理事が必ず含まれなければならず、その理事は評議員の職を退いたときに理事の職も失いました(旧38条3項)。説明資料の表も、改正前の兼職の制限を「監事は理事・評議員・職員と兼職禁止、1名以上は評議員と兼職している理事が必須」と整理しています(説明資料13頁)。

必須だったものが禁止になったのですから、旧法のまま運用している法人では、理事と評議員の名簿が重複しているはずです。ここは寄附行為を直すだけでは終わりません。

なお、校長が理事に含まれなければならないことは変わっていません(31条4項1号)。理事に含めた校長は、同時に評議員になることはできません(31条3項)。校長を評議員として置いていた法人では、どちらに置くかを決め直すことになります。

評議員の構成には、割合の上限が入りました

評議員を選ぶときの要件も条文に入りました。

評議員は、当該学校法人の設置する私立学校の教育又は研究の特性を理解し、学校法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、寄附行為をもつて定めるところにより、選任する。(61条1項)

評議員の選任は、評議員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮して行わなければならない。(61条2項)

そのうえで、構成に上限が入ります。

評議員の構成は、次の各号のいずれにも該当するものでなければならない。 一 第三項第一号に掲げる者である評議員の数が評議員の総数の三分の一を超えないこと。 二 理事又は理事会が評議員を選任する場合において、当該評議員の数が評議員の総数の二分の一を超えないこと。 三 役員又は他の評議員のいずれかと特別利害関係を有する者並びに子法人役員及び子法人に使用される者である評議員の数の合計が評議員の総数の六分の一を超えないこと。(62条5項)

1号の「第三項第一号に掲げる者」は当該学校法人の職員です。職員である評議員は1人以上含まれなければならず(62条3項1号)、同時に総数の3分の1を超えられません。下限と上限の両方が効きます。

含めなければならない者を定めた条文は、括弧書きで範囲を絞っています。

評議員には、次に掲げる者(第二号に掲げる者にあつては、当該者がある場合に限る。)が含まれなければならない。 一 当該学校法人の職員 二 当該学校法人の設置する私立学校を卒業した者で年齢二十五年以上のもの(前号に掲げる者を除く。)(62条3項)

括弧書きが2か所あります。 柱書きの「当該者がある場合に限る」は2号だけに係りますので、25歳以上の卒業者がいない法人では2号は求められません。1号の職員には、この限定が付いていません。

もう1つは2号の「前号に掲げる者を除く」です。職員である卒業者は、2号の枠を満たしません。 職員を1人だけ置いて「その人は卒業生でもあるので2号も満たしている」としている名簿は、ここで要件を欠きます。

職員と25歳以上の卒業者を評議員に含めること自体は、旧法にもありました。

評議員となる者は、次の各号に掲げる者とする。 一 当該学校法人の職員のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者 二 当該学校法人の設置する私立学校を卒業した者で年齢二十五年以上のもののうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者 三 前各号に規定する者のほか、寄附行為の定めるところにより選任された者(旧44条1項)

新しく入ったのは、上限のほうです。

総数ごとの上限人数を出します(「超えないこと」ですので、総数に割合を掛けた数以下の最大の整数です)。

評議員の総数職員(3分の1)理事又は理事会が選任(2分の1)特別利害関係等(6分の1)同・経過措置の期間中(3分の1)
6人2人まで3人まで1人まで2人まで
8人2人まで4人まで1人まで2人まで
9人3人まで4人まで1人まで3人まで
12人4人まで6人まで2人まで4人まで
15人5人まで7人まで2人まで5人まで
18人6人まで9人まで3人まで6人まで

6分の1の列を見てください。 総数が11人以下なら1人までです。

ただしこの6分の1は、大臣所轄学校法人等以外の学校法人では、まだ適用されていません。改正法附則2条2項の読替えで「三分の一」のままです(右端の列)。いつ本来の基準に戻るかは、後の「経過措置は、まだ終わっていない法人があります」で扱います。

文部科学省の説明資料は、改正前の近親者等に関する制限を「各役員について近親者等が1人を超えて含まれてはならない」とし、改正後を「各役員についての制限を強化するとともに、評議員についても近親者等の制限を設ける(31Ⅵ・Ⅶ、46Ⅲ、62Ⅳ・Ⅴ③)」としています(説明資料13頁)。評議員についての制限は、新しく設けられたものです。

「特別利害関係」の中身は、法律と省令に分かれています。法律はこう定義しています。

理事は、他の二人以上の理事、一人以上の監事又は二人以上の評議員と特別利害関係(一方の者が他方の者の配偶者又は三親等以内の親族である関係その他特別な利害関係として文部科学省令で定めるものをいう。以下同じ。)を有するものであつてはならない。(31条6項)

括弧の中が定義の本体です。 配偶者と三親等以内の親族は法律に書かれており、それに加えて省令が5つの関係を挙げています。

一 一方の者が他方の者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある関係 二 一方の者が他方の者の使用人である関係 三 一方の者が他方の者から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持している関係 四 一方の者が他方の者の前二号に掲げる関係の者の配偶者である関係 五 一方の者が他方の者の第一号から第三号までに掲げる関係の者の三親等以内の親族であつて、これらの者と生計を一にする関係(施行規則12条)

親族関係だけを確認して終わりにしないでください。 2号の「使用人である関係」と3号の「生計を維持している関係」は、名簿を見ただけでは分かりません。

会議の運営で変わったこと

招集と決議の規定も動いています。旧法と新法を並べます。

旧法新法
理事会の招集理事長が招集(旧36条3項)各理事が招集。理事会招集担当理事を定めたときはその理事(41条1項)
評議員会の招集理事長が招集(旧41条3項)理事が招集(70条1項)。日時・場所・目的である事項等は理事会で定める(70条2項)
評議員会の招集通知条文に期限の定めなし会日の1週間前までに書面(70条4項)。情報通信の技術による方法も可(70条5項)
理事会の議長理事長(旧36条4項)規定なし
評議員会の議長置く(旧41条4項)。評議員として議決に加われない(旧41条8項)規定なし
可否同数のとき議長が決する(旧36条6項、旧41条7項)規定なし
評議員会の招集請求評議員総数の3分の1以上の請求があれば、理事長が請求の日から20日以内に招集しなければならない(旧41条5項)評議員の総数の3分の1以上(寄附行為で下回る割合を定められる)が請求できる(71条1項)。大臣所轄学校法人等は10分の1(147条)
請求しても招集されないとき条文に定めなし請求から20日以内の日を会日とする招集通知が発せられなければ、請求した評議員が共同して、所轄庁の許可を得て招集できる(72条1項)。大臣所轄学校法人等はこの20日も30日に読み替えられる(147条)

議長と可否同数についての規定が、新法から消えています。 新法の決議要件は次のとおりです。

理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を寄附行為をもつて定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を寄附行為をもつて定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。(42条1項)

評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数をもつて行う。(76条1項)

過半数に達しなければ否決です。 寄附行為で議事運営を定めることは差し支えありませんが、可否同数のときに議長が決すると定めれば、法律が要求した過半数を満たさない決議を有効にすることになります。旧法の条文をそのまま写した寄附行為が残っていないか確かめてください。

決議要件の書き方には、もう1つ読み分けが必要な箇所があります。

一 第百八条第一項の理事会の決議 議決に加わることができる理事の数の三分の二(これを上回る割合を寄附行為をもつて定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて決する方法 二 第百九条第一項第一号及び第百二十六条第一項の理事会の決議 理事の総数の三分の二(これを上回る割合を寄附行為をもつて定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて決する方法(42条2項)

1号は「議決に加わることができる理事の数」、2号は「理事の総数」です。 寄附行為の変更(1号)では特別の利害関係を有する理事を除いた数が分母になり、任意解散と合併(2号)では理事全員が分母になります。分母が違いますので、同じ「3分の2」でも必要な賛成数が変わります。

大臣所轄学校法人等には上乗せがあります

区分が別に設けられており、次のような上乗せがあります。

条文内容
145条1項事業の規模又は事業を行う区域が特に大きいものとして政令で定める基準に該当する法人は、常勤の監事を定めなければならない
146条1項外部理事(31条4項2号に掲げる者)が2人以上含まれなければならない
146条2項業務執行理事等の理事会への報告が「三月に一回」になる
147条評議員会の招集請求等の「3分の1」が「10分の1」に、「20日」が「30日」になる
148条1項・2項内部統制システム(36条3項5号の体制)の整備と、中期事業計画の作成が義務になる
150条軽微な変更を除く寄附行為の変更、任意解散、合併は、評議員会の決議がなければ効力を生じない

150条は、意見聴取が決議に格上げされるという意味ではありません。

大臣所轄学校法人等においては、第百八条第一項の規定による寄附行為の変更(軽微な変更として文部科学省令で定めるものを除く。)、第百九条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定による解散又は第百二十六条第一項の規定による合併の決定は、評議員会の決議がなければ効力を生じない。この場合において、これらの規定による理事会の決議については、それぞれ第百八条第二項、第百九条第二項又は第百二十六条第二項の規定は、適用しない。(150条)

後段を落とさないでください。 決議が必要になる代わりに、意見聴取の規定は適用されません。理事会の決定と評議員会の決議の2段階になります。

なお、知事所轄学校法人でも大臣所轄学校法人等に当たる場合があります。判定の基準は会計監査人の設置が義務になる学校法人はどこまでかで整理しました。所轄庁が都道府県のままでも、この章の規定は適用されます。

経過措置は、まだ終わっていない法人があります

改正法の施行日と経過措置を条文で確かめます。

第一条 この法律は、令和七年四月一日から施行する。ただし、附則第十一条の規定は、公布の日から施行する。(改正法附則1条)

経過措置は2段階です。1段目は、施行時に在任していた役員・評議員についてのものです。

第二条 この法律の施行の際現に在任する学校法人(略)の役員(略)及び評議員については、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までは、新私立学校法第三十一条、第四十六条、第六十二条及び第百四十六条第一項(これらの規定を新私立学校法第百五十二条第六項において準用する場合を含む。)の規定は適用せず、その資格及び構成については、なお従前の例による。(改正法附則2条1項)

2段目が、いま効いているものです。

2 この法律の施行の際現に在任する学校法人の役員及び評議員についての施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時から令和九年四月一日(大臣所轄学校法人等(略)にあっては、令和八年四月一日)以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までの間における新私立学校法第三十一条第六項、第四十六条第三項並びに第六十二条第四項及び第五項(略)の規定の適用については、新私立学校法第三十一条第六項、第四十六条第三項及び第六十二条第四項中「二人以上の評議員」とあるのは「三人以上の評議員」と、同条第五項第三号中「六分の一」とあるのは「三分の一」とする。(改正法附則2条2項)

読み替えの中身を整理します。

読み替えられる規定本来経過措置の期間中
31条6項(理事の特別利害関係)二人以上の評議員三人以上の評議員
46条3項(監事の特別利害関係)二人以上の評議員三人以上の評議員
62条4項(評議員の特別利害関係)二人以上の評議員三人以上の評議員
62条5項3号(構成の上限)六分の一三分の一

期間の終わりは、法人の区分で1年違います。

法人の区分経過措置の終わり
大臣所轄学校法人等令和8年4月1日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時
それ以外の学校法人令和9年4月1日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時

学校法人の会計年度は4月1日に始まり翌年3月31日に終わり(98条)、定時評議員会は毎会計年度の終了後の一定の時期に招集されます(69条1項)。したがって大臣所轄学校法人等では、令和8年度に招集した定時評議員会の終結の時で、この期間が終わります。 それ以外の学校法人は令和9年4月1日以後最初の定時評議員会までですので、いまはまだ緩和された基準が続いています。

ここを取り違えると、「いまは要件を満たしている」という判断のまま、次の定時評議員会で満たさなくなります。とくに62条5項3号は、割合が3分の1から6分の1へ半分になります。評議員の総数が11人以下の法人では上限が1人までに落ちますので、いま2人以上該当している法人は、次の定時評議員会までに入替えが必要です。

任期についても経過措置があります。

第三条 この法律の施行の際現に在任する学校法人の役員又は評議員である者の任期は、新私立学校法第三十二条第一項、第四十七条第一項及び第六十三条第一項(略)の規定にかかわらず、この法律の施行の際におけるその者の役員又は評議員としての残任期間と同一の期間とする。ただし、当該期間の満了の時が令和九年四月一日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時以後である場合は、当該終結の時までとする。(改正法附則3条)

ただし書に上限が置かれています。 施行時の残任期間が長い役員・評議員も、令和9年4月1日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時で任期が切れます。ここで全員の任期が揃う法人が出てきます。新法の任期は、寄附行為で定める期間以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までで、その期間の上限は理事が4年、監事と評議員が6年です(32条1項、47条1項、63条1項)。加えて、理事について定める期間は、監事について定める期間及び評議員について定める期間を超えてはなりません(32条2項)。監事の期間を2年と定めれば、理事の期間も2年以下になります。

選任の段取りは、定時評議員会の前に1回置く形になります

最後に、実務の順序の話をします。理事の選任には評議員会の意見聴取が挟まりますので、定時評議員会の日に全部を片付けようとすると成立しません。

条文の文言には、ただし書も括弧書きもありません。

理事選任機関は、理事を選任するときは、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならない。(30条2項)

もっとも文部科学省は、理事選任機関が評議員会そのものである場合は、この意見聴取を要しないと整理しています。 改正のポイントの表では「理事選任機関が選任する(30Ⅰ)(理事選任機関が評議員会以外の場合は、評議員会の意見聴取を必須(30Ⅱ))」と書き(説明資料12頁)、評議員会が理事選任機関である場合の流れの例では「評議員会=理事選任機関であるため、評議員会の意見聴取は不要」としています(説明資料43頁)。評議員会が自分自身に意見を述べる形になるためです。

条文の文言から出てくる例外ではなく、行政の整理です。 自法人の理事選任機関が何かを先に確かめ、評議員会以外であれば、意見聴取を段取りに入れてください。

理事選任機関が評議員会以外の場合について、説明資料はこう注意しています。

仮に、②③の作業を定時評議員会で行い、定時評議員会終了後すぐに理事選任機関において新理事の選任を行うこととした場合、・新理事の選任に際して、評議員会の意見を十分に踏まえることができない可能性があること・定時評議員会の終了と同時に改選前の理事の任期が終了してしまっているため、理事が理事選任機関の構成員になっている場合、その者の理事としての身分がなくなってしまっている可能性があることなどから、定時評議員会の前に評議員会を開催し、新理事についての意見を聴取した上で、新理事の選任を終えておくことが望ましい。(説明資料44頁)

改選の年には、定時評議員会の終結と同時に、改選前の理事の任期が切れます(32条1項)。理事選任機関に理事を入れている法人では、その時点で理事選任機関の構成そのものが揺らぎます。定時評議員会の前に評議員会を1回置く、という段取りが要ります。

まとめ

  • 枠組みは変わっていません。 意思決定機関は理事会、評議員会は諮問機関です(説明資料6頁・17頁)。ここを「評議員会が議決機関になった」と読むと、寄附行為の設計を誤ります
  • 理事長を選ぶのは理事会です(37条1項)。ただし条文に「解職」の語はありません。寄附行為に手続と決議要件を書いてください
  • 監事を選ぶのも解任するのも評議員会の決議です(45条1項、48条1項)。解任は3分の2以上(76条2項)、選任議案の提出には監事の過半数の同意が必要です(49条1項)
  • 理事に委任できない9項目のうち、評議員会の意見を聴くのは5項目です(36条3項・4項)。9号の「その他の重要事項」は入っていません。旧法の寄附行為で9号に何を書いていたかを確かめてください
  • 不正の報告先は「又は」から「並びに」に変わりました(旧37条3項5号/56条2項)。理事会・評議員会・所轄庁のすべてに、遅滞なく報告します
  • 理事と評議員の兼職は、必須から禁止になりました(旧38条1項2号/31条3項)
  • 可否同数のときに議長が決める規定はありません(42条1項、76条1項)。旧法の条文を写した寄附行為が残っていないか確かめてください
  • 評議員会が引けるのは、求めるところまでです(33条2項、67条1項、140条1項)。理事の解任と差止めは、求めた先が動かなければ評議員が個人として訴えを起こせますが(33条3項、67条2項)、責任追及の訴えを評議員が起こす規定は置かれていません(141条)
  • 経過措置は、大臣所轄学校法人等以外ではまだ続いています(改正法附則2条2項)。62条5項3号の上限は、期間が終われば3分の1から6分の1になります

改正の条文は、読み替えと準用が多く、旧法の条文をそのまま写した寄附行為との差が見えにくいところに集まっています。学校法人の監査と、寄附行為・規程の点検の両方に関わってきた立場から、御法人の寄附行為と現在の名簿を突き合わせ、次の定時評議員会で満たさなくなる要件がないかという順序で確認をお手伝いします。

よくある質問

改正で評議員会は議決機関になったのですか。

なっていません。文部科学省の説明資料は「今回の改正では、「意思決定機関」は理事会であり、評議員会は「諮問機関」であるという基本的な枠組みは維持する。その上で、評議員会等による理事会等に対するチェック機能を高めることとしている」と書いています。変わったのは、評議員会が法律上の決議をする場面が増えたことと、理事会や理事選任機関に対して働きかける手続が用意されたことです。具体的には、監事の選任・解任と会計監査人の選任・解任は評議員会の決議によります(私立学校法45条1項、48条1項、80条、83条1項)。ただし会計監査人については、評議員会の招集を待ついとまがないときその他緊急を要するときに、監事の全員の合意で解任する経路も別に置かれています(83条2項)。大臣所轄学校法人等では、軽微な変更を除く寄附行為の変更、任意解散、合併についても評議員会の決議がなければ効力を生じません(150条)。それ以外の学校法人では、これらは評議員会の意見を聴くところまでです(108条2項、109条2項、126条2項)。

理事長は理事会で解職できますか。

条文に「解職」という語はありません。私立学校法37条1項が定めているのは「学校法人には理事長一人を置くものとし、寄附行為をもつて定めるところにより、理事のうちから、理事会が選定する」という選定の権限です。文部科学省の説明資料は改正のポイントとして「理事会が選定(・解職)する(37Ⅰ)」と書いており、選定権限の裏側として理事会が解職できるという理解を示しています。ただし条文の文言ではありませんので、寄附行為に解職の手続と決議要件を書いておくことをお勧めします。なお理事長を解職しても理事の地位は残ります。理事そのものの解任は理事選任機関の権限です(33条1項)。

監事は評議員会に出席しなければならないのですか。

出席しなければなりません。私立学校法55条1項は「監事は、理事会及び評議員会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」と定めています。旧法で監事の職務として挙げられていた出席・意見陳述は「理事会に出席して意見を述べること」だけで、評議員会は入っていませんでした(旧37条3項7号)。ここは改正で対象が増えたところです。加えて、理事が評議員会に提出しようとする議案や書類を調査する義務も新しく入りました(54条)。法令若しくは寄附行為に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を評議員会に報告しなければなりません。

評議員の人数を減らしてよいのですか。

下限は下がっています。旧法では「評議員会は、理事の定数の二倍をこえる数の評議員をもつて、組織する」とされていました(旧41条2項)。新法は「理事の定数は五人以上、監事の定数は二人以上、評議員の定数は六人以上」とし、「寄附行為をもつて定める評議員の定数は、寄附行為をもつて定める理事の定数を超える数でなければならない」としています(18条3項)。理事の定数が5人なら、旧法では11人以上でしたが、新法では6人以上です。ただし減らすと、評議員の構成の上限(62条5項)が効きやすくなります。たとえば総数6人では、役員又は他の評議員のいずれかと特別利害関係を有する者などは1人までしか入れられません(経過措置の期間中は「六分の一」が「三分の一」に読み替えられるので2人までです。改正法附則2条2項)。人数を先に決めるのではなく、構成の要件を満たせる人数から決めてください。

評議員会の議事が可否同数になったら、議長が決めてよいですか。

いけません。旧法には「評議員会の議事は、出席評議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる」という規定がありましたが(旧41条7項)、新法にはこれに当たる規定がありません。新法は「評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数をもつて行う」と定めるだけです(76条1項)。過半数に達しなければ否決です。理事会についても同じで、旧法の「可否同数のときは、議長の決するところによる」(旧36条6項)に当たる規定は新法にありません(42条1項)。新法には議長を置くことを定めた規定そのものが無く、議事運営は寄附行為に委ねられていますが、寄附行為で可否同数の場合に議長が決すると定めることは、法律の定めた決議要件を下げることになりますので避けてください。

経過措置はもう終わっていますか。

法人の区分で違います。改正法附則2条2項は、施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時から、令和9年4月1日(大臣所轄学校法人等にあっては令和8年4月1日)以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までの間について、読替えを置いています。この間は、特別利害関係についての「二人以上の評議員」が「三人以上の評議員」と読み替えられ、62条5項3号の「六分の一」が「三分の一」と読み替えられます。大臣所轄学校法人等は令和8年4月1日以後最初の定時評議員会でこの期間が終わりますので、令和8年度の定時評議員会を終えた法人は既に本来の基準が適用されています。それ以外の学校法人は、令和9年4月1日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までです。自法人がどちらなのかを先に確かめてください。

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